それではまた。あら…また。 プロローグ 狂気のはじまり
何気ない日常、何気ない学生生活――
受験を控えているユカリやチサトとは次第に疎遠になり、バイトも部活動もせず、たまに友人らに付き合いクラブで遊ぶ。そうして岸井ミカは毎日をただ過ごしていた。
ある日、自分を呼ぶ声に振り向いたことからミカの日常が歪み始める。

ミカと顔がそっくりだった先輩のキョウコが事故死したという。その上キョウコはミカのあこがれていたスミオの恋人だったらしい。クラスメイトのウワサ話しにミカは動揺した。
アラマタとの奇妙な再会にはじまったこのゲームは、すでにこの時点で最も重要な出会いを迎えている。何気ない会話のひとつひとつがすべての物語に通じている。大事に見た方がよいだろう。

クラスメイトのウワサ通りに夕方のニュースでキョウコの事故が流れた。あまりにも娘のミカそっくりの顔に声をあげて驚く父親にミカは「大丈夫だよパパ」と答える。このときのニュース画面には注目しておこう。
 
崋山響子 最後の1日 夢題 スミオの死
リョウと響子。惹かれ合う姉弟に嫉妬したスミオは、結局は姉響子と別れてしまうが、自分たちがうまく行かない原因は弟のリョウにあると告げ、「君に執着する」と奇妙な言葉を残して去っていく。
その夜リョウはヤヨイと出会うが、ヤヨイはスミオの隣にいた。ふたりは「リョウのために準備した」とリョウに紙袋を手渡す。
その袋に入っていたのは…。

驚愕のあと、リョウは何事もなかったようにクラブを出ようとしてスミオが死んだことを知る。ルミは「兄さんは自分はそのうち死ぬと言っていた」と語る。そして部屋に戻ってきたリョウの元へかかってくる響子の電話――私は、もう…だめ
リョウの心に深い傷を残したスミオと、その傷口をいたわるかのような優しい手つきでいながら、えぐってくるヤヨイ。
ヤヨイはスミオの死後もリョウにつきまとう。それはどうやら死んでいったスミオのためらしい。

姉の残した不可解な言葉「スミオは怖い人」。
だがスミオは既に焼身自殺を遂げたキミカと共に死んでいる。電話をかけてきたはずの響子もまたバイクの転倒事故によって死んでいたはずだ。
リョウの心の闇が少しずつ現実を歪めていく。現実か夢か。この章を時間の概念に当てはめて考えるのは難しい。
 
僕がミカの心を救ってあげるよ 奏遇 謎の白髪の少年
生物教師の広瀬があやしい。クラスメイトからそんなうわさを聞いたミカは、さっそくユカリを誘い出し生物室へと向かう。その日は結局なにも見つからず、部活をサボって帰ろうとしたところを今度はラクロス部員にみつかって強制的に部室へ連れられてしまう。
ふと気がつくと部室には誰もいない。閉じ込められ困惑したミカの前に不思議な少年が現れた。
設定によると、彼はミトラというらしい。ゲーム中、彼については断片的な情報しか得られない。ミトラは契約の神だという。ヤヨイとチサトとは面識があるようだ。
ミトラはミカに人間の本質を見せてあげる、見たことによってミカが傷ついても自分が助けてあげる、と言う。世の中には目に見えない流れがあり、ひとは逆らえないとも。
ミカは一時は困惑するのだが、その後の日常で少年のことをすっかり忘れてしまう。
あるいはこの章こそが、ムーンライトシンドロームの本当の序章とも思える。
 
その時の匂い、どっかで嗅いだような… 変嫉 クロスロード 出会えないふたり
休日、ミカはアリサとルミとショッピングの約束をしていたがつい寝過ごしてしまう。アリサの電話で目がさめたミカは急いで待ち合わせの場所へと向かうが、途中の通りで変質者につきまとわれる。
待ち合わせ場所にいたアリサは、有名人を追いかけてミカから離れていってしまう。ひとりになったミカはルミを探すが、ルミは機嫌が悪く帰ってしまった。
途方にくれていたミカの前に現れたヤヨイ。ミカは「アリサに頼まれた」というヤヨイについていくことに。ヤヨイはチサトの妹だというのだが、姉のことをよく言わない。ミカはそのことに怒りを感じる。

そのころリョウは、狂気にとり込まれていくミカを救うため、彼女のあとを追っていた。
前作の隠しシナリオ「Prank」でのシーン。「すべてを許せるんだ」と行って立ち去った男=リョウは、どうやらミカの夢の中の風景だった。

