I 土佐気質 2014.9.16

禅師峰寺からは遠くに桂浜が見えた。
大きい!桂浜の竜馬像。

 遍路道は牧野植物園の中を通る。にぎやかな竹林寺(31番)を参拝、禅師峰寺(32番)に向かう。ゆったりと流れる下田川の土手。見渡す限り何もない道。人にも会わない。右手の山から響く道路工事の音。県道に出る。登り坂だ。途中に武市半平太の生家があり、すぐ隣に半平太を祭った瑞山神社があった。トンネルをくぐり、石土池の傍、地図には休憩所のしるし。先客が地元の老人と話をしていた。予定時間を過ぎているので通過し、距離を稼ぐ。禅師峰寺は小山の上にあった。見晴らし台からこれからの歩く道筋を見ると、遥か彼方に竜馬が待つ桂浜が小さく見えた。

 炎天下の砂の道。県道は修行の道場となり、「歩くのを辞めたら」と誘惑をしてくる。高知港に入る船のために高い橋。恐怖を感じながら浦戸大橋の狭い歩道を渡り、念願の竜馬に会えた。「スゴイ」「オオキイ」。

 8mの台座の上に4m近い竜馬が太平洋をにらんでいた。すぐ脇に竜馬と同じ目線で太平洋を眺められる展望台が出来ていたが、残念ながら竜馬を写真に納めるのにはアングルが悪い。竜馬に会えると遍路道を外れ訪れたが、月の名所の桂浜を堪能する余裕も無く、次の札所へ急ぐ。

 文献で調べたら、高知県内に偉人の銅像が19体ある。全国的に名が知られているのが坂本竜馬。ほかにも幕末の人では武市半平太や岩崎弥太郎がいる。興味を引いたのは半平太の像。一度作られたが、本人に似ていないと作り直されている。財閥の岩崎を除き、2人の像は全て寄付金で賄われているらしい。ちなみに群馬県の銅像を調べようとしたら、パソコン上に出てこなかった。先人に対する敬意の違いとは思わないが、銅像たちは高知県民の心の支えになっていると思う。

 高知最後の札所・延光寺(39番)を参拝後、スーパーで買い物をしていたら、若い女性に宿毛は吉田茂の父親の出身地と教えられる。吉田茂と言えば戦後の大首相。「バカヤロー解散の首相」として有名だ。若い人までが歴史認識を持っているのに感銘する。また、通学時間に電車に乗った時、満員の電車の中で高校生が学んでいるのを見て土佐の底力を感じた。他の所ではスマホを見ているか友達とおしゃべりが多いと思う。勤勉さの表れか、皆が持つ強い意欲か。ただ、太平洋の荒波や台風の通り道に当たる高知では、生半可では生きていけないのだとノンビリ者の私にも理解できた気がした。(Y.I.)