地球環境セミナー 地球は今 ヨーロッパのスーパーマーケットはバラ売り 日本は世界でどのくらいのランクにあるのかをお伝えします。環境保全力は、主要国100くらいの中で、日本は世界62位。アメリカは51。スウェーデン、ドイツ、デンマークなどの国と比べて日本は10倍くらいのゴミを出しているんです。過剰包装など無駄なことが多いんですね。 ヨーロッパのスーパーを見てみましょう。この写真を見るとすべてバラ売りです。包装ゴミが出ない。日本ではこういう売り方ができますか。以前は日本もこうでした。八百屋さんではバラ売りです。はかりで計って売ってくれます。でも巨大なスーパーではありえませんね。ヨーロッパのこのスーパーは例えばトマトもいくつか種類があって、それぞれ値段が違うんです。設置されているこの機械で自分で野菜の値段を打ち込んで、出てきたレシートをレジに持って行くんです。 日本ではこれは正直、難しい。しかし、ヨーロッパではできている。私は20年前にこのしくみを知ってびっくりして聞いたんです。「不正はでませんか」と。そしてその答えを聞いてまた驚きました。「WAY(なぜ)?」と。私は「でたらめ押したり、安く値段をごまかしたり、計らずに出て行ってしまったりしませんか?」と。するとまた「WAY(なぜ)?」と言うんです。続けて「あなたはこれを買う。買うから値段を払う。これは責任と自覚です」と。リスペクトというのは人として社会人としての尊厳という意味ですね。自覚です。不正がまったくおこらないとは思わないけれど、少なくともそのシステムが成り立つだけはみんな守っている、ということなんです。 ヨーロッパでバスに乗るときにチケットを買います。降りるときには見せないので、自分のポケットに残るんです。次にバスに乗るときあなたはどうする?ポケットのチケットが使えます。自分の中に迷いが出る、出ない? 私は出たんです(笑)。だけど、国際会議に出席した日本人がバスで無銭乗車で捕まった、って新聞に出たらはずかしいから買いましたよ。電車も同じなんです。デンマークとかスウェーデンとかスイスでは、電車に乗るとき改札がないんです。最初に自分でチケットを買うだけでチェックされない。チケットがなくても乗れるんです。 日本とアメリカは一緒です。アメリカは鉄パイプの棒でガッチャンととうせんぼしている。ディズニーランドも一緒でしょ。鉄パイプの棒でガチャンです。基本的に信頼しない。お客は悪いことをするはずだからと防御体制をとる。これひとつみても国の基本的な考え方がみえてきます。
日本は再使用ということがないんです。リサイクルだけです。以前はありました。一升瓶ですね。今は残ってる? 残っていませんね。それは誰が消したの? 消費者の私たちです。洗うのがいや、割れるからいや、重いからいや、置いておくのがいや、持って行くのがいや。その「やだ、やだ」によって消えました。以前私たちが守っていたことが私たち自身が守らなくなった、ということが言えると思います。それは社会の風潮とか企業の持っていき方とかいろいろありますよ。 私たちは再利用しない。そしてリサイクル、という社会をいい社会だと思っているわけです。でもね、よく考えたら、たった1回でものを溶かしたりすることはいいこと? 悪いこと? よくないことですよね。ヨーロッパでは缶ビール、缶ジュースがありません。なくなったんです。使い捨て容器に高額の税金がかかります。ヨーロッパでは法律によって企業の製造責任が定められていますから、ゴミを作らない、ゴミを売らない。ゴミの有料化によって、市民は目の色をかえてゴミを減らします。ゴミの分別、生ゴミの堆肥化、デポジット制。 ヨーロッパにはコンビニはないんです。自動販売機がない、パック売りがない、過剰包装がない。それをやったら損をするしくみが作られているからです。責任と自覚です。みんながゴミが少なくなるような買い方、使い方をします。 法律を作れば問題が解決するんです。その結果ヨーロッパではビンの種類が1種類なんです。日本は5万種類。みなさん、もしかしたら牛乳ビンは回収していると思っていませんか? それは自社製品を回収しているだけなんです。メーカーごとにビンの大きさは違うんです。社会を通しての本当の回収ではないんです。 日本は1世帯月3万円(税金)、ヨーロッパは4000円のゴミ処理代 ヨーロッパの人は日本の10分の1のごみに対してひと月4000円払っています。50リッターの入れ物に週1回取りに来てもらっていくら、あるいは1ヶ月に1回取りに来てもらって4000円。