2006年 1月 ドラマ           君の知らないところで世界は動く  NHK  平成18年1月1日
スタッフ
■原作〜片山恭一
■脚本〜岡田恵和
■主題歌〜ニール・ヤング
■協力〜宇和島市
■制作統括〜越智篤志
■演出〜松園武大
      大友啓史
■制作〜NHK松山放送
キャスト
北村和哉〜鶴見辰吾
杉浦カヲル〜奥貫薫
(70年)
北村和哉〜細田よしひこ
ジーコ〜浅利陽介
杉浦カヲル〜前田亜季
杉浦みどり〜キタキマユ
北村弘〜斉藤暁
北村友子〜渡辺えり子
杉浦祥子〜大沢逸美
杉浦秀雄〜三浦浩一
 評価とコメント

君の知らない★★★★
青春なんだけど、余りにも美しすぎないかい〜〜? 田舎の77年の青春は、こんな初々しいものだったのかもしれない。カヲルの摂食障害がメインのテーマだった。当時は過食症は珍しい病気だった。あっても、入院することはなかった。自分が卒業して医者になったのは75年だ。入局した内科に、当時珍しい心療内科に興味を持っている先輩がいた。拒食症の患者が何人か入院していた。行動療法が主たる治療だった。だから、結構、堅苦しい者だった。今は、どうなんだろうか。ありふれた病気で、自分と真剣に向き合う一つの場面なのかも知れない。青春そのものだ。今思うと、家族のあり方のような気がするな。そこを修正すればいい。
主人公の3人の親子関係が描かれた。和哉の親は、受容的で、支配的でなく、拒否的でない。だから、和哉は余り屈折した人の心を感じなくてすんだ。自由に生きても、親は許し、支えてくれた。理想的だが、他人を思いやることが苦手なようだ。友達にも、自分の思いで、支配しょうとしたのだ。だから、青春特有の愛を妄想して、カヲルにも支配的に接した。そしてカヲルには自分を支持するようにしていた。和哉の愛の挫折は、愛するものの成長によってなされたのだ。悲しい。
カヲルの父は支配的だった。それは姉がいうように、カヲルの依存の心によって強化されていた。支配(=安心)されたいが、同時に独立(=不安)したい、二つの中で揺れ動いていたのだ。そして、父と同じような行動パターンの和哉を好きになることで、二重の罠を自らに課した。複雑になった。依存と独立の葛藤から、食べるという、もっとも動物として自然な行動が、自然にできなくなった。その蟻地獄から、救ってくれたのは、ジーコの「ありのままでいい」という、全面的な肯定する受容だった。これで、カヲルの呪いは解けた。しかし、それによって、和哉との夢見る恋は自分から捨てなければならなかったのだ。
ジーコも、親子関係で苦しんでいた。一番苦しんでいたのだ。神童で、何でも出来て、親が喜んだ。そして、親を喜ばすために、風船のように頑張った。そこに、「何をしたいの?」という一撃で風船は破裂した。これまでの頑張りの逆恨みで親に復讐で、悪い子になった。しかし、最後は親が関心も持ってくれなかった。カヲルや和哉に、青春の混乱を抜け出る呪文「わがままになろうよ」を残して、彼は死んだ。自殺なのだろうか? 事故なのだろうか? そこは深く描かない。多分、後者だろう。
ここまで書くと、ちょっと分かりやすく綺麗すぎないかな。まあ、青春はこんなものです。
前田亜季ちゃん、大人になりましたね。可愛い子と、不安になる子が演じられていました。キスするようになったんだ。そして、冷蔵庫の前での過食する顔・・良かったです。もちろん、海を3人で見つめるシーンの表情の美しさ柔らかさは良かったです。バックの景色や、光線に凝ったのでしょうが・・・。和哉とジーコの青さと、もろさと、自己愛加減が、良かったよ。青春そのものだった。和哉の中の尖った思いこみの妄想が、あるあると嬉しくなりました。多分、みんな見て、そうだったなと思い出しているのでしょうね。
大人になって、同窓会でどうなるのかな? カヲルが来ていないとか考えたが、大人の恋を描くドラマではありません。奥貫薫さんが、優しくって、素敵な笑顔でカヲル「私も、世界で一番(愛してる)」。そんなこと言われたら、自分は一瞬、駆け落ちしようと考えますが・・爆。あっさり綺麗に描いた。最後のオチが引き籠もりの息子へのメールの返信だけとは、淋しいかった。

