番外編 グラーツでオペラ2「神々の黄昏」

2001.4.14  
 場所:グラーツ歌劇場
 演目:四部作「ニーベルングの指輪」〜第三夜 楽劇「神々の黄昏」
    序幕+3幕
 台本・作曲:リヒャルト・ヴァーグナー(Richard Wagner)
 指揮:ウルフ・シルマー(Ulf Schirmer)
 演出:ギスベルト・イェケル(Gisbert Jaekel)

 とにかく長かった。4時半に始まり、終わったのは10時過ぎ。見ている私が立ち見だったわけでもないのに疲れたのだから、演じている人達、弾いている人達はどんなに大変だったことだろう。グラーツで観たオペラの内では一番セットが大がかりだった。しかし、現代演出であることに変わりはない。ギービヒの館がまるで古びた倉庫といった風情なのは、「工夫がある」と言えなくもないが、いかがなものか。部屋は中二階の通路にぐるりと取り囲まれている。中央にはまるで卓球台を4つ並べたような大きな赤茶色のテーブルが置いてあるだけだ。ギービヒ家の面々はキャスター付きの事務椅子に座っている。といった具合の演出だ。結婚式のために神々への生贄を狩る場面では、マシンガンまで登場し、まるでやくざの出入りだった。

 なかなか面白かった舞台装置は第三幕のラインの娘達の場面だ。舞台の中央に分厚い壁で区切られた空間があり、真ん中に大きなベッドが据えられている。天上からは球状の灯りがいくつかぶら下がり、色とりどりでとてもモダンな部屋だ。ラインの娘達がシルクのガウンをまとっているせいもあり、見ようによっては森の中の娼館といった雰囲気なのだが。

 ブリュンヒルデの部屋はソファーがひとつ置かれているだけだった。現代演出のオペラを観ていると、ソファーを使っているものがとても多い。ソファーひとつで、部屋という空間を作りだすことができる。しかも、座ったり、のぼったり、寝たり、後ろに隠れたりと、多様な使い道がある。しかし、毎回ソファーだけというのでは能がない。「ルル」のソファーは唇型をしたとても奇抜なデザインで、それが場面とうまくあっていた。舞台装置を簡素化するには、それなりの工夫が必要だろう。

 ワーグナーのオペラ、こうやって現代風にアレンジしたとき5時間近くもかける必要は果たしてあるのだろうか・・・と甚だ疑問。