慶次郎縁側日記2   NHK   金  21時 

脚本家 宮村優子
演出 吉村芳之
制作統括 菅野高至
森口慶次郎   元、南町奉行所定町廻り同心
森口(神山)皐月 晃之助の妻
森口(岡田)晃之助 慶次郎の養子 亡き娘・三千代の許婚
森口三千代 慶次郎の一人娘  祝言前に、男に乱暴され自害
お登世 料理屋「花ごろも」の美しいオーナー女将
佐七 根岸の酒問屋「山口屋」の別荘の飯炊き
吉次 北町同心のお手先
辰吉 慶次郎と晃之助のお手先
安右衛門 お登世の亡夫の叔父
おしづ 皐月の乳母。皐月と森口家に入る
高橋英樹
安達祐実
比留間由哲
岡本綾
かたせ梨乃
石橋蓮司
奥田瑛二
遠藤憲一
江原真二郎
梅沢昌代

菊松 阿南さん
辰吉は死んだ恋女房・おたか(国分佐智子)、辰吉が無頼の昔、面倒をみていた・おもん(島崎和歌子)  8話
常蔵の娘  おぶん(邑野みあ)   三千代を拐かした 常蔵(37〜39才)…若松武史


時は1800年代初め。森口慶次郎(高橋英樹)は、一人娘の三千代(岡本綾)を祝言の直前に、不幸な事件で失い、娘婿となるはずだった晃之助(比留間由哲)を養子に迎える。それから3年後、晃之助に家督を譲り、嫁に皐月(安達祐実)を迎えて、隠居する。慶次郎は、新婚夫婦とは同居せずに、根岸の里で、商家の別荘の寮番(管理人)になる。男に乱暴され、自害した最愛の娘を弔い、心に背負った傷を癒すための、慶次郎の第二の人生が始まる。(公式HPから)
茂七事件簿でお馴染みのNHKのこの枠は江戸の人情の世界です。高橋英樹さんが眉を太くして、茂七ではないぞと主張した。中味は更に深い情感と優しさと癒しが描かれる。人間で良かったな、生きていて良かったと思うひとときだ。何しろ脇役の凄さだ、石橋蓮司、奥田瑛二、遠藤憲二と来れば必殺でも出来そうな顔ぶれだ。期待★★★★★、エピソードで出来は変わるでしょうが、ゲストの新人女優に期待します。安達祐実さんの時代劇は大奥で見ましたがどうでしょうか。予想は★★★★だ。ずっと見ていたがアップ出来なかった。


慶次郎縁側日記2★★★★★   9回「花の下にて」  (平成17年12月2日放送)  何と録画に失敗、涙

桜が咲いている。慶次郎が辰吉を尋ねると、おぶんが入ってくる。しかし、おぶんは逃げてしまう。二人は一緒に暮らしているのだ。おぶんは女房の位牌に花を生けていた。それを聞いて、皐月は「どうにかしてやれないか」。慶次郎「いや」。皐月「常蔵を許すわけにはいかない・・・」。−−辰吉だけがおぶんの生きるよすがだ−−。タイトル。
花ころもで、若い男が逃げ出す、食い逃げだ。店を出た男は、慶次郎とぶつかる。捕まえて聞くと、男はつぶれ百姓で、江戸に出てきたが、商いもうまくいかない。それで母親を妹のところに届けたところだ。登世は、食わせてやったのだ。しかし、男は食べ終わると、死ぬという。登世は「死ぬ人のために作っているのでない、それなら払ってください」と励ましのつもりで言った。晃之助は根岸の慶次郎の所に来て、三千代の位牌に手を合わす。そして、やっかいな探索をしている。
夜、たばこ屋で、お花という娘が殺された。部屋は荒らされていないので押し込みでない、金も取られていない。お花の付き合っていた相手は、笹屋?の息子佐三郎?だ。その娘は母を早くに亡くし、父と二人だった。父の万兵衛?は、その日から全てが変わった。取り調べでは、佐三郎を犯人と決められなかった。それで、万兵衛は佐三郎を討ち果たそうとするのだ。慶次郎は常蔵が憎いか聞かれる。慶次郎「常蔵は憎い、しかし、おぶんがいる。、封じられて、憎しみは増す」。藤沢のあばら屋で常蔵は寝ているが、おぶんが部屋を掃除をする。辰吉もやって来る。おぶん「おとっさんのせいで、三千代さんは死んだ、なのにおとっさんは何で生きている」。辰吉に常蔵「おぶんは良い子だ、可愛がってください」。おぶん「私がこうなったのは、おとっさんのせいだ」。常蔵「桜は咲いたかね、桜は江戸だ」。
辰吉「旦那が苦しく思うのは分かるが、あっしはおぶんに付いてやろうと思います、常蔵も長くない」。翌朝、花ころもでは若い男が「死に切れませんでした、金を稼ぐしかない、ここで雇ってください」。登世「この店には余裕ない」と断る。
若い男「いい匂いした、食べ物の匂いだ、綺麗なおかみさんのいるところで働きたい」。一同笑いこの若い男の話が何を意味しているのか、ちょっと分からないままだ。もう一度見直さないといけないと思う。来週で最終回なので、伏線とは思えないし・・・分からん。食わせてやったが、男は最後の飯のつもりだった。登世は励ますつもりで怒った。しかし、登世のところで働かせ、いい匂いがした。やっぱりわからん。吉次がきて、若旦那が「佐三郎を追っていたら、万兵衛が刺してしまった」。捕まえられた万兵衛は「いい加減にしろ、着物にごみが付いたら払うだろうと、言ったのだ」。それで逆上したのだ。慶次郎は晃之助を尋ねる。部屋にいた晃之助に慶次郎「万兵衛が刺したそうだな」。晃之助「私のせいです、何度も説きました、しかし、証はない、憶測で人を殺してはならぬ、しかし絶えず、別の声が聞こえた、愛しい者を殺されて仇を取りたいのは普通のことだ、罪人を作らないのは、私のお役目だ、しかし、合い口を万兵衛に返しました、何度も、私は万兵衛に人殺しをそそのかしたのです」。それを皐月は外で聞いてた。晃之助は、三千代の仇を討てなかった。それを悔やむ心と、自分の仕事とで、いつまでも引き裂かれているのだ。万兵衛の仇討ちを、密かに合法的に、認めた。そんなことで、自分のカタルシスを求めた。それは成就しただろうか? 苦い思いだけが残ったかもしれない。
皐月はおぶんを尋ねる。皐月「私を見て逃げられたら、どうしようと思いました」。おぶん「ご新造さんが来られたらどうしようかと思った、一番思ってはいけないことを思いました、ご新造さんのせいではなりません、親分に大事にして貰っています、私は一人ではない、怖いのです、いつの間にか、もっとと思っている、もっと、幸せになりたい、すみません」。皐月「私もそう思っていました」。おぶん「ご新造さんを、そう思う人はありません」。
皐月「すべてあなたのおかげです、一度しか、あなたにしか言いません、三千代様も、おとっさんも、不幸でした、その通りです、その不幸が始まりで、私は晃之助に嫁ぎ、子供が出来た、幸せになりました、あなたが、不幸になれば、私も不幸になる、幸せになりたいという気持ちを恥じてはならない、おとっさんも、あなたを苦しめただけでしょうか」これは重い言葉です。不幸なことが起こる。しかし、それを悔やんで、元に戻ろうとしても、どうにもならない。前に進んだのだ。皐月は三千代が死んだことで、晃之助と夫婦になり、幸せになった。自分の幸せが、他人の不幸から始まったとしても、それを肯定しなければならない。皐月がおぶんを否定することは、自分自身の運命を否定することです。おぶんは皐月なのだ。おぶんにも幸せになって欲しいのだ
慶次郎「おれも、同じ物を背負っている、おぶん、幸せになって欲しい、しかし、父のしたことを許せない、祝ってやれない、19だ、三千代が命を絶ったのは18、
殺したい思いを封じてきた、常蔵を生かした、今、ふと思う、あの時、常蔵を切っていたら、因果は常蔵が背負い、おぶんも、自分を責めなかった」。登世「男は背負うのが好きですね、今それを口にしてどうなる、旦那は常蔵を生かした、亭主を死なせたとき、身一つで店を開いたとき、不安だった、でも、これを味わいたかった、不安も借金も、みんな私の物だと・・」。慶次郎「おれにはお役目しかなかった、全うするしかなかった」。登世「ならば、最後まで通しなさい、自分が一番苦しい場所から目を背けているだけです」。登世の言葉は皐月の言葉を強化するものですね。不安も借金も、ネガティブなものも、すべて自分のものなのだ。皐月の他人の不幸に自分の幸せと同じ意味ですね。慶次郎は根岸に帰り、三千代の位牌に向かう。回想シーンがある。慶次郎は常蔵を殺してやると思ったのだ。慶次郎は旅の姿で、辰吉を尋ねる。藤沢に付き合って欲しいという。二人で歩く。
常蔵の家に着く。常蔵「おぶんかい」。辰吉が入り、ついで、慶次郎が常蔵の布団まで入る。常蔵「そうかい、旦那かい、ちょうど良かった、来て欲しいと思った、あれを言って欲しい、殺してやる、殺してやる」。慶次郎「いくつになった、薬はのんでいるのか、医者に通っているのか」。常蔵「さっさと言え」。更に、おぶんもやって来る。
常蔵「その目だ、おめえ、その目で見る、底の底まで、死んでくれと、それがいいんだ、殺してやる、そう言われる時だけ、生きた心地がする、生まれたときからだ、親に捨てられて生きてきた、お前だけ、そうして俺を見ない、何故、俺を殺さないのだ、憎んでいるなら殺せ」。おぶんは涙する。慶次郎「殺すだけより、生かして苦しめる、今日も明日も、そう見えるか」。常蔵「さてね・・」と嗚咽。常蔵「何も、思わない男だ、春、花が散ってこの身が消える、そう思うだけだ・・・」と泣き笑う。常蔵「今です、誰も見ていない」。慶次郎の胸にすがる。部屋では、かいこの桑を食べていた。常蔵は慶次郎の両手を引き、自分の首にかける。慶次郎は思わず、力を入れるが、思いとどまる。常蔵の涙が手に触れたのだ。そして、立ち去る。慶次郎「殺してやる」と言う。常蔵は布団で座ったんままだ。ここのやりとりは、慶次郎縁側日記の最大のテーマです。常蔵で大事な娘が自害する。そこから全てが始まっている。だから、常蔵が死ぬことは一つの結論になるはずだ。だが、分からない。殺すことは慶次郎は出来なかった。侍なら、常蔵を殺しても、許されたかもしれない。娘の仇を、世間からはじかれた男を殺すことで果たしたとしても、許してくれると思う。しかし、慶次郎は殺さなかった。おぶんという娘がいるからか、自分が我慢すれば住むことだからか・・・常蔵も殺して欲しがっていたのだ。家を出てきた慶次郎に代わって、おぶんが行く。常蔵の大きな嗚咽が聞こえる。おぶんにしがみついて泣いていた。皐月−−−10日ほどして、常蔵は誰も看取ることなく、ひっそり逝った−−−。鎌倉屋が登世に「常蔵が死んだ」と告げる。若い男が花ころもで働いていた。若い男は、何でも、おかみさんだ。おぶんは一言も口も聞かず、涙も見せず、常蔵の位牌を見ている。慶次郎が来たことを告げると、びくっとして、逃げる。慶次郎が逃げたおぶんの先回りする。慶次郎は下駄をおぶんの足下に置く。おぶん「旦那」。慶次郎「もう逃げるな、生きろ」。おぶんは下駄に足を入れる。持っていた父の位牌を思わず捨ててしまう。おぶんは慶次郎にしがみついて、大きな声で「おとうさん、おかあさん」と泣く
来週は最終回だ、しかもおぶんと辰吉の祝言だ。このシリーズは最終回が祝言だ、笑い。今回もそうなのだ。こだわりなのでしょうか?   しかし、このドラマは本当に難しい。しかも、録画のチェックがはずれてしまって、録画されなかった。それで、名前などは確認できませんでした。また、セリフも適当です。すみません。
今回は常蔵の死がメインだった。慶次郎の「殺してやる」、おぶんの「死んじまえ」、それなのに、常蔵は病死した。思いは一杯あった。最後に慶次郎がおぶんに言う「逃げるな、生きろ」。これは慶次郎自身にかけられた言葉だ。おぶんの邑野みあも、慣れてきました。次第に役が大きくなって、演技も厚くなってきました。しかし、常蔵の若松武史は、凄かったです。まるで、舞台の演技みたいで、見入りました。悲しい人間の性を演じきりました。良かったです。ただ、何度も言うが、このドラマ難しいのだ。