だが一方、ミカにとっては夢の中の人物であるリョウはちゃんと存在していて、しかもミカを探していた。なぜミカなのか?守れなかった姉の身代わりか?
リョウは「ミカを救いたかったらついてきて」というヤヨイの言葉に不信感を抱きつつも彼女のあとに続く。
しかし扉の向こうに待っていたのはミトラ、そしてヤヨイ。響子を失ったあのときのシーンが重なり、リョウは怒りに震える。

その頃ミカは、変質者に襲われて危ういところをチサトとユカリに救われる。友情を、ひとの温かみを信じるミカ。
ミトラが次に用意するのはどんな絶望なのだろう。
 
お願い、私を置いていかないで 片倫 自分の中の闇
教師を殴って停学を食らったというクラスメイトと雑談している途中、ミカは廊下に少年のすがたをみかけてあとを追う。しかし校舎の配置が変わっていてなかなか思うところへ行けない。ようやく少年に追いつくかと思ったら、そこは森の中。クラスメイトやユカリ、チサトが自分を置いてどこかへ行ってしまった。
気がつくと手にしているのはナイフ、そして足元には血まみれで死んでいるみんな――
ミトラによってミカは人間の内面の醜さを知らされる。自分が一体どんなことを望んでいるのか――ミトラが見せたシーンは、ミカが友人たちを殺してしまうものだった。
ウソだ、これは私じゃない!叫んだところで我に返るミカ。
覚醒したあとも言いようのない不安にかられて、呆然としながら帰り道を歩いていく。

傍らをすぎていく救急車は、次の章への幕開けだった。
 
私達に与えられたのは隙間の時間 浮誘 連続自殺の謎
ミカの住むマンションの近くに、飛び降り自殺が多発している団地がある。ウワサを聞いたミカはユカリ、チサト、アリサとともに夕暮れの団地へと向かった。
先についたミカはチサトたちを待ちきれずに団地の中へ入ろうとして子供達に取り囲まれてしまう。
アリサは泣いているナナと出会い、リルから彼女を助けると約束してミカを探しに行く。
チサト、ユカリは団地の前でヤヨイと鉢合わせになる。解り合うことができないチサトとヤヨイ。ユカリはいがみ合ったふたりのオーラに弾かれて、屋上でたたずむナナのもとへと飛ばされてしまう。
そしてミカはリルと対峙していた。
子供にもなれない、大人でもない。中途半端で不安定な世代の子供達が次々に屋上から飛び降りていく。
その原因はあるひとりの少女にあるらしい。しかし少女リルを見つけて話しをしてみると、彼女は「自分はただのシンボルにすぎない」と言うのだ。ミカは自殺を止めて欲しいと彼女にうったえる。リルは少年少女の自殺をとめるために、彼女にしかできないある方法を行うことを決心する。

リルはおそらくミトラと契約を交わしたのだろう。契約の見返りとして彼女は自分の命をミトラに捧げるため、チサトの説得もむなしく屋上から飛び降りてしまう。
どうやらミトラと何らかの契約をするには代償として自分の命を捧げなければならないらしい。そう考えてみると、リルだけでなくスミオもまたミトラと契約していたと思われる。
 
妙にリアルな夢だったな… 電破 デジャヴ
ミカはユカリをクラブのイベントに誘う。しぶしぶながらついてきたユカリだが、どうやらクラブが気に入ったらしい。途中ミカは踊りつかれてつい居眠りをしてしまうが、満足したふたりはそのあと家路についた。
翌日のミカは耳鳴りが止まず、ついには幻聴が聞こえ出した。それは相手の心の中の呟きだった。
目が醒めるとそこはクラブだった。どうやら夢をみていたらしい。
「蛇口をひねったら指令が聞こえたの」
この章の一部の会話は意味不明だ。どうもミカの夢の中のようなのだ。夢を見ている自分の夢をみる、といったところだろうか。
どこからどこまでが夢なのかは、最後まで見なければわからないだろう。
 
彼は、神様よ… 開扉 存在の認識
アリサと待ち合わせたミカ。乗りこんだ電車は事故で遅れているはずだったが、なぜか発車する。これからの行く先をたずねるミカに、アリサは「ミカが誘ったんだからミカが決めて」という。ところがミカはアリサに電話で誘われたのだった。話し合ううちに眠くなったアリサは勝手に寝てしまう。
ミカの目の前に再び少年が現れた。ミカの好奇心を巧みに刺激した彼は、ミカに電車の中にいる人々の心の中を聞くように仕向けるのだった。

