劇団NOTHING
「原点へのカウントダウン」


劇団NOTHING 団長 福田 稔

十九の頃、とてつもなく感動した一冊の絵本があった。

それをどうしても誰かに伝えたかった、舞台でやりたかった。 しかし、親友と二人、演劇の事など何も分からず、一年ほど経った。 ある日、今は亡き平山さんという人に「やりたい事があったら、どこでも出来るんだ、 保育園でも、老人ホームでも、どこだっていいだろう」と、言われ、僕はその足で 大月市民会館に行き、いきなり大ホールを借りてしまった。
放った矢は戻らない、と覚悟を決め、町中にポスターを貼り、そのポスターを見た 新聞記者からインタビューを受け、僕は3時間も演説してしまった。 そのおかげで新聞にはでっかく載った。しかし、ひとつウソをついてしまった。 公演数週間前なのに役者が二人しかいない事は言えなかった。 ところが、本番の一週間前には新聞の効果もあり、本当に役者がそろってしまった。 新聞には登場人物は五人と書いてあったのである。
公演当日、僕は頭をツルツルにしてひげをつけて、おじいさんとなり、親友は髪をモヒカン にして赤く染め、ニワトリとなった。
ドキドキの幕は上がり、最後に「花」を合唱して幕は降りた。
その日は3月21日だった。

あれから十年、これだけは守っている。毎年3月21日(春分の日)に公演を行い、入場料は 無料、脚本はオリジナル... まるで墓参りみたいだけど、僕は物を創るという事は祈りなんだと思っている。”伝えたい” という祈りから言葉は生まれた。演劇は生でそれが表現できるから面白い。
”NOTHING”の由来は、ハンバーガーヒルという映画のセリフからとった。言いたい事は いくらでもあるのに敢えてNOTING(意味なんかないさ)と答える。その言葉にとても広い 世界を感じた。
僕たちは何年演劇を続けたとしても、何かを伝えたい、損も得も無くこれをやりたいという気持 ちは失いたくない。
だから毎年、芝居の最後には必ずカウトダウンします。

3,2,1,0,NOTHING!と...


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1990年に結成された劇団NOTHINGの公演記録です


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