妖華−女神館の住人達
 
 
 
 
 
第百八十四話:管理人の妖しい実験――需要と供給(前)
 
 
 
 
 
 まあまあと、とりあえず宙で散っている火花に手を突っ込む。
 一瞬低温火傷したような気がした――気のせいだろう。
「さくらちゃんはイイ身体してるけど、今日の議題はそれじゃないから」
 シンジにポイントをアップされたさくらが、
「やっぱり天然の方がいいですよねー…あれ?」
 返ってきたのは沈黙であった。
 スパン!
「いったーい、もう何なんですか」
「いい加減そこから離れなさい。誰がそんな話をしとるか」
「違うんですか?」
「ぜんっぜん違う。大体さくらちゃん、そんなので選んだらいい女は千人に一人くらいになっちゃうでしょ」
「そうですよ」
「…あ?」
「だからあたしが千人に…じょ、冗談ですよ冗談。い、言ってみただけです」
 落雷の予感を感じ取り、さくらがかさかさと後退る。
「じゃあ碇さん、そこじゃないとするとこんな身体のどこがいいんですの」
「こんな身体ってどういう意味ですか」
「あら聞こえましたの」
 フーッと威嚇し合う二人を制し、
「だからそのままだってば。例えばこの辺」
「ひゃ!?」
 ぷにっと脇腹をつつかれたさくらの背が、ぴょんと伸びた。
「特にやってない二人より、剣を振り回してるさくらの方がイイ身体なのは当然でしょう。これで変化がなかったら山岸共々お飯事してるって事になる。どう取るかは人によって違うけど、イイと言ったのはそういう事」
 純粋に鍛錬の話だったらしいと知り、二人の闘気がちょっぴり萎える。
「で、すみれの方はえーと、鵞鳥というかアヒルというか…」
 どちらも水鳥だが、女を褒める時に使う単語ではない。
 ピッと眉の上がったすみれが、
「な、なんですのっ」
「白鳥とも言うんだけど」
「え?」
 すみれの耳元に口を寄せて、
「水面上では絶対泳いでるとこ見せないでしょ。普段は鍛錬なんて全然してるように見えないのにね」
「い、碇さん…」
 シンジの言葉の意味を知り、すみれの顔がふわーっと赤くなった。色香はないが、乙女らしい色であった。
 そんな雰囲気を断ち切ったのは、勿論シンジである。
「さてと、そろそろ始めますか。さくら、アイマスク持ってきて」
「分かりました」
 持ってきたのはいいが勝手に付けて、しかも、
「碇さん、これって私に似合い――きゃっ」
 言い終わらぬ内に、派手な湯飛沫が上がった。突き飛ばされたのだが、下手人は織姫ではなくすみれでもない。
 ほっとけば何を言ったか位、一目瞭然である。
「湯の中で一時間くらい固定しておくから、付けた感触をゆっくり楽しむと良い。さ、遺言があるなら聞いておいてあげる。」
「じょ、冗談です碇さんごめんなさいっ」
 シンジの手がある形を取り始めたのを見て、慌てて謝った。シンジの場合、やると言ったらやるから困る。
 普通は口先だけの脅しにしておくものだ。
「も〜碇さん、わたくしの事はほったらかしですの?」
 すみれが置いて行かれた子供みたいに、恨めしげな視線でシンジを見た。
「…ハッ!そうだった、もう少しでさくらの薫製を作るとこでした」
 パーティのメンバーどころか、薫製になるところだったらしいと知り、すうっと青ざめたさくらがアイマスクを返す。
 まったくもう、と受け取ったシンジが、
「はい、これつけて。視覚がない時にすみれの感覚がどう変化するのか、見物してるから」
(視覚がない時?)
 例えば火を近づけられた時、危険か否かを判断するのは視覚による状況判断の部分が大きい。では火の怖さを知ってる者が、急に視覚を遮られて同様の状況に置かれたらどうなるか。
 よく考えれば危ない事を言っているのだが、すみれにはそこまで分からない。
 だがアイマスクを付けた瞬間、否応なしに知る事になった。無論耳は聞こえるし口はきける。
 呼びかければシンジは答えてくれるだろう。
 しかし、目が見えないというだけの事が、こんなに不安になるとは思っても見なかった。
「い、碇さん…」
「はいな」
(え!?)
 声は左から聞こえた。さっきまでは正面に居たはずなのに!? 
「こっちだよ」
