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第1話 黒島の民宿「イリムティヤ」
おいちゃんスペシャルBコースのテーブルサンゴ。
蛍光色の魚がサンゴのマンションに住んでる。
---ここは 那覇の とあるカプセルホテル---
沖縄ついに来ちゃったよ‥‥とほくほくしながら『るるぶ』のページをめくりめくり寝転んでいた。なにせ私は貧乏学生。八重山へ旅するためだけにバイトをし、やっと貯まった10万円。観光スポットをまわる気はさらさらない。ただ八重山の海、自然、風、人を感じることだけを目的としていたから、その10万円でいれるだけいようと思っていた。もちろん、離島ははずせない。ぱらりとめくって おおっと これは! と思ったのは、黒島のページだった。その隅の民宿紹介コーナーのの枠に吸いよせられた。2×2.5Bの写真の中には、ボロボロの麦わら帽子をかぶり白Tシャツを着たかわいいおじいが立っている。さながら裸の大将山下清風。民宿自体も手づくりのようだ。ここは絶対何かある。直感だった。
竹富はどこを向いても絵になる景色ばかり。完成された島だなぁ という印象だった。2泊で充分すぎるなぁと私は感じた。(まぁ人によると思う。)
黒島は‥‥というと………牛・牛・牛・牛・牛・牛・・人。だだっ広い牧草地。めしを食べる食堂は1つ。商店も1つ。本当に何もないけれど、流れ星が降って、牛が脱走する。そんな島だった。そしてなにより麦藁帽子のおいちゃんがいる島だった。
そう、あの写真のまんまのおいちゃんが船着き場に迎えに来てくれた時から私の目はだった。私は山下清が大好きで、一時画家になりたいと思っていたくらいだから、そんな風体のおいちゃんを見て、ひとめぼれしてしまった。おいちゃんの魅力はこれからどんどん知ることになる。
邦夫さん 照れている・・・!
子牛「なんだこいつ?」
黒島は牛の島
イリムティヤ自体は1泊したらもう1泊もう2泊と、どんどんひきずりこまれてしまうような魅力ある宿だ。一番の売りはもちろんおいちゃん。それだけじゃない。ヘルパーさんが作ってくれる料理はとってもうまい。毎日やぎ汁かやしかに汁か牛汁が出る。そしてお刺身てんこもり。ひとつのテーブルをおいちゃんとお客さん全員で囲み、楽しく食べる。もちろん八重泉つき。泡盛を飲みながら旅の話をする。そしておいちゃんの話をする。
これぞイリムティヤ
隣にはアネックス(意味はまんま別館というイミ)がある。
おいちゃん手づくりの家です。
不意に誰かが「浜で星見よっか」と言い出し、夜な夜なみんなで浜へくり出す。懐中電灯と月明かり。まっくらだけど怖くない。だって島に悪い人はいないから。浜へ下りると白い砂が光ってる。ザザッと波の音。空は数え切れない星でいっぱい。みんなで浜に寝転がり、流れ星を数える。10分に1コは必ず流れる星を競いあって探す。そのうち波の音だけ聞いていると心地よい眠りに誘われてきて‥‥ZZZ。2時間は寝転んでいただろうか。
島に来ると時計を見なくなる。携帯(au)は圏外だから本当に自由。のんびりした体内時計だけ持っていれば島で暮らすには充分だな、と思う。
ケイタイよく海へ落としちゃうから
ボタンの穴にくくりつけてる邦夫さん
イリムティヤに帰ると、またこれが不思議な安心感に包まれるのだ。おいちゃんが留守番している‥‥。ごろんと畳に寝ている。もちろん玄関も窓も開けっぱなしで、蚊取り線香だけつけている。赤瓦のイリムティヤはクーラーなんてないけれど、窓を開ければとっても涼しい。
「今日の海はあれているなぁ」
「かっこいい?」
素敵すぎるヨ・・・邦夫さん
風を感じるでしょ?