慶次郎縁側日記2★★★★★   8回「昔の女」  (平成17年11月25日放送)

辰吉が、男を捕まえる。男は女房を殺した男を殺そうとしていたのだ。辰吉も妻を殺された男を刺そうとして、慶次郎に止められた。同じ無念を抱えて生きている。そんな辰吉に雪降る夜に女がやって来る。おもん(島崎和歌子さん)だった。驚く辰吉。タイトル。
吉次は、朝早く根岸の慶次郎を訪ねる。浅草で主殺しがあった。向かいの魚屋が、逃げ出す男と女を見た。その男が辰吉だったのだ。辰吉は奉行から追われているのだ。晃之助はおぶんのところに聞きにくる。おぶんが時々行っている辰吉に変わったことがないか聞く。女の出入りとかないか、聞く。おぶんは知らないで、「何があったか」と聞き返す。おぶんのところに慶次郎がくる。おぶんは夕べ辰吉の所にいった。おかずを持ってきたのだ。おもん「藤沢の父が体が悪く、やけになっている」。辰吉「店にいく、取り込んでいる」。そこに、おもんが出てくる。そして、おもん「可愛い娘さんだこと、寒そうだ、白湯の一杯くらい、この人、昔から気が利かない」。辰吉「おもん」。おぶん「親分は気の遣いの細やかな優しい人です」。このことを慶次郎に話す。慶次郎「あいつは人を殺さない、あいつが殺したいのは二人しかいない」と言い切る。辰吉とおもんは歩いていた。ロウボウの渡しまでやって来た。千助が追ってきている。おもん「千助に見つかったら」。辰吉「今度は殺させない」。おもんは、千助との縁切りの駆け込み寺に行くのだ。晃之助は皐月のもとに帰って、しばらく留守にする。慶次郎が来ていた。吉次は、辰吉の事情を話す。おもんは無頼の暮らしをしていた辰吉の昔の女だ、喧嘩で死んだ弟分の妹で、兄貴代わりに面倒を見ていた、ところが、おたか(国分佐智子さん)と出会って、おたかに惚れた、それを知っておもんは黙って家を出た、辰吉に捨てられ、めぐったあとで、油売り千助と一緒になった、千助は嫉妬からおもんを殴るのだ。それで、十手持ちになった辰吉の所に逃げてきた。痣だらけの女が相談していたとい長屋の連中も話した。おもんは駆け込み寺まで連れていてくれと辰吉に頼んだのだ。。−−−駆け込み寺は鎌倉の東慶寺である。二年の寺務めを済ますと、離縁が認められたのだ。−−−  皐月のところにおぶんがやってくる。皐月は子供の3歳の八千代をおぶんに見せる。皐月「話したいことがあるのでしょう」。おぶんの回想シーンだ、辰吉におもんをどこにやったかと千助が問いつめている。おぶんが見ていて、間に入ろうとするが止められる。辰吉は知らないと行っている。千助「必ず見つける、ただですまない」。おぶんは慶次郎たちに話す。晃之助「辰吉が危ない」。慶次郎「俺が行こう」。晃之助は「辰吉は私の手先です」。吉次「千助だけでない、北町の連中も下手人で追っている」。晃之助「何故逃げた、身の証を立てず逃げれば疑われるばかりだ」。慶次郎「おもんのためだ、千助からおもんを守り、駆け込み寺へ送るのが先だと腹をくくたのだ」。皐月「なぜ」。吉次「敵討ちですか、ほんの20年遅れの」おぶん「かたき」と呟く。慶次郎「千助は二人を狙っている、急がないと危ない、これは俺が見届ける」。慶次郎が行くときに、おぶんは自分も連れていくように頼む。
辰吉とおもんは、川崎の手前まで来たが、おもんは「もう歩けない」。辰吉は事件を聞く。おもん「下手人は見ていない、下で音がして、金をよこせ、怖くて隠れていた、お前が来たら飛び出した」。辰吉「男は千助か」。おもん「だから、見ていない、ごめんよ、駆け込み寺まで無理に付き合わせるのは私だった」。辰吉「お前を鎌倉まで連れて行く、誰にも殺さない」。そこにおもん、「あそこに、あの人が」と千助を見つける。奉行も追いかけてきた。急いで身を隠す辰吉とおもんは逃げる。しかし、本当に千助も追いついていた。慶次郎も杉並木を追いかけている。夜になり、宿を頼む。番頭は混み合って、相部屋になるという。おぶんを娘さんだと、言われる。−−−おぶんの父・常蔵に乱暴されて、慶次郎の娘三千代は自害したのだ−−−。慶次郎「お前さんと親子に思われるとは」。おぶん「すみません、お嬢様に間違われるなんて、すみません」。慶次郎「辰とはいつもそんな風に謝ってばかりだか?」。おぶん「分からないんです、気づいたときから、そういって暮らしてきた、心からそう思っているのか、ただ言っているだけなのか」。慶次郎「いくつになった?」。おぶん「19」。−−−三千代様は18の冬に亡くなられた、その時晃之助様との祝言を間近に控えていた−−−。晃之助の下に、千助が出て行くところを夜泣き蕎麦屋が見ていると証言が入る。宿の主を刺した合い口は見つからない。千助は持って行ったままだ。それを聞いて、晃之助も旅立つことになった
空き家で、土間に火をおこして、辰吉「もう少し先で川を渡る、押し込みでお縄になるかもしれない、鎌倉に着くのは遅れるが・・」。おもん「いいよ、お前さんと一緒なら」。辰吉「よしな」。おもん「あの時と一緒だ、お前さんに女が出来た、すぐに分かったよ、あの時、私が行かなかったら、どうなっていたんだろう」。辰吉「おたかの話はするな」。おもん「お前さんはおたかをあきらめて、そのせいで、私は疎まれて、でもお前さん女房は死なずにすんだかもしれない、駆け込み寺までは付き合って貰うよ、守って貰う、おたかがやってもらったように」。辰吉「おたかの話はするな」。慶次郎は宿で、寝ないで起きていた。そして、慶次郎がおぶんの父を殺そうとした。おぶんは「お父さん、なんか死んじまえ」と叫んでいる。辰吉が慶次郎を止めたのだ。おぶんが目覚めて話し出す。慶次郎「おとうさんに、会っているのか」。おぶん「親分さんが、顔を出してやれと、親分は人を殺さない、旦那そういいましたよね、あいつが殺したいのはこの世に二人しかいない、二人って誰ですか?」。慶次郎「あいつには女房がいた、20年前だった、惚れて一緒になった女だった、あいつは変わった、悪い仲間から足を洗い、堅気の塩売りになった、しばらく、幸せな暮らしが続いた、しかし、おたかには男がいた、一度は手放したが、あきらめきれなかったんだろう」回想シーン、おたか「安心して、あの男は私がきっぱりケリをつけた」。辰吉「昔の仲間が、男がつけねらっているって」。おたか「さあ、いっといで、いい男だね」。しかし、おたかは殺された、泣き崩れる辰吉だ。惚れた女房を守りきれなかった己を憎んだ。朝も昼も男を探して見つけた。だが、殺そうとしたときに慶次郎が止めたのだ。辰吉「離せ」。慶次郎「殺すな」。慶次郎「結局、男はお縄になった、20年、あいつは男を憎んで、殺せなかった己を許せないでいる、そして・・・」。おぶん「止めた旦那を憎んでいる、親分が殺したいのはおかみさんを殺した男だ、そして、敵討ちを止めた旦那だ」。慶次郎「そうだ」。おぶん「旦那も私のおとつあんを憎んでいる、そして、止めた辰吉親分を憎んでいる」と言うと泣く。 皐月−−−父上の辰吉は、敵を討たないように、互いを封じて生きています−−−。
辰吉が空き家を出ると、千助「寒い夜でしたよ、独り身には、そちらはさぞかし温かったでしょう」。辰吉「おもんとはなにもない」。千助は合い口を差し出し、二人は格闘になる。千助「殺してやる」。辰吉「殺させない」。上になった千助の合い口が、押し倒された辰吉を襲う。一瞬逃れると、おもんは辰吉に覆い被さって、助けようとする。ひるんだ千助に吉次の石つぶてが当たる。吉次が間に合って、あっさり千助をとらえる。吉次「勘違いするな、俺の目当てはこいつで、北町の捕り物だ」と連れ去る。辰吉がおもんに近寄ると、おもんは、合い口を握て辰吉に向ける。辰吉「何故だ、千助はいない、俺はお前を守った」。おもん「私を守ったんじゃない、20年前のおたかを守ったんだ、私を使って手めえの重荷から逃げただけだ」。慶次郎たちが追いついた。辰吉「守れない、20年前に死んだんだ」。おもん「その顔が気に入らない、自分だけ辛い目にあったと思っている、殺されたって、じゃ、お前さんは今まで誰も殺さなかったと言うのかい、お前さんも殺したじゃないか、20年前、私のここを」と喉をさす。おもんは合い口を握りしめて、辰吉を刺そうとする。おぶんが身を挺して辰吉の前に立つふさがる。おもん「今度はお前さんかい、いいさ、望みどおり」。そして、慶次郎が割って入り「殺すな、生きよ」と言い、おもんの合い口を奪う。辰吉「おもん、俺は」。おもん「あやまるんじゃないよ」。おぶんがにらみつける。おもんは視線を交わす。そして、慶次郎はおもんを捕まえ、連行する。残った、辰吉とおぶんだ。おぶんの目には涙が溜まっている。辰吉は切なそうに見つめる。
番屋で晃之助は千助を取り調べる。千助は「辰吉を張っていた、寝静まったのを見計らって、宿に行ったら、主がしゃしゃり出た」。手下「あの晩、おもんと会ったのか」。千助「旦那、はずみだったんです、刺した後も番屋に駆け込もうと思った、あいつ、逃げろって」。晃之助は縛られたおもんを取り調べ「何故、千助を逃がした」。おもん「どうせ、すぐに捕まる、だから、あの人と旅に出たかった、守ってやる、殺さない、そんなことを一日言われながら、駆け込み寺まで」。晃之助「悔いはないのか」。おもん「あの時、しがみついたあの人の、あれは辰吉の昔と同じ匂いだった、いい道行きでござんしたよ」。慶次郎は辰吉の怪我を手当しながら「千助を言われるまま、中宿を飛び出したものの、やけになって、おもんを取られるなら、お前たちを殺して、自分も死のうと思った」。辰吉はおぶんに近づき「無茶して、お前に何かあったら、おとうちゃんにどういえばいい」。おぶん「おとっつんも、私が死んだらほっとする、私だって、他の誰かが死ぬより、親分がいなくなったら、私・・・私のことなんか、誰も・・・」。辰吉はおぶんの手を、手ぬぐいで拭き取る。−−−晃之助はのこって、3人が戻ってきたのは、日が落ちてからでした−−−。雪の中、おぶんと辰吉は宿で、一緒だ。辰吉「戻るのか」。おぶん「朝が早いから・・・」。目を閉じた辰吉だ、おぶんを見つめ「外は雪だ・・・」。おぶん「知ってる・・・」。辰吉「店には、朝からいけ」。辰吉は泣いていた。おぶんもはうなずいて泣いていた。またまた、ヤボで下世話ですが、一緒に泊まったのですか? 年の差が(少なくても20歳以上あるのでは)・・・、しかも、辰吉役の遠藤さんの最後のセリフが滑舌悪く、聞き取れなかった
慶次郎は一人で三千代の位牌を見ていた。佐七が部屋に入って来て火鉢をみる。慶次郎「同じ荷物を背負った男がいた、やり直したくても消せない、戻したくても戻せない、そっくり同じだと思った、ところが、今日気づいたんだ、そいつはこれから、まだ生きるんだ、俺にはなにも増えない」。佐七「残り火はまだあるはずなんだが」と火鉢の火を探す。晃之助は皐月と八千代を見ている。−−雪は夜半までしずかに降り積もりました−−−。
回想シーンもふんだんに入って、とても難しいだよ、2度見直しました。それでも、わからない。止めてはセリフを捕まえる、そうすると情感が伝わらない。どうすればいいんだ!!  余韻を楽しむこともできないよ。とにかく、難しい。高校の現代国語での、傍線の部分の気持ちを述べよ! なんて問題が出来そうだ。
おもんを中心にまとめると、おもんは、20年前、辰吉におたかが出来て身を引いた。しかし、その後一緒になった千助は嫉妬深く、おもんに暴力を振るった。辰吉が十手もちになり、相談しだした。そして、千助は一層、おもんを疑うようになった。千助がおもんの働く宿に早朝尋ねると、宿の主人が出てきて、っさやかなことから思わず刺してしまった。しかし、おもんは千助に逃げろと勧めた。そして、おもんは辰吉に、守ってもらい、駆け込み寺まで行くことを頼んだのだ。いい道行きだった。辰吉はおもんを一見守ってくれた。しかし、辰吉は、実は20年前のおたかを守ることが出来なかった贖罪として、おもんを助けた。辰吉は20年前におもんの心を殺したのだ。おもんは二人の男に、愛と憎しみのアンビバレンツで揺れ動いたのだ。最後は20年前に、自分を捨てた辰吉が許せなかった、そして、身を引いた自分も許せなかったのか? 
辰吉から、見るとどうなのだろうか。おたかを守れなかった、しかし、おもんは守れた。しかし、そのおもんは自分に合い口を向けた。20年前におもんを殺したと言われた。自分はおもんを助けたつもりが、自分自身を救いたかっただけだ。所詮、人間の人助けは、自分を救うという自己中心的な行為でしかないのだろうか? その過程で、おぶんが「自分が死んでも誰も悲しまない」現状からの救済を、辰吉に求めていたのだ。それで、おもんの刃から辰吉を守った。  人は自らの救済を求める旅でしかないのか??? 辰吉、おもん、おたか、おぶん、それぞれの関係は深く、複雑だ。
慶次郎も、辰吉と同じ業(カルマ、因縁)を背負って生きていると思っていた。しかし、辰吉にはおぶんがいた。自分にはもう、何もない。アナーキーになっていたら、佐七「残り火はまだあるはずなんだが」。そうだ、生きている限り、残り火があるかもしれない、それを信じて生きていこう。ここまで、書いたら、難しくて4つ★に評価ダウンと思っていたが、やはり5つ★だ。   辰吉が無頼の昔、面倒をみていた・おもん(島崎和歌子)、辰吉の死んだ恋女房・おたか(国分佐智子)
今日のスタパで吉次役の奥田瑛二さんが登場した。夏に撮影していたというのだ。そういう思いでみると、凄いなと感心してきた。奥田さんは、カツラをつけないことで、出演をOKしたのだ。それにしても、2週前の石田ゆりさんとの回がちょっと出たが、やはり濃厚な印象を受けた。奥田さんのまとめも自分のものと同じだった。これにしても、奥田さんも、丸くなった。尖っていなくなったようだ。それでも、変だったけど・・・奥さんの安藤和津さんのことを黒田アナは、持ち上げたね。奥田さんも、奥さんは菩薩です見たい感じで拝んでいました、笑い。



