キーボードの徹底洗浄

(注意:トップページの注意と同じ)

 記念すべきキーボード第一号のネタは「お掃除」です。「えー」とブーイングの皆さん、お嘆きめさるな、掃除は掃除でもただの掃除じゃありません。名付け て「徹底洗浄」、みすぼらしいジャンクを新品のようにピカピカにして しまおうという作戦です。前の所有者によりエージングが済んでいることに加えて、新品同様のきれい具合、新品では考えられないお値段、これはもう新品以上 の価値があるといっても過言じゃないよ〜。(え?エージングでなくヘタれているだけ?ま、その可能性もありまさ〜な。そこいら辺は皆さんの目利きにかかっ ているということで…)

 以下に記す内容は、たくさんのキーボードを復活させてきた中で培われたノウハウの固まりです。「徹底洗浄」という語句にも愛着があったりして、本当はで すね、特許…とか登録商標…とか、「マネシタデンキ、マネシタナ」とかいって知的所有権を声高に主張したいところなのですが、循環型社会への一助というこ とで、今ここに大々的に公開してしまうことにします。要するに、今まで売れずに捨てられてしまったであろうジャンクキーボードを救い出して再び使えるよう にする、これは立派なリサイクルではないか!という思いがあるわけです。キーボードが汚くなったから捨ててしまう、こんなことがなくなれば、志の低いキー ボードは淘汰され、環境への負荷も軽くなることでしょう。

 お金がなくて時間を持て余している学生諸君、RT-6652を400円で仕入れてきて徹底洗浄を施して、愛着の湧いたキーボードで立派な論文を書いてみ ないか?とか言ってみたり。


 まず用意する道具です。ネジを外すドライバとか、外したネジの入れ物とか、自作パソコンで必要になる基本的なものは省略すると、以下の什器があればベス トですね。






 のっけの写真で引いてしまうかもしれませんが、この時点で長年の経験と勘によるノウハウが込められているのです。徹底洗浄はコストも徹底して切りつめま す。巷には「突撃」、とか、「激突」、などの、おどろおどろしい名前の洗剤が「OA用」とか称して流通しています。でもその実OA用と言うより、「作り 手・売り手のフトコロ用」といった感のある高コスト・低品質洗剤なのです。マジックリンは洗浄力・コスト・入手性を考えると20世紀最強の洗剤といえるで しょう。21世紀を生きる洗剤メーカ研究者たちには、大変高い壁となって立ちふさがっているのです。(←説明が長いね、というツッコミ) まあとにかく、 洗剤はたいていの汚れなら「マジックリン」で何とかなります。弟分の「マイペット」では洗浄力が落ちるのでダメです。ライバルの「ルックナントカ」はお話 にならなかった印象が残っています。

 マジックリンの次の写真はブラシ類で、一番上の柄の付いたタワシは、水につけてゴシゴシ洗うためのタワシで、用意できなければ台所でも風呂場にでもある 「亀の子ダワシ」でもその類似品でもいいと思います。(使用前・使用後はよく濯いでおきましょう) 私は幾多ものキーボードを徹底洗浄する過程において、 台所の番人の冷たい視線が気になったため、105円でマイタワシを仕入れて使っています。

 写真真ん中は言わずとしれた「スーパーはぼき」(本物)で、キートップの隙間の埃程度なら実はこれでイチコロです。ハボキが最も力を発揮する場所はなん とキーボードだったのです!一時期1万円近くの値段が付いていましたが、昨年東急ハンズにて2000円弱で購入しました。我が人生2代目のハボキです。 パッケージに書かれていたメーカの郵便番号が5桁だったと思うので、明らかに流通在庫ですね。通販をしていたNKグループ販売というメーカ、今どこでどう なっているんでしょうか?ともかく、持っていない方は、掃除機に付いていたブラシでも念入りに作業すれば大丈夫でしょう。

 写真下はナイロンダワシです。昔はどこにでも売っていた感がありますが、擦った物を傷つけるためか、今では単品のナイロンダワシは全く目にしなくなりま した。このタワシも長いですが、削らないと落ちない汚れの時は必要不可欠なアイテムです。今入手するとしたら、柔らかいスポンジと一緒になったヤツが 105円ショップで売っていますね。ただし本当に傷つけやすいので気をつけてください。

