おまけのVTR250

抑圧された爆音が生み出すくぐもった重低音。
低速域を越えた途端、吹け上がりは遅いがどんどん伸びてゆくエンジンとそれに呼応した5速リターン式の大味なギア。
ヨーロピアンスタイルのトラスフレームとテールカウルを纏うデザイン。
ホンダVTR250。
……なぜ私はこんなものを買ってしまったのだろうか……。
○購入動機
私は99年9月にVTR250を購入してしまった。ジェベルから乗りかえるということではなく、もう1台必要となったからだ。理由は3点、
1.ジェベルの代用車が必要であった事。
2.友人たちとのツーリングにジェベルでは役不足力不足(2011/09/07訂正)である事。
3.新車を購入したかった事。
である。
1に関しては、ジェベルの改造計画が前輪リム交換とキャブレター調整までに至り一時走行不能に陥る危険性があるため、私自身の機動力が低下する可能性がある。私は車も無ければ車の免許さえ持っていない。どうしても中長距離の移動はバイクになるのである。そうなるともう一台必要となるのだ。
2に関しては、友人たちとのツーリングが徐々に高速化しており、山を登ると格段にスピードが落ちるジェベルではついていけず、しまいには高速道路の使用まで迫られてきた。ジェベルは高速道路に乗れない(乗ったところで死にそうになるだけだが)。もはやジェベルでは限界である。
3に関しては、新車が欲しかったと言うのは、新車を購入した事が無かったからである。ジェベルは中古車でいろいろと謎な点が見られたこともあり、新車を1から育ててみたかったのである。完全なメーカーセッティングを味わいたかったということもある。シェイクダウンの経験も無かったし。
ではなぜVTR250を選んだか、それには以下のような苦悩があった。バイク選びに関しての絶対的条件が「オンロードバイクで4スト水冷90°Vツインエンジン」であった。長年オフロードバイクに乗っているで二台目となるとオンロードになるのは当然であると言えよう。それにツーリングに使うのだから2ストは除外である。次に考えたのが「単気筒と4気筒はイヤ」である。単気筒はうるさいのと振動が出るのをジェベルでイヤと言うほど味わっている。4気筒は扱いやすいのだが、重い。それにスポーツバイクが猫も杓子も4気筒というのが気に食わなかったのもある。となると2気筒か3気筒だが、3気筒は市販のバイクで現在存在するのだろうか? 多分無い。有ったところでそこまで特殊なバイクは嫌だ。ということで2気筒になるのだが、2気筒なら一次振動バランサーが不要となる90°Vツインに興味が行くのである。
次に購入基準だが、
1.排気量250cc
2.ツインチューブフレーム又はそれに類似したフレーム
3.ハーフカウル装備
の3点。この大型車ブームの中でなぜ250ccなのか。まぁ、まず大型免許が無いことが大きな要因だが、それ以前にジェベ公に乗っている私にとってみれば250ccは大型車同然のパワーを持っている。約2倍の出力をたたき出すわけだから、400ccからリッターマシンに乗りかえるのと同じ効果がある(そんな単純なものではないが)。それに・・・大型車では足が届かないのだ・・・。
さて、上記に購入基準を挙げたがそんなものはこの世に存在しない(おそらく)。無いものは仕方がないので妥協することにする。
1を除けばスズキSV400Sが該当する。このマシンはフレームとエンジンが大変美しく、しかも「ライトウェイトVツインスポーツ」と銘打ってるのがたまらない。まさに私が求めていたオンロードバイクである。何回か買いかけたのだが、いかんせん顔が……あのリトルグレイかはたまたウルトラマンかという顔つきが買い控えさせるのだ。うーんスズキはデザインセンスがいまいちなんだよなぁ。それに常時点灯が片目なのも嫌。おしい、おしすぎる……。
2を除けばホンダゼルビスが該当。これは根っからのツアラーであり、わたしが求めるものなのだが、単純にフレームがきらいなのだ。それと乾燥重量が150kgを超えていることと、生産が終了しているので新車で購入する事が難しいことが買い控えを起こさせる。エンジンも良く回りそうで良かったんだが。