慶次郎縁側日記2   7回「あたりくじ」  (平成17年11月18日放送)

見ていません。佐野史郎さんが出ていました。

 師走。佐七(石橋蓮司)に頼まれ、慶次郎(高橋英樹)は富くじの当たりを確かめに、谷中の寺に行く。くじの抽選に、一攫千金の夢を追う人々が大賑わい。しかし突然、男が倒れ、女が悲鳴を上げて縋る。女は「花ごろも」の女中・お秋。男は小野崎源三郎(佐野史郎)。不始末で国許を追われた貧乏浪人である。病持ちの富くじだけが生きがいなのだ。そんな源三郎にお秋は惚れ、隠れて世話をする。女将・お登世(かたせ梨乃)は、お秋にふさわしくない恋だと諭すが、「仏の旦那は何をしてくれるんですか」と反論され、答えに窮する…。

原作:「再会」所収の『最良の日』より 。


慶次郎縁側日記2★★★★★   6回「再会」  (平成17年11月11日放送) やはり、見直したよ

湯気の立つ川から石をとるおみつの後ろから吉次は抱きつく、紅葉の上で、おみつ「申し訳なくて、あなたによくしてくれたのに」。吉次「お前のせいじゃない、おみつ」。それは夢だった。妹が吉次の家の掃除をする。皐月−−吉次さんには、忘れられない人がいるのです−−−。吉次の妹が慶次郎に話す。妹「吉次におしろいの匂いで、まめに着替えもする、ひげもきちんと当たる、それは幾日前に若い女郎が吉次を訪れた、それから、まめにひげを当たるのだ」。慶次郎は吉次の嫁が家を出て14年間になることを知る。その後、妹が心配しているのは「吉次が女に嫌がらせをしているのではないか?」ということだ。吉次は「まむし」と呼ばれ、方々の商家や屋敷を強請って金を袖の下にしていたのだ。その吉次が根岸にやって来た。慶次郎に「逃げ場に困った女が来ただけで、店を世話したのだ」と報告する。佐七はこざっぱりとした姿をからかう。その後、辰吉がやって来て、吉次と女のことを慶次郎に報告する。辰吉「お蝶という名で、何も出ない、父が病気になり女郎になった、気の利いた常連客も付かないうちに、店が手入れになった、のんびりした女だが、良くない噂がある、それは男で、吉次のことだ」、一同は笑う。その辰吉は藤沢に行く。そこにはおぶんと父親の病に付いた常三を見ているのだ。常三は今でいうと婦女暴行の常習犯で、慶次郎一人娘の三千代もかどわかし、そのために三千代は自害したのだ。皐月−−警動という手入れがある、主は罰金と100日の手鎖がある−−−。お蝶は吉次に聞く「そうして私を」。5日前に女郎屋に手入れがあって、お蝶は隠れていた、逃げ遅れたのだ。お蝶は「私グズだから」。吉次「店を世話しただけだ」。そこでお蝶は吉次に心付けを渡す。お蝶「又来てください、お客が付かないとおろくさんみたいに下働きになる」という。外を見ると、女が店の外を掃除していた。お蝶「元桔梗屋の女将さんだったのだ、しかし、旦那が若い女を作って、出て行けと言われたが、頼み込んで下働きをしているのだ、あの女将さんも行くところがないのかしら」という。その女を見て、吉次は走った。
吉次は、女の元に駆け込む。吉次「一緒の男はザル売りか」と十手を出して長屋の女に聞く。長屋の女は「左官だ」と答える。その時、おみつが吉次に声をかける。おみつ「お前さん久しぶり、変わっていない、追うのは強いが、されるのは弱い、福松は仕事で夜までこない」。吉次「亭主に若い女で意趣返しか、一緒に逃げたザル売りは、音吉は?」。吉次は戸を閉める。おみつ「・・・」と沈黙する。その後、おみつ「家を出てすぐに旅の途中で音吉は死んだ」。吉次「すぐに子供や男を殺し、名前を変えて江戸に帰ったのか、亭主に追い出されそうになって、若い男を見つけて・・飯炊きでしがみついて、懲りもせずに、男を作りやがって」。おみつ「しかたない、生きていかないと」。吉次「何故生きる、音吉もザル売りも死んだのに、お前だけが? おれのせいか」とおみつをい外に放り出す。おみつ「あんたには良くしてくれた、死ぬまで不自由させない、情はそのうち湧いてくる、だから夫婦になってくれ、約束通りだ、着物も芝居見物も」。吉次「ゆすった金のせいか? 俺の金が嫌だったのか」。おみつ「金なんか、どこで稼ごうと、惚れた男と暮らしたかった、苦労がしたかった、あの人は良い人だった、福松は死んだあいつに似ている、女郎屋の女将が亭主に女が出来て、今は飯炊き女と世間は笑うが、私はなんでもいい、今度こそ添い遂げるのだ、惚れた男と・・」。吉次は帰り、吐き気を催す。そして、お蝶の所に行く。一緒にいた客を追い払い。吉次はお蝶にあう。お蝶はおみつによく似ていた。夢で「お前さん、ごめん」と話した。その夜はお蝶のところで一緒に寝る。夜に起き出し、寝顔を見ている。
おぶんに辰吉は「泣くな」と言う。その、辰吉におぶん「殺したくなる、どうして生きているの、大勢の女の人をひどい目に遭わせて、どうして・・・なのに帰ると私が死にたくなる、死にたい」。おぶんは泣きしゃがむ。辰吉は「女将さんが待っている、早く戻りな」。立ち去る辰吉をおみつは後ろからすがって抱く付く。二人の恋心が深まっていく。皐月のところでは、皐月も晃之助も口数が少ない。辰吉がおぶんの所に行く夜は二人とも口数が少ないのだ。慶次郎もお登世のところで、お登世「人を許すとき、おのれの心の底をのぞくのだ、と言っていた」。慶次郎「吉次には、好きな評判の器量よし女房がいた、得意の強請で金を稼いだ、14年前、茶屋で人情沙汰が起きた、吉次が追った、密通が知られるのをおそれて逃げたに違いない、逃げた女の着物を頼りに突き止めた、その家にはいなかった、女は吉次の女房だった、密通が吉次にばれたので、女房は子を連れて、密通相手のザル売りと江戸を出た、女房を楽させるために、吉次はとうの女房を追いつめた、吉次の強請は激しくなった」。お登世「女房がいなくなったのに」。慶次郎「あいつが欲しいのは金ではない、あいつは暴きたいのだ」。お登世「人様の隠し事ですか」。慶次郎「いや、暴くだけでない、暴いて暴いて、人の底を知りたいのだ、人って・・・一体、どこまで悪いのか」
吉次は河端で、辰吉とあう。吉次「夢を見る、夢の中で、女房は許してくれと泣いている、うつつは、逆だ」。辰吉「女房と会ったのか」。吉次「ちょっとのんびりして何でも伺いを立てる、昔はそんな女だった」。辰吉「お蝶みたいだな」。吉次「お蝶、そうか、道理で夢が多い」。辰吉「俺の方は夢にも出て来ない、夢でわびるのは俺だ、女房に」。吉次「どっちが良いのかね、お前みたいに2度と会えないのと、俺みたい会いたくない姿であうのと」。辰吉「同じでしょう、食べて走って、寝る」。吉次「俺は嫌だ、しでかしたやつと、された奴が同じ様で生きているのは、虫が好かない、お前さんも腹の底ではそう思っているはずだ、許してくれ夢の中であいつが泣く、許してやる俺が答える、分かったよ、俺はあいつに悔やんで欲しかった、ただ一言戻りたいと、言わないなら、言わせるまでだ」。恐ろしい決意をする。
数日後に、警動があった、ここは主は飲み屋だと女たちにいう。しかし、手入れがあって、女たちは捕まる。まむしは教えなかったのだ。桔梗屋も捕まる。それをおみつは「女房だ、助けて」。妻が「あなたに何ができる、ただの飯炊きだ」。それを吉次は見ている。そして、手入れの後の店に行く。吉次「礼を言って欲しい、お前を追い出し、若い女に走った亭主は手鎖、お前を笑った女たちは捕まった、吉原にやられた、ざまみやがれだ、違ったかね、それだけない、縁切り寺まで行かなくても、お前と福松を悪く言う奴はいない、惚れた男と添い遂げたい、お前の望みを叶えてやった」。おみつ「じゃ、これはお前さんが、手入れがあるのに言わなかったんだ」。吉次「お前と一緒になるとき言ったろう、お前の好きなようにさせてやるって」。おみつ「そんな」。吉次「言ってみな、俺のおかげで、晴れて好き勝手に暮らせるんだ、言ってみろ、お前さんのおかげです、お前さんすまないって」。おみつ「お前さん、ひょっとしてまだ私を・・馬鹿、馬鹿だよ・・・私を、私なんか」と泣き出す。吉次「勘違いするな、2度と俺の前に顔を出すな」。怖い顔をして、立ち去る。
福松が帰る。おみつは福松にやった着物の行李を出させる。おみつは行李を開ける、着物を出す。福松は頭領がごちそうをしてくれるので、また行くという。着物にたくさんの)30枚ほど?)小判が隠してあった。たくさんの小判を見て笑う。妹が吉次が同じになった、と報告に来た慶次郎に言う。妹の旦那は、吉次にその女が、そのつもりがあるなら、お蝶を店で働くように言ったのだ。妹も吉次にそんな女が出来ると変わると考えたのだ。兄さんがこれ以上面倒を起こすと困るのだ。そこに吉次が来て、「菊松、この前の話、聞いてみる、俺も居候できないし」という。うまくいくかもしれない。吉次が店にいくと、お蝶は店を変わった。主は吉次の肝いりかと思った。訪ねて行く、お蝶は元の店が商売を始めたのでいったのだ。女将はおみつだった。吉次におみつは「おかげさまで、お蝶には良いお客がつく、商売抜きに見えるところがいいのでしょうね、見込んだだけのことはある、一番の稼ぎかしらだ、亭主は手鎖だ、生きるために、自分で稼ぐしかない、少々の蓄えもありました」。吉次「そういうことか、最初から、それが狙いか、亭主を主にして、手入れで捕まえさせる、てめえは可哀想な飯炊き女を装い、亭主が手鎖の間に、隠した金を、総取りか、やるじゃないか、そんな女だとは」。おみつ「お前が知らなかっただけだ、自分が付いてないと何もできない女だと勝手に思っていただけだ」。吉次「話が早い、俺も忘れぽくなった、何度言われても忘れる、何とか忘れないようにしないとな」。おみつ「あんたの欲しい物はここにない、まだ分からないの、あんたは綺麗な物がみたい、暴いても暴いても裏のないもの、苦しめても苦しめても裏切らない物」。吉次「どういう意味だ」。おみつ「あんたは一度もわたしに惚れたことはない、あんたはただ、一途ってやつに憧れていただけだ」。おみつはおひねりを投げる。受け取って、吉次「確かに、お前こそどうなんだ、惚れて惚れて惚れぬいた男と、お前だって一度だって会ったことがあるのかい」。おみつ「まむし〜〜」と叫ぶ。吉次は石を蹴り上げると、おみつに当てり、おみつの顔から血が流れた。そして帰る吉次の目からも血の涙が流れる。根岸でも、芋と一緒に栗を入れて、栗がはじくたびに他愛なく大騒ぎだ。吉次は見かけただけで、去る。その吉次の背中に紅葉だ。
難し過ぎる。それで評価ダウンだと思った。セリフを辿っても、本当は理解できない。セリフとセリフの間まで、表情の一つ一つを読まないと理解できないかもしれない。そのためには何度も見ないと行けないかもしれない。本当に描きたいものは何だ? そう思った、そこで、もう一度録画をみなおして、セリフを正確に辿った、時に止めて表情を見た。やはり、深いテーマと人情に感心させられた。やはり5つ★だ。
今回は吉次とおみつの愛がメインになる。吉次は、惚れ抜いておみつを女房にした。それで、強請で袖の下の金で、おみつを金の不自由しないようにしていた。そうなると、おみつは不満だ。実は本当の自分を好きなのではない、一途に付いてきてくれる理想の女を押しつけていたのだ。吉次は現実のおみつを理想の女としてあがめ、理想を愛する男でいたいのだ。この気持ちは男には分かる。多分、恋のはじめは妄想で、どうしても、恋する女は観音菩薩なのだ。しかし、女は最初は許せても、お互いに現実の姿を認めて、生活が再構築されるのだ。しかし、吉次は許さなかった。吉次は純情な夢みる夢男だっただけだろうか・・・そのようだ。14年目に逃げられた女にも、あいつに悔やんで、許して欲しいと言わせたいのだ。しかし、現実のおみつは、夢のおみつと違っていた。飯炊き女とさげすまれながら、金を蓄えていた。それは今一緒にいる福松に貢ぐつもりだったが、吉次は元の旦那の桔梗屋が警動で営業できなくなると、自分の手にして、店を開くのだ。そこで、初めて現実の自分を見つめ直す。おみつは「わたしに惚れていない、一途ってやつに憧れていただけだ」。吉次「惚れ抜いた男に一度だって会ったことがあるのか」。二人とも、夢見る夢人間だったのだ。だから、男密は顔から、血を流し、吉次は血の涙を流すのだ。最後も理解できなくていい、情緒として、絵として、人情を分かってもらいたいのだろう。まだ、深いものがありそうだが・・・石田えりさんはさりげなく、演じていました。吉次の奥田さんは、エロも含めていやらしさたっぷりですね。この年でエロぽい魅力のある役者さんは少ないかもしれない。そこらは楽しませてもらいました。若手の柳沢ななさんも、結構頑張った印象でした。今日のスタパで遠藤憲一さんが、饒舌に語りましたね。予想通りの若い暴走悶々の青春時代だったが、饒舌とハイテンションにはイメージがちがうよ〜〜と叫んだよ。      若い女郎・お蝶(柳沢なな)、逃げた女房・おみつ(石田えり)



