第1便・・・プロローグ


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 ウィーンよりお便りいたします。
 皆様、お変わりなくお過ごしですか。
 突然ウィーンからのお便りで驚く方もいらっしゃるかと思いますが、本務校の海外研修制度を利用して、2000年10月から2002年3月までオーストリアのウィーンに滞在することになりました。そしてその間、ウィーン大学に客員教授として迎えてもらうこともでき、授業も2コマ担当させていただくことになりました。
 海外研修の研究課題は「非漢字圏における日本語教育の実態調査」で、大学での授業はそのフィールド調査の一環ともなるものです。ウィーン大学からの特別の配慮には感謝してもしきれないほどです。
 そしてさらにこの海外研修のおまけとして、新しい言葉を一から学ぼうとドイツ語の授業も取ることにいたしました。自ら学ぶ中で、もう一度、言葉を学ぶとは何か、言葉を理解するとは何なのかを再確認してみようと言うわけです。

 さて、ウィーンは落ち着いた静かな街です。人々が自分の時間をじっくり味わいながら過ごしています。100年、200年前に建てられた家をそれなりに改装して住み、はげた壁を見ながらすり減った階段を上っていっても、各自の家のドアを開ければそこには自分で作り上げた部屋がある、基本的にはそんな感じの住環境です。そして食生活はウィーンの物価は高いと聞いていましたが、日本と比べれば肉類、乳製品はもちろんのこと、食料品は何もかも安い。(でも日本で物価の優等生の卵はこちらでは日本と同じ値段、つまり相対的に高いんですよ。)そして、工業製品になると急に日本と値段が変わらなくなります。つまりウィーンの人々の日常生活を考えたらかなり高いのです。だから、日本での生活のように、家の中が物であふれかえった状態にならずにすむのかもしれないなとも思います。

 大学では午前は、月曜から木曜日まで語学センターでドイツ語の授業を受けています。クラスの構成メンバーは韓国人が2名、あとはイタリア、スペイン、ポーランド、ブルガリア、スロバキア、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、フィリピン、そして日本がそれぞれ1名ずつと、完全なインターナショナルです。で、やむなく共通言語はドイツ語です。(もちろん大半が英語でコミュニケーションできますが。)ワイワイガヤガヤやりながら、久しぶりに学生気分を味わっています。

 午後は火曜と木曜に日本語の授業を担当しています。こちらは受講者はオーストリア人だろうと予想していたら、あにはからんや、6名の受講者のうちオーストリア人は僅かに2名、ほかはブルガリア人2名、ウクライナ人1名、そして、あとの一人は12歳までは日本人として生活していたが、小学校卒業後すぐにオーストリアの中学に入ってしまって今はオーストリア国籍というお嬢さん、とこれまた国際的。西欧と東欧を結ぶばかりでなく、中欧にある国際都市としてのウィーンを実感しています。

 大学のネット環境は Japanologie センターではちゃんと日本語OSが入っていて、日本の研究室にいるのと同じ快適さでパソコンが使え、ネットが使えます。昨日、パソコンに詳しい学生の助けを得て、設定もきちんと整いましたので、大学でも作業が快適にできるようになりました。ケーブルも太いのでネットを使うと日本の大学にいるときより明らかに速いという理想的な環境です。ただし学生用には日本語が読めるパソコンは自習室の3台のみなので、授業に使うには工夫が必要です。

 図書館の蔵書も Japanologie は歴史も長く、かなりの貴重書まで所蔵しています。一冊一冊手に取ってみるのも楽しみです。日本では時間に追われ、古典に十分に触れる時間はそうそう持てませんでしたが、おもしろいことにウィーンでその時間を持つことにもなりそうです。

 さて、これからの1年半、いろいろなものに触れつつ、新たにいろいろなことを学んで帰りたいと思っています。このところ目先の仕事に追われ、インプットが少ない状態でしたので、久しぶりに自分だけの時間が持てることを喜んでいます。

 ではまたお便りいたします。