セヴァン・カリスさん会見(2002.11.11)カナダ大使館4階

  1992年12才の時にリオの地球サミットでスピーチをしたことで知られる少女、セヴァン・カリスさん。あれから10年、日本の大学生らの招きで、YES=Youth Earth speakers Tour2002(環境について考える旅)に参加するために来日。15都道府県をめぐり、若い世代とともに講演、交流を重ねる。チャーミングな若きオピニオンリーダーが、このツアーに参加するにあたって抱負とメッセージを語った。

セヴァン・カリス・スズキさん

            

1979年生まれ。カナダ在住。両親と訪れたアマゾンへの旅がきっかけで、9歳のときに環境学習グループを立ち上げた。1992年12才の時にリオの地球サミットでスピーチをしたことで知られる日系4世。2002年イエール大学卒業。講演やテレビのレポーターなどを通じて環境をテーマにさまざまなメッセージを発信している。2002年のヨハネスブルクの環境サミットでも、国連の諮問委員会の最年少メンバーとして参加。NGOスカイフィッシュプロジェクトを立ち上げ、「ROR(責任の認識)」キャンペーンを展開。著書に『あなたが世界を変える日』(学陽書房/ナマケモノ倶楽部編・訳 1000円)がある。


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(再録)

  つい最近ヨハネスブルグでの会議に出席し、そこで確認したことがあります。これ以上私たちは政治家たちに任せることはできない、ということです。彼らは短い時間で仕事をする、そしていつも、次の選挙のことを心配している。環境が実際に引き起こす問題というのは、長い長い期間・・・・、私たちが生きていく長い時間にわたって影響を与えるものです。だから、自分たちが自分たちの行動に責任をとらなくてはならない。私たちの子どもたちの世代にこの地球をどういう状態で残すのか。責任の認識=ROR(=recognition of responsibility)、これを私はこの10年間の活動の成果として打ち出したいと思います。

  日本のNGOナマケモノ倶楽部、YES(Youth Earth speakers Tour2002)実行委員会の人たちと共にこのツアーで「責任の認識=ROR」について発表して広げていきたいと思います。私たちのNGOはスカイフィッシュプロジェクトといいます。大好きな湖からとった名前です。このROR(責任の認識)という文章ですが、これは今年6月に私の通っていたイエール大学の仲間たちと一緒につくったものです。ひとりひとりが自分の責任を自覚し、どういう行動を起こしていくか、ということを明らかにしようとしたもので、3つの部分から成り立っています。

  第1に認識すること。確かに我々の行動というものがある結果を引き起こす、ということを認めようじゃないか。責任を認識しようじゃないか、ということです。例えば自動車を運転する、運転することにはそれなりの結果を伴います。ゴミを出す、それはどこかに消えてなくなるわけではないんです。行動が結果を引き起こすことを認識しようということです。

  行動には必ず結果がつきまとうんだ、という認識にもとづいて、それでは責任のとれる生き方をどうしたらできるかを考える。私たちのとる行動によって少しでもこの世の中を良くしていこう、というのが第2番目。

  第3番目が、こういう行動をやっていく、ということをお互いに約束しちゃおうじゃないか、コミットメントしよう。そこでひとりひとりがリーダーになる。ひとりひとりがリーダーシップをとって、模範を示していこうじゃないかと。

  私は、この10年間(リオ〜ヨハネスブルクの環境サミット)、世界中の政治家たちが環境問題について話すのを聞いてきました。そこからROR(責任の認識)が生まれました。ただ受身で聞いているのではなく、自分たちひとりひとりの問題として引き受けて、行動を起こす、そのこと抜きに政治家と共に世界中の環境の大きな問題を語ってもしかたがない、と思うんです。

  世界中の環境問題の根っこというのはどこにあるのだろうか。そこに立ち戻らなければいけない。問題のルーツ。実は私たち自身が、ひとりひとりがつながりを絶たれている、というところにあるのではないか。環境問題というとゴミの問題とか、どこか遠い地球の川の問題などと思いがちだけど、そうではないんです。

  実は私たちひとりひとりを取り囲んでいるすべてのものが環境です。環境というのは私たちが日々刻々呼吸している空気、私たちの体内の水・・・・、という身近なもの、そのつながりを私たちは絶たれてしまっている。そこに問題の根本がある、ということを思い出さなければならない。

