フランス語学研究A

 

担当教員氏名 配当学年 クラス指定 必選区分 開講期
渡邊 淳也 3・4 選択必修 通年
曜日 時限 単位数 備考

教職関連科目

 

授業のねらいと到達目標

フランス語を、単に修得する対象として見るのではなく、分析する対象として見ることを学ぶ授業です。「まだまだ学習の段階にあるので、とても分析など考えるには至らない」と思うのは正しくありません。むしろ、みずから考えることによってこそ、フランス語の知識もより確実に定着するものと期待できます。そうした見通しからも、さまざまな文法的・意味的事象をいかに分析するかを正面から考える授業にします。 フランス語学で卒業論文を執筆する予定のひと、言語学に興味のあるひと、フランス語を言語学的に理解したいと思っているひとに適した授業です。総花的な入門講義はせず、研究の現場に直接案内するようこころがけます。

授業概要

おもにフランス語の動詞の時制・叙法をとりあげ、それぞれの形態の多岐にわたる用法をいかに理解するか、そして、文脈によっては競合するほかの形態との差異をどのように説明するかを考えてゆきます。

授業計画

講義、文献講読、発表形式をとりまぜておこないます。 前期のテーマは「半過去形」(2/〜6/)、「条件法」(7/〜11/)、「単純未来形・迂言的未来形」(12/〜15/)、後期のテーマは「現在分詞」および「ジェロンディフ」(16/〜22/)。「主語不一致ジェロンディフ」(23/〜29/)ですが、以下の予定の詳細については、受講者の希望、ならびに到達度に応じて、教室内で相談のうえ、変更する場合があります。

1/ 序論
2/ 叙想的時制の概念
3/ いわゆる「モダールな用法」の再編
4/ 叙想的アスペクトの概念
5/ 半過去と叙想的アスペクト
6/ 叙想的アスペクトと認知モード
7/ 分岐的時間の図式
8/ 時制的条件法
9/ 反実仮想の条件法
10/ 他者の言説をあらわす条件法
11/ 語調緩和の条件法
12/ 単純未来形と迂言的未来形の用法の比較
13/ 単純未来形の基本図式とその適用
14/ 迂言的未来形の基本図式とその適用
15/ 前期レポート回収と総括
16/ ジェロンディフはフランス語独特か(他のロマンス諸語との比較)
17/ ジェロンディフは1つの形態素か、2つの形態素か
18/ ジェロンディフと現在分詞の用法の対比
19/ 現在分詞の機能に関する仮説
20/ 現在分詞の機能に関する仮説の検証
21/ ジェロンディフの機能:「容器のメタファー」説と「定位」説
22/ 前置詞 en の機能からジェロンディフの機能へ
23/ 主語不一致ジェロンディフは固定表現に限らない
24/ 主語不一致ジェロンディフに関する先行研究
25/ コーパス調査とその結果
26/ ジェロンディフにおかれる動詞の種別
27/ 支配節(ジェロンディフがかかってゆく節)の諸特徴
28/ 経験者間接目的補語と暗黙の認知主体
29/ Iモード現象としての主語不一致ジェロンディフ
30/ 学年末レポート回収と総括

準備学習・履修上の注意

例文の解釈は受講者のみなさまに分担していただきますので、毎回指定された個所をくまなく予習してくることが必要となります。不可欠な授業外学習については具体的に指定しますが、それだけで満足することなく、貪欲に学ぶことを期待します。その結果、毎回かなりの授業外学習が必要になることと思いますが、このことをよく了解したうえで履修してください。

評価方法・基準

【評価方法】
学期末レポート(論述形式)の評価をもとにして、平常点 (出席点ではなく、準備の綿密さ、討論への参加度、課題への回答状況への評価) を加算します。

【評価規準】
フランス語学における所与のテーマの研究の前提となる知見を修得していること。
それをふまえ、みずからの立場を明確にして論じることができるようになっていること。

教科書

なし

参考文献

以下にはおもなものをかかげ、くわしくはそのつど紹介します。
朝倉季雄『フランス文法集成』
朝倉季雄『新フランス文法事典』
大橋保夫ほか『フランス語とはどういう言語か』
川口順二ほか編『フランス語学の最前線』1〜5巻
佐藤房吉『フランス語動詞論』
佐藤房吉ほか『詳解フランス文典』 東京外国語大学グループ《セメイオン》『フランス語学の諸問題』1〜4巻
新倉俊一ほか『フランス語ハンドブック』
髭郁彦ほか『フランス語学概論』
髭郁彦ほか『フランス語学小事典』
渡邊淳也『フランス語における証拠性の意味論』
渡邊淳也『明快フランス語文法』
渡邊淳也『フランス語の時制とモダリティ』