号外2「アカデミッシュ・シンフォニー・オーケストラ」

2001.5.26 20:00〜
 場所:ユーゲントシュティール劇場(5プルト裏)
 楽団:アカデミッシュ・シンフォニー・オーケストラ
    (Akademisches Symphonieorchester)
 指揮:クリスチャン・シュルツ(Christian Schulz)
 ソリスト:レオ・エルード(Leo Eroed); Fagotto
 曲目:ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten)
     シンプル・シンフォニー Simple Symphony
    ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(W.A. Mozert)
     ファゴット協奏曲 B-Dur, KV 191
    ルートヴィヒ・フォン・ ベートーヴェン(L.v.Beethoven)
     交響曲第6番 田園(Pastorale)

 開演45分前、ステリハ(ステージ・リハーサル)が終わり、楽屋へ退去。楽屋は大きな部屋で、たくさんテーブルが置いてある。片面は窓だが、反対側には大きな鏡が並んでいる。多分、パーティーや何かにも使う部屋だろう。男女一緒の部屋だが、男性はそのまま着替え始めている。スカートの女性は、中学生のように、上からスカートをはいてから着ていたものを脱ぐという方法で着替えている。ズボンの人は、トイレへ。トイレはこうした着替えを想定しているのか、かなり広めだった。着替え終わった人を見ると、ほとんどの女性がズボン。上はノースリーブが多い。私もノースリーブにパンタロンだった。選択は間違ってなかったようだ。着替え終わった面々は、楽器ケースを開けっぱなしで、ぞろぞろとロビーへ。会場に来たお客さん達と談笑しはじめる。団員達がようやく楽屋に集まったのは開演5分前。チューニングをしてすぐに舞台へ向かう。緊張感も何もあったものではない。

 会場はユーゲントシュピール劇場(Jugendstiltheater)で病院の敷地内にあるホール。同じ敷地内にはウィーンの有名な建築家オットー・ワーグナーの設計した教会、アムシュタインホフ教会がある。舞台に出て客席を見回すとお客さんは150人くらいで、客席の7割程度が埋まっている。

 最初の曲はブリテン。ブリテンを弾くのは初めてだが牧歌的な雰囲気でとても気に入った。とにかく弾いていて楽しい。思わず口ずさみたくなるような旋律がいいし、他のパートとの掛け合いも面白い。第2楽章はピッチカートのみ。これは右手がついていかないで苦労した。
 次はファゴット協奏曲。ソリストは若い人で、もしかしたら団員の1人かも。ソリストも団員達もみんな自然にモーツアルトの雰囲気がわかっているようだ。軽く、気張らずに、楽しげに弾いている。練習の時に「ソロが入るときは小さく」と指揮者に何度も言われたが、本番にはきちんとピアノになって、ソロをひきたてることができたようだ。ウィーンフィルのピアニシモの音は、はっとするほど小さい。ウィーンの人達はその演奏を聴く機会も多いだろうから、ピアニシモのありかたがわかっているのかもしれない。

 休憩では、またもや団員達がロビーに繰り出す。開演の合図があってはじめて、楽屋へ向かう。

 後半はメインの田園。練習の時はみんなばりばり弾いていたので、ちょっとやりすぎじゃないかと心配していたが、聴衆には明るくて楽しげな田園らしい曲として聞こえていたようだ。わりと残響時間の長い会場だったため音がやわらかく聞こえたのかもしれない。日本ではベートーヴェンの偶数番と奇数番の交響曲では作品の雰囲気が違うということがよく言われるが、そういった事はウィーンでも言われているのだろうか。今度オケの誰かに聞いてみよう。

 さて、アンコール。まずはティトーの慈悲。私としては一番うまく弾けたかな?盛大な拍手があったので(なくても?)アンコール2曲目はヨハン・シュトラウスのワルツ、春の声。これぞウィーン。ブンチャッチャ、ブンチャッチャ、のリズムが絶妙。日本人じゃ、こうはできない。ウィーン人の体に染みついたリズムなのだろう。旋律は、速く弾いた分だけ休符を長く取る、といった具合に目一杯歌う。曲の完成度は、この曲が一番上だろう。練習の時はみんな好き勝手に弾いているように感じていたのだが、本番になるときちんとそろっているのが不思議だ。

 演奏会終了後は、みんなバラバラと帰途につく。日本のような全員での打ち上げはないようだ。私はトランペットの子と聴きに来てくれたお友達と一緒に、スペアリブを食べに行った。うっかり終電を逃してしまったため、夜行バスを乗り継いだ後、徒歩30分。ようやく家にたどり着いたのは夜中の2時だった。