地球環境セミナー 地球は今

ネットワーク地球村代表 高木義之さん講演会

 事実を知ることから始めよう、と呼びかけるネットワーク「地球村」は、1991年に設立されたNPO(非営利団体/認証2002年)。約12万6千人(2003年)という環境NGOで最大の会員数をもち、会報では環境情報だけでなく、いじめや不登校などの家庭問題、飢餓、貧困など国際情報を伝えている。
 
 「今日はいろんなことを知ることでショックを受けます。ショックは変化のはじまりなんです。身近な問題から見ていきましょう」と高木代表の話は始まった。時に笑わせ、またうれしい話に胸を詰まらせる高木さんの話に会場はすぐに引き込まれていった。そしてはるかに深刻な事実を知り、衝撃を受ける。


(2004.1.17(土)13〜15時30分 東京・江戸川区総合区民ホール・船堀タワーにて/主催:えどがわ地球村)



高木義之(たかぎよしゆき)さん
ネットワーク地球村代表。「美しい地球を子どもたちに」と呼びかけ、地球環境の実態を伝え、さまざまな提言を続けている。国連地球サミット、モントリオール会議に出席。著書に『究極のしあわせ』(サンマーク)『転生と地球』(PHP)、『地球村宣言』(ビジネス社)、『オーケストラ指揮法』(総合法令)など多数。1947年大阪府生まれ。1970 年大阪大学物精物理学科卒業、大手企業へ。
コンピュータシステムの研究、また指揮者としても活躍。1981年、34歳の時交通事故で重態、臨死体験。その後、地球環境問題と向き合う 。現状の社会から環境調和の社会への転換、「地球市民国連」設立構想(世界中の市民のネットワーク)を提唱。「非対立」の理念を掲げている。




ヨーロッパのスーパーマーケットはバラ売り
 
 日本は世界でどのくらいのランクにあるのかをお伝えします。環境保全力は、主要国100くらいの中で、日本は世界62位。アメリカは51。スウェーデン、ドイツ、デンマークなどの国と比べて日本は10倍くらいのゴミを出しているんです。過剰包装など無駄なことが多いんですね。

 ヨーロッパのスーパーを見てみましょう。この写真を見るとすべてバラ売りです。包装ゴミが出ない。日本ではこういう売り方ができますか。以前は日本もこうでした。八百屋さんではバラ売りです。はかりで計って売ってくれます。でも巨大なスーパーではありえませんね。ヨーロッパのこのスーパーは例えばトマトもいくつか種類があって、それぞれ値段が違うんです。設置されているこの機械で自分で野菜の値段を打ち込んで、出てきたレシートをレジに持って行くんです。

 日本ではこれは正直、難しい。しかし、ヨーロッパではできている。私は20年前にこのしくみを知ってびっくりして聞いたんです。「不正はでませんか」と。そしてその答えを聞いてまた驚きました。「WAY(なぜ)?」と。私は「でたらめ押したり、安く値段をごまかしたり、計らずに出て行ってしまったりしませんか?」と。するとまた「WAY(なぜ)?」と言うんです。続けて「あなたはこれを買う。買うから値段を払う。これは責任と自覚です」と。リスペクトというのは人として社会人としての尊厳という意味ですね。自覚です。不正がまったくおこらないとは思わないけれど、少なくともそのシステムが成り立つだけはみんな守っている、ということなんです。

 ヨーロッパでバスに乗るときにチケットを買います。降りるときには見せないので、自分のポケットに残るんです。次にバスに乗るときあなたはどうする?ポケットのチケットが使えます。自分の中に迷いが出る、出ない? 私は出たんです(笑)。だけど、国際会議に出席した日本人がバスで無銭乗車で捕まった、って新聞に出たらはずかしいから買いましたよ。電車も同じなんです。デンマークとかスウェーデンとかスイスでは、電車に乗るとき改札がないんです。最初に自分でチケットを買うだけでチェックされない。チケットがなくても乗れるんです。

 日本とアメリカは一緒です。アメリカは鉄パイプの棒でガッチャンととうせんぼしている。ディズニーランドも一緒でしょ。鉄パイプの棒でガチャンです。基本的に信頼しない。お客は悪いことをするはずだからと防御体制をとる。これひとつみても国の基本的な考え方がみえてきます。