2回だったら8000円。日本はヨーロッパの10倍のゴミを出していくら払ってます? 払っていません。でも、10倍のゴミに対してただで処理ができるはずはありませんね。実はひと月に3万円払っているんです。どんな形でそれを納めているんですか? 税金ですね。 コンビニの売れ残りは1〜2割くらい。その捨てられる分のお金は? 最初から値段に乗っていますね。便利、快適を追及すると、必ず大きなペナルティがかかっています。だからヨーロッパにはそういうものがないんです。それ以上にもっと大きなエネルギーを使うマイナス点が大きい。 便利、快適な社会。無痛社会。痛みを伴わない生活。暑いのはいや、寒いのはいや、疲れるのはいや、しんどいのはいや、歩くのはいや、痛いのはいや。子どもを育てるのはいや、教育するのはいや。だからお金でしくみの中に放り込むんですね。ひとりで産んだ人は少ないと思います。どうして10万円払って病院で産ませてもらうんですか? 痛くないように、つらくないように、苦しくないように。でもね、子ども産むときに痛い、つらい、苦しいことが愛情を生むってことが証明されているんです。無痛社会からは愛情が生まれない。 ゴミの焼却に、日本はひと月3万円かけている。税金という形で納めている。一家で、1年で36万円、日本の全世帯で20兆円。みなさん20兆円の無駄は減らしたい? 業界にしてみればいろんな形でこの20兆円のビジネスを生んでいる。ゴミの焼却場を作ったりつぶしたりしていろんなことをしていますよ。ヨーロッパにあるような法律を日本はなぜつくらないか、それは企業がつぶした、市民団体がつぶした。実は企業と市民はグルだったんです。
例えばヨーロッパでは自動車を買うとき、3、4万円のデポジット(一時預かり金)を払います。環境に悪いものを買ったときに最初にお金を払うんです。それをきっちりと処理をしたらお金が返ってくる一時預かりがデポジットです。廃車処理をしたらお金が返ってきます。冷蔵庫やエアコンを買った場合、4、5000円デポジットがとられます。フロン回収は企業がやります。処理するとお金が返ってきます。ルールを守ると得をするから、みんなきちんとルールを守ります。ルールを守らないと損をする。 日本は捨てるときにお金がとられます。リサイクル法が適用されてから不法投棄が増えました。みんな払うのいやですね。それはモラルだけが悪いのではなくて、しくみが間違っているんです。実はヨーロッパでも20年前は日本と同じだったんです。捨てるときにお金を払うしくみだったんですが、ルールを守った人にお金を渡すしくみに変えたんです。そうしたらみんなルールを守った。日本は20年前にヨーロッパで失敗したことを今やっているんです。なぜ日本とヨーロッパは逆なんですか。日本は業界の都合で法律ができている、ヨーロッパでは根本的な問題解決のために法律ができている。 キーワードはグリーンコンシューマ 目先のお金や経済よりも長い目でみた環境が大事ですよ、という意識、価値観をもっている人をグリーンコンシューマといいます。ヨーロッパにはこのグリーンコンシューマが70%いるといわれています。ところが日本は1%。社会の方向が違いますね。ヨーロッパには空き缶がありません。缶ジュースや缶ビールは禁止です。あるのは日本への輸出用です。日本では企業の尻拭いのことをボランティアと言います。違います? ボランティアで市民がで空き缶を拾うのは日本だけです。それが日本の環境教育です。でも企業の尻拭いは社会を良くする? 良くしない? 日本は水道のじゃぐちを開きっぱなしで、下で一生懸命雑巾で拭いている。でもヨーロッパはまずじゃぐちを閉める、原因から解決しないとダメだと考えます。 ビニールはダイオキシンがでる、それならポリエチレンだったらでません。こういう改善もできますよ、ということなんです。答えは1つだけじゃない。やめることだけが解決じゃない、今あることを変えることも解決のひとつです。答えは常に7つある、と言います。それはアメリカの先住民族の人たちもそう言います。そう考えると楽でしょ。 日本は毎日3000万人の食べ物を捨てている あなたは命とお金とどちらが大事? あなたのお金と人の命とどちらが大切? じゃあね、家で何かを食べるとき、古いものと新しいものどちらから先に食べる? 店で牛乳を買うとき、古い方と新しい方どちらを買いますか? お金が人間の行動を逆にしています。 