とにかく、NHKの地方局が作るドラマは楽しみです。毎年、拾いものが多いです。このドラマは、片山恭一原作で、岡田恵和脚本だ。青春を描くにはぴったりだ。結末がちょっと、つまらないのは岡田さんの世界だ。そして、
BGMの音楽がほとんどないよ。静に自然の音とセリフだけだった。ただ、時々はいる主題歌が目立った。ニール・ヤングが懐かしく悲しいです。風景がもちろん、美しい。とっておきの絵を待って撮ったんだろうな。旅行にいったよりも宇和島を楽しみました。

 公式HPから

舞台は愛媛県宇和島市の美しい風景

 愛媛・宇和島で1970年代後半に高校生活を送った3人の若者達 和哉、和哉の恋人・カヲル、そして和哉の親友ジーコ。“普通”に生きたいと願いながら、不器用にしか生きられない彼ら3人の夢と挫折を通して、平成の今も変わらない青春のはかなさと、美しさを描くラブ・ストーリー。

「進学したくない 大人になりたくない」
 高校の同窓会に参加するため、久しぶりに故郷・愛媛県宇和島市を訪ねる和哉。電車の中で、中学生の息子から送られたメールを何度も眺めている。「進学したくない 大人になりたくない」。返事を出せずにいる和哉。親として息子に伝えるべき事は何か。その答えを探すため、和哉は自らの記憶をたどっていく。

3人の楽しい時間
 和哉が青春期を過ごした70年代後半。学生紛争終結後、若者たちは頼るべき価値観を模索し、大人たちが若者を「シラケ世代」などと呼んだ時代だった。しかし、和哉にとっては、彼女や友人と過ごした時間はかけがえのないものだった。優等生でかれんな彼女のカヲル。皮肉屋の友人ジーコ。未来への漠然とした不安を抱きつつも、3人で居る時間が和哉は楽しかった。

カヲル突然の入院
 やがて受験が終わり、3人はそれぞれの道を進む。和哉は東京の大学、カヲルは地元の大学、ジーコは進学できずアルバイト生活。しかし、大学に入って最初の夏、カヲルは突然拒食症で入院していまう。どうしてもカヲルを自分の手で助けたい和哉は、ある日親友のジーコと共謀してカヲルを病院から連れ去り、海へと向かう。

