日本のアピール・ポイントは何

 日本が世界に誇れることっていったい何だろう。治安の良さ? 勤勉さ? 経済力?技術力? どれも、近年、ガラガラと音を立てて崩れ始めている。

 経済大国までかけあがった日本は、新世紀を迎えた今、目標を失い、政府も官僚も企業も教育も混乱を起こし、国民の誇りも低下し、自信を失いかけているように見える。

 総理府が行なった「社会に関する世論調査」(1998年12月)では、「日本の国や国民について、誇りに思うことはどんなことですか」の問いに、治安の良さ、長い歴史と伝統、美しい自然、すぐれた文化や芸術、国民の勤勉さ・才能、高い教育水準、自由で平和な社会・・・・・の順に回答があった。

  宮内庁式部官長は日本が世界に誇れることとして、「50数年間平和を保ち続けていること」(2001年)をあげた。

 解釈を巡ってはさまざまな議論が起きているが、日本には日本国憲法第9条がある。戦争を放棄し、軍備を保持しないという、徹底的な平和主義を規定した法律だ。

 核兵器を「つくらず、持たず、持ち込ませず」という「非核三原則」は日本の外交・防衛の基本政策。昭和49年(1974年)に佐藤栄作首相がノーベル平和賞を受賞したのも、政府が堅持した非核三原則が国際的に高く評価されたからだった。

 昭和22年(1947年)に発行された文部省の『あたらしい憲法のはなし』には、「よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないことを決めたのです。(中略)これを戦争の放棄というのです」と記されている。

 詩人の山尾三省さんは亡くなる前、「日本国憲法の第9条を世界の憲法第9条にして、戦争をなくしてほしい」と遺言した。

 被爆国である日本が非核三原則を堅持する意義は大きい。胸を張って堂々と世界に誇れる国であり続けることを願いたいが。

『「日本国」のなぞ』新講社
(2002.2.5 初版)所収