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4サイクルエンジンオイル
1.基礎
2.オイルの粘度
3.粘度指数
4.エンジンオイルの分類
5.SH/SJオイルの特徴
6.SH/SJオイル使用の注意

---最近になってSH/SJ分類のオイルをよく見かけるようになってきました。今回はオイルの基礎知識とともにSH/SJオイルの正しい取扱いについて考えてみようと思います。
---SHオイル/SJオイルには、本来その開発目的となった特徴があり、これが必ずしもオートバイ用エンジンには適さない場合がありえるので注意が必要だと思います。あ、でもさらにSLグレードっていうのも最近出てきましたね。

1.基礎

エンジンオイルは潤滑油とも呼ばれ、エンジンに不可欠なものであるということはご存知の通りです。 エンジンには内部で摩擦を起こす個所がたくさんあって、一般に摩擦が大きとエンジン作動の障害となります。こういった摩擦障害を防ぐのがエンジンオイルです。
ガソリンエンジンのエンジンオイルとしては次のような条件が必要となります。

1)油性が良い
2)粘度が適切
3)耐摩耗性が良い
4)金属面を保護する
5)極低温でも流動性がある
6)清浄性が良い
7)酸化しにくい
8)泡立ちしにくい

これらの条件のバランスをうまくとりつつ、本来の性質を向上させたり新しい性質を加えたりするために、様々な添加剤が加えらてきました。
油性向上剤 / 粘度指数向上剤 / 摩耗防止剤 / 腐食防止剤 / 流動点降下剤 / 清浄分散剤 / 酸化防止剤 / 気泡発生防止剤、などです。
例えばオイルが劣化すると色が黒ずんできますが、これは清浄分散剤が正しく機能しているおかげです。この成分が、オイル中に混入したり発生したスラッジ・炭素を遊離させ、分散した炭素によってオイルそのものが黒くなるのです。このためエンジン内は常に清浄に保たれ、ベアリング・軸受の焼付きやピストンリングの固着を防止しているのです。

2.オイルの粘度

オイルの粘度とは文字通りの「粘りの度合い」を表すものです。粘度の高いオイルは金属の表面に厚い油膜を作ることができ、大きな荷重を支えることができます。 しかし粘度は高ければ良いというものではなくて、高過ぎると粘性(抵抗)が大きくなり過ぎて動力損失が増えてしまいます。逆に粘度が低いと、動力損失は減りますが油膜が切れやすくなります。そのため、製造メーカーが推奨する適正な粘度を使用することが必要だと思います。

3.粘度指数

オイルの粘度は、温度によって著しく変わります。オイルは、こうした温度変化に対して適正な粘度を保持しつつ、潤滑状態を良好に保つ必要があります。 この温度によって粘度が変化する度合いを「粘度指数」という数値で表して、オイルの性状を表すひとつの目安としています。粘度指数の大きいものほど温度による粘度変化度合いが少ないオイルです。

4.エンジンオイルの分類

エンジンオイルの分類方法としては、「粘度」による分類と「性能及び用途」による分類があります。

「粘度による分類」
SAE(米国自動車技術協会)粘度分類が広く使用されています。
この分類は表の通りで、粘度番号が大きいものほど粘度が高いことを表しています。番号末尾のWは冬期用/寒冷地用を意味しています。 エンジンオイルの粘度は、前項の通り、温度と密接な関係があります。 一般公道を年間通して走行する条件を考えると、単一の粘度番号のオイルですべての潤滑状態を満足させることはできません。運転条件・季節・外気温などによって数種の粘度番号のオイルを使い分けなければならないからです。
そこで、マルチグレードと呼ばれる「粘度指数の大きい」オイルが一般に使用されるようになりました(SAE10W-30、20W-40など)。例えば「10W-30」は、低温始動性の点ではSAE10Wの性能を持ち、高速・高負荷及び高温時にはSAE30の性能を備えたオイルということになります。
SAE粘度番号
0W
5W
10W
15W
20W
25W
20
30
40
50

SAE番号と使用可能温度
  -30 -20 -10 0 10 20 30 40 外気温
シングルグレード
オイル 
  SAE10W            
        SAE20W        
              SAE20      
              SAE30
マルチグレード
オイル
  SAE10W-30
        SAE20W-40

「性能及び用途による分類」
API(米国石油協会)サービス分類が一般に使用されています。SA/SB/SC/SD/SE/SF/SGが従来使用されてきました。 最近ではこれらに加えてSH、SJオイルが使われ始めました。
従来の規格 → 新しい規格
API分類 SD SE SF SG SH SJ
販売開始年 1968 1972 1980 1989 1993 1996

5.SH/SJオイルの特徴

API分類が採用されて以来、SGグレードオイルまでは新規格のオイルほど潤滑性能が高いオイルといえました。しかしSH/SJオイルは、潤滑性能はこれまでの水準を維持しながらも、低燃費・排気ガス低減を目的として新規に開発された四輪車用に適したオイルとして開発されました。 そのためSH/SJオイルは、燃費向上を図りエンジン内部摩擦を減らすために「低粘度」であったり、従来よりも多量の添加物(粘度指数向上剤/摩擦低減剤など)を含んでいるのです。

6.SH/SJオイル使用の注意

オートバイ用エンジンは一般に四輪車と異なって、クラッチやトランスミッションがエンジンと共通のオイルで潤滑されています。また、オートバイは四輪車よりもはるかに高温・高回転で使用される場合が多く、潤滑性能の要求が非常に厳しいエンジンだといえます。 SH/SJオイルには前項のような特徴があるため、これらをオートバイ用エンジンに使用する場合には次のような問題を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
---摺動部の摩耗(ミッションギヤ/カムシャフト/ロッカアームなど)
低粘度であるため、高回転・高温時に潤滑性が不足して油膜が切れやすくなって、ギヤや軸受けなど摩耗が促進される恐れがあります。
---摩擦を利用した部位の作動不良(湿式多板クラッチ/スタータクラッチなど)
添加物の影響でクラッチが滑ったり、セルスタートできなくなったりする影響が考えられます。

---もちろんSH/SJグレードオイルの中でも、粘度指数が高く、摩擦機構に影響を与えないオイルがあります。しかし、SH/SJのグレード表示だけではオートバイに適しているか否かを見分けることができません。
---値段が高いから/安かったから/新発売だから/新グレードだから、などの理由だけでオイル交換をするユーザーは、もはやいないと思います。
---たかがオイル、されどオイル。オイルを買い求める場合には、しっかりとしたアドバイスが受けられる信頼できる販売店で買い求めましょう。ってことで。

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