「ひゃぅんっ!?」
 裸の背を撫でられた瞬間、織姫やさくらが居る事も忘れて悲鳴を上げた。普段のすみれからは想像も出来ないような声に、二人が顔を見合わせる。確かに背中は弱点なのかも知れないが、まるで体中の性感帯を同時に責められたような声であった。
 しかも立っている事が出来ず、ふにゃふにゃと頽れかかったのだ。ひょいと支えたシンジがアイマスクを外し、
「一般人がこれを付けるとどうなるか分かったでしょ?でもすみれちゃんにはまだ早いみたいだから――」
「だめっ」
 シンジの手からアイマスクを取り返したのは、すみれの意地であった。織姫やさくらの前であんな嬌声を上げてしまったと、今頃になって気付いたのだ。二人はびっくりして見ているだけだが、すみれには無論屈辱にしかならない。
「こ、この位大した事ありませんわよっ」
「そ?ならいいけど」
 もう一度付けたすみれを、シンジはひょいと抱き上げた。あっ、と声を上げる間もなく、全裸にアイマスクという微妙にマニアックな姿のまま、横たえられる。
(あら?)
 横たえられた姿勢は俯せであった。この格好から剃毛される予感がするほど、すみれはまだ発達していない。
「さくら、そこの小さい瓶持ってきて。それと筆と」
「はーい」
(筆!?)
 瓶はともかく、どうして筆なのかと身を固くした所へ、ぱたぱたと人の近づく気配がした。
「んじゃ、これを」
 と、瓶のふたを開けて、すみれの背にそのまま垂らした。
「…っ」
 漏れ掛けた声を必死でかみ殺す。零度まで冷やした液体ではないが、すみれには氷を押しつけられたようにも感じた。
「碇さんこれ何ですか?」
「ただのローション。即効性のね」
「即効性?」
「すぐに効いてくる事」
 ローションとは本来円滑油であって、効いて来るも何もない筈だ。が、生憎とここにはローションを常用するような娘はいなかった。
「喉乾いたからジュース持ってきて」
「はい」
 何かおかしい、と俯せのまま放置されているすみれは気付いていた。元より、背中に毛が生えている訳ではないし、どうして背に塗ったりするのか。おまけに放置と来ている。
 二杯飲んでから、
「ところですみれ」
 思い出したように声を掛けた。
「何ですの」
「そろそろむずむずして来ない?」
「なっ!?や、やっぱりわたくしに良からぬ物をっ…」
 言い終わらぬうちに、背中に痒みのような物を感じたかと思うと、あっという間に下肢へ押し寄せてきた。
「な、何を…し、したんですのっ」
「何も。すみれちゃんともあろう娘が、感じちゃってもじもじしたりしないよね?」
「あ、あたり…んっ…前っ…ですわよっ」
「それは良かった。初な小娘にはきつい刺激かも知れないけど、自分の欲求も抑制出来る子には関係ないから」
 わざわざプライドを突くシンジの言葉を、すみれは半ばうわの空で聞いていた。たっぷり塗られてはいなから、滴ってきてはいない。それなのに、押し寄せるのは明らかに快感であり、自分でも気付かぬうちに下腹部を石の床へ擦り付けていた。
「二人も飲んで」
 放置されて更に三分が経った。
「い、碇…さん…」
 蚊の鳴くような声でシンジを呼んだのは、無論すみれである。さくら達が端から見ても、もう我慢の限界に達しており、放っておいたら絶対におかしくなりそうだ。
「なあに?」
 間延びしたシンジの声は、無論楽しんでいるそれだ。
「お、お願い…か、身体が熱いの…」
「ドゥーしてほしいの?」
「……って…」
「何ですって?」
「…じってっ…」
「ねじって?」
 止まらぬ愛液が下腹部を濡らしている事に、既にシンジは気付いている。織姫達は距離があるから気付かないのだ。抑えきれない位昂ぶってきてはいても、それでも自分では弄らない所はやはりすみれである。
 まだかすかにプライドが優先しているのだ。
「お、お願い…い、意地悪なさらないで…」
 すすり泣くような声に、織姫とさくらがシンジを見た。さすがに同性として見かねたらしい。
(何よ二人とも?)
(あの…これ以上放っておくのはいくら何でも可哀想だから…)
(じゃ、さくらちゃんが触ってあげれば?)
(え!?)
(手の本数が違う訳じゃないし、女の子同士の方がよく分か…ひてて)