3を除けばホンダVTR250が該当。VTR250はゼルビスの後継機であるにもかかわらず、全く違うバイクになっている。ごっつうスタイリッシュな仕上げ(DUCATIのM900に似ている・・・いや、似せてある)。まずそこが気に入らない。それにトラスフレームなのはいいが、SVのトラスフレームと比べると評価が下がる。それに、何より私はネイキッドが嫌いなのだ……。
結局のところVTR250を選んでしまったわけだが、決め手はエンジンであった。このエンジンは20年もの歳月を経て現在まで使用され続けている信頼性の高いものであり、やはり250ccにしたかったのだ。ここでSV400Sは除外になり、新車が欲しい(エンジンも新品だから)ということで、ゼルビスも除外となる。
ネイキッドを買ってしまった……それだけはしたくなかったのだが、やはりバイクはエンジンが命であって高速での整流効果やデザインは二の次である。ビキニカウルは社外品であるのだが、私はそもそもビキニカウルは嫌いなのだ。特にノーマル丸型の上から装着するのはダメ。うーむ、ゼルビスのカウルつかないものかなぁ……。
○インプレッション
このバイク、実は超コストダウンモデルである。¥420,000-(当時。現在は¥10,000-高い)……水冷250ccバイクの中ではかなり安い部類に入るのではないのだろうか。コストダウンと言えども走行性能は設計力の問題なので、走りに関してはコストダウンは関係が無い。じゃあどこがコストダウンなのかと言えば、部品流用と部品点数削減である。
部品流用されていると思われるのはエンジンとライトまわりである。エンジンはもちろんVT系なので金型(砂型?)流用は当然考えられる事だが、どうも専用に修正していない様で謎の形状があちらこちらに見られる。つまり「安いんだから気にするな」ということだ。ライトまわりは、確かめたわけではないが、外観から見てホンダホーネット250/600のライトまわりそのもののはずである。まぁ、ネイキッドなんてみんな同じ顔なわけだからどうでもいいと言えばどうでもいい。部品点数削減に関しては、タコメータが無い、シートとリアカウルが一体化している、ヘルメットホルダーが無い。
タコメーターが無いのは、最近流行りのストリート系バイクには付いてないものなので、無くても許されると考えたのだろう。ジェベルにはタコメーターが無いので今度はタコメーターとやらを実感できると思っていたのだが……、少々残念である。確かにいらないんだけど。
シートとリアカウルが一体化しているというのは、キーでシートを外そうとするとリアカウルごと外れるという事である。何が凄いと言えば、それを外すと写真にあるようになんにも無くなるのである。これは確かに部品の数を減らすことが出来る。すばらしい。しかし、私はシートを外すたびにいつも考えてしまう、「これでいいのか」と(でも最近なれてきた・・・)。
ヘルメットホルダーが無いのは、ワイヤー式のヘルメット固定方法を採用しているからである。その「ワイヤー式」と言うのは、ヘルメットのリングにワイヤーを通し、その両端をシートを外したところにある車体フレームのフックに掛け、シートを装着する事によりワイヤーがつぶされてヘルメットが固定されるというものである。はっきり言って「付けれらる」程度で、苦肉の策としか思えない。最近はヘルメットを持ち歩く人も増えたので、付けばいいと考えたのだろうか。ほんと細かいとこには金がかかっていない。確かに初期投資が安いのは嬉しいことなのだが。
あと、思ったよりも重かった・・・。水冷250cc4ストオンロードバイクの中では最高級に軽いのだが、今までがジェベ公だっただけに20kg増(装備重量はもっとあると思う)は痛い。持ち上げようとしても持ち上がらない(持ち上げるなって? そうかも知れん・・・)。
○走行性能
まず走ってみての感想だが、オフロード乗りがオンロードに乗るとみんなそうなのかも分からないが、非常に肩がこった。話によると特にVTR250はハンドルが遠いという意見もあるらしいが、私は友人某リラ君のCBR250と勝手にハンドルが切れ込むセパハンスーパーフォアぐらいしか長く乗ったことないので、そのあたりはわからない。あと、初めはニーグリップの感覚がおかしかったので膝が使えてなかったことも原因の1つだろう。ニーグリップはシート後方に座ることで解消した。
