薬 疹 と 蕁 麻 疹

突然、皮膚に発疹が出来てびっくりする事がある。蕁麻疹(じんましん)、かぶれ(接触皮膚炎)や食中毒、ウイルスのこともあるが、薬の副作用によって起きることがあり、稀なケースではあるが、重症の場合は生命に関わることもあるから怖い。初めて飲んだ薬で薬疹を起こすことはまず無いが、一度薬疹を起こした薬は絶対に二度と飲んではならない。薬疹を起こした薬を忘れて再び飲めば、身体はその薬を覚えているから、薬疹の症状は強く、激しくなって、場合によっては命取りにもなるからだ。薬が氾濫してすぐに薬に頼るきらいがあるが、薬は素晴らしい効能もある反面、副作用もあることを充分認識して慎重にありたい。万一、発疹などがでた場合は放置せず、すぐに医療機関を受診し薬疹なのか蕁麻疹なのかの正しい鑑別をして貰い、早期に治療を開始する事が後遺症を軽くする事につながる。

薬疹とは
  • 薬のアレルギー反応で皮膚に発疹が出来る。 薬疹を事前に予想することは不可能に近い。
  • 多くの薬剤で薬疹が起きるが、解熱剤、抗生物質、睡眠薬、下剤、高血圧、胃潰瘍治療(ガスター等)の薬などで多い。市販薬のバファリンA錠(アセチルサリチル酸)などでも人によっては薬疹が起きるから、“市販薬だから大丈夫”は禁物。
  • 薬剤投与から一定期間になってから出るものがアレルギー性で、非アレルギー性は蓄積することによって発生する。
  • 初めて飲んだ薬や注射で薬疹を起こすことはなく、二度目以降の摂取時に発症する。これは免疫細胞がアレルギーを起こすことを記憶する事があり(これを感作という)、感作には通常2週間が必要。
  • 服用後数日〜10日前後で発症する事が多い。発疹は通常一気に出現する。稀に数週間から数ヶ月前に服用した結果薬疹が起きる事もありどの薬によるものかは鑑別が難しい。
  • 一度薬疹が起きると身体が覚えてしまうので、同じ薬剤を服用すると数分〜3日で薬疹が出現する。服用後短時間でアレルギーが起きる場合は赤いみみず腫れでかゆみを伴うじんましんや痙攣などのショック反応が起きることがあるので注意を要する。 同じ薬剤による場合は、繰り返す毎に症状が重くなる傾向がある。
  • 過去に服用して問題がなかった薬で、今回初めて副作用が出たというような事はあり得るので、長年飲み続けているから絶対大丈夫と思わない方が良い。ただ、長い付き合いの薬でも薬疹が発生する可能性はあるが、その頻度は低いだけの事である。
  • 発疹は全身に出来たり、手足、腹部などに限局したり様々で、色も赤〜赤紫などあり、ひどい場合は水ぶくれや火傷状態になる事もある。多くはかゆみを伴い、左右対称に出現するのが特徴。
  • いろいろな薬剤を使用していた場合は、どの薬剤かを特定することは困難。→飲んだ薬の名前を控えておいて、可能な限り二度と服用しないようにするが、やむを得ず服用する場合は、服用後薬疹がでないか慎重に観察し異常があれば直ちに皮膚科又は内科を受診する。
  • 水ぶくれやただれが起きた場合や高熱やひどいだるさを体感した場合は至急専門医を受診する。
  • 軽症の場合は予後良好なので、怪しいかなと思ったら、まず薬剤を休止すればよい。全身状態が高度な重症の薬疹の場合は中止しただけでは不十分で、呼吸管理等も必要なこともあるし、亡くなるケースもある。
  • 皮膚だけの症状か、咳、熱、呼吸数、脈拍、血圧、視力、喉の痛みなどの症状があるかを観察すること。
  • 重症型として有名なものは皮膚粘膜眼症候群型(Stevens-Johnson型)、中毒性表皮壊死型(TEN型)と紅皮症のタイプの中で今一番注目されているDIHSが死に至ることもある薬疹になる。
  • 特に下記の症状があれば重症の薬疹の可能性があるので至急総合病院など、専門医を受診する必要がある。「発熱、発疹、浮腫、水疱、皮膚灼熱感、皮膚の痛み、唇・口腔のびらん、陰部の痛みを伴うびらん、目の充血、食欲不振、全身倦怠感、関節痛」
薬疹が起きたことのある人は、薬を飲むときこんな症状に気をつけよう
皮膚のかゆみ、皮膚の発赤、発熱、目や結膜の充血、粘膜や口唇・口内のただれ、陰部のただれ等が起きていないか注意して、“おかしい”と感じたら、すぐに薬の使用を中止して、皮膚科又は内科を受診する事が重要。