慶次郎縁側日記2★★★★★   5回「親心」  (平成17年11月4日放送)

皐月の子供の八千代は生まれて1年以上になって大きくなった。秋の初めに、皐月は根岸に子供を見せに行く。孫に夢中の慶次郎だが、皐月は思わず晃之助に対する愚痴が出てしまう。皐月は喧嘩して仕事の邪魔になると、晃之助の元を出てきたのだ。プチ家出だ。そこに皐月の乳母のおしづが走って根岸の家にきて、皐月に意見する。おしづは皐月の乳母だが、もう長いので姉とか母親代わりだ。そこに辰吉が、おしずに妹の稲の娘おゆうが万引きをしたと知らせにきた。さらに、妹のお稲(秋本奈緒美)が亭主の連れ子・浜吉(山内颯)の万引きを手伝って捕まる。浜吉は「おかあさんじゃない」と反抗期だ。二人は界隈で有名で、何度も万引きをやっていて、岡っ引きはもう観念出来ないのだ。佐七「世も末だ、親子で万引きとは」。慶次郎はいさめるが、浜吉は「じじい〜〜」と勇ましい。出て行こうとする浜吉に、慶次郎は「このあたりは人買いがでる」と脅かす。お稲は後妻に入ったが、先妻の子の浜吉がなつかないだろうことは覚悟の上だった。おしづは、晃之助に謝る。そして、お稲を見て行きたいと頼む。皐月も一緒にいった。皐月はおしづの代わりに子守を頼む。辰吉に「おぶん」に子守を頼んだが、断られる。皐月とおしづが行って聞きただす。お稲は「懸命にやった、おゆうは私の娘だが、浜吉には一生懸命だった、亭主は職人で、鉋や鑿の扱いは知っても、子供のことは・・・ そのうち、おゆうは浜吉にいじめられるようになった、それから、おゆうにだけきつく当たるようになった、万引きも浜吉に言われて、気を引くために手伝った」。おしづ「何で、二人の姉妹なのに、言わないのだ、馬鹿」と怒り、泣いた。お稲も「おねえさんは、いつも忙しいと」泣く。おしづは自分のせいだと思う。
皐月は晃之助に「離縁だ、早いほうがいい、不憫すぎる」と話す。皐月「おしづは、自分がそばにいなかったから、自分を責めている」。晃之助「身内が盗みの手伝いだとしたら」。皐月「身内が盗みで世間体が悪いのですか」。晃之助「お前は先走る、思いこんだら、走ってしまう、おぶんのことも・・」。皐月は怒って、八千代の寝間へ行き、そこで寝ると言う。晃之助は一人で寝て、くしゃみで風邪をひいた。おしづは夫と娘を亡くしたが、あふれ出るお乳で、皐月を我が子のように育ててくれたのだ。朝の用意をするが、おしづは腰が痛いようだ。根岸でも、馴れない子供の相手をして、佐七も腰が痛い。そこで、佐七は浜吉に米の研ぎ方を教える。浜吉は職人の息子で、薪割りはうまかった。佐七「みんな薪割りしたら、親が迎えに来るよ」。浜吉「迎えに来ない」。皐月の父の左門も、花ころもで晃と飲んでいる。左門「実の親より、育ての親だ」。お登世も「晃さんの、森口が親代わりだ、私も大切にされましたが、自分の子を亜tまわしにするので、辛かったです」。晃が帰ると、おしづが迎え、皐月も起きていた。
しばらくして、おしづが朝寝をしていたら、おふみという若い娘がいた。皐月は「ふみ」は子守として、来てもらうことにした。皐月「これまで、おしづにはたくさんやってもらった、これから、少し自分のために、遠慮なく体をいたわってください、これからは、私とふみでやっていきます」。しばらく、おしづは毎日出かけていった。浜吉が薪割りしていると、お稲がやって来て、離縁することになったと、慶次郎たちに報告に来た。お稲「子のいない新しい親が来れば、浜吉はまともになるかもしれない、また、浜吉がおゆうをいじめたら、私は耐えられません」。浜吉は父親が迎えに来るまで、根岸で待つことになった。お稲に慶次郎「虫は何故泣くか、知ってるか、連れ合いを探しているのだ」。佐七「五月蠅いくらい泣いている」。慶次郎「おゆうを大切にな」。お稲は薪を割る鉈を見た。姿を見せない浜吉は、佐七の大煎餅を勝手に食べていた。佐七「返しなさい、黙って食べては駄目だ」。慶次郎は浜吉に迫って「人の物を勝手に取っては駄目だ、謝れ」。反抗する浜吉は仏壇の三千代の位牌を投げつける。慶次郎「これはわしの娘じゃ、謝れ」と尻を叩く。泣き出す浜吉を慶次郎を抱きしめる
おしづは川縁にしゃがんでいる。そこに吉次が話しかける。吉次「あんたは、森口ではお身内以上だ、あんたのためなら旦那さんも・・」。おしづは思わず、吉次に泣きながら、抱きつく。そして、吉次の妹の店に行く。吉次は女房に逃げられて、妹にやっかいになっている。それを見て、おしづは「羨ましい、夫と娘を死なせてしまった、森口で死のうと思ったが、お暇を出された、妹にも今更ねえさん風を吹かせない、気づくと私はずっと一人だった」。お稲が皐月に話しに来る。お稲は「おしづは来ていない、暇を出した・・・ それはむごい、小さい頃、どんなにお腹を痛めても、皐月お嬢様が、心配だと姉は帰った。皐月は自分がしたむごいことに気づいた。そして一人で町を探して走る回る。
根岸から浜吉も姿を消したのだ。そして、町で、浜吉が万引きをするところを、おしづが見つける。町人に浜吉はまた万引きだと問いつめる。その時、おしづ「私です」と申し出る。二人は番所に連れて行かれる。おしづは何故かばうのだと聞かれた。おしづ「かばったのではない、力を貸した」。遅れて番所に来たお稲はゆうを連れていた。お稲「何で、私を困らせるの」。おしづ「帰りたいんだよ、どうしていいか分からなくて盗みをした」。そこに皐月も来たが、番所の外でおしづの言葉を聞いた。おしづ「聞かなくても、私も同じ思いです、好きにして良いと言われても、したいことが・・20年、仕事ばかりしてきた、いっそ、盗みをすれば皆が来てくれると、違うかい?」。浜吉は立ち上がる。そして、盗んだ虫かごを差し出す。おしづ「持っておゆき、大切にしなさい」。その浜吉にお稲「虫は、何故泣くか知っているかい、仲間を捜している、一緒に暮らす仲間を、帰ろう」。入って皐月「私も森口に来たときは、後添えみたいだ、お稲さんと同じ他人でした」。お稲は浜吉とおゆうを抱きしめて泣く。そして、おしづに微笑んで別れる。見送る皐月は横に立つおしづの手を握った。皐月「おしづ、家に帰りましょう」。おしづ「何です、いい年をして子供みたいに」と言うと、二人は抱き合って、泣く
佐七と慶次郎は子供の世話で、腰を痛めていた。皐月「手習いをしたころ、何でも贔屓にされる兄上を恨んで、死んでしまえと言った、そうしたら、おしづは本気で叩きました、謝りなさい、人がはかなくなることは、どんなに切ないか、教えてくれた、ありがとう」。晃之助が帰ってきたので、おしづ「旦那様、八千代様が一人では可哀想です、早く兄弟を作りなさい、喧嘩したり・・、いろいろだが、兄弟はいいのものですよ」。庭からは虫の声が聞こえてきました。つづく。
江戸の人情で、今日も泣かされました。かみさんも見ながら泣いていました。日本人の生き方、人との距離感を味せてもらった。お稲は、連れ子の浜吉に気に入られようと、浜吉の嘘をとがめずに、我が子なら我慢してくれると思って、叩いたのだ。それは、両方にまずかった。浜吉は実の子のように叱って欲しかった。根岸に預けられても、また万引きしたのはお稲に来てもらいたいからだ。それを知って、おしづも同じだ。それで、私だと申し出たのだ。皐月たちが来ました。一方、おしづと皐月も、互いの心遣いがすれ違うことになった。皐月は、これまでの妹への不義理を解消するために新しい子守を雇った。しかし、おしづには、今更妹のところに行けなかった。これまでも、どんなことがあっても、皐月を第一にやって来ていたのだ。それを皐月に言えないのだ。お互いに気遣っているからだ。細かい心の動きを、一つ一つのセリフで描くのだ。もちろん、省略もあるのだから、行間を読まなければいけない。ちょっと分かりづらい所もある。でも、互いを思いやって、すれ違うなんて、昔の日本は良かったね。今回は慶次郎ではなく、おしづの梅沢さんと皐月の安達さんが大活躍でした。役者さんは皆本当に達者です。楽しませてもらえます。。
おしづ(梅沢昌代)、その妹のお稲(秋本奈緒美)、亭主の連れ子・浜吉(山内颯)