 3枚目の写真、これは一般的ではないですね〜。キーボードマニアの間ではお馴染みなのですが…。右側のトングは「キートップリムーバ」というもので、 キートップを一つ一つ外していく時に、キーボードに負担をかけないために使用する什器です。もし購入するなら、プラスチック製の物もありますけど、強度に 劣るので、ステンレス製がお勧めです。秋葉原のネオテックというお店で630円で売っています。(た、高い…) 一台のキーボードを徹底洗浄するというな ら、マイナスドライバーで慎重に作業すれば大丈夫です。(下でマイナスドライバー使用時の注意も記しています…。かく言う私も初めの10台ぐらいはマイナ スドライバーで代用していたので。) この写真で分かるとおり、リムーバの形が変わらないように、使い古しのコルク栓とハナ紙で補強しています。

 写真左側の小ビンは、「スムースエイド」と呼ばれる潤滑剤です。後述しますがキートップの滑りを良くするために使う液体です。有ると無いとでは全然違い ますが、困ったことにこれも秋葉原のネオテックというお店で1000円という値段が付いていて、で、無駄なく塗るとキーボード50台分は使えてしまうので す。普通はこんなにキーボードを修理したりはしないでしょう…。その筋の猛者は3度塗りなどをしますが、それでも15台以上は使えると。

 ……代用品、ですか?…、禁断の溶剤「KURE5-56」という手もあるにはあるのです。手をきれいにしたり(コラッ)、自転車のサビを落とすというア レですね。ただし、キーボードマニアの間でも良く言えば賛否両論、悪く言えば非難囂々の禁断の技です。どうもプラスチックを溶かすという迷信が有るみたい なのと、効き目の持ちがそれほど良くないという面が表側にある模様です。裏側では、スムースエイド推進派なんですよね、皆さん。きっと。癒着も含むでしょ うが。でも値段が高すぎですね。ちなみに私はマウスの渋いホイールをKURE5-56で直したことがありますが、キーボードには件の溶剤を使ったことはあ りません。





 さて、今回のキーボードですが、使っていて汚れた物ではなく、ジャンク品として無造作に売られていたものです。だから非常に汚い。下の写真を見ると、埃 がキートップの根本までこびり付いているのが分かります。実際、キートップ頂上(?)の指が当たる部分は比較的汚れないもので、むしろ側面とか、今は見え ないその下部に埃が積もっていることが多いのです。使用歴のあるキーは手の脂やタバコのヤニが付着するので、掃除機をただ当てるだけではほとんど無意味で す。かといって濡れゾウキンで拭くのも面倒です。こういうときはハボキ付き掃除機で「ガー」っとやってしまいましょう。ちなみにパソコンのサプライ用品と して売っている小型掃除機は全く以て無力です。





 ハボキ後の写真です。上の「Before」状態の写真と比べて、きれいになっているでしょう?普段のお手入れなら、これで十分です。1ヶ月に一回やるだ けで1年後の汚れは全然変わってきます。今回は使われ尽くしたジャンクキーボードなので、まだまだ先は長いです。ここまで来て、ようやくキートップを全部 外す作業となりますが、いくつか注意すべき点があります。




 まず第一に、キー配列を忘れてもいいようににコピーを取っておきましょう。バラバラにして、後で「どれがどこだっけ?!(叫喚 」となったら目も当てられません。これもキーボードをいくつも持っている猛者になれば何とかなるのですが、一般的ではありません。私の場合、あまり経験が ない英語キーボードだったのと、「HHKLite(2ではない)」という珍しいキー配列のキーボードだったので、今回は特に念を入れておきました。




 次にキーを外す際の注意点です。今回は例として「Q」キーの取り外し方です。キートップリムーバを持っている方は、マル1側の隙間にリムーバを入れます が、その時両側のキー(マル1が書かれているキー)を押しておくと、隙間が広がって入れやすく傷つけにくくなります。キートップリムーバを持っていない場 合は、まずマル3の方から利き腕の反対側の指で押さえつつ、マル2の隙間にマイナスドライバを入れ、そのまま寝かせながらマル2が書かれているキーを利用 してテコの原理で「エイヤ!」っと。慣れてくると何となく分かると思います。要はキートップを真っ直ぐ引き抜くということですね。最初は壊れても痛くない Pause/Breakキーなどから慎重に試してみるといいと思います。そして全部のキーを外すと…、





 ギョエー!!何じゃコリャー!!!と驚きの皆さん。素晴らしい。慣れてくると何の感動もなくなってきます。この汚れは、ガワを外す際に舞い散って邪魔に なるのでハボキ掃除機できれいにします。実はこれくらい汚いと、前の利用者の性格や利用形態が見えてきてしまうのです。男性か女性か、ペットがいるのか、 タバコを吸うのか、パソコンの前で食事をするクチか、使っていたのは職場か自宅か…等々。個人を一意に特定できない個人情報ですね。まあ良心から今回の キーボード前所有者がどんな人であったかは明らかにしないでおきましょう。ただパソコンを廃棄するときは、ハードディスクだけでなく、色々注意すべき点が あるということです。さて、下側の写真の中央、縦に太目の汚れ(消しゴムのカス)は後々まで覚えておきましょう。ハボキをかけると…、





