号外3「アカデミッシュ・シンフォニー・オーケストラ」
    活動レポート

   バロックコンサートに向けて

 演奏会後の次の練習のスケジュールを尋ねると6月にバロックコンサートがあると言う。ちょうど1ヶ月後の26日だ。6月5日の最初の練習日から3週間のみで本番というスケジュールだ。練習は週2回、火曜と木曜。高校の地下にある小さなホールで行われる。

 6月5日、練習に行くとビバルディの『グローリア』とバッハのアリア(いわゆる『G線上のアリア』)の譜面を渡された。練習が始まったときは各パートが辛うじてそろっている程度。ビオラは1人、コントラバスはいない。最終的に集まったメンバーは指揮者のクリスチャンさんとペータ君(学生指揮者かと思っていたが、どうもマネージャーらしい)と10人強の弦楽器のみ。

 次の回に行くとまた別の楽譜を渡された。今度はパーセルの『弦楽組曲』まだボーイングも決まっていないようなので、先日の5月の演奏会前に練習をしていたわけでもなさそうだ。来ている顔ぶれは前回とは微妙に異なり人数は前回よりさらに少ない。本当に26日が本番なのだろうか。

 3回目の練習はマゼールのマーラーのチケットをすでに手に入れていたので、やむなく欠席。

 4回目の練習に行くとマルチェロの『オーボエ協奏曲』の譜面が配られいきなりオーボエのソロとあわせる。各パートにそれぞれ弾ける人がいるので一応音楽にはなる。後半は『グローリア』の練習。練習後プログラムが配られた。帰り道ふと気になってプログラムを開いてみた。そこに書かれていた演奏会場は、なんと憧れのミノリーテン教会。とてもすてきな教会だと何人もの人から聞いていたもののまだ行く機会がなかった教会だ。

 6月14日は祭日のため、練習は「当然ない」とのこと。ただでさえ、練習日が少ないのに・・・。

 6月19日。本番1週間前。パーセルを中心に奏法や強弱の確認を行いつつの練習。相変わらず人は少ない。次の木曜日の練習はなく、23日の土曜日に教会で練習だ。

 23日、バイオリンを抱えてミノリーテン教会へ向かう。教会の横に人だかりができていたが、オーケストラの仲間ではない様子。入り口を探していると胸ポケットに花を差した礼服の男性が近づいてきた。「今日ここで演奏するんですか」と聞かれ、そうだと答えると「よろしく」と握手を求められた。入り口を聞いて教会の中に向かう。パイプオルガンの音が聞こえソプラノがバッハのアリアを歌っている。どうやら練習中のようだ。しかし誰も見あたらない。しばらくきょろきょとしていると、そこに司祭が現れた。「今日アカデミッシュ・シンフォニーオーケストラの練習があると思うんですが」すると「練習は7時からだよ」と教えてくれた。時間を聞き間違えたようだ。外に出て集まっている人々をよく見てみると、皆華やかな服装だ。どうやらこれから結婚式のようだ。とするとさっきの男性は新郎だったのだろう!彼にみつからないように教会の裏をまわってそっと帰った。
 7時に再び教会へ行く。今度はきちんとオーケストラの仲間がいた。合唱団も来ていた。ソプラノのソロ、コントラバス、オーボエ、トランペットもそろい、グローリアの練習。教会で演奏するのは初めてだ。残響時間が長いので、いつもの練習会場やホールとはだいぶ聞こえ方が違う。風呂場で歌ったときのようにとても響いて聞こえるのだが、教会は天井が高いので残響音はだいぶ遅れて聞こえる。演奏者にはフレーズの終わりなど音を出していない時にしか残響が聞こえてこない。聞こえてこないとは言っても音楽として認識しないというだけで、実際には聞こえているのだろう。弾いていて「変な感じがする」のは確かである。しかも、残響がすぐに返ってこないため、耳元で鳴っている自分の出した直接音ばかりがよく聞こえてくる。
 合唱との合わせは、初めて合わせたにしてはまずまずの出来。そして何度か弾くうちにタイミングやテンポ感も合うようになった。オーボエ、トランペットを入れての練習も初めてだ。指揮者の要求するテンポがかなり速いので2人とも大変そうだ。少し不安。外はノースリーブでも歩けるような暑さでも、教会の中はひんやりと寒い。オーボエは楽器が温まらず、なかなかいい音が出てこない。オーボエコンツェルトは比較的テンポが遅いので、残響音と直接音の音程がぶつかって聞こえる。本番当日は観客が入るため音響が変わるだろう。また、観客席の位置からはどう聞こえるのだろう。

 25日。本番前、最後の練習日。この日もミノリーテン教会での練習だ。チェンバロとメゾソプラノのソロが初めて入った。チェンバロが入ると、途端に曲らしくなる。メゾソプラノのソリストはとても綺麗な声だ。しかも、彼女はソプラノU、アルトの2パートを担当する。コンサート前日だというのにも関わらず、オーケストラのメンバーは「相変わらず」な人数。今まで1度も、全員がそろったことはない。本当に明日は本番?!