慶次郎縁側日記2★★★★★   4回「」  (平成17年10月29日放送)

かっぱらいに襲われた佐七(石橋蓮司)は、少年の頃に別れた半次(高橋長英)に助けられる。拝んで胸を叩く癖が二人の合図だった。読み書きができなかったのだ。四十年ほど前、佐七は笛作りの職人見習いで、半次は笛吹を目指していた。二人は互いに励まし合う友だった。半次は一時グレていい加減に暮らしていたのだ。再会を機に、半次は佐七に笛を渡す。壊れている笛を佐七は直すことになる。半次は再出発を誓い、慶次郎(高橋英樹)の口利きで、酒問屋の山口屋で働くことになる。晃之助は慶次郎を甘いと言う。慶次郎が頼めば山口屋は断れないことを知っている、しかし、40年もまともでなかったので駄目だろうと見抜く。半月後に吉次が慶次郎を飲み屋に連れてくる。盗んだ酒を売っているので美味しい酒がやすく出せるのだ。慶次郎は山口屋に聞くと、山口屋は間違いない。佐七に半次のことを聞いてくれと頼む。お登世は、佐七は昔を思い出すのは辛いのだ、笛で精進したが駄目で何もなれなかった。笛を直すことで、辛い昔も半次も直ると思う。登「蛍がやってくる、会いたい者が姿を変えてやって来る」。慶次郎「三千代が亡くなって6度目の夏だ」。
佐七は相変わらず、元気だ。いい藤が見つかった。それで笛が直せそうだと上機嫌で慶次郎に話す。しかし、慶次郎は佐七に盗み酒の疑いの話をする。佐七「旦那が言うなら、そうだろう、俺は半人前だ、旦那は頭が良くて、仏の同心だ、見えない者が見える、しかし、旦那は佐七の何を知っている? 小さい頃、悪いことが起こると何でも、佐七のせいになった、半次もそうだ、小僧は俺だ、40年前の俺だ、旦那が疑っているのは、この俺もだ、半ちゃんはやっていない、何もしなくても温かい飯と布団がある旦那に分かるか」。近しいと思った人にも深い川がある。慶次郎は佐七を傷つけてしまったのだ。佐七は飲み屋に誘われ半ちゃんと飲む。佐七は店はどうか聞く。半次「虫けら扱いだ、いつまで下働きだ、儲けないか、ぱーとな」。佐七「俺、半ちゃん信じてる、おれは半ちゃんと一緒だ」。二人は酒を飲む。そして、帰りの二人の歩く橋の上で蛍が迷って飛んでいた。佐七「笛できるよ、聞かせてくれ」。半次「ふ〜〜ん」。それから、半次は山口屋から姿を消した。
半次は、盗み酒の仲間と諍いがあって、刺した。半次は、山口屋からも仲間からも追われている。慶次郎の庵の佐七のところにならず者たちがやって来る。その顔を佐七は覚えていた。最初のスリの仲間だった。ならず者が佐七に襲いかかるところを、吉次が来て助ける。事実を知って佐七は落ち込んでしまう。遅れて慶次郎がやってきて、佐七に気遣う。夜、佐七は昔を思い出していた。日暮れに半ちゃんが笛を聞かせてくれた。♪笛の音が流れる♪ 佐七「透き通った、悲しい音色だった、辺り一面響いた、中村屋を貸し切ったような贅沢な気分だった」。あとから聞いた話では、半次は有名な囃子方の師匠から弟子入りを断られた。その後いなくなったのだ。佐七「助けてやりたい、待っている、俺の半人前の笛を待っていると、だから、もし半ちゃんが頼ってきたら、旦那、人を助けるにはどうしたらいい、どうして助けるのだ」。翌朝、佐七が起きると、塀の上の石がおいてあった。慶次郎は気づいた。慶次郎「人助けは器でない、心だ、お前だけでは逃がせない、お前は見張られている、お前が動く間に、俺が逃がす」。佐七「取り逃がしたら、法度を破ることになる、山口屋の別宅のここにいられなくなる、旦那は元同心だ」。慶次郎「いや、今は猟番だ、お前と同じだ」。佐七の代わりに慶次郎が夜、歩く。しかし、晃之助がつけている。慶次郎は一つの庵に入り、佐七が直した笛と路銀と着物を持ってきた、そして、江戸を出ろと言う。半次「あいつ、何と言った」。佐七「助けたいと・・・お前さんだけは・・・佐七は笛を忘れたくないのだ、お前さんの笛を忘れたくないのだ、佐七を裏切るな」。それで半次が庵を出ると、同心の晃之助がいた、半次「裏切ったな、どうして」。慶次郎は裏切っていないと言う。そこにやって来た佐七「俺が八丁堀に頼んだ」。半次「俺への仕返しか、騙したのだな、お前がいけない、お人好しのふりをして、人を下に見ていた、笛がうまいとほめられて、その気になった俺が馬鹿だった、何だこんなもの」と笛を捨てる。慶次郎は怒って半次を殴る。慶次郎「佐七はお前のためにどんなに・・・」。佐七「これは半ちゃんの笛だ、直しているときは楽しかった、一人前の笛作りになろうと思ったんだと、これは半ちゃんへの俺からのお礼だ、ありがとう」。半次は手を差しお縄になる意志を示す。晃之助と辰吉は半次を縄で縛ることなく連れていく。そのとき、佐七は手を合わせて、胸を叩く仕草をする。しかし、半次は、答えなかった。
それから、しばらくすると、佐七がいなくなった。山口屋と慶次郎に迷惑をかけたためだ。慶次郎は探すが、見つからない。夕方慶次郎は一人で「馬鹿野郎」とつぶやく。そのとき、煎餅をかみしめる大きな音がした。佐七「忘れて、取りに来たら、旦那が帰ってきた」。慶次郎「腹が減った、茗荷がいい、豆腐にのっけて、きゅ〜〜と」。佐七「汁はどうする、ろくな物ができない」。慶次郎「頼む、佐七」手を叩き、胸を押す合図をする。今はこの二人が、かけがえのない相棒で、伴侶なのだ。夜、庭に蛍が一斉に飛ぶ。慶次郎は佐七を呼び見つめる。蛍に姿を変えた誰を見たのだろうか・・・。つづく。
相変わらずの珠玉の短編です。人としての誇り、信頼と些細なことでの裏切り・・・見事に描かれている。結局、偉い仏の同心の慶次郎と読み書きもできない佐七だが、人としては対等なのだ。これまで、仲良く暮らしてあうんの呼吸だったが、本当の昔からのお互いを知っていなかったのだ。半次が盗み酒の仲間かどうかも、ドキドキした。まあ、この結末は妥当かもしれない。佐七の半次への思いは、自分の過去を否定されたくないという思いだったのだろう。しかし、慶次郎は佐七の心を知って、元同心としての立場を捨ててまで、半次の逃亡を手伝ったのだ。ここが、泣かせます。しかし、佐七も慶次郎の心を知って、晃之助に伝えたのだ。半次よりも、慶次郎を選んだのだ。ここらの互いを思いやる心が美しく泣かされるのだ。特に老年の悲しみがあって、しみじみする。本当に相棒ですね。最後に登場の大きな煎餅の音、飛び交う蛍が見事だった。    脚本:宮村優子



慶次郎縁側日記2★★★★★    「逢魔ケ時」  3話  平成17年10月21日放送

良かったな、珠玉の短編だった。宮村優子さんの脚本だった。夕闇迫る逢魔ヶ時(おうまがとき)。「花ごろも」に駆け込んだ女は、お俊(古手川祐子)と名乗り、約束があると部屋に上がるが、誰も来ぬまま帰って、新品の簪を忘れて行く。尋ね当てれば、老舗の裕福な内儀が万引きを重ねている。お登世(かたせ梨乃)がお俊を問いつめると、医者の娘として育ち、大店の内儀になっているが、万引きは生きる証、泥棒こそが私の顔、あなたは自分の顔があるのかと開き直る…。「花ころも」の登世に顔があるのですか? と挑発する。登世は、慶次郎と佐七とお俊を呼んで、贅を尽くした料理を出す。どれも、貴重な素材を使った美味しい物だった。しかし、お俊は、「おいしかったけど、どこかで食べたことのあるものだった」。慶次郎も「美味しいが、登世らしくなかった」。でも、台所で食べた佐七だけは、前のシリーズ7話のひで(加藤夏希さん)が卵焼きが好きだったことを思い出していた。珍しい料理ではないが、おいしい卵を使った料理だった。登世は佐七と卵焼きで酒をのみ、思いを語り合ったのだ。お俊は、また万引きをして、「花ころも」に逃げ込んだ。登世は、追いかけていた町方の晃太朗から、お客だとお俊を庇う。しかし、お俊に登世「あなたは、医者の娘として、色々な患者や家族の喜ぶ顔をたくさん見たでしょう、老舗の内儀として、楽しみや喜びはなかったか?」と諭す。ここらのセリフは良かったのですが・・・本当は見ながら再現しないといけませんね。お俊は、自首するという。そこにお俊の旦那が自死したこと知らせがくる。借金で苦しんでいたのだ。結局、お俊は万引きを申し出て、弁償して、お俊は老舗を継ぎ、女主人として働く。評判も良くなく、店は苦しい。しかし、お俊の表情はすっきりしていたのだ。そこに慶次郎と佐七の絡みが、円熟したベテラン漫才師のように絶妙に絡んで、セリフで泣かしてくれます。登世と慶次郎の互いの思いの空回りもあって、読み切りの人情物の短編として、締まった時間を楽しみました。しかも、映像がこれまでと違って、映画風の画像でした。そこも新鮮でした。見た後の感想なので、思い違いは一杯ありますが、容赦願います。


以下は初回シリーズです。


慶次郎縁側日記★★★★★   10回「皐月」  (平成16年10月29日放送)