 アラ不思議、結構きれいになるではありませんか。これがハボキの威力なのです。恐れ入ったか!!はっはっは!…まあとにかく、これだけでも随分きれいに なりました。先ほどの消しカスもなくなっています。ライトな方でそれ程汚れていないなら、これで終わりにしてしまう手もあるかもしれません。その場合で も、絞ったゾウキンでマジックリンを使ってきれいにしておきましょう。徹底洗浄を目論む方はジュースなどがこぼれていない限り、ゾウキンできれいにする必 要はありません。次のステップ、キーボードのガワ(外側のフレーム)を取り外す作業です。普通は裏側のネジを外せば外れる(上下ではめ込んでいる場合もあ る)ようになっていますが…、




 この写真のごとく、見えないところにネジが隠されている可能性もあります。おかしいくらいに外れない場合は、無理して引き剥がさず、十分に気をつけてネ ジやはめ合わせを探してください。IBMのプリファードというキーボード(一部)など、場合によってはキートップ側にネジがある場合もあります。




 外したキートップはこの写真のように桶の中に入れてマジックリン水溶液に浸します。濃度が薄まらないよう、水はキートップが浸るくらいにとどめておきま す。マジックリンはこの写真の場合、10回くらいスプレーして出したでしょうか。結構な濃度です。で、私はあまり手間をかけたくないため、このまま1晩寝 かせてしまいます。次の日以降に、キートップ一つ一つを濯ぎながら指でなぞり、汚れの落ちを確かめます。汚れが落ちない場合、ナイロンダワシなどにマジッ クリンをつ けて磨きます。キートップの下側などはエッジが鋭く、場合によっては指を切ることもあるので要注意です。手荒れが気になる方は、手袋をはめたり、スポンジ などを使って擦ってみてください。

 ここでいろいろと写真を取り忘れたことに気付きました。スペースキーやシフトキー、エンターキーなど、長いキートップにはハリガネが付いている場合もあ ります。そしてハリガネとキートップを固定する装置が付いている場合もあります。これらは丁寧に外して、付着している油分をきれいに落としておきましょ う。その時ちゃんと構造を確かめておいて元に戻せるようにすることは忘れずに。このハリガネは、長いキーの端を押しても正常に押せるようにする仕掛けで す。キートップを外すときに勢い余ってプラスチック部分を割らないように気をつけてください。

 邪道外道覇道の技として、洗濯網に入れて洗濯機の中に入れて「あとはお任せっ!」という手もあります。ただし私はあまり推奨しません。洗濯網が切れるこ とがある(そうなると水の中でバラバラーっと…)し、キートップ同士が擦れて傷つくこともあります。しかも汚れの落ちもイマイチです。(ヤニの汚れがマ ジックリンに勝てるわけがない!) ハリガネを外し忘れて他の洗濯物に引っかかり、洗濯場の番人にこっぴどく叱られることにもなりかねません。やはり大人 なら正道内道王道をこそ進むべきでしょう。


 キートップを待っている間に先ほど外したガワを洗います。話が前後しますが、キーボードの基板をガワから外すときは要注意です。場合によっては薄いフィ ルム状の基板もありますし、フィルム状のケーブルの場合もあります。また後でちゃんと組み立てられるようにする必要もあります。あれよあれよという間にカ タカタと組み立てあがっ てしまうキーボードもありますが、初めてだとなかなか手こずるところなので、慎重に外していきましょう。

 慎重に外したら、ガワに基板その他部品が残っていないことを確かめて、柄の付いたタワシやナイロンダワシとマジックリンできれいに洗います。ぬるま湯の 方が汚れが落ちるので、実は風呂に入るときついでにシャワーで洗うのが最も効率的だったりします。同時に水をかけて洗っても大丈夫な部分も洗ってしまいま しょう。「メンブレン型」と呼ばれるキーボードであればプニョプニョしたゴムが入っているはずです。(無数にあるお椀型ゴムの内側に黒いゴムが付いている 場合は洗わない方がいいです) 濡れたらダメな部分も埃が付着していたらハボキできれいに。




