第4回 夜毎のセッション

 沖縄料理店「ちゃんぷる」に行くと、三線を弾いている人によく出会う。しかも上手いので、最初の頃は沖縄の人かと思っていたが、大和人との事。数回通うと、お話をするようになり、三線を始めてまだ2〜3年だそうだ。

 この店に通う多くの大和人と同じように無論沖縄病の罹患患者なのだが、症状のあらわれ方はそれぞれで、彼らの場合、島唄・三線だったとゆう訳だ。中には最初に行った沖縄旅行で島唄に魅せられて、三線を買って帰ってきた人さえいる。

 お店が出来て3年になるそうだが、彼らは最初からの常連さんで、千葉在住のうちなーで三線の名手・知念さん(仮名)のご指導を受け、お店に通い続け、弾きまくり、泡盛を飲みまくり、競い合い、メキメキ腕を上げてしまったらしい。

 何度か通ううちに、弾き手の個性がその音に反映されることが解ってきた。いつも元気な石垣さん(仮名)は、ちょっと太目(ゴメン)の体形に似合わず、丸っこい指が素早く動き、ダイナミックな音を弾きだし、よく通る声で島唄を聞かせてくれる。一方、いつも物静かな、まさるさん(仮名)は、男の僕が見ても惚れ惚れするような綺麗な指から、しなやかな動きで正確な音を紡ぎ出してくれる。運が良ければ「ちゃんぷる」で二人のセッションに出くわすことが出来る。

 この店には外国人もよくみえる。先日は実に運良く、千葉在住のイラン人で津軽三味線弾きのモーセンさん(仮名)(その世界では有名な人らしい)と石垣さん・まさるさんが津軽三味線と三線の教えっこをしている場面に出くわすことが出来た。異文化に惹かれあった異邦人どうしが(琉球から見れば)、このワンダーランドなお店で交歓しているの図はなかなかのものでありました。

「ちゃんぷる」の店内には確かに人と人の心を結ぶ不思議なフィールドが存在している。これはこの店の女将さんの人柄によるものだと、僕は睨んでいる。

 この閉塞感に満ち溢れ、希望の持てない時代に、ここ「ちゃんぷる」で、僕は異文化に触れたり、時にめったに見られないものを見聞させてもらい、現実に立ち向かう勇気と力を得るのです(ちょっとオーバーかな)。

Copyright 2001 KAWAMURA Tsuneo /
All rights reserved