H 高知平野 2014.9.9

杮葺きの屋根が美しい国分寺。
川の対岸には介護施設が立ち並んでいた。

 海辺を離れて遍路道は平野の中へ。土佐の国分寺(29番)に参拝する。四国は4県とも国分寺が88ヶ寺の中にある。上野(かみつけ・群馬)では史跡として地名があっても、伽藍を備えた寺はないと思う。歴史の流れが違っても、いかに県民の関心の無さかと恥じ入る気持ちになる。次の寺まで、地図で見たらたんぼ道。のどかで歩き良いと考えていたら、先が見渡せるぶん気持ちにゆとりが無く焦りとなった。

 川向こうにマンションのような巨大な建物が3棟。地元の人に尋ねたら介護施設とのこと。人口の老齢化は何処も同じと納得をする。郵便局は簡易局。潰れたスーパーの脇に留守番のように職員1人で開いていた。坂道の途中に遍路小屋。感謝しひと休みする。

 山を越えて善楽寺(30番)に着く。門前は住宅街。商店どころかコンビニもない。今日は油断をした。高知市の郊外で昼食は何とかなるだろうと、思い違いの厳しい結果だ。1時間近く歩きコンビニに。そこでもまたミス。郵便外務員が店に入ったので、外で待って、「この辺に食堂は」と聞く。「500mぐらいの右側にある」。急いで教えられた所に。頼みの店は廃業をしていた。元に戻り、コンビニでパンと飲み物を買う。どこで食べるか探す。ベンチはJR駅のホームにあったがそこも無理。少し戻り神社の階段でいただく。遍路道に戻り歩き始めたら、地図に載っていない食堂から食事を済ませた客が出てきたのが見えた。

 直線道路を歩く。宿のビジネスホテルは3時までは入れない。疲れているので早く着きたい。橋、交差点を確認しながら、宿に着いたのが2時半だった。時間があるので荷物を預け、高知城近くの市場へ。エネルギー不足か足元がおかしい。ひろめ市場に着く。昼食の不足を補うため、食堂でカツオのたたきを夢中で食べた。帰りの道は足が軽やかだった。

 観光旅行なら高知城は必見だが目的違いだ。昔、亡妻と歩いた頃より変貌した商店街を歩き、はりやま橋から路面電車で宿に帰る。途中のスーパーで翌日の食糧を整えていたら、にこやかに話かけてきた女性がいた。顔覚えが悪い私は誰か分らず聞くと、「津照寺の売店でお会いしました」との返事。初めての土地で自分を知っている人がいるだけで心が温まった。感謝。感謝。(Y.I.)

*ひろめ市場…土佐藩家老の屋敷跡付近にあり、屋敷が消えた維新後もその一帯は親しみを込めて「弘人屋敷(ひろめやしき)」と呼ばれていたことから,その名をとり「ひろめ市場」と名づけられた。ひろめ市場の中は「お城下広場」や「龍馬通り」など7ブロックからなり、鮮魚店や精肉店、雑貨・洋服屋、飲食店など、個性的なお店が集まっている。(高知市HPより。一部改)