薬疹の種類

薬疹には色々なタイプがあるが比較的軽症のものから、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症のように命に関わるものまである。主な薬疹は下記の通り。

播種状紅斑丘疹型薬疹 最も多いタイプで、左右対称性に播種状に多数の丘疹紅斑が認められるタイプで、全身に赤く盛り上がった小さなブツブツした発疹(丘疹)が出来る。
光線過敏型薬疹  出ている部位の皮疹の具合を見て大体推測できる。露出部、唇で言うと下口唇の症状などがひどくなる。作用波長はUVAのことが多く、検査はUVAを行うことが多い。薬剤として有名なのがニューキノロン系抗菌薬。湿布薬とかそういうものでも起こるので注意が必要。 
多形滲出性紅斑 手として手足に左右対称性に赤い円形の発疹が平らに盛り上がる。手や腕の外側にできやすい傾向がある。発熱・頭痛・関節痛や粘膜のただれ等が起きることもある。発疹の中央に水疱が出来る事もある。通常粘膜疹は少なく、あっても口腔内に多少でる程度とされている。通常は、薬剤などの服用中止、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー薬、ビタミンE内服、ニコチン酸内服、ステロイド剤の使用(外用・内服)等の治療が行われ3-4週間で治癒する。薬剤の他、単純ヘルペスウイルス、肺炎マイコプラズマなどが原因となることもある。稀に全身症状を伴う重症タイプ(スティーブンス・ジョンソン症候群)に移行することがあるので注意を要する。原因薬で多いのがフェノバールビタールや抗菌薬など。
紅皮症型 全身が均等に赤くなり、落屑(皮がめくれる)。肝機能・腎機能障害を伴うことがある。紅皮症は薬疹の他に、湿疹、乾癬、落葉状天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、悪性リンパ腫等でも同様の症状が起きる。
蕁麻疹型 みみず腫れが起きる。薬を飲んで数分以内に現れる事が多い。時に気道粘膜に症状が現れた場合、呼吸困難等のショック症状が起きる。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS) 多形滲出性紅斑の重症型で「皮膚粘膜眼症候群」と言われ、発熱、口腔粘膜などの粘膜疹があるということと、皮膚に多形紅斑がたくさん出てしまうという3大特徴がある。他に、倦怠感、咽頭痛や口内・目・陰部にも発疹が出来る。最初は風邪様の熱、頭痛、咳、体の痛みが出て1〜14日程度続き、その後皮膚面や粘膜に異変が生じる。皮膚症状の他に、目の充血や視力障害、口や陰部の粘膜がただれてくるのが特徴。生命にもかかわる事があり緊急で専門医(内科・皮膚科・口腔外科・眼科等のある総合病院)を受診すること。合併症としては呼吸器障害がある。起こりやすい薬剤はペニシリン系、それとけいれん薬やNSAIDsで起こりやすい。臨床症状は、粘膜がめくれてしまったり、眼球結膜などをやられてしまったりするので、この場合、後に癒着することもあるので、失明なども考慮して早めに眼科受診すること。ステロイドの投与が適用になる疾患。通常入院して治療する。発症頻度は人口100万人当たりで年間数人程度発生しており、死亡率は6-10%なので注意を要する。SJSが更に重症型に移行したものがTEN型薬疹である。
中毒性表皮壊死症
( ライエル症候群)

TEN型薬疹又は中毒性表皮壊死融解症とも言われ、薬の服用後、短時間に、突然に全身に紅斑が出て、火傷をしたような灼熱感とチクチクする痛みが現れてただれてくる。全身の皮膚がべろりとむけるようになる。喉の発赤が初期に出る。このような場合は専門医を緊急で受診する必要がある。入院治療が必要。角膜の癒着などが起こるので早めの治療や呼吸管理が必要で、治療の基本はステロイドパルスとグロブリンの大量療法を併用する。先に血漿交換をしてからステロイドパルスとグロブリン製剤を入れるということが多く行われている。
発症頻度は人口100万人当たりで年間1人程度だが、死亡率は20-30%と高いので注意を要する。

薬剤性過敏症症候群(DIHS)