(ぜったいにいや!)
(は、はい)
 凄まれたシンジが、仕方なくお尻に手を伸ばす。触れられた瞬間に身体がぴくっと震え、しっとりと汗ばんだ肌が手の平に吸い付いてきた。ぷりぷりした尻を撫で回した迄はいいが、次の行動は三人が度肝を抜かれた物であった。
 いきなり、アヌスへ小指をさし込んだのだ。
「はぅっ!?お、お尻はだめぇ…」
 弱々しく抵抗するも、入り口ですんなりシンジの指を受け入れたそこは、逃がしたくないとばかりにきゅうっと締め付けてくる。
「あ、間違えた」
 極悪非道の科白が聞こえたのかどうか、すっと締め付けが緩んだ。這わせた手を放すことなく下に滑らせる。秘所はもうたっぷりと濡れており、指を入れる迄もなく手一杯に愛液がまとわりついてきた。
「よく濡れてる。いっぱい感じちゃった?」
 さっきとは違う甘い声に、すみれがこくっと頷く。
「ふうん」
 指を動かすとすぐ、クリトリスへたどり着いた。既に顔を出しており、勃起状態になっているそれを指の腹で押すと、噛んだ唇の間から甘い喘ぎが漏れた。
「処女のくせにこんなに感じちゃって――ただのローションなのにね」
「え…!?」
 シンジの言葉を認識した数秒後、一気に意識が覚醒した。甘い気分が吹き飛び、脳内が一瞬にして正常に戻――らなかった。
 クリトリスを指の腹で弄ったまま、空いている手が乳房に伸びたのだ。これも思い切り尖っている乳首を軽く二本指に挟んで引っ張られると、背に電流のような衝撃が走った。
「これで二つ目」
 三つ目がある、と分かる口調であった。ただし両手は塞がっている。足を使うのかと思ったら、さすがにそれはしなかった――はむっと、耳朶を甘噛みしたのである。
 びくっとすみれの背が反り返ったが、それも一瞬の事ですぐに弛緩した身体をシンジに預けた。もうこうなるとすみれの抵抗力は皆無に等しく、乳首とクリトリスと耳朶を順番に、或いは同時に責められる度に熱い吐息を漏らすしかない。火照った身体をシンジに擦り付けているように見えるのは、故意かそれとも女としての本能か。
 多分後者だろう。自分に身体を預けている娘が三点を同時に、或いは交互に責められて、みるみる内に上り詰めていくのをシンジは感じ取っていた。
 そして、感じさせられている自分を楽しむ余裕がまったく無い事も。快感を快感として認識し、吸収するだけで精一杯なのだろう。
「い、碇さん…っ」
「ん?」
 辛うじてシンジを呼んだすみれの顔は上気しており、全体がほんのりと色づいてきた肢体は達する寸前である事を示している。後数分も持たないだろう。その気になれば数十秒だ。
「わ、わたくしも、もう…」
「そ。まだ剃ってもないのに勿体ない」
 剃毛に加えて何やら企んでいるらしい。
「だ、だってもう…ふぅ…だ、だぁめぇっ…」
 本当に無理そうだと判断し、シンジは耳朶から唇を離した。ころん、と仰向けにして徐に唇を重ねる。
「んむっ!?」
 アイマスクはしているが、一瞬驚いたのが伝わってくる。つう、と差し出してきた舌を引き込んでたっぷり嬲る。
「んんっ…あむぅ…んんぅ…」
(あ、あんなに感じて…)(い、いいなぁ…)
 思わず我が身をぎゅっと抱きしめた二人だが、愛撫している方は依然として無反応なのがせめてもの救いであった。
 ん、とシンジが頷いたかに見えた。
 頷いた舌の裏側を舌先で擦り、同時に限界まで大きくなった乳首とクリトリスを爪の先できゅむっと引っ掻く。
「…んくっー!!」
(イクって言ったんだ…)
 びくびくっと四肢を震わせたすみれの肢体が、ゆっくりと弛緩していく。キスされたまま達するなど、経験のない二人にとっては羨望の極みである。
 シンジが唇を離すと、その間を透明な糸が繋いだ。つっと、指先で拭ったシンジに、息も絶え絶えなすみれが、
「碇…さん…有り難う…ふふ、ま、満足…し、しましたわ…」
「ほうほう」
「碇さんの言われる通り手かげ…」
 言いかけてから、
「いえ…もう少し…さくら達の気持ちも…考えるようにしますわ…」
 ぽてっ。
「『あっ』」
 二人から思わず声が上がったが、大丈夫とシンジは軽く手を挙げた。すみれの声は小声だったから、何を言ったかまでは聞こえていない。