終わりかけた夏を取り戻したい

 
 あらすじ

和哉は電車に乗る。1週間前の子供部屋からの中三の息子からのメールをみる。「進学したくない、何もいいことがない。返事を出せずにいた、どう答えていいか分からないからだ」。宇和島高校の同窓会なのだ、40歳になると想像できない。あの頃の僕は今の自分をどうみるだろうか? ♪ 
1976年代、恰好良い時代ではなかった。ただ、暗いことは美しく思えた。ジーコ「わがままになろう」。
−−私は、のどかな高校生だった、親友の心の闇、彼女の細い神経が今にも切れすうとは気づいていなかった、そして、3人のうち一人が同窓会に出られないなんて−−タイトル。
授業中だ、松山城で、和哉とカヲルが手を繋いで歩いている。カヲル「キスするつもり、私もそう」。城の上で家を見下ろす。カヲル「個々で住んでいる」。和哉「俺って、世界で一番幸せ、俺たち結婚しょう、一緒に本を読もう、最高だと思わん」。夕日の中でキスする。夜に帰る。家の手前で、カヲル「ここで、いい、大丈夫」。和哉「祭り一緒に行こう」。カヲル「うん」。和哉だけ喜んでいる。−−僕は何も感じていなかった、親が五月蠅いだけだろう、普通だと思っていた−−。父親は怒って立っていた。祭りの日、カヲルは行けないと電話してきた。カヲル「しばらく、二人で逢わない方がいい、愛してる」。
母の友子「彼女に振られたくらい、親なら行かせたくないかも、助平な本を見ている」。和哉「部屋見たのか」と怒り出す。友子「いるよ、それが楽しみだから、でも、あの本に出てくる女の人ばかりでないの、女の子の心は繊細に出来ている、壊れやすいガラス細工のように、年取るとコンクリートみたいになるけど」。父は大笑い。和哉はジーコに相談する。ジーコ「親は皆おかしい、自分で餌を食べるようになっても、人間だけが世話を焼く、大人が大人の世話を焼く、だから、うまくいく方がおかしい」。和哉「一緒になる、すっと一緒や、一緒に風呂入って一緒に寝る、これ以上の幸せはない」。ジーコ「人間は好きな人とは一緒になれんもんや、君が一緒に暮らすのは二か三番目に好きな人や」。和哉「ありえない」。ジーコ「一番でないから、隙間を埋めるために、子供を作るんじゃ」。−−ジーコはこういう奴だ、親元を離れ、アパートで一人暮らしをしている−−。その喫茶店に浴衣を着たカヲルがやって来た。姉が手伝ってくれたのだ。ジーコも誘うが、文句を言って一人残る。
祭りで海の中を御輿が練る。りんご飴を10個買う。そして、公園で食べる。和哉「ジーコなら言うだろう」。カヲル「人生はりんご飴だ」。和哉「俺は死ぬまでカヲルをい愛す、一番や、キスしていい」。キスする。カヲル「凄く甘い、早く家を出て、一緒に暮らしたい」。和哉「俺はOKや、愛し合っていれば何とかなる」。カヲル「時々心配になる、あなたのそういう性格、心配になるが嫌いではない、祭りが終わると夏が終わる、受験やね」。和哉「大丈夫、計画通りになる」。
カヲル「別々の大学に行く、私は松山、あなたは東京、休みの度に逢って、卒業したら一緒になる、そうよね」。和哉「うん」。カヲル「もし、あなたと結ばれなかったとしても、死ぬまで私が一番好きなのは北村和哉だと思う、うん、そう思う、忘れないで今のこと」。和哉「何でそんなことを言う」。カヲル「何か先を考えられない、普通のことも、自然にやっていることが難しく感じる、悪く言わないで私の父を、早く年を取りたい」。和哉「本当に辛くなったら、僕が君をさらいにくる、約束する」。公園で、カヲルは和哉の肩に頭を乗せる。ジーコがアパートに帰ると、ドアノブにリンゴ飴が一杯あった。
1977年春。和哉は東京の大学に行き、家を出る。カヲルは松山の大学へ、ただ、ジーコだけは、7つの大学を全て落ちた。親の予備校の金で、免許を取って、車を買った。和哉とカヲルは道で会って、抱き合う。カヲル「いってらっしゃ」。ジーコは笑ってみている。和哉はジーコの車に乗せて貰い出発する。白い服を着たカヲルは手を振って見送る。駅につくと、ジーこ「最後のお別れ見たいや、彼女の笑顔・・」。和哉「何いうとんねん」。ジーコ「そう見えただけの話や」。車を降りる。和哉「大学わざと全部落ちたんか、親への嫌がらせか」。ジーコ「親も同じことを言った、自分の将来を台無しにしてる」。和哉「はいはい、で、わざと落ちたんか」。ジーコは苦笑いだ。和哉は嬉しそうに去る。−−このとき、彼は僕より先に見抜いていた、彼女の神経が悲鳴を上げていることを、僕は親友の心の中にも、愛する心の中にも入って行くことの出来ない、鈍感野郎だった−−−。
