号外7

 Akademisches Symphonieorchester Wien

       3回目のコンサート その1

 ウィーンでの最後のコンサート。マネージャーの Peter から、メールで練習日程が届いた。最初の練習日は10月23日。本番まで13回の練習予定だ。本番は1月26日。丸3ヶ月あるようだが、間にしっかり2週間のクリスマス休暇が入る。いつもの練習場所(ギムナジウムの集会室)に足を運ぶと、そこそこ人が来ていた。知らない顔もちらほら。今日配られた楽譜はドヴォルザークの9番。毎度のことながら、楽譜をもらってすぐ、その場で合わせる。ドヴォルザークの曲は、楽譜を見ると聞いていて感じる以上にリズムが入り組んでいる。多くの人にとっては耳に馴染んだ曲なので、旋律に乗って弾けば問題はないのだが、考えてしまうとわからなくなる、といった感じだ。オーボエとクラリネットの掛け合いなどは、随分苦労していた。

 12月に入って、チャイコフスキーの「花のワルツ」の譜面が配られた。初見大会だ。みんな知ってる曲だし、ホルンは練習しているだろうから、まあ大丈夫だろう。ヴァイオリンは最初何十小節もおやすみ。曲の始まりは、ヴィオラが3拍子のリズムを刻む。ブンチャッッチャ、ブンチャッッチャ・・・ちょっとまって、それってよく聞き慣れたリズムだけど・・・完全なウィーナー・ワルツの3拍子。思わず吹き出してしまった。そのまま続けたらどうなるのかちょっと楽しみだったのだが、やはりすぐ指揮者に止められた。「これはチャイコフスキーだから」と念を押されて、再度始めから。今度はホルンがすんなり入れるリズムになったが、ヴィオラトップの2拍目がまだ微妙に早い。確か彼は音楽大学を卒業したと聞いた気がするのだが。ウィーナー・ワルツのリズムが体に染みついているのか、彼の譲れない誇りなのか。

 ビゼーのカルメン序曲も、楽譜をもらってすぐに弾ける人が多い。有名な曲は、それだけ演奏したことがある人も多いのだろう。それにしても、今まで1度も打楽器の人が現れない。カルメンにしても、ドヴォルザークにしても、打楽器は大変だろうと思うのだが大丈夫なのだろうか。

 さて、本番1週間前の練習日のこと、見慣れない顔があった。ソプラノ歌手のマルガレータ・ヒッレルードさんだ。曲目に、ヴェルディ、プッチーニのアリアが3曲入っていたが一向に楽譜が配られず、本当にやるのだろうか?と仲間達と話していたのだ。その場でアリアの楽譜が配られた。歌の場合、器楽のソロにくらべてテンポの揺れが大きい。当然、歌手の要望にオーケストラがあわせなければならない。あわない部分があると一旦止めて確認し、譜面にフェルマータ記号などを書き込みつつ、少しずつ進めていく。同じ曲を1回2回と回を重ねていくと、だんだんとタイミングがつかめてくる。皆がそれなりに弾けるからいいようなものの・・・。

 このオーケストラに入って3回目の演奏会だが、その間いろいろなことに驚いた。団費(団員が運営のために払う費用)がなかったり、マネージャー(彼は楽器は弾かない)がいたり。しかし、今回ほど驚いたことはない。本番の2週間前になって、突然本番の日程が変わったのだ。(連絡ミスだったのか、変更になったのか、詳しいことは聞かなかったが。)本番は、1日遅れの27日になった。練習が1回増えるのは嬉しいようなものの、予定を入れてしまっていたら大変だ。私も危うくコンサートのチケットを買ってしまうところだった。

...続く...