その21 小澤指揮ウィーンフィル ロストロポーヴィチ

2001.5.13 11:00〜
 場所:楽友協会大ホール (Steheplatz)
 楽団:ウィーナー・フィルハーモニカ
 指揮:小澤征爾
 ソリスト:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ
      (Mstislaw Rostropowitsch) ; Violoncello
      ハインリヒ・コル(Heinrich Koll); Viola
 曲目:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
    (Wolfgang Amadeus Mozart)
     交響曲『ジュピター』 C-Dur, KV551 《Jupiter-Symphonie》
    リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)
     『ドン・キホーテ』 騎士的な主題を持つ幻想的な変奏曲
     《Don Quixote》, op.35

 今日は立ち見。少し早めに家を出る。10時過ぎにムジークフェライン到着。既に10人ほどの人が入り口にいた。開場時にはさらに多くの人が並んでいた。真ん中ではないが、最前列の舞台全体が見える場所に立つことができた。

 ジュピター。やはりウィーンフィルの弦はきれいに揃っていて美しい。特にモーツァルトのような音の数が少ない曲ではそれが際立つ。小澤の指揮は指示が細かい。暗譜でふっているのだから、それら全てが頭の中に入っているということだ。ただ、音より先に動くタイプの指揮ではないので、どの程度指揮が演奏に反映されているのか判断することはできないが、指揮と出てくる音の雰囲気はあっていた。指揮者とオーケストラの音の処理の解釈が違っているように見えた箇所もあったが、奏でられる音楽には何も問題はなかったようだ。繰り返し後は小澤の指揮とオーケストラがぴったりあっていた。団員達は、実にのびのびと演奏していた。このあたりが、小澤がウィーン国立歌劇場の音楽監督に抜擢された理由なのかもしれない。

 ドン・キホーテ。騎士を演じるのはロストロポーヴィッチのチェロ。従者サンチョ・パンサの役はヴィオラトップのハインリヒ・コルだ。ロストロポーヴィッチ本人のいたって真面目だがどこか不思議な雰囲気や我が道を行く姿勢は、ドン・キホーテに通じるところが感じられる。そして、彼のチェロは、技巧的ではないが強く心を惹きつける音だ。そのチェロの音が、頭のおかしいおじいさんではあるが人々に夢と感動を与え続けてきたドン・キホーテにぴったりあうのだ。ヴィオラやヴァイオリンのソロは、全曲を通してチェロを引き立てる。随所に見られるソロヴァイオリンの役割は、ドン・キホーテが夢見る貴婦人といったところなのだろうか。美しい旋律が奏でられる。そして曲の随所でドン・キホーテとサンチョ・パンサの会話が聞こえるようだ。ドン・キホーテの敵、すなわち風車や羊の群は、主に金管の激しい旋律で表される。そして、空を飛ぶシーンではウィンドマシーンが登場。この楽器は、この曲のためにリヒャルト・シュトラウスが作らせたの楽器なのだそうだ。ドン・キホーテは風を切って巨人に立ち向かう。風の音を音楽で表現しようとするのではなく、その音を出す楽器を作ってしまうというのが実に面白い。そして、ウィンドマシーンに覆い被さるように重なるオーケストラのうねりが、見事に風を描き出していた。

 観客からはブラボーの声がとぶ。さらに拍手が鳴りやまず、オーケストラが舞台から去った後、もう一度ロストロポーヴィッチと小澤が舞台に足を運ぶ。観客がさらなる賛辞の拍手を送った。