ADSLを導入したけれど「思ったより速くない」、「友人にMTUを変えれば速くなると言われた」、「ADSLを速くする市販ソフトはどうなのよ」という、そんな方のためのページです。MTUとは何か。TCP/IPスタックを調整することで速くなる人ならない人の例を紹介しています。
■TCP/IPはデータ通信の規約
皆さんはLANカードやLANボードをインストールしたときに、「ネットワークの設定」で「TCP/IP」という文字を目にしたはずです。「TCP/IP(Transmission
Control Protocol/Internet Protocol)」はコンピュータがデータ通信する際の“取り決め”なのです。
例えば書類を友達にFAXすることにしましょう。ただし大切な書類なので送信しただけで終わりではなく、きちんと届いたかどうかを確認しながFAXすることにします。
まず手順として...電話をかけたら自分の名前を告げて相手を確認します。そしてこれから書類をFAXすることを伝えます。送信する書類は沢山あるので何ページかに分けて送ること、途中でちゃんと届いたか確認すること、受信したFAXがちゃんと読み取れるかどうかを教えてもらうこと、なども打ち合わせします。これを毎回打ち合わせするのは大変ですから、予め“取り決め”としたものが通信プロトコルです。そしてそのインターネットの標準プロトコルがTCP/IPなのです。
■MTU(Max Transfer Unit)
TCP/IPはパケットと呼ばれる特定の長さを持つデータの塊(かたまり)で通信を行います。MTUはそのパケットのサイズの上限を決めるための値です。これを先程の話に例えると、送信する書類の用紙サイズがパケットのサイズとなります。書類はB5サイズよりもA4サイズの方がより多くの情報を一度に送れます。つまりMTUを大きくすることで一度に多くのデータを送れ、効率の良い通信ができるようになります。
しかしここで問題になるのが送信に失敗したときです。いざ再送信するとなると、 一枚の用紙を送信する時間は、B5よりもA4サイズの方が多くかかってしまいます。もし何回も送信に失敗するとなると、この差はばかになりません。ですから用紙サイズは大きければ良いというものではなく、その時の状況によって小さくした方が良い場合もあるこが分かります。
■MSS(Max Segment Size)
MTUほど有名ではありませんが、本来はこちらの値が基本となります。先ほど説明したパケットから制御情報(ヘッダと呼んでいます。)を除いた部分、つまり純粋なデータ部がMSSです。通常はMTUから40バイトを引いた値がMSSとなります。
■TCP Receive Window (RWIN)
アール・ウィンと呼んでいます。RWINは相手への応答なしに無条件に受け取ることができるデータ量を表します。それではまた先ほどのFAXの話を例えにします。
書類を送信する途中で区切りを付けて正常に送れたかを確認することにしました。この「区切り」(何ページ単位に確認するか)に相当するのがRWINです。
1ページ毎に「届いたか?、読めるか?」と確認していたのではたまりません。それならいっそのこと10ページ単位にすれば効率が良さそうです。しかしこれまた届かなかったり、読めなかったりした場合を考えると問題が出て来ます。ですからこの調整の難しさもお分かりいただけると思います。しかしながら最も効果が現われる項目でもあります。
■いまなぜMTUなの?
このMTU、今でこそほとんどのADSL関連サイトで取上げられていますが、実はこれ以前にも一部のマニアの間では知られていました。ではなぜADSLで有名になったのでしょうか。
Windows 95/98/98SEの場合、TCP/IPを使う通信環境の前提が低速通信でした。ですからOSの初期設定も低速通信用に合わせた汎用的な値になっているのです。ところがADSLでは少なくとも400Kbps以上の速度な訳ですし、そのネットワーク環境もまちまちです。ですから初期設定のままでは効率的な通信が望めない訳です。
アナログモデムやISDNの場合には、1秒間に64Kビットの情報量を伝送していましたが、現在のADSLは1秒間に6,000Kビットも伝送できる場合もあります。その速度が速くなればなるほど、非効率な通信の影響が顕著に現れます。これまた例え話を持ち出すと...車でドライブすることにしましょう。信号や渋滞の多い一般道なら少しくらい休憩をとっても気にならないですよね。でもスイスイ走れる高速道ではどうでしょうか。何回も休憩を取るくらいなら、もっと先に進めるよ!そんな感じでしょう。
■何もしないのに速い人がいる?
これは事実です。先ほど説明したOSの違い以外にも、例えばフレッツADSLに加入していて、フレッツ接続ツールを使っている方はツール自体がMTUを最適な値にしています。また、インターネットやダウンロードを高速化するソフトには、インストールの際にMTUやRWINを設定し直すものもあります。ただしこれらのソフトは誰にでも合うような汎用的な値が用いられています。したがって自分の環境に合う細かな調整を行うことで更に速くなる可能性もあるのです。
■OSの違いによる特徴
それではOSごとに初期設定の特徴を挙げてみます。ここではWindows限定になってしてしまいますが、確かMacな場合はかなり高速型に設定されていたはずです。
| Win 95/98/98SE |
RWINの値が小さすぎます。ブロードバンドには不向き。 |
| Win Me/2000 |
1.5MbpsクラスのADSLなら許容範囲です。 |
| Win XP |
8.0MbpsクラスのADSLも考慮されているようです。 |
■最適な設定値
ネットワーク環境はいつも同じではありません。プロバイダや相手サーバに高負荷がかかっているとか、ネットワーク上のトラフィックが多い。また扱うファイルが小さい/大きいなども影響します。ですから最適な値は時間ととも変化します。また何よりも影響するのがパソコンの処理能力です。旧型のパソコンに高速な設定を行ってしまうのは逆効果の可能性もあります。
その環境は人それぞれです。同じように見えても微妙に異なります。あまり神経質になって調整するのも考えものだと思います。
■調整の効果
フレッツADSLでの代表的な4つのケースについて、そのパフォーマンスに大きな影響を与える「RWIN」と
「MTU」の値を調整してみました。
この実験はフレッツADSLの1.5Mbpsサービスで行ったものです。現在の8.0/12.0Mbpsサービスではさらに顕著な影響が現れると思います。
■最も効果のあった例(Windows 98/98SE + フレッツ接続ツール)

