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・パワーフィルターとは パワーフィルターとは、K&N社製の空気清浄フィルターの商品名なのだが、同系統のものも総称していうことが多い。何をするためのものかと言えば、メーカー純正のバイクのキャブレター吸気側に装着されているエアークリーナーボックス(以下「エアクリ」)の代わりに装備するものである。エアクリを基準としたパワーフィルターの特徴は、空気清浄能力は少々劣るが、吸気抵抗が大幅に減少し高回転域(エンジン回転数)において空気流入量が増加する、というものである。あと、少々だが軽量化になる。 さて、空気流入量が増加すると何かいい事があるのか? ……あるんですこれが。エンジンと言うものは、エンジン回転数が上がるとその分だけ空気を必要とする。エンジンは吸気抵抗があっても無理やり空気を吸い込むのだが、その「無理やり吸い込む」と言う事に出力が使われるのである。最大出力が伸び悩むのだ。よって、吸気抵抗が減少すると言う事は高回転域に無駄なパワーを浪費しない、つまり最大出力が上がるのである。レースマシンが直キャブ(クリーナー無装備の意味)なのは最大出力を得るためである。 しかし、いい事ばかりではない。中低速トルクが無くなるのである。これはある程度の吸気抵抗が無いと中低回転域においてはトルクが出ない、俗に言う「下がスカスカ」状態になる。やはり完璧なものは無いのだ。チューニングとは、バイクにどのような性格を持たせるかであってなんとなく性能をアップさせる事ではないのだ。つまるところパワーフィルターとは、中低回転を犠牲にしてその代わりに高回転域の性能を高める効果があるのだ。 そういったデメリットがあるにもかかわらずジェベルに装備させようと考えたのは、……実は単にキャブレターをいじってみたかったのである。キャブをいじるのならついでにパワーフィルターをつけちゃえ、動機はそれだけ。はっはっは。 |
![]() キャブレターのしくみ バイカーズステーション99年8月号より |
・具体的な改造手段 本来ならばここでキャブレターの仕組みを説明したいのだが、いかんせん説明がしづらい。原理は簡単なので個人が勉強するには理解しやすいのだが、原理を簡単に説明することが私には出来ないのである。それに説明しても楽しくない。ということでここではキャブの説明は割愛させて頂く。気が向いたら、また……。 さて、実はこのパワーフィルター化計画立案はごく最近で、99年の8月である。それでいてパワーフィルターがジェベルにくっついたのが同9月下旬である事を考えると、まさしく急転直下絨毯爆撃の展開の早さである。前輪リム17インチ化計画(前輪リム18インチ化計画の前身)発案から既に2年が経過しているにもかかわらず全く進展していない事を考えると、驚愕のスピードである。私はサラリーマンでありそんなに暇人ではない。週一でバイクさわる程度である。ではなぜ、そんなに簡単に事が進展したのか。実は取り付けるのはえらい簡単なのである。エアクリを外してそこへパワーフィルターをつけるだけなので、比較的エアクリを外しやすいジェベルは容易に交換できる(といっても実は無理やり外したのだが)。パワーフィルター入手も比較的容易で多くの用品店に売っている。これだけ書くと簡単な改造のように思えるが、それは改造が簡単なだけで調整に問題がある。 何を調整するのかと言えば、燃料(ガソリン)の噴出量を変え、混合気の濃度を調節する。調整する箇所は主に3つ、以下にスロットル開度、名称、調整方法を示す。 スロットル開度・全閉〜1/8:パイロットスクリュー回転量→ドライバーで回す ・1/8〜1/2:ジェットニードル段数→クリップ位置変更 ・1/2〜全開:メインジェット番号→メインジェット交換(1個500円程度) つまりキャブと言うものは、スロットルの開け具合によって主な燃料噴出を受け持つ部分が違うのだ。だからこそ細かい調整ができ、最適なセッティングを出すことが出来る。私には今でも信じられないのが、エンジン回転数のコントロールはキャブ内部のスロットルバルブの開閉によって行われるということである。それだけでエンジンをコントロールできる……昔の人はすごいなぁ。 話がそれたが、その3つを調節し最適なセッティングを出すのだが、これが難しいのである。何が難しいって、素人には「わからない」のである。わからないというのも、混合気は濃くても薄くても同じような性格を示すからである。混合気の最適なセッティングはきっちりとした出し方があるわけではなく、走行中に最も良い性能が出ればそれが最適なセッティングなのである。これが大変で、調整しては走り調整しては走り……の繰返しで、その度にキャブを開けなければならない。この作業はコツのわからない素人にはかなり苦痛なものとなる。あえてそれに手を出すのは無謀に近い。が、自分の勉強としてこれはやっておきたいのである。すまん、ジェベ公、君は実験台だよ……。 |