自動販売機、コンビニがないヨーロッパ


 ゴミ処理場の数ははアメリカ168、フランス100、ドイツ51、スゥエーデン21、イギリス7(国際固形廃棄物協会)です。日本は1893。


4R=ゴミ減量の4原則
1        やめる Refuse
2        減らす Reduce
3        再使用 Reuse
4        リサイクル(再資源化) Recycle

 
 日本は再使用ということがないんです。リサイクルだけです。以前はありました。一升瓶ですね。今は残ってる? 残っていませんね。それは誰が消したの? 消費者の私たちです。洗うのがいや、割れるからいや、重いからいや、置いておくのがいや、持って行くのがいや。その「やだ、やだ」によって消えました。以前私たちが守っていたことが私たち自身が守らなくなった、ということが言えると思います。それは社会の風潮とか企業の持っていき方とかいろいろありますよ。

 私たちは再利用しない。そしてリサイクル、という社会をいい社会だと思っているわけです。でもね、よく考えたら、たった1回でものを溶かしたりすることはいいこと? 悪いこと? よくないことですよね。ヨーロッパでは缶ビール、缶ジュースがありません。なくなったんです。使い捨て容器に高額の税金がかかります。ヨーロッパでは法律によって企業の製造責任が定められていますから、ゴミを作らない、ゴミを売らない。ゴミの有料化によって、市民は目の色をかえてゴミを減らします。ゴミの分別、生ゴミの堆肥化、デポジット制。

 ヨーロッパにはコンビニはないんです。自動販売機がない、パック売りがない、過剰包装がない。それをやったら損をするしくみが作られているからです。責任と自覚です。みんながゴミが少なくなるような買い方、使い方をします。

 法律を作れば問題が解決するんです。その結果ヨーロッパではビンの種類が1種類なんです。日本は5万種類。みなさん、もしかしたら牛乳ビンは回収していると思っていませんか? それは自社製品を回収しているだけなんです。メーカーごとにビンの大きさは違うんです。社会を通しての本当の回収ではないんです。


日本は1世帯月3万円(税金)、ヨーロッパは4000円のゴミ処理代

 ヨーロッパの人は日本の10分の1のごみに対してひと月4000円払っています。50リッターの入れ物に週1回取りに来てもらっていくら、あるいは1ヶ月に1回取りに来てもらって4000円。2回だったら8000円。日本はヨーロッパの10倍のゴミを出していくら払ってます? 払っていません。でも、10倍のゴミに対してただで処理ができるはずはありませんね。実はひと月に3万円払っているんです。どんな形でそれを納めているんですか? 税金ですね。

 コンビニの売れ残りは1〜2割くらい。その捨てられる分のお金は? 最初から値段に乗っていますね。便利、快適を追及すると、必ず大きなペナルティがかかっています。だからヨーロッパにはそういうものがないんです。それ以上にもっと大きなエネルギーを使うマイナス点が大きい。

 便利、快適な社会。無痛社会。痛みを伴わない生活。暑いのはいや、寒いのはいや、疲れるのはいや、しんどいのはいや、歩くのはいや、痛いのはいや。子どもを育てるのはいや、教育するのはいや。だからお金でしくみの中に放り込むんですね。ひとりで産んだ人は少ないと思います。どうして10万円払って病院で産ませてもらうんですか? 痛くないように、つらくないように、苦しくないように。でもね、子ども産むときに痛い、つらい、苦しいことが愛情を生むってことが証明されているんです。無痛社会からは愛情が生まれない。

 ゴミの焼却に、日本はひと月3万円かけている。税金という形で納めている。一家で、1年で36万円、日本の全世帯で20兆円。みなさん20兆円の無駄は減らしたい? 業界にしてみればいろんな形でこの20兆円のビジネスを生んでいる。ゴミの焼却場を作ったりつぶしたりしていろんなことをしていますよ。ヨーロッパにあるような法律を日本はなぜつくらないか、それは企業がつぶした、市民団体がつぶした。実は企業と市民はグルだったんです。