「いったばかりで無理に喋ったから限界を超えたんだ。にしても」
 と、すみれのアイマスクを剥がし、
「すみれも結構単純だね」
 三点責めの愛撫で達させた男とは、到底思えない声で言った。
「ど、どういう事ですか?」
「さくらちゃんこっちおいで」
「はい」
「そこに座って」
 すみれは満足していたみたいだし、自分達を恨んでも居なかったから罪悪感を感じる必要はない。それでも秘所から愛液をしとどに滴らせ、まだ絶頂の余韻にそこをひくつかせている姿を見ると、何となく後ろめたいような微妙な気分になって、さくらはすみれの肢体から目を反らすようにして座った。
「ちょっと胸触るよ」
「あ…は、はいっ」
 今度は自分の番が回ってきたと、うっすら顔を赤くしたさくらの右乳房に、シンジの手がぺたぺたと触れた。
「ひゃ!?」
 触れられた所が異様に冷たく、思わずさくらは奇妙な声を上げていた。
「い、碇さんこれ何ですか?」
「大したモンじゃない。ちょっと喉乾いた、織姫ジュースちょうだい」
「はいです」
 一分経過してから、
「なんか変わった感じある?」
「い、いえ別に…」
 自分で触ってみて、
「ちょっとぬるぬるするだけですけど」
「さっきすみれに塗ったのと同じ物だよ」
「え!?」
 言われてさくらの顔色が変わった。そう言えば触れられた箇所が急激に熱くなってきたような気がする。
「こら」
「はい?」
「何で顔を赤くするのさ」
「だ、だってその…おっぱいが変な感じで…痛っ!?」
 ぽかっ。
「何でただのローションでそうなるんだ。さくらちゃんのおっぱいは機械仕掛けか?」
「『ふえ?』」
 素っ頓狂な声は、今度は同時に上がった。二人とも、間違いなくそのローションですみれがあれだけ乱れたのを見ているのだ。
「アイマスクをしていた事で、視覚は奪われたけれど、その分他の感覚が鋭敏になるのにさして時間は掛からなかった。女だし、何よりも神崎すみれだ。下肢がひんやりした感覚に覆われた所で即効性だ等と言われて、まやかしだと見抜けるほどすみれは大人じゃない。冷たい液とアイマスクがあれば、出来上がった娘を作るのはさほど難しい事じゃないよ」
「じゃ、じゃああれは…」「本当にただのローション?」
 器用に合致した二人の科白に、シンジはニマッと笑って頷いた。
「そう言う事。無論、さくらの胸に付いているのもね」
「そうだったんですか…」
 急激に昂ぶりが醒めていくのを感じながら、さくらは同時に、本当にえっちな効果のある液体であってほしかったと残念がっている自分に気付いていた。
「ちょっと残念?」
「べ、別にっ!」
 反射的に首を振ってから、
「ちょ、ちょっとだけ…」
 小さくこくっと頷いた。恥ずかしい事でも、シンジ相手なら素直になれる――と言うよりも、直球以外まったく通じない相手だった所が大きい。
 間違ってフォークなど投げようものなら、ストンと落ちてそのまま地核辺りまで落ちて行きかねない。
「あれ?」
 氷が無くなっているのに気が付いたシンジが、
「織姫」
「なあに?」
「悪いけど、氷持ってきてくれない?氷のないジュースはなんか萎える」
「いいよ。ちょっと待っててね」
 織姫が気軽に立っていった後、
「さーて、どうやって弄ろっかなあ」
 楽しそうに何やら企んでいるシンジに、
「あの…碇さん…」
 さくらが遠慮がちに声を掛けた。
「何?」
「その…怒らないで聞いてくれますか?」
「予め保険というのもあれだけど、いいよ。大体の事なら慣れました」
「あ、あのね…あたし前にその、すみれと…しょ、勝負する事になって…」
「何の?」
「ど、どっちが碇さんのベッドで寝るかって…」
 シンジの眉が寄ったのは、怒ったからではなく事情が掴めなかったからだ。何がどうなって勝負なのか、さっぱり分からない。その顔を見て不安になったさくらだが、怒らないと約束は取り付けてあるしと、正直に話した。
 シンジが居ない時、シンジのベッドに潜り込んでいたら何となく寂しくなって、一人でしてしまった事と、それをすみれに見つかってどっちがそこで寝るかの勝負になったこと。