日本では一日に3000万人の食料を捨てています。世界では10億人の人たちが飢え、毎日約5万の子どもたちは餓死しています。日本は3000万人の食べ物を毎日捨てているという現実を知ってください。日本は世界の餓死に責任ある? ない? 輸入して飽食して、毎日3000万人の食料を捨てています。 ヨーロッパでは幼稚園で社会の善悪を教える、小学校で自分の意思表示を教える。私はこの20年間いろいろな国を見ました。一番美しいものがあったのは未開国といわれる国。美しいものが残っていたのは途上国といわれる国。美しいものを破壊しているのは日本とアメリカ。破壊していることに気づいて、美しいものを取り戻そうとしているのがヨーロッパです。これが文明の順番です。美しいものを守っている人たちのことを私たちは野蛮、と教えられる。美しいものを破壊している国のことを途上国、破壊した国のことを先進国、そしてそれに気がついた国は環境先進国。私たちの国は環境を破壊しつつあります。 もうちょっと一緒に考えてみましょう。いつもだったら歩く距離なんだけれど、たまたまタクシー券をもらった。あなたは乗る? 乗らない? なぜ? 使わないともったいない。使わなかったら誰もお金を払いません。あなたが使ったら、そのタクシー券をあげた行政とか企業が払わなくてはならない。普段だったら歩くところを、その人たちにお金を払わせるためにタクシーに乗る。おかしい? おかしくない? お金、と聞いたとたん価値観は逆になるんです。同じ距離を歩くのとタクシーに乗るのでは、何倍エネルギーを使うでしょうか。約1000倍です。車に乗るって、それだけの二酸化炭素を放出するんです。 もうひとつ、今度は歩けない距離なので車に乗ります。バスだったら200円、タクシーだったら600円。どちらに乗りますか? 今度は家族4人です。バス800円、タクシーだったら600円です。今度はどっち? タクシー。またお金。でもね、バスは乗っても乗らなくても走っているんです。タクシーは乗らなかったら走らないんです。 自分の価値観はすでにおかしい。私たち日本人のほとんどは常にお金、経済、目先、ビジネスを優先しているんです。そう教育を受けているんです。ヨーロッパの小学校では、色鉛筆や絵の具はセットものは禁止。バラ売り、バラ買いです。プラスチック製品に入ったものはダメ。鉛筆削りは電動はダメ、指で押さえて削るあの小さな削り器で刃が付け替えられるもの。筆箱もプラスチック製品はダメ。水筒もお弁当箱もプラスチックはダメ、熱いと溶けてダイオキシンが発生しますから。ノートはバージンパルプはダメ、再生紙。消しゴムもダメ、2本線で消す。どうですか、驚いた?
グリーンコンシューマが増えればいいんですね。どうしたらグリーンコンシューマになれるかというと、この3つです。
【ダイオキシン汚染】 ヨーロッパでは10ピコ以上汚染された畑で作物は作れない。日本は8500ピコ ヨーロッパは10ピコ以上汚染された畑では作ってはいけないんです。日本はどうですか。グラムあたり8500ピコです。そこから作物が出荷されていることが問題なんです。 これではいけない、せめて1000ピコ内という基準を作ろうと、日本でも議員立法を作る動きがあったんです。けれど、圧倒的多数の議員から妨害を受けて作れませんでした。妨害するんです、環境問題は。これが現実です。グリーンコンシューマが増えない限り、グリーンな議員も増えないんです。
ダイオキシン汚染 日本人のダイオキシン汚染は年間排出量を面積密度で見てみると世界で最も高い。アメリカにも圧勝です。日本の女性の母乳は世界で最も危険。「母乳に耐容量の26倍 厚生省最終報告」(朝日新聞1991.8.3)。国連基準の26倍というのはベトナム戦争で枯葉剤を浴びた女性の母乳とほぼ同じ。にもかかわらず、(新聞の)2行目ご覧下さい。「1歳児影響見られず」と書かれています。妨害をするんです。情報操作ですね。 例えば水俣問題は40年間情報操作をしてきたんです。「例外がある、メカニズムがわからない、未解明」と・・・。常に業界有利、業界優先ですね。ハンセン病もそうですね。40年も隔離をやめなかった。・・・・・(省略)そんな悲劇があったんです。弱者の立場にたってその人たちを守っていこうとする人たち、それがグリーンコンシューマです。環境だけじゃないです。すべてつながっています。薬害エイズもそうです。厚生省は国民の側を向いている? 業界側を向いている? どう思いますか?