最終回で皐月がテーマだ。根岸の庵で佐七はくしゃみしながら、掃除をしている。佐七「屋敷と旦那は誰が見るのだ」。そこに皐月がやってくる。タイトル。庵の三千代の位牌に皐月は手を合わせる。佐七はひでの失恋で、最近は飲んだくれている。慶次郎は出かけるので、留守を頼む。佐七は寝ながら「俺の代わりは他にもいるってこった」。皐月「身内以外で父上がうち解けるのは佐七さん以外にいませんよ」。皐月は家で晃之助に線香の臭いがして気になることを思い出した。しずが晃之助が墓参りにいく姿をみたのだ。住職に聞くとこのところ度々三千代さんの墓に来ていることを知らされる。そんな庵に、女が入ってきて、台所の包丁を持って皐月に「金を、こっちは捨て身だ、あとは身を売るしかない」と言う。皐月が何とか取り押さえ、落ちた包丁を佐七が取り上げる。大工の女房のゆきが謝る。夫は300両の料理屋の大仕事をやっているが、先払いは30両しか貰っていない。木材や人足の手配であと20両は必要だ。借金は兄弟子のを押っつけられた。兄弟子に嫁ぐはずの棟梁の娘を嫁に貰ったのだ。棟梁の娘が、うちの人でなければ駄目だと言ったのだ。家の人は棟梁や兄弟子に遠慮するようになった。ゆきは後妻だった、正妻は死んでしまった。今は私が女房だ、何とかしなければ。皐月が「それでも盗みは行けない」と言う。ゆき「任せてくれ、女房は私だよ」と胸を叩いたのだ。先妻と違って、ろくな身よりもいない。帰っていった。皐月は晃之助に、ゆきを見回ってくれと頼むが、差しせまった用事があると断る。皐月は「三千代の墓に参いることですか、三千代さんが同じ事を頼んでも、旦那さまは断るのですか」。晃之助は答えないで、大がかりな賭場が開かれる事件を辰吉に手はずする。皐月「私に至らぬ所があるのか」と切なく訴える。晃之助は黙ったままだ。
皐月はゆきの家を見に行く。ゆきは借金取りに囲まれていた。皐月は口を入れるが、男達に囲まれてしまう。慶次郎が「うちの嫁だ」と助けてくれる。ゆきは亭主と幼なじみだが、一度は諦めたが、後添えになって亭主の母の看病をしたのだ、先年死んだ。慶次郎は亭主と二人で、梁に頭を下げるように言うが、ゆきは断る。ゆきは先妻の影で生きてきた。信じられないのだ。先妻の身代わりじゃないか。お金も前の女房なら、実家に頼ってすぐに借りれた。亭主はもっともっと幸せになれた。棟梁のかみさんは2度目の人と私のことをいいます。亭主もそれをただしません。皐月は同じ後妻にも似た立場に同情してしまったのだ。
姑いわの位牌は根岸にいっている。皐月は慶次郎に聞く。皐月「亡くなられた母上さまのことを、今も覚えていますか」。慶次郎「気になるのか、おゆきのことが、あれは手を出してはならない、夫婦の心の問題だ、当人同士がぶつかって乗り換えるものだ、いわも、三千代も、忘れたことはない、お前は賢い、だから真(まこと)を言った、つらいな、真というものは」。花衣で慶次郎はお登世に蓮の花を聞く、朝の4日しか咲かない。慶次郎「鎌倉屋に帰るつもりはないのか、かまってくるのは帰って欲しいのではないか、借金を増やしたのか」。お登世「借金を増やしてしました、みなが働いてくれます、おかみじゃ心許ない、自分たちがしっかりしないといけないとおもっているのでしょうか、鎌倉屋が消えるのは辛い、でも旦那の言葉が吹っ切れさせた、旦那が根岸に移ったのは行きたかったから、花衣での生活を大事にしたい、私はここでよく生きたい」。
皐月は実家の母に会いに行く。母「嫁いだ朝を覚えていますか、3人の家に嫁ぎます、加えて貰って4人で暮らしますと言った、それくらいの辛抱ができない娘にした覚えはない」。言い終えて帰る皐月を見送った母は嘆く。乳母のしずが厳しくしてくれるように頼んだからだ。皐月はゆきに自分の嫁入りの10両を持って行く。おゆき「疲れました、先妻のかわりは」。皐月「私の夫にも亡くなった許嫁がいました」。ゆき「お分かりでしょう、死んだ人にはかないません、お金を揃える、でかした、良い女房だ、役立つのはのは生きているお前だ、そういわせてやりたかった」。皐月「いわせましよう、いわせなきゃ、元気を出して」。
皐月は根岸を訪れるが、元気になった佐七しかいない。佐七が言うには、昨日晃之助がきて、慶次郎とずっと位牌と話をしていたのだ。皐月は仲間はずれだった。皐月は部屋に入り、戸棚の中の慶次郎の金に手を掛けようとする。そこに慶次郎が帰り、思わず金を落とす。慶次郎「何をしている、いるだけ取りな、親子じゃないか」。皐月「親子なんていらない、おしゃって下さい、娘は三千代ひとりだけだと、私を他人だと思って下さい、まだ亡くなった人の代わりなら情けない、私」。慶次郎「情けじゃない、親子じゃないか」と金を渡す。「父上さま」と泣き崩れる皐月だ。慶次郎は問いただす。皐月は「ゆきにあと10両あれば、亡くなった人の影から抜け出せる」。慶次郎「何故俺に言わなかった、三千代の父だからか、おのれを誰かの影と思うな、お前はお前だ、三千代になるな、俺も三千代は二人いらない。佐七も「おひでが消せない、死ぬまであの馬鹿が忘れられない、そこにあるものはなくなってしまう、心底惚れた者を忘れてはいけない、忘れられない、そういう旦那と若旦那だから、惚れなすったんじゃ、俺もお前さんが消えちまっても、お前を  忘れない、ずっと覚えている」。皐月は吐き気を催す。皐月は孕んでいるようだ、喜ぶ慶次郎だ。晃之助は蕎麦屋で、次の賭場がいつか、吉次に聞く。神田に助八という大工に、高利の借金させている輩がいる、賭場に出入りしている。叩けば出る。
晃之助は道ばたで飲み過ぎて倒れていた。辰吉が助けに来た。晃之助「俺は小さい男だ、情け知らずだ、父を越えよと、役目に励む、一日町を歩き、家に帰る、泥のように眠る」。辰吉「よろしいじゃありませんか」。晃之助「この世にいない者を忘れる、忘れる己がやりきれず、墓参りを繰り返した」と泣き崩れる。晃之助「愛しい気持ちに変わりはないが、愛しい者のために、この先忘れるかも知れない」辰吉「昔人を殺しそうとした、女房を殺した男です、殺すな生きろと、大旦那に怒鳴られ振り上げた匕首を降ろしました、死んだ女房も、殺した男も、許せない手前も、心に気持ちがくすぶっている、そうやって生きています」。次の賭場が月末に立つ、大きな捕り物になる。辰吉に助勢を頼む。家に帰ると、皐月は見あたらず、いなくなったかと不安がる。皐月は寝間着であった。皐月は正座して「私、子が出来ました、身ごもりました、私、嫁ぐ折、3人の家に嫁ぐのだ、父上さま、晃之助さま、三千代さま、でも、それは間違いでした、姑様、その母上、父上、大勢の方がいて、子が生まれるのです、私はその中の小さき一人」。晃之助は「でかしたぞ」と大声で叫び、優しく接する。お登世は鎌倉屋に7年振りに訪ねた。追い返された。安右衛門「何か、御用ですか」。お登世「片意地張っていたのが、すっとしました、文句を言いに度々言ってやります、勝手に敷居を高くしてやっかなんでいたのかもしれない」。慶次郎「意地がなければ、手前は手前でいられない」。お登世「亭主に線香をあげてきた、大旦那にそっくりのいい人でした、かけがえのない人でした」。慶次郎「なかなか咲かないじゃ、咲くのは朝じゃ、こうして待ちたい」と二人は仲良く座り続ける。
晃之助は勤めに出る。おゆきは旦那と何とか工面できそうだ、と知らせが来た。根岸の庵に風がふく。そこに三千代が立っている。佐七「おや、きれいなお嬢さんだ」と、佐七にも見えるのだ。慶次郎「今辛かったときの事を思い出した、ここに来る前二度と思い出したくない、だが忘れられない、その時のことを、だが何故だい、いつもは苦しいだけのその昔が、ふと懐かしく思えた、三千代」。三千代の影は風とともに去っていく。おしまい。
ちょっと細切れだった。それぞれが人間として悩みを抱えて生きている。それを全て表したので散漫になった印象だ。しかし、どのセリフも全て珠玉でした。情と愛、老いと恋、いいドラマを有り難う。以前も述べたが、テーマといい、セリフもいい、演技もいい、心技体が揃って、良質の省略で、エッセンスを絞り出した珠玉の作品になった。ありがとう。来週は忠臣蔵だ、年末恒例でしょうか、テレ朝とカブッテいるぞ、でも上川さんだもの見るしかないですね。



慶次郎縁側日記★★★★★★   9回「佐七の恋」(10月22日放送)