デポジットを導入して問題を解決する


 例えばヨーロッパでは自動車を買うとき、3、4万円のデポジット(一時預かり金)を払います。環境に悪いものを買ったときに最初にお金を払うんです。それをきっちりと処理をしたらお金が返ってくる一時預かりがデポジットです。廃車処理をしたらお金が返ってきます。冷蔵庫やエアコンを買った場合、4、5000円デポジットがとられます。フロン回収は企業がやります。処理するとお金が返ってきます。ルールを守ると得をするから、みんなきちんとルールを守ります。ルールを守らないと損をする。

 日本は捨てるときにお金がとられます。リサイクル法が適用されてから不法投棄が増えました。みんな払うのいやですね。それはモラルだけが悪いのではなくて、しくみが間違っているんです。実はヨーロッパでも20年前は日本と同じだったんです。捨てるときにお金を払うしくみだったんですが、ルールを守った人にお金を渡すしくみに変えたんです。そうしたらみんなルールを守った。日本は20年前にヨーロッパで失敗したことを今やっているんです。なぜ日本とヨーロッパは逆なんですか。日本は業界の都合で法律ができている、ヨーロッパでは根本的な問題解決のために法律ができている。

キーワードはグリーンコンシューマ

 目先のお金や経済よりも長い目でみた環境が大事ですよ、という意識、価値観をもっている人をグリーンコンシューマといいます。ヨーロッパにはこのグリーンコンシューマが70%いるといわれています。ところが日本は1%。社会の方向が違いますね。ヨーロッパには空き缶がありません。缶ジュースや缶ビールは禁止です。あるのは日本への輸出用です。日本では企業の尻拭いのことをボランティアと言います。違います? ボランティアで市民がで空き缶を拾うのは日本だけです。それが日本の環境教育です。でも企業の尻拭いは社会を良くする? 良くしない? 日本は水道のじゃぐちを開きっぱなしで、下で一生懸命雑巾で拭いている。でもヨーロッパはまずじゃぐちを閉める、原因から解決しないとダメだと考えます。

 ビニールはダイオキシンがでる、それならポリエチレンだったらでません。こういう改善もできますよ、ということなんです。答えは1つだけじゃない。やめることだけが解決じゃない、今あることを変えることも解決のひとつです。答えは常に7つある、と言います。それはアメリカの先住民族の人たちもそう言います。そう考えると楽でしょ。

日本は毎日3000万人の食べ物を捨てている

 あなたは命とお金とどちらが大事? あなたのお金と人の命とどちらが大切? じゃあね、家で何かを食べるとき、古いものと新しいものどちらから先に食べる? 店で牛乳を買うとき、古い方と新しい方どちらを買いますか? お金が人間の行動を逆にしています。

 日本では一日に3000万人の食料を捨てています。世界では10億人の人たちが飢え、毎日約5万の子どもたちは餓死しています。日本は3000万人の食べ物を毎日捨てているという現実を知ってください。日本は世界の餓死に責任ある? ない? 輸入して飽食して、毎日3000万人の食料を捨てています。

 ヨーロッパでは幼稚園で社会の善悪を教える、小学校で自分の意思表示を教える。私はこの20年間いろいろな国を見ました。一番美しいものがあったのは未開国といわれる国。美しいものが残っていたのは途上国といわれる国。美しいものを破壊しているのは日本とアメリカ。破壊していることに気づいて、美しいものを取り戻そうとしているのがヨーロッパです。これが文明の順番です。美しいものを守っている人たちのことを私たちは野蛮、と教えられる。美しいものを破壊している国のことを途上国、破壊した国のことを先進国、そしてそれに気がついた国は環境先進国。私たちの国は環境を破壊しつつあります。

 もうちょっと一緒に考えてみましょう。いつもだったら歩く距離なんだけれど、たまたまタクシー券をもらった。あなたは乗る? 乗らない? なぜ? 使わないともったいない。使わなかったら誰もお金を払いません。あなたが使ったら、そのタクシー券をあげた行政とか企業が払わなくてはならない。普段だったら歩くところを、その人たちにお金を払わせるためにタクシーに乗る。おかしい? おかしくない? お金、と聞いたとたん価値観は逆になるんです。同じ距離を歩くのとタクシーに乗るのでは、何倍エネルギーを使うでしょうか。約1000倍です。車に乗るって、それだけの二酸化炭素を放出するんです。