4ヶ月後、夏、カヲル−−ごめんなさい、体を壊して入院してしまいました、何も食べられずに倒れました、だから、休みにあえないの、本当にごめんなさい−−。和哉は走って、病院の看護師に精神科の病棟を訪ねる。病室に戸惑いながら入る。カヲルはベッドで寝ていた。沈黙。和哉「大丈夫、どうしたん」。
カヲル「ごめんなさい、食べられない、食べたいの我慢してるのでない、食べたいものが見つからない」。和哉「そう」。カヲル「ごめんなさい」。和哉「安心した、もっとガリガリだと思ったから」。カヲル「今は点滴のおかげで戻った」。和哉「すぐに知らせなかったんだ」。カヲル「見られたくなかった、嫌いになるから、ごめんなさい」。和哉「何をしてるの」。カヲル「貰ったテープ聞いている」。和哉「新しいの持ってくる」。カヲル「こっちにきて」。ベッドに座って、キスする。和哉は病院を出る。しかし、泣き出した。
カヲルの姉が声をかける。喫茶店で話すことになった。
和哉は「原因はおとうさん?」と聞く。姉は「確かに、父はあの子に厳しい過ぎる、暴力を振るうわけでない分かる? 私はあの子はそれを求めている、叱ってくれて、ああしろと決めてくれることを・・つまり父に依存している」。夜、月の下で、ジーコのアパートで和哉は泊めてくれと頼む。暢気な家に帰りたくないのだ。ジーコはアルバイトをして予備校に行っていなかった。自由だと言う。ジーコ「きついことを言うが、彼女の病気の原因は父親かもしれない、もう一つ、お前だ、彼女みたいに心の傷のある人は、強い心の遠心力に巻き込まれてしまう、悪と限らないが・・」。和哉「どういう意味や」。ジーコ「心の細い人間は、はっきりした夢の人間といると楽や、自分で考えなくていい、依存していればいい、結婚したい、ずっと一緒にいたい、それはお前の夢じゃ、彼女から出たもんではない、彼女はそう言われると、答えようとする、そうやって追いつめる、お前に喜んで貰おうと演じてしまう、そして、一人になると意図が切れて、何をしていいか分からない、何をするのも怖い、だから、お前のせいでもある」
和哉は病室に行く。ビスケットを持ってきて、半分に割って、口に入れる。次はジャムだ。スプーンで口に入れる。そんなカヲルを見て、和哉「素晴らしい、雛に餌を与えるみたいだ」。カヲル「本当、食べられる」。夜、月の下−−僕にはどうすることも出来なかった、一体いつまで続くのだろうか、苛立ちを感じた−−。病室で、和哉「いつまで、ずっとこうなのか?」。カヲル「嫌いになった?」。和哉「嫌いになって欲しいの?」。カヲル「そんなわけない」。
和哉「そうかな、直す気ないんじゃない、自分から病気になった、違う? この状態が楽だ、俺と結婚する気がない、ずっとこうしていたいんだろう、守られているのが好きなんや、違うか」と怒り出す。カヲルも悲鳴を上げてベッドで暴れる。カヲルの母が来て、看護師と一緒に抑える。
海の堤防の上で、和哉は面会謝絶になったことを、ジーコに伝える。和哉「食べろ食べろは良くないらしい、強要すると周りの心配する人のために食べようとする、すると過食になる」。ジーコ「なるほど」。和哉「結局、彼女が自分と向き合って、自分で直そうとするかだ、そのためには、俺には会わない方がいい、そういうことらしい」。ジーコ「なるほど」。
和哉は会いたいと姉に告げる。姉「今は無理やと思うし、逢わない方がいい」。和哉「どうして」。姉「始まったの・・」。屋根の上で、
和哉−−過食が始まった、過食して鬱になって、手が付けられない−−。夜、和哉はジーコに「カヲルは僕に助けてほしんやと思う、僕は顔が知れている、君は面会に行ってない、頼む」。そこでジーコが夜の病室に面会に行く。ジーコ「よう」。カヲル「ジーコさんが来たんだ、何となく、行こう、どうしたん」。二人は出かける。和哉の待っているところに来る。カヲル「ごめん」。ジーコ「二人さん、どこまで、海でしょう」。ジーコに車に乗る。和哉「失われそうな夏を取り戻そう」。3人で車に乗って走る
朝、民宿? で、寝ているカヲルを和哉は見つめている。和哉は病院に電話したようだ。姉が出る。姉「どうなっているの、カヲル連れて帰ってきて」。和哉「嫌です、心配しないでください、カヲルは大丈夫です」。父が替わって「君は何をしているのか分かっているのか」と怒る。和哉は電話を切る。母は「大丈夫だ、自分の意志で行った」と言う。和哉にジーコ「よう誘拐犯」。3人で海で遊ぶ。男は泳ぎ、カヲルは海水をかける。♪。夜、花火をして騒ぐ。民宿で3人で寝る。和哉は寝ている。カヲルは一人で出て行く。
