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第1話 私は再びイリムティヤに舞い戻った

 3月9日、私は再びイリムティヤに舞い戻った。

 今回の目的は、約束通りヘルパーとして、民宿“イリムティヤ”で働きながら島暮らしを楽しむということ。3月9日〜4月9日までの1カ月間、ちょうど『うりずん』と呼ばれるこの季節を、良き友ふみちゃん(仮名)、さおりん(仮名)と私の3人のイリムティヤっ娘が汗水流して働き、遊び、大声で笑い、驚き、感動し、踊り、うたい、はたまた泣いて、はじけて、飛び込んで、しびれるような島暮らしを少しずつ紹介したいと思う。

 イリムティヤの朝は、たいてい、大音量のNHKからはじまる。我らがヒーロー邦夫氏はなぜか睡眠がとぎれとぎれである。しょっちゅう起きては真夜中にTVをつける。眠くなりそうなところで消さないから始末が悪い。壁の薄いイリムティヤ、しかも耳の遠い邦夫氏はTVも電話も大音量。朝までつけっ放しのNHKは、否が応でもお客さんの耳や体に「朝です起きましょう」効果を与えてしまう。そういうわけで、朝食をつくる私たちは、さらに早起きすることを要求されるのである。

 ここでイリムティヤの構造をご紹介しよう。

 このように平屋で結構広い(と思う)。
 本館の方は純沖縄風、赤瓦の屋根、そして風通しの良い和室が6つ。1つはみんなでごはんを食べたり、まったりくつろいだりする団らん部屋。その他は客室となっており、各部屋に名前がついている。パパイヤ、島バナナ、サソリ、ヤモリ。これらはどれもイリムティヤでごく普通に見ることができる食べ物、生き物たちである。この本館は、島の大工さんたちの手によって、しっかり頑丈につくられている。
 ところ変わって別館はというと、すべて邦夫氏の手によってつくられた、手づくり館である。ところどころ建てつけが悪く、ドアをしめると開かなくなるおそろしい部屋もあったりするが、風通しが良くなかなかおもしろい体験ができたりする。
 このように常に客が出入りする本館と、シーズン期のみ客室が使われる別館とがあるわけだが、実は邦夫氏頭の中では「本館をアネックス(別建)、別館を本館」と位置づけられている。その事実に気づいたのは3月半ば過ぎである。
 私たちははじめ、邦夫さんがアネックスがどんな意味か知らずに、ただ取り違えて使用していたのかと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。実は、イリムティヤの住所=沖縄県八重山郡竹富町黒島62は、私たちが別館と思っている方の住所であって、本館の方には住所がないそうなのだ。しかし、本館にしろ別館にしろ、世帯主が一緒だから、意識する必要もない。どうでもよいような事実である。

 Annex(アネックス)を辞書でひいたところ annex[名]1.建て増し部分、別館 2.付加物 とあった。んんん・・・・・・ 厳密に区別すると、どちらの棟もアネックスになりかねない。おかしな話だ。
【結論】きれいなほうが本館、ぼろいほうは別館。

“栴檀”せんだん

 イリムティヤの庭に自生

  1. 落葉高木。
    根・樹皮・実は薬用。
  2. ビャクダンのこと。
    材に香気あり

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