 もうひとつ、今度は歩けない距離なので車に乗ります。バスだったら200円、タクシーだったら600円。どちらに乗りますか? 今度は家族4人です。バス800円、タクシーだったら600円です。今度はどっち? タクシー。またお金。でもね、バスは乗っても乗らなくても走っているんです。タクシーは乗らなかったら走らないんです。

 自分の価値観はすでにおかしい。私たち日本人のほとんどは常にお金、経済、目先、ビジネスを優先しているんです。そう教育を受けているんです。ヨーロッパの小学校では、色鉛筆や絵の具はセットものは禁止。バラ売り、バラ買いです。プラスチック製品に入ったものはダメ。鉛筆削りは電動はダメ、指で押さえて削るあの小さな削り器で刃が付け替えられるもの。筆箱もプラスチック製品はダメ。水筒もお弁当箱もプラスチックはダメ、熱いと溶けてダイオキシンが発生しますから。ノートはバージンパルプはダメ、再生紙。消しゴムもダメ、2本線で消す。どうですか、驚いた?


グリーンコンシューマ(環境意識の高い人々)

お金→いのち

経済→環境

目先→未来

ビジネス→子どもたち



まず、事実を知る


 グリーンコンシューマが増えればいいんですね。どうしたらグリーンコンシューマになれるかというと、この3つです。


1.まず事実を知る

2.できることから始める

3.周りに伝える、意思表示する




【ダイオキシン汚染】


ヨーロッパでは10ピコ以上汚染された畑で作物は作れない。日本は8500ピコ

ヨーロッパは10ピコ以上汚染された畑では作ってはいけないんです。日本はどうですか。グラムあたり8500ピコです。そこから作物が出荷されていることが問題なんです。

 所沢のお野菜どうですか。テレビ朝日が損害賠償請求を受けました。去年4月の判決の結果、テレビ朝日が負けたんです。テレビで放送されてからものの値段が下がった、風評被害ということで有罪。私はこの判決は間違っていると思います。最高裁すらおかしくなっている。どちらの側に立っているのか。いかがですか。日本は政治が国が、裁判すらどちら側に立っているんですか。

 これではいけない、せめて1000ピコ内という基準を作ろうと、日本でも議員立法を作る動きがあったんです。けれど、圧倒的多数の議員から妨害を受けて作れませんでした。妨害するんです、環境問題は。これが現実です。グリーンコンシューマが増えない限り、グリーンな議員も増えないんです。

土壌の汚染濃度規制

カナダ(農物)10ピコ
スゥエーデン(農物)10ピコ
ニュージーランド(農物)10ピコ
オランダ(牧草地)(農物)10ピコ



ダイオキシン汚染

日本人のダイオキシン汚染は年間排出量を面積密度で見てみると世界で最も高い。アメリカにも圧勝です。日本の女性の母乳は世界で最も危険。「母乳に耐容量の26倍 厚生省最終報告」(朝日新聞1991.8.3)。国連基準の26倍というのはベトナム戦争で枯葉剤を浴びた女性の母乳とほぼ同じ。にもかかわらず、(新聞の)2行目ご覧下さい。「1歳児影響見られず」と書かれています。妨害をするんです。情報操作ですね。

例えば水俣問題は40年間情報操作をしてきたんです。「例外がある、メカニズムがわからない、未解明」と・・・。常に業界有利、業界優先ですね。ハンセン病もそうですね。40年も隔離をやめなかった。・・・・・(省略)そんな悲劇があったんです。弱者の立場にたってその人たちを守っていこうとする人たち、それがグリーンコンシューマです。環境だけじゃないです。すべてつながっています。薬害エイズもそうです。厚生省は国民の側を向いている? 業界側を向いている? どう思いますか?