最近注目されている薬疹で、比較的限られた薬剤によって発症し、内服開始後数週間(〜1年)たってから発症する。特定の薬剤を飲んでいて全身が赤くなったら、このDIHSを考えた方がいい。多くの場合は薬剤の中止をしても症状が遷延する。だから薬剤を止めて2-3週経っても全然治らない場合はDIHSを考えた方がいい。薬の副作用で出た発疹が、薬をやめても治らないまま、体内でウイルスが活性化してかえって悪化してしまうもの。原因となる薬は抗痙攣薬が最も多く、その他、潰瘍性大腸炎治療薬、不整脈治療薬、痛風治療薬などに限られている。(アロプリノール、カルバマゼピン、フェニトイン、メキシレチン、フェノバール、ジアフェニルスルフォン、サラゾスルファピリジン、ミノサイクリンなど)
最初は発熱と、痒みのある紅い斑で発症することが多く、次いで、リンパ腺が腫れてくる。薬をやめてもどんどんひどくなってくる。重症化すると死亡する事もある。死亡率は10%。皮膚科への入院治療が必要。治療の原則は、まずプロキロでステロイド内服をするが、早めに減らすとまたすぐ再現するので、ゆっくり減らしていくのがポイントになる。あとウイルスの関連もあるので免疫グロブリンの静注を行うこともよくある。
原因となる薬剤:・テグレトール、アレビアチン、エクセグラン、デパケン、レクチゾール、プロトゲン、サラゾピリン、メキシチール、ザイロリック、アロシトール、ミノマイシン、ベルベッサー、バキソ、ラモトリジン


検査と治療

薬疹の程度(皮膚面だけか内臓を含む全身症状か)や原因などを勘案して適切な治療が行われる。一般的には2週間程度で軽快する。

  1. 疑わしい薬の服用を即中止する。発疹が軽い場合は、これだけで1週間以内に自然治癒する事が多いが、薬をやめても長期間薬疹が続くこともある。
  2. 血液検査(CRP・白血球等の炎症反応、GOT・GPT・γ-GTP等の肝機能、尿素窒素・クレアチニン等の腎機能等がチェックされる)・喉や眼の視診、血圧、脈拍、呼吸数等。
  3. 薬疹の検査は試験管でできる検査としてリンパ球幼若化試験(DLST)、生体内の検査としてはプリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト、あとはパッチ テストなど。プリックテストは、実際に使っている薬剤の濃度を薄くして、少しだけたらして反応が 出るか見る検査になる。一番抗原量が少ないので一番初めに施行されるべき検査になっている。これで反応が出なかった場合はスクラッチテストを行う。
  4. 抗ヒスタミン剤の服用(タリオン錠など)、抗アレルギー薬内服(エバステル等)
  5. ステロイドの外用(マイザー軟膏、プロパデルム軟膏等症状に合わせて)
  6. ステロイドの内服(広範囲に強い症状が出た場合はプレドニン等のステロイドが用いられるが、出来るだけ短期間に止める。プレドニンの場合、1日量は体重1kgあたり0.5〜1.0mg。減量・休止は医師の指示で慎重に行う。自分勝手な判断でやめたりすることは危険)
  7. ステロイドの大量使用(重度の場合、入院してステロイド剤の点滴静脈注射が行われる)
  8. 喘鳴や呼吸困難などがある場合は、エピネフリン(アドレナリン)、ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)、ステロイドの静脈注射が行われる。
  9. 胃腸障害がある場合はその治療が行われる

ステロイドの注意事項:

ステロイド(副腎皮質ホルモン)は炎症を抑えたり、アレルギーを抑えたり、免疫を抑える作用が強く、上手に使えば極めて有効な薬であるが、使い方が難しいので原則として他の適当な治療薬が無いときに限って使用されるのが望ましい。ただ、医師の指示による短期間の使用ではさほど副作用を心配する必要はないが、長期・大量になった場合は、色々な問題が生じる恐れがある。(免疫力低下による感染症、浮腫、にきび、血糖値上昇、胃潰瘍、眼圧上昇、緑内障、白内障、骨が脆くなる、動脈硬化、血栓症、副腎不全、ワクチン接種使用中止等々) 強い薬ほど副作用は出やすくなる。最初強い薬を使用し、徐々に弱い薬に切り替えていく方法も適時用いられる。ステロイドの強弱の変更や使用中止などは医師の指示に従い、自分勝手な判断でやめたりしないこと。REBOUNNDが出たりして危険。顔など皮膚の弱い部分への使用は慎重に行う。

ステロイドと起こりうる副作用の例:

プレゾニゾロンに換算して一ヶ月以上服用した場合
1日量5mg ほとんど気にする必要はない
1日量10mg ムーンフェイス(顔が丸くなる)がおきる事がある
1日量20mg 免疫力低下で感染症にかかりやすくなる
1日量30mg 糖尿病を発症しやすくなる
1日量50mg 骨が脆くなる