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・パワーフィルターを買う パワーフィルターは有名であり結構どこの用品店でも購入する事が出来る。私のよく行く店にも置いてあるのは確認してあったので、あとはジェベ公のキャブ吸気側外径を測りそれに合ったものを買えば良い。実測するとφ50であった。早速店に行くとφ50は無かったが、XJR用φ51が置いてあった。価格も「4個14,000円バラ売り可」と書いてあったので1個3,500円、思っていたよりも安い。1mmぐらいの誤差はバンドの締付け量で吸収できると思い、これを購入する事にする。以下店員さんとの会話。 私「すいません、これ単品で下さい」 バイク関連の店の店員とは思えないぐらい礼儀正しい人であった。意味も無く安心する。 私「えー、ジェベル125なんですけど……」 と言ってカタログとノギスを取り出した店員さんを慌てて制止する。 私「いやいや、もう測ってきてますんで、大丈夫です。これで付きます」 店員さんはガラスケースからパワーフィルターを取り出しレジに持っていく。あー買ってしまったよ、これから苦悩の日々が続くのかー、ニヤニヤ、とわけのわからない笑みを浮かべているところに店員さんの声。 店員「えー、レジお願いしますー。パワーフィルター単品で4,000円」 なんでやねん。 ……あまりのことに事態が把握できなくてつっこむにもつっこめず、しかたなく何も言わずに買った。確かに単品いくらとは書いてなかったけど……、まぁえーか500円ぐらい。 ・パワーフィルター装着 何はともあれパワーフィルター入手に成功、早速交換作業に入る。エアクリはフレームにビス3本とキャブにバンドで接続されているのを取れば外れる。なんだ簡単だなぁ、とか思いながらいざ取り出そうとするとキャブとエンジンとエキパイが邪魔して出てこない。およ? 取れない……。もしかしてエンジン下ろさないと取れないのか!? そんなばかなぁー!! とかやっているうちになぜか取れた。……うーむ、取れたのはいいがこれぢゃ元に戻したくても戻らないかも知れんな……。まぁいいや。 とりあえずパワーフィルター化の傾向を見るためにジェットニードルのクリップ段数を4段にし(混合気を濃くする)実走してみる。エンジン始動、……ちゃんとかかる。危惧された吸気騒音はほぼ以前と変わり無い。どちらかと言えば小気味良い音が聞こえる。何か期待させるものがある。混合気があんまり薄いとエンジンをいためるらしいので恐る恐る走ってみることにする。低速でのレスポンス、トルクには影響が出ていないようである。よしよし。 いざ国道に出て加速する。中速域まで回す(スロットル半開ぐらい)と「ねびねびねびねび……」というカッコイイのかカッコ悪いのかわからない音がし出した。なんとなく居心地の悪い音である。しかし性能に影響が無いようなのでよしとする。速度50km/hに達し、メインジェットが効き始めるところまで来たようである。よっしゃ!! と意味もなく気合を入れ、スロットルを当てるように開き始める。すると、 ねびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!! という変な轟音と共にエンジン回転数が急上昇し、それに反比例してトルクが落ちてゆく。……あかんて……。 まぁノーマルのメインジェットだから混合気が薄いのだろう。エンジンをいためるかもしれないのでここでやめる事にする。それにしても中低速域の性能が落ちていない事は幸運であった。上のセッティングさえ見れば良いので調整が楽だし、何より走らなくなるという最悪の事態は避けられたのだ。 |