先進国のダイオキシン対策

プラスチックの4R(やめる、減らす、再利用、再資源化)
生ゴミを燃やさない(分類、コンポスト化)土に還す
循環経済法(資源循環法)資源として循環させる
焼却場、焼却灰に厳しい管理
空気・水・土・人体に厳しい規制



日本は何でもゴミにして燃やそうとする。先ほどの焼却炉の数字を思い出してください。日本には1893の焼却炉があります。なぜこうなってしまったか知りたい? ある産業を守るため。巨大な産業です。造船です。製鉄業、鉄工業。(焼却炉は)今その最大の柱です。先進国ではゴミ焼却場の排気ガスに厳しい規制がしかれていますが日本はその10倍という甘い基準です。あらゆる意味で日本の方向は間違っています。

 私は今から22、3年前にこのことを知りました。その当時、巨大企業におりました。巨大企業にいたからこそ、いろんなことに気づかされました。そして私はものすごくショックを受けて、なんとかしたいと思いました。でも、もし私が環境の方に進んだら、家族の生活はどうなるんだろうと、ずいぶん悩みました。悩んだうえで、結局自分の人生を組み変えました。そして私は少しでもたくさんの人に知らせようと思ってこういう話しを始めました。今みたいに会場が満席になるなんてことはありませんでした。20年前はお金を出して聞きに来る人なんていなかったんです。自分で会場費を払って、自分で人を集めて話しをしました。そして200回超えたところで、私は破産しました。

 そこからだんだんと広がってきて、役所や企業から呼ばれたり・・・、気がつけば今3200回。今も当時と同じ思いで講演会をやっています。私個人で講演料をもらいません。自分で書いた本の印税などで賄っています。この講演を主催した方々も話しを聞きに来てほしいから、電話をしたり、説明に行ったりしてチケットを買ってもらっている。持ち出しをしているかもしれません。持ち出しをしてまでどうして講演会を開くかというと、聞いてほしいからです。そしてあなたに動いてほしいからです。どうぞ、いい話しを聞いたで終わらないで。僕にがんばって、と言わないで。


【地球温暖化】

海面が5m上がると世界の50カ国が沈む

 地球温暖化について話をしてみたいと思います。50年前と比べたら何度上がっていると思いますか? 0.3度上昇している。140年前と比べても0.5度。産業革命で石油、石炭を燃やし出してじわじわじわと上がりだしてこれでもまだ0.5度しか上がっていない。ところが、それがあと100年後に10倍の温度が上がると言われています。国連の最新のデーターです。

 氷河期と比べてみましょう。今より何度低かったと思いますか? もっとも大きな氷河期でだいたい5〜6度。海面は100m以上低かったんです。小さな氷河期で2度。海面が一番下がったときは200m。南極の氷が全部溶けると海面は70m上がります。

 海面は温度上昇よりも遅れますから温度が上がって氷が溶けても海まで行くのに時間がかかる。エベレストの雪は海まで行くのに100年以上かかる。100年後に温度は6度くらい上がる。海面は5m上昇します。

 海面が5m上がったらどうなるか。これは環境省の予測図です。低地はこのように水没します。世界はどうなる? オランダは、バングラデシュは、モルジブは、スバルは? 世界の50の国が沈むんです。

 主要都市もそうです。大都市はすべて平野にあります。大阪は淀川の河口、東京は江戸川の河口。世界も同じです。大きな川の河口に大都市は生まれます。5m上昇すれば平野にある大都市は沈みます。スバルやキリバスはすでに30cm沈んでいます。30cm沈むともう井戸水は飲めない。畑に塩が出てきて作物はつくれません。

改ざんされた国連のデータ-

 日本政府のデーターでは100年後に海面上昇は最大80cmとしか言っていないよ、って環境を知っている人は怒るんです。スバルはすでに30cm上がって困っているのにですよ。国連が予測データーを発表したんです。するとアメリカ政府は、そんなことをしたら世界経済は困ってしまう、データーを変えてください、と命令しました。それに反対した国連IPCCの委員長は解任されたんです。そしてアメリカの息のかかっている人がデーターを改ざんします。温暖化によってこんなことは(気温6度、海面5m上昇)あってはいけないから、ないことにしましょうよと、最大80cmというデータ-をアメリカは発表します。日本はこれを採用します。科学的なデーターでさえも、こうして変えるんです。

 また、こんなこともありました。ホワイトハウスがアメリカの環境省に対して、地球温暖化について削除を指示しました。その結果、アメリカの環境白書からは地球温暖化の記述すべてが削除されました。消えました。どう思います? まとも? クレイジー?