慶次郎が籠で若い女ひでを連れてくる。慶次郎「お姫様をつれてきた」。佐七は驚き顔を見る、ぼんやりしている。ひで「ぼんやりしてないで、手を貸せ、くそおやじ」。加藤夏希さんです。綺麗ですが、怖い役が多いのです。5月半ばだった。5日前、木挽町で他の女に乗り換えた男・鉄次(吉守京太)を取り戻そうと、おひで(加藤夏希)は狂言強盗を企み、自分の太股を深く傷つける。鉄次をを呼び戻そうと言うが、当然事件にはならず、おひでは森口晃之助の屋敷で様子を見ていた。顔には殴られた跡がある。晃之助「無茶しすぎだ、少し加減すればいいものを、深くやりすぎだ」。ひで「私は押し込みにやられた」。晃之助「音が筒抜けの長屋だ、もみ合う音を誰も聞いていないのはおかしい、何だって包丁を帯に隠してた」。ひで「返せ、泥棒」。
そこに慶次郎が鉄次を連れてくる。鉄次は新しい女としけ込んでいるところを、ひでが押しかけて、もみ合い鉄次の頬を傷つけた。鉄次「お前には愛想が尽きている、出て行け」と言われたのだ。ひでは鉄次の手を噛む。ひで「足は自分で斬った、あの女に罪を着せるつもりでな、お前が来たら包丁ぐさっとやるつもりだった、木挽町心中、おひで鉄次地獄の道行きってな、芝居になる、男に抱かれて2年稼いで養ってやたんだ、黙って引っ込んでいられるか」。鉄次「手前以外に女なんていくらでも」。ひでは悔しくて泣き寝る。おしずは皐月に怖い女ですというが、皐月は「足ばかりでなく、心も傷ついている」。晃之助「落ち着くまで、皐月の手を借りるか」。しかし慶次郎が根岸で引き取ると言う。皐月「私ではお役に立ちませんでしょうか」と悲しそうだ。慶次郎「八丁堀では、ひでも居心地が悪かろう、それにお前たちが仲むつまじいのも目の毒だ」。晃之助と皐月は思わず恥ずかしそうに見合わせる。この二人は一部週刊誌で噂なのですかね。慶次郎は食事は佐七がいる。
ひでを養生させる為、慶次郎(高橋英樹)が根岸に引き取る。しかしひではたばこを吸い、酒を飲む。ひで「もう一生分寝てしまった」。佐七「傷に障るから」と叱るが、ひで「私の傷だ、私の勝手だ」と減らず口だ・佐七「親が見たら悲しむだろう」。ひで「五月蠅いね、悲しむ親なんてはなから居ない」。将棋の駒まで投げてくる。あばずれだ。佐七もかなわない。慶次郎が来て、煙草を取り上げ、「佐七を怒らせるな、飯作ってくれないぞ」。ひで「蕎麦でもとればいいだろう」。慶次郎「今夜はお前の床払いの祝いだ、好きな物を作ってもらえ」。ひで「卵焼きの甘いの」と恥ずかしそうに言う。佐七が初めて作ったものは、旨かった。佐七のも取ってしまう。そして、慶次郎に「旦那、私にも一杯」と酒をねだる。
加藤さんの色気が表現されますかな。慶次郎は少しだけ飲ませる。嬉しそうな顔は満面の笑みだ。4日後、佐七が風呂に入っていると、ひで「おやじぃ〜」と背中を洗いましょうかと思ったが、お湯をかけられた。佐七「いきなり〜」と狼狽している。ひで「しみたれ」。相変わらず言葉は荒い。ひでは居酒屋に連れて行けとせがむが、佐七「若い娘の行くところではない」と断っている。ひで「居酒屋に行ったことないんだね、それで連れて行けないんだろう、ケチだからね、おやじぃは」。佐七「もう金輪際飯は作らない」と怒る。ひでは慌てて「卵焼いてよ、おやじぃの卵焼きやっとおいしくなった」と甘い顔で拝まれた。毎日卵焼きだ、旨くなった。当時は卵は貴重だったのではないだろうか
夜、佐七が一人で酒を飲んでいると、ひで「隠していないで、ごちそうしてくれ」。色っぽく胸元から茶碗を出されて、酒を飲ますと、一気に2杯も飲んだ。ひで「昔の事を思い出したら眠れなくなった、酒はいいね、飲めば何もかも忘れて、いい気持ちになれる」。佐七「お前みたい若い娘にも忘れたい昔があるのかい」。ひで「忘れたいことばかりだ」。佐七「本当に親はいないのか」。ひで「おかあさんは、5つの時男を作ってどっかいった、親父は8つの時に死んだよ」。佐七「お前一人かい」。ひで「あにきがいれけど、所帯持ったら私がじゃまになった、顔見るたびに俺に迷惑かけるなという、ちぇ、誰が世話になるか、親父も兄貴も鉄次も、男はろくなもんじゃない」。佐七「鉄次って」。ひで「2年も身体で稼いで養ってやった、傘問屋のおやじ、呉服屋の通い番頭、湯屋の亭主、お得意さんが3人いた」。佐七「鉄次はもういいのかい」。ひで「もう、どうだっていいよ、あんな男は」。縁まで引きずって歩き、「川開きまで、足直るかね、大川の川開きに連れて行ってよ、一緒に行こう、両国、たまや、かぎや、大好きだ、賑やかでいい気分で、おわっちまったら、はかなっくて、一緒に行こうよ、約束だよ」で指切りをする
朝に、朝顔売りが来る、ひでが来て、「朝顔売りがいっちまうよ」と佐七に追いかけさせる。その後、慶次郎がふと台所で、ひでが茶碗を持っている姿を見つける。水を飲んでいたと言い訳する。そこに佐七が帰って来る。線香花火を買ってきた。夜、佐七とひでが線香花火をするが、ひでは手が震え、すぐに落ちる。ひで「おやじみたいな花火だ、しみたれているのに長持ちだ」。思わず怒る佐七の花火は落ちる。子供のように怒っていると、ひでが庭に転び、仰向けになり、上には佐七が被さってしまう。佐七「大丈夫」と言うが、慌てて離れる。ひで「照れているのかい、いい年して、ウブなんだね」。いや、加藤さんじや、誰でもドキドキだよ。おじさんも勿論だ。ひで「ねえ、子供の頃、親に花火買ってもらったことあるかい、ないよ、何してた、おやじぃのおやじは?」。佐七「竿竹や鉢植えの商いだ、稼ぎの無いときは、お袋が仕事している横で、うだうだと酒を飲んでいた」。ひで「おやじぃも貧乏したんだね」。ひで「じゃ、女と二人で花火したことわ?」。佐七「それは・・」。ひで「じゃ、今夜が初めてか、持てない面している、おやじぃ、でも、私は・・・何でもない、あと一本だ」。線香花火は燃え上がり、ひでの目には涙だ。佐七は見入ってしまう本当に綺麗ですね、加藤夏希さん
慶次郎は酒の減り方に、ビックリする。慶次郎「飲んだのはひでだ、あいつは病かもしれない、玄庵に診せた方がいいかもしれない」と提案するが、佐七は「飲ませないようにする、ここに置いときな、悪く考えすぎだよ」。ひで「おやじぃ〜」。慶次郎はお登世に相談する。お登世「酒で身を滅ぼす人をよく見た、早めにお医者にお預けなさった方がいい」。慶次郎「佐七が手放したくない、娘のように想って言うのだろうな」。お登世「・・」。慶次郎「佐七は親子ほど、歳が離れている」。お登世「歳なんて、器用に遊ぶどちらさんみたいには、お分かりにならないでしょうけど」。慶次郎「それを言うなよ」。お登世「分かるような気がします」。慶次郎「とにかく、ひでは玄庵先生に、早いほうがいいな」。
ひでは佐七に「しみたれが金をくれない、下駄の鼻緒が切れた、花紙もない」。そして酒を確かめるが、空っぽだ。縁で品を作って座るひでに、佐七「せんべいだ」。しかしけだるそうに「いらない」。佐七「鼻緒は俺が買ってやる」。ひでは喜び、手を出す。ひで「一緒に下谷にいっていい」。佐七「居酒屋にはいかない」。ひで「旦那の小言ばかり聞いていやにならないかい、息が詰まるよ」。佐七「旦那はあれでいい人だ」。ひで「おやじぃーは旦那の味方かい、私の頼みを聞いてくれ、じゃ居酒屋に行こう」。佐七「なんで、そんなに飲みたがるのだ」。ひで「分からないよ、昔のことや、ここを追い出された時のことを考えると、飲みたくなる」。佐七「追い出さないよ」。ひでは嬉しそうだが「女房にでもしようというのかい、笑わせるな、さあ、居酒屋に連れて行くのかどうか」。佐七「いかん、酒はお前には毒だ」。ひで「何だ、旦那が怖いのか、おやじぃは、私と旦那、どっちが好きなんだい」。佐七は言葉に詰まる「そうじゃない、酒はお前の身体に・・」。ひで「どうせ、私は厄介者だ、情けで引き取って貰った女だ、腹の中はお見通しだ、仏の慶次郎の名が上がる」。佐七は思わず頬を打つ。ひで「同じだ、腹の中は旦那と同じで、私の事なんか思っていない、馬鹿だった、お前を優しいと思った私が馬鹿だった、ちきしょう、馬鹿野郎と」と出て行ってしまう。
慶次郎は下谷の居酒屋だろう、探すよと出て行く。佐七「行ってやれば良かった、お前が一番だと」。夜に、吉次がきて、ひでを見つけた。刺されて八丁堀にいる。佐七は夜の道を走る。晃之助の家で寝ていた。聞くと、居酒屋で飲んでいて、喧嘩になった。しかしちょっと変だ。ひでがうなされて「ばかおやじぃ」と呼んでいた。ひでは喧嘩をふっかた上に、包丁を奪い、相手に握らせ、「刺してみな」と言って、ひでの方からぶつかり刺た。佐七にひでが気を取り戻る。死にそうになりながら、ひで「そうか、私はしくじったんだね、ちっとばかり怪我して心配させようと思ったのに」。佐七「馬鹿野郎」。ひで「馬鹿は知ってるだろう、でも来てくれたんだね」。佐七「当たり前だ、俺は世の中で、おめえが一番大事だ」良かったね、ちゃんと伝えられてひで「今頃」。ひで「大好きだよ、馬鹿親父」そうだ「大好きだよ、サクちゃん」を思い出した。そういってひでは死んでしまう。佐七「おめぇが一番だ」と何度も叫んだ
慶次郎は「三千代に頼んだよ、三千代がいれば淋しくないだろう、もっとも口の悪さには三千代も手こずるかもしれない」。佐七「ちょっと出かけてくる、煎餅切らして」と出て行く。しかし夜になっても帰ってこない。そこに辰吉がやってきた。番屋に連れられ、八丁堀だ。辰吉「ただのみ、ただ喰い、一升酒を飲み、卵焼きを5皿食べた、飲みすぎてぶっ倒れた」。晃之助の家で、泥酔して、大いびきだ。慶次郎「恋か、かなわないな、佐七には」。皐月がやってくるが、慶次郎は佐七を連れて帰りたいと、負ぶって帰る。ひでが大好きで、佐七と一緒に行きたかった花火が始まる。華やかではかない花火に佐七「あの世で、ひでがもっと酒を飲みたいと、もっと卵焼きが食べたいと、泣かないように、おれが、おれが・・・」。石橋蓮司さんは顔をくしゃくしゃにして慶次郎の背中で泣く。花火は大空一杯に広がる。ひでの「大好きだよ、馬鹿親父」と声が聞こえる。
今日はとにかく、加藤夏希さんのワンマンショーでした。ファンには永久保存版ですね。これまで、ヤンキーな印象でしたが、江戸でもヤンキーでした、笑。でも、言葉が昔言葉で、着物を着ると、心持ち色っぽくなる。時代劇で色気を見せてくれると、女優さんの新しい発見をしてします。おじさんもドッキリしました。加藤夏希さんの美しさに磨きをかけてください。これから、しっとりした女を演じてくれるともっと素敵です。テーマが愛と死で、セリフも「大好きだよ、馬鹿親父」と見事に「世界の中心で」にカブリました。しかし、石橋蓮司さんですからね、若い人のように大受けしませんが、自分のように年取ると、淡く夢見る物ですね。老いと恋か、oi(老い)にkをつければ、koi(恋)だ。このドラマのターゲットは50,60歳代か、ドラマとして成立しないけど。とにかく、かみさんと二人でまた泣かせて貰いました。石橋版老年版「セカチュー」は★6つです、爆。   脚本:山本むつみ、ひで:加藤夏希さん



慶次郎縁側日記★★★★   8回「若い風」(10月15日放送)

根岸の家を道場にしょうとした。その数日前、仲間に虐められている若い武家と出会った。秋元右近だった、煎餅を食べているが、書画で身を立てたいと言っている。武家の跡取りだ。剣術は苦手で、書画に専念したい。根岸の庵に、若者達がやってくる。仕返しだ。若者の頭は諏訪新五郎だった。新五郎は「むかむかする、跡取りの右近も、楽隠居のジジもな、なにもかもむかむかする」。慶次郎「俺もむかむかする、弱い者いじめを見ると、むかむかする」。剣では慶次郎が上手だ。新五郎「ただの猟番ではないな、頼みがある稽古をつけてくれ」。慶次郎「悪党を追う間に覚えたもので、教えるものではない」。仲間「町番か」。新五郎「いいじゃないか、俺は喧嘩は負けたくない、オヤジが町方でも強盗でも稽古をつけて貰いたい」。慶次郎「おやじか、ジジから大した出世だ」。佐七が山口屋の別荘だ、と困り出す。次の日から稽古で、庵の障子などが壊れ出す。
晃之助と皐月はそれを聞いて、山口屋に掛け合うことにする。辰次は告げ口になると言う。皐月は剣術を言わないで、来て貰いましょう。しかし稽古は続いていた。慶次郎は大丈夫なのだろうか。身体を心配しますよ。佐七は庭と家の心配ですが。 やはり、肩に湿布か、登勢に介抱して貰った。慶次郎も町方で終わるのが嫌で、十手の稽古が嫌だった。一刀の稽古に通ったと話した。手前の行く末をてめが怨む。あいつらと同じだ。「花ころも」は女中が少ない。女中がやめたのだ、吉次が行く末を教えてくれる。そして鎌倉屋がなくなるかもしれない。番頭の仁吉が辞めて、盗品を商って益々ダメになった。安右衛門も自分が辞めさせた仁吉を呼び戻したいのだ。そして、安右衛門は花ころもを潰して、お登勢を鎌倉屋に迎えたいらしい。吉次「戻れば花ころもが潰れる、放っときゃ鎌倉屋が危ない」と言う。根岸の庵に文が来る、今日の昼に番頭が来るのだ。佐七は「ここを追い出されたら、行き倒れだ」。新五郎たちが障子を直し、庭を手入れしている。冷や飯食いには慣れたものだ。
綺麗になった所で、絵師の玉山先生が来る。山口屋の大番頭の文五郎は、晃之助がたまには客人のために使ってくれと進言したのだ。慶次郎は剣術の鍛錬は自分の一存で佐七を責めないで欲しいと頼む。主は稽古で松を追っても良いと言っているのだ。鎌倉屋に吉次がやってくる。安右衛門の世話をしていて盗品をまわしている女のところが手入れがある。盗品の行方も厳しく調べられると情報を告げる。文五郎は若者に飯をご馳走する。湯気の立っている白い飯はご馳走だ。みんな大喜びだ。3男4男は最後に回るので冷たい飯で冷たい味噌汁なのだ。新五郎は右近を見つける。玉山に会いに来たのだろうと言う。右近「どうせ、道楽みたいものですから」。新五郎は、玉山に会い、右近の書を見て貰いたいと頼む。玉山は何も言わずに飯を食べ続ける。右近は私のせいで、仲間は右近に謝れと新五郎に迫る。新五郎は「剣術が嫌で、絵に逃げている、玉山に冷たくされて何が絵描きで身を立てたいだ、お前達も人がよすぎる、できたての飯で腹が一杯になったくらいで」と喧嘩になる。仲間は「ほだされて何がいけない」と反発する。新五郎「表へ出ろ」。仲間「剣でどうなる、幾ら剣を磨いても、勝ち負けにこだわり、無頼を気取っても、そのうち只の厄介者になる」と答える。新五郎は台所で「お代わりだ」と言う。
その後は若者達はこなくなった。新五郎を辰吉が見つける、新内の女のところに入り浸っていた。右近は絵を描き直したと、新五郎にみせにくる。新五郎は「道楽できると自慢しに来たのか」。右近「道楽ではない、私は武士ではない、絵描きになる、父からは勘当になりました、後戻りはできない、何としても絵師になる、玉山先生にやっと弟子入りを許された、断られ続け4日目にやっと」。慶次郎「おめでとう」。右近「新さんに逃げていると言われたおかげです、この絵を真っ先に新さんに見て貰いたくて」。新五郎「帰れ」。新五郎が酒注ぎを投げようとする。慶次郎は止めて「杯を襖に投げた、絵に酒がかからないようにした、お前には分かったのだ、右近の会心の作だと分かった、だから汚せなかった」。新五郎は座り「考えすぎだ」。慶次郎「お前が右近をかまうのは、跡継ぎだからじゃない、これだけは譲れないという道のある男が妬ましかったのだ、違うか、今のおめえには道もない見つからない、そういうてめえのふがいなさに腹が立って」。新五郎は怒り刀を握り右近に斬りかかろうとする。しかし慶次郎が押し倒す「今のお前は俺に勝てない、右近にも勝てない、だが、明日のお前は分からない、俺の腕は確かに鈍る、俺はおめえが羨ましい」と優しく肩を叩く。新五郎は顔を畳に伏して泣く。
花ころもに安右衛門を呼び、お登勢は「珍しい置物を手に入れたので、目利きして下さい、それはさるお屋敷から盗まれたもので、そういうものを扱っている店があって、手入れが入ると、買った方も都立伊賀方も、たいそうお困りなるそうで、是非にと引き取りを頼まれました」。安右衛門「吉次か、蝮が教えたな」。お登勢「なんでしょう、全ては私の花ころもで買い戻させて頂きました、例え商った者がお縄になったとしても、取り次いだ店までお調べが及びことはございません、さあ、これらを盗まれたお屋敷にお返ししました、先代にご恩を受けた嫁として、鎌倉屋の名を汚さぬように出過ぎた真似をしました、おかげさまで分不相応な借金もしましたが、今後はここで働く者のためにも、なお一層店を守り続け、商いに精進する覚悟です、店のものの引き抜き、口出しは今後一切ご無用に願います」と啖呵を切る。安右衛門「おまえ、蝮とできているのか」。お登勢「はい、蝮さん大好きです」。屋右衛門は舌打ちして帰る。女中達は大喜びだ。
射的場で慶次郎は安右衛門と同席する。安右衛門「俺は次男坊で、オヤジは兄貴ばかりを可愛がり、俺には何も教えてくれなかった、だが、俺はやりたかった、てめえの才覚で商売を、おうやじも兄貴も死んで、さあ俺がって意気込んだら、この年だ、しくじりもするさ、しくじって何が悪い」。慶次郎「悪くはない、40の手習いだ」。安右衛門「それだよ、まだやるぞ、これからだ」。慶次郎「ちょっと気に入らないことがあった、若い者に剣術指南して、道を教えていい気になった、ところが、気がついたら誰もいない、てめでてめえの行き先を決めて、すいーと、俺を追い抜いていく、お先にって、それで初めて気づいた、剣術の稽古をしてやると言ったのは、あれは憎かったんじゃないか、願えば何でも叶うそう言う連中の若さが・・」。弓を射ると、二人とも的に「あたりー」だ。酔って帰ると、新五郎がやって来て、手拭いを返した。慶次郎「どこへでも行きやがれ、佐七、明日うまい味噌汁が飲みたい、熱い味噌汁だ」。つづく。
今回は若者との絡みでしたね。老いの悲しさ、若さの苛立ちが、好対照で描かれました。おじさんも若い頃は苛立っていましたので、分かります。鎌倉屋とお登勢との対決は、安右衛門は不甲斐ないぞ、でした。今回はちょっと散漫で、集中がなくて評価は4つ★でした。    
ゲスト:文五郎(山崎銀之丞さん)、玉山(加納幸和さん)、右近(佐藤貴広さん)、新五郎(藤間宇宙さん)。