  カナダの人口の80パーセントは都市に住んでいます。それを考えたらやはり私たちがつながりを絶たれているということの意味がわかると思います。大都会に暮らしていると、あたかも自然界とは無関係に生きていられるかのような幻想を持ってしまうわけです。私たちは水だとか土だとか空気だとかに無縁に人工的な空間の中で生きている、と思ってしまうわけです。

  ですから簡単に意味のない消費に走ったり、魚をとりすぎたり、そして平気で川を汚したり・・・、そういうことができてしまう。私たちは自然というものは、決してモノではなく、生きているんだということを忘れてしまうわけです。

  このツアーでさまざまなところを訪れながら、次のようなことを考えてみたいと思います。

 ひとつ私が訴えたいことは、みんな一緒に外へ出ようよ、ということ。そして自然とのつながりのなかへ戻っていこう。もう一回自然について学びなおそうよ、ということです。もしも都会のアパートに暮らしているのだったら、ベランダの鉢植えでもいいから、花を見ようよ。そういったことを訴えていきたいと思います。

  2番目に、私がみなさんと一緒に考えていきたいのが、私たちが食べる食べ物とはいったいどこから来るんだろう、ということ。私たちの食べ物はどこからか来ているわけですね。食べるという行為は自然界と私たちをつなぐ接点。このような認識をもって、私たちがもう一度自然とのつながりを取り戻すきっかけにこのツアーがなればいいな、と思っています。

  特に私は日本の若い人たちと共にこのツアーを行うことを非常に重要視しています。若い人たちはより長くこの世界にいて、同時にこの世代は今までの人類の歴史のなかで最も厳しく激しい環境破壊の問題に直面せざるをえない。非常に近い過去につながりを絶たれてしまっている。

  つい最近まで・・・・私たちの祖先、おじいさん、おばあさんというのは大きなつながりを持っていました。私たちの世代は、世代から世代へのつながりという点でも、見失っているかもしれない。もう1回つながりなおすことで、はじめて未来が見えてくる。私たちの子どもの世代、そしてさらにその子どもの世代と。

  このツアーのテーマに、世代の連続性、つながりというものを私は強調したいと思います。そうすれば私たちが責任、というときの意味がはっきりすると思います。私たちがいかに自分たちの子どもやその先の未来の世代によい地球を、きれいな地球を残すことができるのか。

  今、非常に興奮しています。とってもうれしいです。おそらくこの旅が終わる頃には、日本中を旅していろいろなことを学んでいるだろうと思います。すでに昨日日本に着いてから一日のうちに消化しきれないほどのさまざまなことを学んでいます。これからどれだけのことが学べるのか。おそらくこの旅が終わる頃には、多くの問題について、もっとしっかりしたことがいえるようになっていると思います。

  私はカナダ人日系4世ですが、こうして今日ここに私が来ているのはそれだけのつながりではないと思います。同じ海、同じ太陽によって私の住んでいるところと日本はつながっています。これは非常に重要なつながりだと思っています。

 同時にここでひとつ触れておきたいのは、私が日本に来ているこの同じときに、カナダの先住民族の代表たちがこの日本に来ています。日本の企業が関係している・・・、引き起こしている環境破壊について訴えに来ている。これも重要なつながりだと私は思っています。

  日本は世界の環境運動、という点において必ずや世界のリーダーシップを発揮してくれると感じています。そのことは私を呼んでくれた実行委員会の人たちがいかに有能な組織者たちであるかはみなさんもご存知の通りです。そして日本が必ずやリーダーシップをとってくれると私が考えるのは、日本には伝統のなかに自然を崇敬して自然と調和して暮らしていくという文化が脈々と流れているからです。私の祖父はその自然崇拝を体現するような人でした。

  同時に、日本は近年さまざまな大きな問題にぶつかったとき、それを乗り越えて問題を解決していく能力を世界に証明している。日本は短期間の間に世界の科学技術の先端を示し、世界の模範になるような分野を築き上げてきた。そのことを見れば、問題に直面したときにそれに対してどう解決していくかという能力を働かせ、日本がいい例を示してくれるだろうと思います。私はこのツアーで、多くを学ぶことができると、非常にうれしく思います。