地球温暖化と食糧危機

さて、話を元に戻しましょう。海面上昇すると平野部はほぼ全滅。平野部にあるのは畑ですね。畑が沈むとどうなる? 結局、地球温暖化とは何問題ですか? 食料問題です。国連の食糧とエネルギーの自給率のデーターをみてみると、世界でもっとも食べ物が危険な国は日本。なぜこうなったのでしょうか。日本は国をあげて畑をつぶし、農業をつぶして、工業立国になりました。

 工業立国になるというのはどういうことですか? みんなが揃う、みんなが電気製品、みんながエネルギーを使う社会。便利、快適な社会、国は豊かになったと思った・・・。日本は豊かになったんですか、貧しくなったんですか?

 50年以上前は日本は輸入をしてませんよ、食べ物を。日本は自給自足の社会でした。自給自足だからこそいろんなことができたんです。生存基盤ほど大事なものはないのです。今、石油止められたらどうなりますか? 食糧が止まったらどうなりますか? 私たちは戦後60年かけて私たちはこんな社会をつくってきたんです。この方向は正しかった? 間違ってた?

 軍事教育によって戦争を正しい、と言われたと同じように、経済拡大が正しいと言われてきました。そして既に困ったことに食糧が輸入できなくなったら、日本の7割が滅びます。今、すでに中規模の異常気象が始まったんです。熱波も干ばつも豪雨も温暖化の影響です。このことはオゾンに壊滅的なダメージを与えます。すでに世界の穀物は底をつき始めました。日本政府の資料に食糧マニュアルがあります。米は配給制、主食にイモ類。輸入途絶を考えている。にもかかわらず、日本は減反政策を止めている? 止めてない? 止めてませんね。

穀物自給率      エネルギー自給率

オーストラリア280% オーストラリア203%
フランス191%     ロシア166%
アメリカ133%     カナダ152%
ドイツ126%      中国1040%
インド107%      イギリス100%
中国94%        インド84%
北朝鮮54%      アメリカ80%
日本28%        日本6%



温暖化は二酸化炭素増加のため

1997年の温暖化防止京都会議では各国の利害対立と現状認識の不足で先進国の削減目標は平均約5%(必要量の1/10)です。国連は世界全体で二酸化炭素(CO2)を60〜80%削減しないといけないと警告しました。日本は6%の削減を公約しましたが、排出量はさらに約11%増加しました。また、6、8割減らしようがない国があります。アフリカは? 減らせません。

 日本は一人当たりの二酸化炭素の排出量はアフリカの500倍出している。アメリカは100倍から1000倍出している。この数字は極端だと思うかもしれません。私たちは自分で掃除をしますか、自分で洗濯をしますか、自分で草刈をしますか、自分で畑を耕しますか? 例えば難波から江戸に行くために歩きますか。江戸時代は歩きました。お金持ちはかごやを雇います。もうちょっとお金持ちは馬に乗ります。CO2の排出量はその程度です。

 今は掃除機をまわすとCO2は6倍、洗濯機をまわすと6倍、エアコンをまわすと14倍、自動車に乗ると1000倍。これは高速道路を作るエネルギー、車をリサイクルするエネルギー。石油、ガス、電気、自動車などのエネルギーの大量消費。大量生産、大量廃棄。自動販売機だ、コンビ二だ・・・。こういう生活を私たちはしています。どちらも今ヨーロッパにはありません。

温暖化ガス削減状況(2000年)国連
1990年基準の削減案

   目標        実績
ドイツ−25%     −19%
イギリス−23%    −12%
アメリカ−70%    +14%
日本−60%       +11%



できることから始めよう

 だから私はまずできることから始めませんか、と呼びかけます。地球温暖化によくないのは自動車です。私は15年前に自動車を手放しました。そして冷暖房はありません。お風呂はシャワーです。私は気がつけば9割減らしていました。最初の一歩を踏み出してみてください。あなたも1割減らしてみませんか。家族一緒にご飯を食べる、一緒にテレビを見る。1割減らすこと、できる? できない? どう思う?

