その7 サヴァリッシュ指揮ウィーナーシンフォニカ

2001.4.1 11:00〜
 場所:楽友協会大ホール
 楽団:ウィーナーシンフォニカ
 指揮:ウォルフガング・サヴァリッシュ
    
(Wolfgang Sawallisch)
 曲目:アントン・ブルックナー
    
(Anton Bruckner 1824-1896)
    交響曲第8番 c-Moll 第2稿(1890)

 配置はいつもの第1バイオリンと第2バイオリンが左右に分かれるという配置。コントラバス8人は最後列に並ぶ。ハープ2台とワーグナーチューバ4本も入り、舞台はやや狭そうである。その大所帯のオーケストラと満席の観客を、サヴァリッシュは一気に自分のブルックナーの世界に引き込んだ。

 低音の厚い響きの流れに、中高音の粘るような旋律が乗る。そう、一昨日の演奏会で物足りなさを感じたのはこれだ。この音の厚みが欲しかったのだ。確かにメンデルスゾーンとブルックナーでは音楽感に大きな違いがあり、メンデルスゾーンの場合には軽く、明るい演奏でいいのだろう。だが、ブルックナーを聴いて感じたこの音の厚みは、音楽の構造以上にオケ全体の音色の統一感から生まれているもののように思う。ピアニシモの弦の刻みにも、フォルテシモの管の響きにも脈々と流れる音楽の鼓動を感じる。そして、低音の支え。シンフォニカの本拠地は、おとといの演奏会の会場だったコンツェルトハウスである。コンツェルトハウスの大ホールは大きい。あのホールを満たすだけの低音を作り出す力を持っているからこそシンフォニカの音の厚みは存在するのだろう。

 サヴァリッシュは第1楽章から細かい指示で音楽を作り上げていった。そして団員たちもその指示に従う。シンフォニカとかつての常任指揮者であるサヴァリッシュとの間には、信頼関係が築かれているのだろう。団員たちの気合いの入り方は、まさにお尻の浮くような演奏だった。弦楽器を弾く人は特に良くわかると思うが、気合いが入ってくると足を踏みしめ、ついついお尻が浮いてしまう。そして、観客もしかり。思わず身を乗り出して聞き入ってしまった。

 一つ残念だったのは、第4楽章の静かな部分で携帯電話が鳴ったこと。前回のレポートにも書いたが、コンサートホールでは日本のようにアナウンスは入らない。オペラの立ち見の時は、係員がドイツ語と英語で携帯電話と録音について一言言いに来る。だがこれはあくまで立ち見客に対してのみである。立ち見には物見遊山的な観光客も大勢来るからだろう。