リョウは少年によってミカの内面世界を見せられた。彼は響子とそっくりなミカに惹かれてはじめていた。そしてミカを少年の手から救うことを決心し、連れていかれたミカを追いかける。
おそらくは、ミカの現実がリョウという存在を個人として認識した瞬間だろう。ミカは何度か夢の中でリョウと出会っているにも関わらず未だにリョウを気付けないでいた。
リョウの心の中を聞こうとしたミカだが、なぜかリョウからは何も聞こえては来なかった。
訝しがるミカにミトラがささやく。人間なんて所詮こんなものだ、と。汚くて卑しくて。暖かくも柔らかくもない。

次第に説得されていくミカをリョウは現実に引き留めようとするが、ミカ自身がそれを拒否する。向こうの世界へ連れ去られたミカを助けるために、リョウは"自分のことなど何とも思っていない女"のために自分を捨ててふたりを追いかける。リョウにとってそれは劇的な変化であろう。
 
絶対にこの先に何かあるよ!私にはわかるの 慟悪 ルナティック
ミカが消えた。
アリサはユカリとともにミカを探す。時を同じくしてミカのクラスメイトが校舎内で不可解な事故に巻き込まれはじめる。夜の校舎で行方不明のミカを見たというウワサに、ミカと事故死したクラスメイトの関わりが心配になってきたユカリは、ウワサの出所である天文部へと向かう。ミカは学校のどこかにいるのだろうか。
クラスメイトが深夜になっても戻らない。ミホの連絡で、ユカリとアリサ、チサトはついに校舎に侵入する。
近代的な校舎に生まれ変わった雛代高校。しかし実は各所に設置された隠しカメラによって生徒は何者かに監視されていた。
いなくなったミカの行方を探すうちに、校舎の秘密を知ってしまったユカリとチサトは、そこで縫い合わせられた死体を見つけてしまい、犯人に追い詰められる。危機に感応したチサトのパワーがその場を救ったが、ミカの行方は結局わからないままだった。

どうやら校長もまたミトラと契約したようす。しかし広瀬の秘密を知ったために死んでしまったらしいミホがあまりにも可哀相だ。
 
開放してあげる エピローグ 夜明け
ユカリ、チサトそしてアリサは、ミカの気配を感じてもう一度夜の校舎に潜入する。危険を承知で3人はミカを助けに向かうのだった。

リョウは電車からミカを追って入りこんだ世界から現実へと戻った。やはり校舎の中にミカの存在を感じたリョウはルミを追い返し、ひとり校舎へと歩いていく。
はじめにアリサが、そしてユカリ、チサトとミトラのパワーの前に倒れてしまう。だが、ルミとヤヨイの静止を振り切り潜入したリョウのため、チサトが最後の力をふりしぼって彼を導いた。おそらくはチサト・ヤヨイ・ミトラの3人の争いにおいてチサトはそのような役割なのだろう。
ミトラはリョウに敗れ、リョウはミカを迎えに行く。
ふたりは朝焼けの中で出会うが、はたして本当にこれがハッピーエンドなのかは謎だ。

前作ではただの霊感少女だったチサトが、今回はなぜかサイキッカーもどきの霊力を発揮する。しかも妹がいて、敵対する存在までもいる。物語中にはその複線がいっさいなくて最後までなぞのままだ。聞くところによると3人についてはそれ以上を用意していないのだとか。
多々ある謎のなかでイチバン私が気にかかることはといえば、彼らの服装だ。
制服は夏服だ。だから季節は夏。ルミやキミカはノースリーブだし、チサトも半そでのピタT。だがその横で、なぜかブーツに長そでなミカやアリサが存在する。ミカとアリサとルミのショッピングシーンでルミが異様なくらい寒そうだと思ったのは私だけだろうか。それとも雛代は夏でもブーツが可能だとか、制服ではみんなと同じ夏服なのに実はミカは重度の冷え性だったとか、逆にルミが暑がりだったとか…。ゲームストーリーよりもなぜかその不整合性が気になるところだ。もっともこんな初歩的なことで躓くわけがないだろう。よってこれをすべてルナティック=狂気のなせるわざと片してしまっていいのなら、最終的にすべてはリョウの妄想の中の出来事で正解なのかもしれない。紙袋を受け取ったあとは自分の部屋でうつらないテレビを見つめるだけのリョウへとつながる。ミカ、ユカリ、チサト、アリサに起こったすべてが彼の妄想。ミカはリョウの夢の中で夢をみている自分の夢をみて目がさめる。アリサもみていた夢がようやく完結したんだと喜び、チサトやユカリの死もただのリョウの夢――なんて、それは私の願望もかなり含まれているエンディングなのかも。
ほとんど全員が死んでしまうなんて、どこかのロボットアニメと似てるんじゃないですかぁ〜というのが素直な感想でした。賛否両論があるゲームというのがやっと解った気がしますねぇ…。

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