できることから始めよう

自動車の利用を減らす
冷暖房の利用を減らす
買い物、ゴミを減らす
お風呂の入り方を工夫
食事、テレビはみんなで 一家団らんで大幅削減



オゾン層破壊がなくなったら陸上の生命は生きられない

 オゾン層がなくなるとどうなるか知ってますか? 陸上の生命は死滅ですよ。46億年の地球は40億年以上かけてオゾン層を形成してきたことを忘れないでください。酸素が存在する星。オゾン層がなければ強力な有害な紫外線によって陸上の生物は死滅、生きられません。

 国連は日光浴は注意と呼びかけています。一日に15分以上は危険。今から10年以上前にこう呼びかけています。知っていた? 知らなかった?

 皮膚がんが増えています。クリントン大統領、レーガン大統領、皮膚がんで手術しています。日本でも皮膚がんが増えています。環境省は「紫外線対策マニュアル」を公表しました。欧米より10年以上遅れて始まったばかりです。先進国では20分以上日光にあたると危険だから、直射日光は10分以内に。帽子、長袖、サングラスをして直射日光を防いでいます。

 今破壊しているフロンガスは20年前のフロンガスです。20年前と今とでは、エアコン、自動販売機、ずっと増えていますね。これからなんです。ますます大変です。オゾン層はシェルターの役割をしています。20年後、フロンガスでオゾンホール全体の2/3が破壊されるといいます。農作物にも重大な影響が出てきます。プランクトンがやられちゃう。日本の行政は積極的にそれを伝えません。冷蔵庫、エアコン、半導体、そういう業界を守るために法律(規制)は作られない。結局、誰が変わらないと変わらない? 自分ですね。

講演会がきっかけで紫外線対策が小学校で実現

 山梨県の小学校の8割で紫外線対策をしています。私は甲府市や教育委員会などに呼ばれて19回連続講演をしたんです。私の講演を聞いてくれた方が動き出し、紫外線を防止するテントを子どもたちのために設置しようということになりました。甲府市内の全部の小学校に広がるまでに2年半。そして山梨県下全部に広がり、1998年に8割まで広がって、2年ほど前に聞いたときには93%まで広がったということでした。

 高知市の学校でも、紫外線対策をしています。それも私の講演がきっかけでした。最初は学校の教員60人の研修会で話しをしたんです。話しを聞いてくれた先生が直射日光の危険を知ってPTAにアンケートをとったんです。95%の人がオゾン層の問題を知っていた。そして90%の親御さんから、学校はもっときちんとした対策をとってほしい、という要望が出たんです。そのアンケート結果を教育委員会に持って行って申し入れたら、教育委員会が動いたんです。29の学校にテントがはられ、プールの日よけをしています。運動会のときに直射日光に浴びないような形にテントが張られました。

 うれしいことに講演会がきっかけで、まずどんなことをすればいいかを考えてくれました。アンケートをとって、そして教育委員会に持って行きました。動く、ということはこういうことです。紫外線から子どもを守ろうと。人にどう思われるかではなくて、子どもたちに親として何を残すか。ぜひ、勇気をもってもらいたいと思います。

サラリーマン時代に社長にフロンガス全廃を進言

 私がいた企業は社員数27万の巨大企業です。1989年モントリオール会議で「2000年、特定フロン全廃」決議で、日本だけサインしなかったんです。私はそのことに心痛めて社長室に行きました。そして地球環境の話をしました。すると、今日のようにみなさんと同じで非常にショックを受けて、「なぜ日本はサインをしなかったんだ?」、と言いました。

 
「それは業界の反対です」「どこの業界や」「わが社です」「俺はそんなこと知らんぞ」「社長はご存じない、だから私が今日こうやって話しに来ました」「そんな、アホな。責任者誰や」「社長です」「俺はどうしたらいいんや」「やめさせればいいんです。自らが率先して」「フロンガスを止めなかったらどういうことが起きるの。エアコンは?」「大丈夫です」「半導体は?」「大丈夫です」「なぜ大丈夫なの?」「世界はそういうふうに動いています」「止められないって聞いたけど」「それはうそです。私はおそらく社内のどなたよりも知っています。100億円あればわが社はどこよりも早くフロンがズ全廃ができます」