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・メインジェットをつける メインジェットは用品店で120、135、150の3つを入手。1個500円もするのだが所詮単気筒、1個ずつで良い。で、1,500円、安いと言えば安いのだが、セッティングが見当ハズレの場合余分なものも買わなければならないとなると結構な出費となる。こんなこと4発エンジンなんかじゃやってられない。その3つの番手を選んだ理由は、高速域の混合気がノーマルより薄くなっている(理論上。確かめたわけではない)ことから考えてノーマル110であることから120を少ない側とし、多い側は適当に30振って150、そしてそれらの中間の135を選んだだけの事である。これは単に勘なので実際はどうなるかはわからない。確かに根拠のある憶測は行っているのだが、一般的でないジェベル特有の性質がある可能性が多分にあるので、あんまり考えても仕方が無い。 さて、早速メインジェット交換だがまず150から行った。あれだけ吸気抵抗がデカそうなエアクリを外したんだから150ぐらいがちょうどいいんじゃないかな、と全く根拠の無い憶測をたてたからである。実装して実走、スロットル半開から「ねびー」やはりうるさい。くそー、共鳴室作ったろかー。それはいいとして、それ以上開けるとトルクが下がる。ええっ!! それぢゃ前と変わらんやん!! 問題はこれが混合気が濃いのか薄いのかがわからないことだ。最適な値を飛び越してしまったのか、それともまだまだ足りないのか。まぁ何はともあれ残りのメインジェットを試すしかない。で135で走行、でもやはり特性は変わらない。な、何ィ〜!!(滝汗) わ、わからない……。 |
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で、後日すぐにも120を試したいところであったが、バイクショップの人に「ブリーザホースの処理はせなあかんで」と言われた。ジェベルはブローバイガス還元法なるものを採用していて、ブリーザ(エンジンオイルが異常加熱等に出てくるところ(たぶん))がエアクリに直結している。エアクリを外せば、当然オイルは行き場を失う。このことはサービスマニュアルに書いてあったことで既に知っていたのだが、オイルが足にかからないならどうでもいいやと思っていた。ところがどうやらそういうわけにはいかないらしい。まず問題となるのは出たオイルでリアタイヤが滑ることである。もうひとつ言われたのは、ブリーザホースが短いとゴミと水が進入する可能性がありホースを長いものに換えるかしたほうが良いという事である。 |
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・相次ぐトラブルのため作業中断 実は様々なトラブルにみまわれたのだが、計画そのものに関係無いのでその過程だけ書くことにする。 1.ブリーザホース交換まで走行を見合わせた。 上記のようなことがあり約4ヶ月間まともに走らせることが出来なかった。もちろんキャブセッティングなど程遠い次元の問題である。まったくもってVTR250を購入しておいて良かったと思う今日この頃であった。 |
![]() ビヨヨ〜ン |
・復活のジェベ公 気を取り直して再度キャブセッティングに挑戦する。仕切り直しで前回のセッティングであるメインジェット135、ジェットニードル段数4段で具合を見ることにする。実走してビックリ、なんと高回転域の状態が前回より良くなっていたのである。高回転でトルクが落ちていくのが少し粘りが出てきているのだ。音も高音部が取れ、全体的に低くなっている気がする。いや、それでも「ねびぃぃぃぃ!!!」という轟音であることには変わりがないが。まぁ、でも良い方向だし久しぶりのジェベ公だったので、うるさいながらも中低速トルクは十分使えるからそのまま10kmほど散歩に出かけてしまった 。 改善された理由はグラスウール交換しか見当たらないが、再現実験しようにも古いグラスウールは捨ててしまっていたので確証は無い。それ以前に、別に出力/トルク&排気騒音を計測してるわけでもないので、特性が変化しているかどうかも謎である。何分体が計測器なので正しいかどうかわからない。まぁ、疑っても始まらないので信じることにする。 後日、メインジェット130、140を購入する。135の具合が良さそうなのでなんとなく+5と−5を選んだ。つーか、私はなぜメインジェットを買ったんだろうか。今から考えたら120と150を試してからでも良かったと思うのだが・・・まぁいいや。まず前回のセッティングで走行する。前にも書いたが、キャブセッティングは体感でしか判断できない(プラグの焼け色では判断しにくいそうだ)ので、まず比較するセッティングを体に覚えこませる必要がある。うーん、出力/トルクを計測できるシャーシダイナモを使えたらねぇ。そんなもの持っているショップを知らないのでどうしようもない。 話を戻して、走行後にキャブを開けるとインテークマニホールドがボトボトに濡れていたので、濃いのか? と思い、まず130を試してみることにする。すると高回転域は似たような症状だったが、なんと中低速トルクが落ちていた。以前に乗ったことのある50cc4ストのホンダJAZZよりパワー無い。ってことは気分は4ps以下? ダメじゃん。次に140を装着、すると高回転域はどうも変わらないが、中低速トルクが130、135より増しているようである。 うーむ、困った・・・。問題なのはメインジェットが中低速トルクに影響を与えていることである。影響するのは当たり前なのだが、計画当初からメインジェットの調整しか考慮していないので、こうも簡単に中低速トルクに影響が来るようではジェットニードル段数も面倒見なくてはならなくなる。これに手を出すとなると倍の労力がかかる。そうでなくても時間食うし、あんまり時間かけてないわで作業が長期化している(まぁトラブルもあったが)のに・・・。 |
