番外編 グラーツでオペラ1「アイーダ」

2001.4.12 20:00〜
 場所:グラーツ歌劇場
 演目:歌劇「アイーダ」《Aida》全4幕
 台本:アントニオ・ギスランツォーニ(Antonio Ghislanzoni)
 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)
 指揮:ウォルフガング・ボツィック(Wlfgang Bozic)
 演出:ペーター・コンヴィチュニ(Peter Konwitschny)

 舞台中央には赤い布のかかったソファーがある。周りは床も壁も白一色。ストーリーはほとんどこのセットの中で展開される。完全な現代演出。台詞はイタリア語で、舞台の上にドイツ語の字幕が出る。私はイタリア語はまったくわからない。ドイツ語の字幕も半分くらいわかる程度。しかし、仮にどちらかの言語がわかったとして、ストーリーをきちんと把握できるだろうか?古典的な(ストーリーに忠実な)演出なら、台詞がわからずとも見ているだけで状況はつかめるが、今回のような経費削減型の現代演出の場合、それが難しい。

 勝利の祝賀のシーンはそれなりに面白い演出だった。エジプト王も祭司長も皆、誕生日会でかぶるような三角帽をかぶり、クラッカーのカラフルな紙ひもを首に下げて登場。ワイングラスを片手にドンチャン騒ぎが始まる。凱旋行進も祝賀の踊りもない。音楽が流れるあいだ、エジプト王、王女アムネリス、ラダメス、祭司長ランフィスの4人だけで間を持たせなければならない。ついにはプロンプターまで顔を出してワインをついでもらい、乾杯!

 有名なアイーダトランペットは、なんと楽隊服のトランペット2人が私のすぐ横に立った。私の席は最上階の左側だった。すぐ側で聞こえる音と階下から来る音ではだいぶ時間差ができてしまうため「聴く」という意味ではあまりよくはなかったが、オペラを観る機会が少ない私にとっては嬉しい状況だった。

 生き埋めの刑を宣告されたラダメスが地下牢に入れられ、潜んでいたアイーダと再会する。2人が手を取り合って天国での幸せを願う最後の場面で、周りの壁が全て倒れ、舞台後ろの通用口まで見通せる状態に。扉は開けられており、なんと外を車が走り通行人が通るのが見える。そこに向かってアイーダとラダメスは手を取り合って歩いていくのだが、当然倒れている後ろの壁を踏み越えていく。アイーダがバランスを崩したかと思うと足下でバキッという音が。続けてラダメスの足下からも。2人ともそっと歩いていたのだが壁を踏み破ってしまったのだ。静かに終わる場面の筈なのに・・・。

 アイーダでは祭司長ラダメスのバスが印象的なことが多いが、今回はエチオピア王 (Stephen Owen) がとても良い声で、演技も迫力があった。