[調整前]数年前に購入したパソコンにレンタルモデムを直接接続したと想定される環境です。「MTU」は接続ツールで最適値に変更されますが、Windows
98/98SEの「RWIN」初期値が小さいために実効速度は920Kbpsに抑えられています。(調整前RWIN=8484)
[調整後]「RWIN」の値をWindows ME/2000と同じ「MSS」の12倍に調整しました。見事に実効速度が向上し、1250Kbpsになりました。(調整後RWIN=16968)
■最も効果のあった例(Windows 98/98SE + 市販ルータ)

[調整前]Windows 98/98SEの「RWIN」規定値が小さいうえに、使用しているルータで「MTU」を[1362]に制限されているケースです。「RWIN」の値は「MTU=1454」として計算されてしまっているため、1414X6=[8484]となっていました。(調整前MTU=1362,RWIN=8484)
[調整後]「MTU」を[1362]と明示し、「RWIN」の値を「MSS(1322)」の12倍に調整しました。その結果、実効速度は890Kbpsから1220Kbpsに向上しました。(調整後MTU=1362,RWIN=15864)
■あまり効果のない例(Windows ME + フレッツ接続ツール)

[調整前]最近購入したパソコンにレンタルモデムを直接接続したと想定される環境です。「最も調整効果のあった例」のハードウェア環境のまま、OSのみWindows
MEに変えました。既にこの状態でも1280Kbpsの実効速度が得られています。(調整前MTU=1454,RWIN=16968)
[調整後]最速を目指して調整した結果が1.3Mbpsです。調整前との差はほとんどありません。オーバヘッドを考慮すれば、この速度はフレッツADSLの限界であると思われます。(調整後MTU=1454,RWIN=18382,その他オプション項目の変更)
■あまり調整効果のない例(Windows ME + 市販ルータ)

[調整前]「あまり調整効果のない例」と同様に、既に1230Kbpsの実効速度を得ています。これはWindows
MEの「RWIN」初期値がほぼ適正であるためです。ただし、ルータによる「MTU」の制限によって、OSがとる「RWIN」の値と“ずれ”が生じているようです。(調整前MTU=1362,RWIN=16968)
[調整後]「MTU」を[1362]と明示し、「RWIN」の値を「MSS(1322)」の12倍に調整しました。その結果、実効速度は1230Kbps
→ 1270Kbpsへと若干改善されました。(調整後MTU=1362,RWIN=15864)
使用機材:AMD
K6-2 300MHz / CAS2040、測定方法:ブロードバンドスピードテストで各10回測定した値を平均したもの。
上記のようにWindows ME/2000では、OS未調整でもほぼフル性能が得られます。(前提は国内サーバ利用が中心で1.5MbpsクラスのADSLサービスです。)逆にWindows
95/98/98SEでは、調整を施さなければ性能の7〜8割程度に抑えられていることになります。
■設定を変更するには
このMTUやRWINの設定は、レジストリと呼ばれているOSの設定情報ファイルを編集することでなされます。でも不慣れな方が不用意に変更されると、Windows自体が不調になったり、最悪の場合は起動すら出来なくなりますのでお薦めできません。また、設定値の調整不足が原因で、何もしない場合よりも速度が不安定になったり、速度低下を招きますので注意したいところです。
そこで当サイトでは私が使っているDr.TCPというフリーソフトを紹介します。ツールで値を入力した後、再起動するだけでOKというものです。また、元に戻すのも設定値を空欄にして再起動するだけです。ただしこのツールを使う場合でもレジストリのバックアップを取ることをお薦めします。

設定説明
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画面の設定値は実際の設定例ではありません。
また、最近使わせていただいているのがEditMTUです。日本語ソフトで分かりやすく、初心者からマニアまで満足できる機能が満載です。

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