慶次郎縁側日記★★★★★★   7回「春の出来事」(10月8日放送)

左七との他愛ない会話で、慶次郎は思わず「一服しよう、食べて貰おうとわざわざ買ってきてやった」。左七「やった、八丁堀かい上野かい、いいね、行くところのある人わ」とヒステリーで怒らせてしまった。年寄り二人の淋しい笑いだ。団子屋で慶次郎は思わず娘三千代の亡霊と話すが、春風とともに消え、一人であることを寒さで知る。
慶次郎(高橋英樹)は、往来で若い女・おせん(坂井真紀)とぶつかり、怪我を負わせてしまう。おせんは夫の卯之吉(永岡佑)が盗人の疑いで捕まったので走ってきたのだ。調べに慶次郎も同席する。おせんは口べたな卯之吉に代わって、事情を説明し言い訳する。疑いは晴れた。慶次郎は足を怪我したおせんを見舞う。卯吉は咳き込み病勝ちで寝ている。そんな見舞いが続く日に、慶次郎は飯屋の2階で会う。おせんはしっかりと化粧して口の紅が美しい、思わず慶次郎は戸惑う。紅は亭主と結婚する前に買った。見舞うと共に金を渡していた。女将がやって来て、ペラペラと喋ってくれる。この店はおせんで持っているという。亭主は腕はいいが、もやしで病気がちですぐに床につく、しょうがない。おせんは一人娘で親に結婚を反対され、「私が一人前にしてやる」と啖呵を切って出たのだ。女将は八丁堀の旦那が根岸で楽隠居で、後見に付いてくれれば、出直せるのにとけしかける。慶次郎は女将は誤解している、根岸で猟場を管理しているだけだと話す。するとおせんは紅を拭き取り、「つまらない身の上を聞かせて、今日は一言お礼が言いたかった、ありがとう、足も治るので、お見舞いもこれきっりで」と頭を下げた
慶次郎は暇をもてあまし、夜の上野池之端「花ころも」へ行くが、今夜はお登世の夫の命日だということで断られる。そこに後見の安右衛門が来て、「残された女房におかしな虫が付かないように、あの世で気を揉んでいる」と慶次郎を揶揄する。慶次郎は仕方なく一人で休む庭にいると、番屋で聞いておせんがやってくる。慶次郎「もう紅はつけないのかい、似合っていたよ」。おせん「旦那も分かっているでしょう、亭主と別れます、反対していた親が亡くなり、もう馬鹿馬鹿しくちゃって、独り身になれるまで、旦那に見て貰いたいと思った、でも紅まで引いて気を引く自分があさましくなった」。足元をみて慶次郎は、その足の血を拭き取る。「足なんか」と泣くおせんを優しく抱き留める。根岸の庵におせんが来るようになった。嬉しそうに出て行く慶次郎に左七は「もう少し身なりに気をつかうようにと助言する。慶次郎は嬉しそうに「年甲斐もなく色男の気分だ」。おせん「旦那は十分色男ですよ」。慶次郎「俺はお前が独り立ちするまでの親代わりだ、そのなりでは仕事も見つからない、幾らか渡しただろう」。おせん「もたいない」。慶次郎は店に行き、着物を買ってやる。そこにお登世がやって来て、見立ててくれる。そして下駄も買ってやる。おせん「あの人は気丈で華やかだ、旦那ちゃんといるじゃないですか、いい人」。慶次郎「妬いてくれよ」と笑う。横で吉次が「春でござんすね」と苦虫だ。
根岸の庵で慶次郎「色か恋か?」。晃之助「色はただの浮気です、恋というのは」。慶次郎「本気のことか」。慶次郎「色か恋か・・・粋じゃないか」と混ぜ返す。晃之助「噂になっています、信じているのか、娘ほどのおなごです、好いた惚れたで父上に近づくわけがない」。慶次郎「金が目当てということか」。晃之助「色ならいいのです、男所帯の詫び住まい不自由もありましょう、本気は困ります、役目を降りても、父上が若い娘を連れ歩く、人はそれだけで面白おかしく言うのです」。慶次郎「年甲斐もなく、入れあげている」と笑う。晃之助「いえ、仏も老いた、騙されて」と言う。さすがに慶次郎も顔つきが変わった。森口の家では皐月も心配だ。皐月はお登世を訪ねた。お登世「色でも恋でもない、二人を見ました、おせんは襟がほつれた着物を着ていた、すり切れたわら草履でした、れでは茶屋へも行けない、深い仲ではない、女は見栄をはるものです、惚れた男となら」。皐月も納得する。お登世は笑う。お登世「危ないです、騙されるのは旦那にとって大したことないが、ただ・・・」と言って皐月はお暇しようとするが、最後に皐月は「実は、今日はお登世様のことを、二人は・・、いえ、失礼します」。
慶次郎はおせんの店に行くと、同僚が買ってやった下駄を履いていた。おせんは変わらずわら草履で古着だ。見送りながら、おせんは下駄は溝板に挟んで洗ったが鼻緒が乾いていないと言い訳する。今度はうなぎを奢って下さいと言う。吉次は慶次郎に「そういうおなごです、入れあげた男から少しずつ吸い上げる、手口は旦那の方がよくご存じですよね、仏に仏法だ」。
庵で灯りもなく、縁側に座っていると、左七が「いい加減にしときな」。慶次郎「騙されやがってか」。左七「女のことではない、怖いのはこの年になると騙されたくなることがある、騙されたがっている手めぇがいるんだ」。左七は行燈に火をいれ「淋しいてのは怖いことだ」。慶次郎がまなじりを開けて見ると、灯りには索漠とした世界だった。おせんと飯屋の2階で会い、窓から夜の桜を見る。慶次郎「桜もおしまいだ、今年は花見もしなかった、花菖蒲が咲いたら見に行かないか」。おせん「そろそろじゃないですか、身内や周りも言っておられるのでは、あの女に騙されている」。慶次郎「騙しているのかい、貸した金は医師の薬代に使った、作った着物はもったいなく着られない、お前さんは自分のためには一文も使っていない、騙し取っていないじゃないか」。おせん「やっかいじゃないですか」。慶次郎「厄介か、いい言葉だ、座敷にいた、暗い部屋に、灯りが点って、ふっと見渡した、驚いた、何もないんだ、昔はそんなことはなかった、所帯を持ち、娘が生まれ、箪笥を買おうと思った、若い手下が集まり器を買おうと思った、暮らしは増やすことと思った、女房が死に、娘が死に、俺も役を終えた、ふっと気が付くと、始末することしか考えていない、一つ減り二つ減らし、最後はてめぇの身一つ残し、消える」。おせん「旦那」。慶次郎「面倒を背負いたい、厄介ならなおさら」と怖い顔に。綺麗に化粧したおせんの目は潤む。おせん「下駄は人に貸しました、いい商売でしてね、お送りします、旦那、お登世さんによろしく」。橋のたもとでの別れ際、卯之吉が小刀を持っていることを見つけ、おせんは卯之吉と慶次郎の間に入る。小刀は帯止めに当たり怪我はしなかった。おせん「かまわないで下さい、2度と旦那に危ないことはさせません、お帰り下さい」。おせんは走り去った。慶次郎はふと思い切り走り出し、飯屋の2階のおせんの部屋に駆け込む。外は桜が散っている。二人は恋で抱き合う。一夜の情熱・・・。お登世のところにも桜の花びらが舞い込む。左七が待つ庵に慶次郎は帰ってこなかった。
数日後おせんは下駄を履き、着物を着て化粧したおせんが根岸にやって来た。慶次郎「よく似合い」。おせん「花見だから」。千住の遅咲きの桜を見に行く、万屋で会う約束で別れる。おせんが歩き出すと辰吉が走ってぶつかり、おせんは挫いて鼻緒が切れる。辰吉は先日の長屋に忍び込んだ男が捕まりました。晃之助が慶次郎に来て欲しいのだ。慶次郎の知ってる卯之吉だ。おせんは下駄を脱ぎ裸足で走る。慶次郎は追いついたが、おせん「亭主が捕まった」。慶次郎「お前が行って何になる」。おせん「離して、なんだ、こんなもの」と下駄を投げ捨てる。晃之助「卯之吉は忍び込んで箪笥を開けた所を捕まり、証人もいる、許すことは出来ない」と答える。慶次郎も引き下がる。おせんと卯之吉は番屋で面会する。晃之助「女房のおせんばかり働かせることが情けなくなった、わずかの金でお暮らしの足しにと忍び込んだ、そうだな」。卯之吉「へぇ」と認める。おせん「お願いでございます、私を卯之吉と一緒に伝馬町の牢に入れて下さい、卯之吉に空き巣を働かせたのは私です、私が薬代のために金づるになりそうな男をいつも、だから、亭主は」。晃之助「盗みをはたらいた卯之吉は大番屋へ送る」。おせんの下に向かい晃之助「一人で暮らすのだ、罪を犯した者も、罪のもとになった者も、そういう思いをしなくてはならない、寂しく辛い思いを、ちょっとばかりな」。外で聞く慶次郎も淋しい思いをしなくてはならない。慶次郎は番屋に入る。晃之助「おせん、お前は金づるといったが、違う男もいたのではないか、本気で惚れた男もあったのじゃないか、亭主が盗みを働くのは、暮らしのためでなく、お前が本気で惚れた男がいるので、やけになったでは、お前がこの人とのことを、色ではなく、恋だというのなら、この人とやり直したいのなら」。おせん「いいえ、私にはこの人は只の色でございました、済みませんね、旦那」。慶次郎「俺には恋だった」。そう言うと鼻緒を直した下駄を差し出した。
庵で左七がせんべいを差し出す。左七「外に出たついでに、わざわざ買ってきてやったのに」。慶次郎も左七も大笑いだ。慶次郎「やった、買ってきて、やったと」。そこに知れずと桜の花びらが舞う。やって来たお登世「花はどこからもやって来ます」。見とれる3人に花びらはいつまでも舞い散る。お登世は慶次郎の手を握り、見つめ合う。春とは誠に不思議な季節です。おしまい。
これほどまでに完璧な世界があるだろうか。★5つまでだが、特別に6つ★にしたよ。一つのセリフ、演技も2重3重に意味を持っている。そして、無駄なセリフも演技もない。ドラマの完璧な姿を見た。ドラマの本質は良質の省略だと思っていたが、本当に省略して、残された核が見事に描ききっている。高橋英樹さん、競い演技でせめぎ合う坂井真紀さん、素晴らしい。坂井真紀さんの表情の豊かさいは感服しました。伏線も見事に結実していた。まるで日本の文学の美しさを堪能した。セリフの一つも省くことが出来ず、全部書いてしまった。恐るべし。それにしても老いるとは、何と残酷なものか。増えていたのが、減っていき、身一つだけになる。自分も年老いてきたが、突きつけられた思いに身がすくんだ。