ステロイド外用薬の種類
ステロイド外用薬の強弱
最強 デルモベート、ジフラール、ダイアコート等
非常に強い マイザー、トプシム、フルメタ、リンデロンDP、アンテベート、ネリゾナ、テクスメテン、メサデルム、パンデル等
強い プロパデルム、リドメックス、リンデロンV(VG) 、ボアラ、ザルックス、フルコート
中程度 アルメタ、キンダベート、ロコイド
弱い プレドニゾロン、コルテス、デキサメタゾン、メドロール
蕁麻疹(じんましん)

 

虫さされの後のように、皮膚が突然淡紅色に盛り上がって(膨疹・紅斑)地図のような形状で広がり出し、通常かゆみを伴う。薬疹は通常短時間で消失することはないが、蕁麻疹は一過性、局在性、表在性の浮腫で、最初に出来た皮疹は30分から 2〜3時間で一旦消えてしまう事が多いが、また、新しい発疹が次々に身体のあちこちに繰り返し出たり引っ込んだりする。(同じような場所に出来るように見えても、厳密には少し出る場所が移動している特色がある)

食物(魚介類、生乳、肉、卵など)が原因で生じるのが多いが、感冒(発熱、上気道炎)、薬剤、細菌感染、日光、ストレス、疲労、内臓病変、寒冷、温熱、摩擦、圧迫、埃、香料などでも起きる。

治療は、

  1. 原因が想定できるときはそれから離れる。
  2. できるだけ触らない、かかない。
  3. 冷やす(寒冷蕁麻疹の時は温める) 一般に温まるとじんましんはひどくなる。痒いときはかかないで冷やすと良い。
  4. 休養する。
  5. 病院を受診して適切な薬を処方して貰う。抗ヒスタミン薬(タリオン等)、抗アレルギー薬(エバステル等)の内服や症状が重いときは副腎皮質ステロイド薬(プレドニン、セレスタミン等)及び胃の保護剤の内服で治す。薬が合えば通常は1〜2週間で治る。もし、3日程度服用しても改善が見られない場合は薬があっていないことも考えられるので、医師と相談の上で、別の薬を試して貰う。個々人にあった薬剤の内服で新しい膨疹を阻止できれば、その薬の内服を継続することによって皮疹の出ない良好な状態を保ちつつ、徐々に内服量を減量していき、最終的には薬剤を中止しても膨疹が生じない状態まで持ち込める事も期待できる。薬剤の服用など治療をしても反応が鈍い場合は早めに医師に相談する。1ヶ月以内に治まるものを急性蕁麻疹(全体の80-90%、アレルギー性が多い)、それ以上続くものを慢性蕁麻疹(10-20%、非アレルギー性が多い)と言う。治療剤を服用中は薬の効果と副作用を観察するために適宜血液検査を行い、肝機能・腎機能・CRP・白血球・血沈等の変化を調べる必要がある。

蕁麻疹は皮膚だけでなく、唇・気道・胃腸等の粘膜に現れる事がある。アナフィラキシーによる喉頭浮腫や血圧低下が起きたときは、直ちに救急車を呼ぶなりして皮膚科や救急外来を受診する。気道を確保して、点滴で水分を補給し、ボスミン、ステロイドやエピネフリン(アドレナリン)の注射等が緊急で行われる。

20〜30歳の若い人に多い。薬剤(抗生物質・アスピリン等)による蕁麻疹は服用後数分で起きるものから10日以上も経って起きるものまであり診断が難しい。又、最初の皮疹やその後に出来る一つの皮疹が1日経っても症状が引かない場合は他の病気も考えられる。

希望ヶ丘すずらん皮膚科クリニック堺則康先生は、東京医科大学八王子医療センター非常勤講師(腎臓内科)で、蕁麻疹などの皮膚疾患や血管炎の専門医。原因不明のじんましんの原因を究明するベストドクターとして著名。臨床遺伝専門医の一人。難治性のじんましんも原因究明と適切な治療を心がけている。

参考情報

 

 薬疹関連情報

 

この頁は書籍・文献・新聞・雑誌・テレビ報道などより得た情報や先生方から直接お聞きしたことを整理したものです。医学の進歩は日進月歩であり、新しい治療法が見つかることも、また、従来の治療法が否定されることもしばしばあります。本欄を常に最新の情報に更新することには個人のHPでは限界がありますので記載内容の最新性、確実性が常に保証されるものではありません。また、対処法は個人の症状や体質などにより違ってきますから、この情報による効果や影響に関しては個人の責任と判断で行ってください。情報の利用の結果、万一、利用者に不都合、不利益が起きても一切の責任は負えないことをご了承下さい。記述は正確を期していますが、間違いにお気づきの場合は、「okiちゃんの趣味のアルバム」Top Pageよりメールをお寄せ下さい。

更新履歴:2005.12.22/2006.1.30/2015.11.18

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