 こんな感じで立てかけて風通しを良くします。そうしないと水垢が残ってしまうので。それでも乾くと水垢が出てくるので、濡れゾウキンで綺麗にします。こ ういう過程で愛着が湧いてくるんですよね〜。下に敷いているカタログはバッファローの製品情報です。新聞でも構わないんですけどね。一応。




 キートップも洗い終わった後は、こんな具合に乾かします。早く乾燥して欲しいので、重ねたり下向きにしないこと。さらに早く乾燥して欲しい場合は、キー トップ一つ一つを振って、隙間に入り込んでいる水をできるだけ飛ばします。ドライヤーを使うと膨張したり収縮したりするので形がたわむことがあります。扇 風機で風を送るのがベストです。ちなみにカタログの上に敷いている紙は喫茶店のお手拭きです。ハナ紙でも大丈夫です。




 このときキートップの構造をよく見ておきましょう。今回のキーボードはChiconyというメーカが製造していて、その筋の人ならすぐに構造が思い浮か んできたりします。このキートップ、4隅に2つずつ出っ張りがあって(矢印の部分)、ここがガワの穴壁と接触していることが想像できます。キートップが乾 いてからスムースエイドという潤滑剤を塗るとき、キートップ側はこの出っ張り部分に塗ればOKということになります。

 スムースエイドを塗るときの注意点は、ただでさえ大量にあるので、使い惜しみせず、接点一カ所ににつき1回ハケをビンに浸して、確実に塗り込むようにし ます。このときキートップの表側にスムースエイドが付着すると、妙な滑りが出てきて使いにくくなるので気をつけましょう。塗った後は1時間以上乾燥させ て、しっかりと乾かします。その間にガワの方にもスムースエイドを塗っておくと。私は普段はテレビを見ながらこの作業を行います。そうそう、ハリガネにも 塗るのを忘れずに。





 乾いたガワの写真です。おー、きれいになっていますね〜。キートップを外した直後の写真、ハボキをかけた後の写真、このマジックリン洗浄後の写真を見比 べてみてください。正直マジックリン洗浄後の写真(上側)はパッと見、新品と区別がつきません。下側の写真は、プラスチックが溶けている跡が見受けられま す。これはキートップを外した直後の写真(下側)で消しカスがあった箇所です。プラスチック同士、結びついて謎の変化が起きたものと思われます。よく筆箱 に消しゴムと定規を一緒に入れておくと起きましたよね。




 ガワの方もよく構造を調べておきます。キートップをはめる穴をよく見ると、こちらにも4隅に2つずつ溝ができています。(矢印のところ) 先ほどのキー トップの出っ張りがこの溝に接触するのでしょう。母音などよく押すキーは溝が深くなっていることから、最初購入したときはこの溝はなかったものと思われま す。使っている間にガワの穴壁を削っていって、接触面が増えていくので、だんだん渋〜いタッチになったと。スムースエイドを塗る場所はここですね。

 塗るときの注意はだいたいキートップと同じですが、全て右側面を塗ってから全て左側面・全て上側面・全て下側面…と塗るようにすると、流れ作業で早く終 わらせることができます。スペースキーなど長いキーは接触面が一カ所とは限らないので要注意です。このときにハリガネが接触する部分にもしっかりと塗って おくことを忘れずに。

 キートップとガワでどちらを先に塗るかは好きずきです。私の場合は、先にガワを塗って、次にキートップを塗り、それが終わるとガワをもう一度塗る(二度 目は接触する部分だけでなく全面を均一に塗る)、というやり方が定着しています。その後ガワと基板を組み立てると。だいたい乾かす時間で別のことをしてま すね。

 ガワを組み立て終わって、スムースエイドがしっかり乾いてから、前に取っておいたキー配列のコピーを元にキートップをはめていきます。このとき、ハリガ ネの付いているキーからはめていくと作業がしやすいです。完成が目の前まで来ていて心躍る瞬間です。





 完成後の写真。上の写真は妙に輝いていますね。別に小細工を弄したわけではありません。偶然の産物です。下の写真も、最初の写真と比べると雲泥の差で す。言っておきますけど、同じキーボードですよ!?これでうち捨てられていたジャンクも第二の人生を歩むことでしょう。徹底洗浄は時間も体力も使います が、作業を通じてキーボードに愛着が湧いてきますね。

 今回はジャンクキーボードの復活という最も負荷が重いものでしたが、普段使っているキーボードのお手入れならこれほど念入りに作業する必要はありませ ん。皆さんもお使いのキーボード、たまにはお手入れしてあげましょう。


(初掲:2005年3月)

トップに戻る