日本は何でもゴミにして燃やそうとする。先ほどの焼却炉の数字を思い出してください。日本には1893の焼却炉があります。なぜこうなってしまったか知りたい? ある産業を守るため。巨大な産業です。造船です。製鉄業、鉄工業。(焼却炉は)今その最大の柱です。先進国ではゴミ焼却場の排気ガスに厳しい規制がしかれていますが日本はその10倍という甘い基準です。あらゆる意味で日本の方向は間違っています。 地球温暖化と食糧危機 さて、話を元に戻しましょう。海面上昇すると平野部はほぼ全滅。平野部にあるのは畑ですね。畑が沈むとどうなる? 結局、地球温暖化とは何問題ですか? 食料問題です。国連の食糧とエネルギーの自給率のデーターをみてみると、世界でもっとも食べ物が危険な国は日本。なぜこうなったのでしょうか。日本は国をあげて畑をつぶし、農業をつぶして、工業立国になりました。
温暖化は二酸化炭素増加のため 1997年の温暖化防止京都会議では各国の利害対立と現状認識の不足で先進国の削減目標は平均約5%(必要量の1/10)です。国連は世界全体で二酸化炭素(CO2)を60〜80%削減しないといけないと警告しました。日本は6%の削減を公約しましたが、排出量はさらに約11%増加しました。また、6、8割減らしようがない国があります。アフリカは? 減らせません。
できることから始めよう だから私はまずできることから始めませんか、と呼びかけます。地球温暖化によくないのは自動車です。私は15年前に自動車を手放しました。そして冷暖房はありません。お風呂はシャワーです。私は気がつけば9割減らしていました。最初の一歩を踏み出してみてください。あなたも1割減らしてみませんか。家族一緒にご飯を食べる、一緒にテレビを見る。1割減らすこと、できる? できない? どう思う?
国連は日光浴は注意と呼びかけています。一日に15分以上は危険。今から10年以上前にこう呼びかけています。知っていた? 知らなかった? 皮膚がんが増えています。クリントン大統領、レーガン大統領、皮膚がんで手術しています。日本でも皮膚がんが増えています。環境省は「紫外線対策マニュアル」を公表しました。欧米より10年以上遅れて始まったばかりです。先進国では20分以上日光にあたると危険だから、直射日光は10分以内に。帽子、長袖、サングラスをして直射日光を防いでいます。 今破壊しているフロンガスは20年前のフロンガスです。20年前と今とでは、エアコン、自動販売機、ずっと増えていますね。これからなんです。ますます大変です。オゾン層はシェルターの役割をしています。20年後、フロンガスでオゾンホール全体の2/3が破壊されるといいます。農作物にも重大な影響が出てきます。プランクトンがやられちゃう。日本の行政は積極的にそれを伝えません。冷蔵庫、エアコン、半導体、そういう業界を守るために法律(規制)は作られない。結局、誰が変わらないと変わらない? 自分ですね。 講演会がきっかけで紫外線対策が小学校で実現 山梨県の小学校の8割で紫外線対策をしています。私は甲府市や教育委員会などに呼ばれて19回連続講演をしたんです。私の講演を聞いてくれた方が動き出し、紫外線を防止するテントを子どもたちのために設置しようということになりました。甲府市内の全部の小学校に広がるまでに2年半。そして山梨県下全部に広がり、1998年に8割まで広がって、2年ほど前に聞いたときには93%まで広がったということでした。 高知市の学校でも、紫外線対策をしています。それも私の講演がきっかけでした。最初は学校の教員60人の研修会で話しをしたんです。話しを聞いてくれた先生が直射日光の危険を知ってPTAにアンケートをとったんです。95%の人がオゾン層の問題を知っていた。そして90%の親御さんから、学校はもっときちんとした対策をとってほしい、という要望が出たんです。そのアンケート結果を教育委員会に持って行って申し入れたら、教育委員会が動いたんです。29の学校にテントがはられ、プールの日よけをしています。運動会のときに直射日光に浴びないような形にテントが張られました。 うれしいことに講演会がきっかけで、まずどんなことをすればいいかを考えてくれました。