「それでその…あ、あそこくっつけ合ったり舐め合ったりして、どっちが先に気持ち良くなるかって…ご、ごめんなさいっ」
 シンジの脳裏にその光景が浮かんだ。お互いに言葉責めしながら、松葉崩しや69の体勢で責め合っている光景を想像するのは、さほど難しい事ではない。
「あーもう!」
 くしゃくしゃと髪を引っ掻き回したシンジを見て、怒られるかと身を固くしたさくらだったが、
「見たかったのに!」
「い、碇さん…もうっ」
 首筋まで赤く染めた。
「それは冗談だけど、それでどうなったの?」
「あたし負けちゃって…でもすみれが一緒に寝ましょうって」
「ふーん」
 さくらの言葉に、シンジがすみれの顔を見た。たっぷり達したと見えて、幸せそうな顔ですやすやと寝息を立てている。
「すみれって、時々いい奴だよね」
「ええ、そうですね」
「寝ててもアナルが反応するか見ようかと思ったけど、今日は止めときますか」
「…え?」
 反応が数秒遅れたのは、無視しようかと思ったのではなく、意味が理解出来なかったのだ。
「い、今なんて?」
「これ」
 シンジが取り出したのは小さな卵形の物体であった。コードが付いている。
「ローターは知ってる?」
 さくらはふるふると首を振った。想いとか指で十分の乙女に、そんな邪悪な物は必要ない。
「スイッチ入れると振動するんだけど、挿れたり貼ったり、使い道は色々と」
「お、お尻に入れるんですか?」
「それはちょっと邪道。でもこれは特製でサイズは小さいし妙な振動するから、処女の子とかアナルに入れても大丈夫。これ突っ込んで無意識時の反応チェックしようかと思ったんだけど、ちょっと可哀想かなと思ってね」
「ふ、ふーん…」
 何の気無しを装って手にしたさくらだが、興味津々なのは明らかだ。弄り回している所へ織姫が戻ってきた。
「持ってきたですよ」
「ん、ありがと」
 受け取った氷を数個、そのまま口に放り込んで囓る。呆気に取られて見ていた織姫を不意に引き寄せ、口の中に氷を入れた。無論口移しだ。
 一瞬驚いたような表情を見せた織姫だが、すぐに婉然と笑って嚥下した。
「おいし」
 特に意味はない。ただ、ずっと観客で見ていた織姫が、時折所在なさげな表情を見せるのに気付いていたのだ。
(あ…)
 ずるいあたしも、と言いかけたが止めた。織姫はずっと観客モードで、ちっとも参加していない。多分それが理由だろうと読んだのだ。それを理解出来る位にはさくらも成長している。
「さて、始めるよ」
「始めるって碇さん…寝てる所にやっちゃうんですか?」
「勝手に達して寝てるのは本人の勝手だ。それに、人工のパイパンは一度作って見たかった。本人の言い出しだしね。さ、二人でこれ塗って」
 シンジが二人に渡したのは、筆と小瓶であった。
「今度のはマジ」
「マジって…」「き、気持ち良く」
 当然、とシンジは頷いた。その姿に妙な気迫のようなものを感じ、二人は一瞬顔を見合わせたが、何も言わず小瓶を開けた。乱れた姿のままでは可哀想と思ったか、秘所に張り付いている淫毛は、純粋にお湯のせいだ。シンジがすみれの身体に湯を掛けたから、乱れまくった痕は洗い流されている。
(やっぱり…綺麗だな…)
 すみれの秘所を間近に見ながら、さくらは内心で呟いた。以前責め合った時には、熱くなっていたし、相手を達させる事しか脳裏になかったから、観察は全くしていなかった。すみれも同じだろう。
 今改めて眺めると、確かにシンジの言うとおり、形も綺麗だし淫毛も手入れされている様子がない。それなのにひっそりと形よく生え揃っているのだ。
(で、でもあたしの方が天然で綺麗だしっ)
 自分に言い聞かせ、ぺたぺたと塗っていく。
「塗り終わったかな」
「『はーい』」
 結構楽しんでいたようで、元気の良い返事が返ってきた。
「オッケー。じゃ、このまま二分放置します。それ位で染み込むからね」
 さっきとは違い、確かにシンジの口調に妖しい物が混ざっている。ごくっと、喉の鳴る音が二つ聞こえた。
 
 
 
 
 
 
(つづく)

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