明け方、カヲルがいないことに気づき探す。食堂の冷蔵庫の前で、片っ端から食べていた。口元を汚していた、見つけられて、目が潤んでいた和哉−−僕のしたことは無意味だった、いや、彼女を追い込んだ−−。カヲルは自分の姿を見つめ「ごめんなさい、見ないで」と立ち上がり走り出す。そして、ジーコの胸に飛び込む。和哉は驚く。ジーコ「いいんよ、食べれるだけ食べたら、食べたくなかったら食べなくていい、そんなことと君の価値は関係ないじゃ、君は痩せようが素敵だ、そして、君の大好きな男は君をどんなに愛しているか、大丈夫じゃ、考えるな」と肩を叩く。カヲル「ありがとう」。
朝の海で、ジーコ「俺は神童で、何でも出来た、親の自慢の子だった、親が喜ぶのが嬉しかった、本当に何でも出来た、勉強もピアノもスポーツも、水泳も、親は夢をふくらませた、無理はない、でも、俺はきつくなってきた、親を喜ばせようと必死になった、そして、ネジが切れた、隣の家に同じ年の子がいた、ぼっとした子だけど、そいつにコウジ君は何が好きと言われた、答えられなかった好きなことは何もなかった、
その日から親に復讐し始めた、逆恨みだ、それしかすることがなかった、喜ばした分、がっかりさせようと、そしたら、それしかすることしかなかった、がっかりさせる、それしかない、でも、怖い、怖いんじゃ、自分がどこに行こうとしているか分からない、親も無反応になっていく、がっかりもしない、そしたら、俺はどうすれがいいんじゃ、正直いうよ、大学わざと落ちたんじゃない、これでも必死に勉強した、本気じゃ、でも見事に全部落ちた」。和哉「本当かよ」。ジーコ「本当じゃ、思うたんじゃ、もう一度親が喜ぶ顔が見たい、そしたら自分のためにだけ生きようと、でも、神童はさび付いていた、参ったよ、我が儘になろうよ、自分が一番大切で、人は関係ない、自分を大切にできない奴は、他人も大切に出来ない違うか?泳いでくる」。和哉とカヲルは見つめ合うが驚く。ジーコ「大学、もう一度受けてみようかな、照れるな、前向きな発言ってやつは」。
カヲル「ありがとう、連れて逃げて貰って、ありがとう、前にも言ったけど、私、和哉君と結ばれなかったとしても、死ぬまで私が一番愛してるのは和哉君だと思う」。和哉「ありがとう」。カヲル「ジーコさん、いい人だ、和哉君が好きなんだ」。和哉「えぇ?」。カヲル「分かる、でも、私のほうがずっと好き」。和哉が立ち上がって、砂浜を歩き出す。夜の海を見ている。和哉−−−ジーコが見つかったのは、その日の夜だった−−。カヲルも和哉のそばに立つ。そして、抱きしめる。和哉は泣く。
繋がれた船に乗って、
カヲル「私、ジーコさんの言うとおりにする、我が儘になる、そのために私、健康にならなきゃ、健康になりたい、だから和哉、そのために和哉から離れようと思う、そうしようと思う、ごめんね、ごめんね」。BGM。和哉はふらふらと立ち上がる。カヲル「ありがとう、今までありがとう」。和哉はカヲルをそっと抱きしめる。和哉も、何かをつかんだようだ。
現在の和哉は港の突堤から、花束を投げる。そして、貝を握りしめる。
和哉−−あの日以来、カヲルと会うことはなかった、結局、人は失いことでしか大切なものを気づかないかも知れない−−。同窓会会場に和哉が行く。早速、皆から、話しかけられる。女性のなかに、カヲルがいた。和哉「久しぶり、元気だった・」。カヲル「うん、健康、健康そのもの、子供に拒食症で入院していたといっても信じて貰えない」と笑う。和哉「そうか、良かった」。カヲル「ジーコさん、来ていたら、どうだろうか」。和哉「いやなおっさんだたtり」。カヲル「ずるい、自分だけ若いままで」。和哉「時々思い出す、迷ったとき、ジーコなら、何ていうだろうかって」。カヲル「そう」と言うと和哉を見つめる。全員が集められる。和哉「カヲル、愛してるよ」。カヲル「私も、世界で一番」。和哉「俺も世界で一番」。二人はにこやかだ。
回想で3人はかけて、笑っている。
和哉−−ジーコ、君は、今どんな気分だ、今の俺はどう見える、この世界はどうだ? でも、君の知らない世界はそう悪くないぜ−−。♪  和哉は電車で帰る。息子に返事を書いた。「大人になることもそう悪いことばかりじゃないよ、とうさんは、君がああなりたいと思う大人になってみようと思う、君も一緒に頑張って見ませんか。おしまい。