アンケートをとって、そして教育委員会に持って行きました。動く、ということはこういうことです。紫外線から子どもを守ろうと。人にどう思われるかではなくて、子どもたちに親として何を残すか。ぜひ、勇気をもってもらいたいと思います。 サラリーマン時代に社長にフロンガス全廃を進言 私がいた企業は社員数27万の巨大企業です。1989年モントリオール会議で「2000年、特定フロン全廃」決議で、日本だけサインしなかったんです。私はそのことに心痛めて社長室に行きました。そして地球環境の話をしました。すると、今日のようにみなさんと同じで非常にショックを受けて、「なぜ日本はサインをしなかったんだ?」、と言いました。 「それは業界の反対です」「どこの業界や」「わが社です」「俺はそんなこと知らんぞ」「社長はご存じない、だから私が今日こうやって話しに来ました」「そんな、アホな。責任者誰や」「社長です」「俺はどうしたらいいんや」「やめさせればいいんです。自らが率先して」「フロンガスを止めなかったらどういうことが起きるの。エアコンは?」「大丈夫です」「半導体は?」「大丈夫です」「なぜ大丈夫なの?」「世界はそういうふうに動いています」「止められないって聞いたけど」「それはうそです。私はおそらく社内のどなたよりも知っています。100億円あればわが社はどこよりも早くフロンがズ全廃ができます」 すると、社長は100億円はもったいないと言ったんです。私は「お金を使わなければオゾンはなくなります。フロンはなくなりません。でもお金を使ってもお金はなくなりません」と言いました。社長は「なるほど、お金は天下の回りものやな、オヤジ(創業者)もそう言っていた」と言ったんです。「そやけどな、経営者やからそう簡単に金は出せへん。君も経営者の観点で判断してくれ」と。ここで私は、「しばらく時間をください」と部屋を出て、図書館へ行きました。 私はいろいろな本を調べました。そして辞書で、経営者は真理の探究という意味があることを知りました。経営の経の字はお経のけいの字で真理という意味。それに営む。一生かけて営むこと。経営とは真理を一生かけて求める、ということ。私はそれを知ったときに感銘を受け、再び社長室へ行きました。「私は一生かけて真理を追究してまいります」と伝えました。「一生かけて間に合うんか?」「間に合いません」「ほな、あかんやないか」「100億円かければ止められます。その判断を一生かけて取り組みます。私は社長のご指示通り、経営という観点で考えました」 しばらく無言でした。その後、「わかった。やろう。100億円出そう、おまえに任せる」と。 私は社内でフロン全廃のコンセンサスをとるのに半年かかりました。みんなものすごく反対しました。そして「M社特定フロンを全廃、5年前倒し1995年までに」と新聞(1989年7月20日朝日新聞)に載りました。忘れられない日付けです。 その後、ものすごいバッシングが来ました。抜け駆けしたと。せっかく談合して政府を押さえたにもかかわらず、一番大きな企業が抜け駆けをしたということで、業界から抗議が来ました。しかし、わが社は方針を変えませんでした。すると翌90年には他社のほとんどが追随してきました。そして91年に日本は世界から12年遅れでモントリオール協定にサインをしました。そのいきさつはアメリカの『地球環境政治』※という本にも記載されています。 (※「日本はフロンの段階的廃止よりもリサイクルを主張。その理由はフロンを大量に使用する半導体産業が廃止に反対していたからである。日本最大手の電子企業M社がフロンを全廃すると述べて初めて日本は段階的廃止に合意した」) 私は企業と闘う活動家ではありません、政治と闘う活動家ではありません。今でも会社には私の仲間がたくさんいます。私が会社を辞めてから10年経ってから日本で初めてノンフロン冷蔵庫が出ました。完全なノンフロンです。 ※日本でも2001年6月にフロン回収法が成立したが、メーカーや市民の回収義務、放出禁止は盛り込まれていない(カーエアコン回収率10%).。他の先進国ではフロンの回収義務、フロン放出に高額の罰金などの規制がある
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