![]() 落ちてるメインジェット |
・ジェットニードルも手を出す・・・ところが メインジェット130は薄いと判断して、140と150を使用してさらにジェットニードル段数を3段と4段でそれぞれ様子を見ることにする。つまり4パターン。ジェットニードルに手を出すとセッティングの手間が倍になるのだ。いや、倍以上かもしれない。とほほ。 日を改め、とりあえず前回のセッティングであるメイン140、ニードル4段で走行して体に覚えこませようとした。辺りはもう春日和、バイク乗りにはいい時期になってきた。いざ出陣、今日はジェベ公も調子が良さそうである。国道へ出て気持ちよくスロットルを回すと、ボルボルボル・・・となんか前回よりもトルク感のある音が。あれ? なんか前と違う・・・。トルクフィールも違う・・・前よりもいい。なんかいけそう・・・。意を決してスロットルを全開にしてみた。 バルバルバルゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜!!!! お前はバオー来訪者か。それはさておき、体感6,7千回転付近でトルクの谷が存在するが、それを越えるともりもりとトルクが伸びて加速し出した。おおっ!!! なんじゃこりゃ!!! けっこういけるぞ!!! 前回の走行から結構間があった(休日に雨が続いた)のでなんとも言えないが、この原因として春になって外気温が変化したためと考えることが出来る。というのも、本来標準装備のエアクリは外界環境変化を吸収する効果があるからだ。だから単一セッティングで一年中晴れだろうが雨だろうが問題無く走ることが出来るのである。つまり今回の症状は単に外界環境が偶然にも良い方向に動いただけかもしれない。 なんにせよ良い方向であることには変わり無いがセッティングをつかんだわけではないので、当初の予定通り調整は行う。 (140、4段) → (150、4段) → (150、3段) → (140、3段)の順で実走する。まず、140から150に変更すると高回転域での音が低くなった。うるさいのには変わり無いが・・・というよりそれ以外に何も変わりが無い。あれー? メインジェットの番手を10も上げたら変化があって当然なのだが。まぁ考えていても仕方が無いのでニードル段数を4段から3段に変更してみる。が、これも変化が無い。うにゃぁ〜? なぜ変わらんのだ? で、メインジェットを140に戻してみる。これで音以外に変化する点が出てくるはずが無い。おりゃ(スロットルを回している感じで)。バルバルゥ〜〜〜。うーむ、やはり音以外の変化は無し。 こいつは困った。メインジェットを換えても音しか変わらないとし、ジェットニードルに至っては変化無しときた。変化しているのかもしれないが、いかんせん体感でしか判断していないので微妙な変化がわからない。短距離走行試験と称して、一番薄い140、3段のセッティングで10kmほど走ることにする。すると、なんと高回転で回し続けると「イキツキ」と呼ばれる変則的なミスファイアが発生し出した。イキツキは混合気が薄いと発生する。あいたー、やっぱり薄かったのか・・・。 ・奇怪千万、さらに泥沼にはまる 後日、150でイキツキが改善されるかどうか試してみることにする。いつものようにキャブのフロート室を開ける。カパッ。 ??? 外したフロート室になんか黄土色に光るものが落ちていた。なんじゃこりゃ、と拾ってみた。よく見てみる。ジィ〜〜(よく見ている)。 メインジェットやんけ なんとメインジェットが取れていたのだ。は? お前、メインジェット無くても走れんのか? とジェベ公を見たが、その本人はそれがどーしたと言わんばかりにソッポ向いている。まぁそれは彼がこっちを向けないだけだが。 唖然。メインジェット無くても、こいつ、走れるのだ。そりゃーメインジェット140だろうが150だろうが無くても走れるんなら変わるわけが無い、と納得してしまった。いや、でもそれは冷静に考えたらそんなわけは無いはずなので、これは単なる偶然であるということで処理することにする。 |