 すると、社長は100億円はもったいないと言ったんです。私は「お金を使わなければオゾンはなくなります。フロンはなくなりません。でもお金を使ってもお金はなくなりません」と言いました。社長は「なるほど、お金は天下の回りものやな、オヤジ(創業者)もそう言っていた」と言ったんです。「そやけどな、経営者やからそう簡単に金は出せへん。君も経営者の観点で判断してくれ」と。ここで私は、「しばらく時間をください」と部屋を出て、図書館へ行きました。

 私はいろいろな本を調べました。そして辞書で、経営者は真理の探究という意味があることを知りました。経営の経の字はお経のけいの字で真理という意味。それに営む。一生かけて営むこと。経営とは真理を一生かけて求める、ということ。私はそれを知ったときに感銘を受け、再び社長室へ行きました。「私は一生かけて真理を追究してまいります」と伝えました。「一生かけて間に合うんか?」「間に合いません」「ほな、あかんやないか」「100億円かければ止められます。その判断を一生かけて取り組みます。私は社長のご指示通り、経営という観点で考えました」 しばらく無言でした。その後、「わかった。やろう。100億円出そう、おまえに任せる」と。

 私は社内でフロン全廃のコンセンサスをとるのに半年かかりました。みんなものすごく反対しました。そして「M社特定フロンを全廃、5年前倒し1995年までに」と新聞(1989年7月20日朝日新聞)に載りました。忘れられない日付けです。

 その後、ものすごいバッシングが来ました。抜け駆けしたと。せっかく談合して政府を押さえたにもかかわらず、一番大きな企業が抜け駆けをしたということで、業界から抗議が来ました。しかし、わが社は方針を変えませんでした。すると翌90年には他社のほとんどが追随してきました。そして91年に日本は世界から12年遅れでモントリオール協定にサインをしました。そのいきさつはアメリカの『地球環境政治』
という本にも記載されています。

(※「日本はフロンの段階的廃止よりもリサイクルを主張。その理由はフロンを大量に使用する半導体産業が廃止に反対していたからである。日本最大手の電子企業M社がフロンを全廃すると述べて初めて日本は段階的廃止に合意した」)

 私は企業と闘う活動家ではありません、政治と闘う活動家ではありません。今でも会社には私の仲間がたくさんいます。私が会社を辞めてから10年経ってから日本で初めてノンフロン冷蔵庫が出ました。完全なノンフロンです。


※日本でも2001年6月にフロン回収法が成立したが、メーカーや市民の回収義務、放出禁止は盛り込まれていない(カーエアコン回収率10%).。他の先進国ではフロンの回収義務、フロン放出に高額の罰金などの規制がある


今日も5万人の子供たちが餓死している

 森の7割が減っています。すべての森が消えるのはあと50年。国連のデーターです。森が消えると誰が困る? 森が消えると川が流れない、水源がなくなる、雨が降らない、50年後地球は砂漠になります。地球は46億年、海の中に生物が発生してから36億年、陸上に生物が上がってオゾン層ができてから4億年。

 今日知って驚いたことがたくさんあったと思います。でも今日話したことはごく一部です。他にもたくさんの問題があります。その根本原因は私たちの生活、そして無関心。ぜひ、もっと知っていただきたいです。基本は無理をしないで、できることから始めることです。

 今、一日に5万人の子供たちが餓死している。食べ物がない、水がない。地球村ではいろいろな活動をやっています。(・・・省略)私たちにがんばって、と言わないで。私たちは精一杯やっています。あなたにも動いてほしいんです。1割減らしましょう。ものの買い方、使い方、捨て方の工夫、意思表示など誰でも日常生活でできること。

 「地球村」はグリーンコンシューマのための市民ネットワークです。毎月必要な情報を送っています。どうぞ仲間になってください。グリーンコンシューマになってください。一人よりもたくさんの人が協力して力を合わせるほうがはるかに大きな効果があります。できることから始めましょう。