初めのうち困ったことは、回転数2000あたりで負荷がかかるといともたやすくエンストしてしまうことだった。低速トルク重視のエンジンがそうだと結構困る。「あ、ちょっとギヤが1速高かったかな?」と感じた瞬間、クラッチを握る間もなくエンスト。コーナリングでこれが起こったら死んでる。しかし、走行500kmでオイル交換して、同時にその当時売り出し中だったオイル添加剤ZOILを注入したらなぜか直ってしまった。ZOILが良かったのか? それともオイル交換が良かったのか? 今となっては謎である。勝手に直ったということは、このエンスト症状はおそらく製品の個体差であると考えられるので、VTR250全数がその症状を持っているとは考えにくい。だからこのバイクを買いたい人は買って下さい。
乗りなれてくると非常に扱いやすかった。低速トルクがあるので街乗りは楽に流せて、ここぞと言うときにアクセル回して高回転域を使えばキビキビ走れる。コーナリングもきちっと決まるし(ジェベ公は引き舵だからだが)腰が使える。ネイキッドは全てがそうなのかも知れないが・・・こればっかりは多くバイクに乗ってないので判断しがたいところだ。
それと私はリヤ乗りの人なので慣れてきたころはよくリヤがスライドした。オンロードバイクは全てそうなのだろうが、フロントブレーキがよく効くのである。ジェベ公に乗っていたときはほとんどフロントブレーキを使わなかった(使わなかったと言うよりは使えなかった。だからジェベ公のフロントブレーキが死んでいることに長い間気づかなかったし困らなかった)のでかける習慣が無く、VTR250でブレーキングすると前後バランスが崩れてリヤが滑ってしまうのだ。しかし滑ってもコントロールしやすかったので事故には至っていない。
高速走行はつらい。やはりカウルレスとなると風の影響はかなりのものである。ぬわわkm/hまでは問題は無いがぬふわkm/hになると大変である。ぬふわkm/hでもエンジンとしてはまだ余力があるようだが、いかんせん私はスピードを出すのは嫌いなのでそれ以上の速度で走ったことが無い。やっぱりカウルは欲しいよなぁ・・・。
○ツーリング性能
私はこのVTR250に長距離ツーリング性能を求めたのだが、これには大満足している。峠道に関しては、低速トルク重視のエンジンなため実用回転域が広くまたギヤが大味なためほとんどギヤチェンジの必要が無く、4速または3速で走りつづけることができる。これは非常に楽である。燃費もツーリング時は30km/lに伸びるので、13lタンクいっぱいで最大航続距離は400km弱あり申し分ない。しかもパワーに余裕もあり長時間のライディングでもトラブルが生じないので安心である。えっ!? そりゃ当たり前だって? いや、ジェベ公は走ってて不安だったから・・・。
それと驚いたことにこのVTR250、一見荷物が載らなそうに見えるが全くそんなことはない。本体に装備されている荷かけフックが後部シート下に2個あるだけでどうやって荷物を載せるか不思議だったのだが、これが結構考えて作ってある。どういうことかと言えば、後席幅より広い荷物を置いてロープを2本クロスがけすると外側からフックにアプローチしてくることになる。するとこのフックは外向きに飛び出ていてホールド感も良く、わりと下にあるのでかけやすい。2本のロープをまとめたMOTOFIZZ製のロープが最も適していて、モンベルのドライダッフルが非常にピッタリあうのである。もちろん荷かけネットでも十分使えるが、前後方向からのアプローチには弱い(しかもリヤカウルを傷つける)のであまりお勧めはできない。ちなみに私はテント、マット、バッグの長モノ3点を横向きにまとめてくくっていた(今はテントをモンベル製のアルパインドームに買い換えたのでマット、バッグのみである)。うーむ、やるなホンダ。
あまりに荷物が載らなさそうだったので、コワース製のフェンダーレスキットを買ってフックを増設してやったのだが全く使ってない。しかもこのフェンダーレスキット、¥12,000-もしたのに全然スタイルが変わってない・・・。無駄金だった。
・・・長い間、放置状態でしたが、近いうちに更新することになります・・・
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