恋の戦争は十年越し(中)
 
 
 
 
 
 
 
 女と女と井戸の中、もとい女と女と一人の男。
 一夫多妻の場合、戦いはあくまで妻同士の物であり、そんな記述は古代のバイブルにも片鱗が見える。
 また日本にも、「後妻打ち」と言う“風習はあった”。
「ごさいうち」ではなく、「うわなりうち」と読む。
 とまれ、それはあくまで妻達の間であって、それ以外の要素はそこには入らない。
 がしかし。
 そこに別の要素が入り込むと、話はややこしくなる。
 例えば、娘。
 夫を取り合う母娘と言うのは、そんなに珍しい話ではない。
 取り合うまでに行かずとも、生まれた娘に夫の関心が全部行ってしまい、取られたような気がした経験のある母親は、決して少なくはないのだ。
 ただし、この場合はそれだけ夫を愛している事の表れでもあろう。
 単に、夫を下僕として扱ったための独占欲でなければ。
 一夫多妻で妻が二人、それに加えて娘達も二人。
 その想いが、すべて一人の男性に向いているとしたら。
 結果は二つ。
 家庭内がドロドロになるか、或いは母同士娘同士がタッグを組むか。
 
 ここ碇家に於いては、ケースは後半であった。
 
 碇アスカ、同じく碇レイ。
 碇シンジの妻である彼らは、娘達の宣戦布告に遭い、同盟を組むことになった。
 
 碇アサカ、碇ルイ。
 それぞれ、アスカとレイの娘だが、十七の誕生日を機に…かどうかは不明だが母親達に宣戦布告。
 それだけでも破倫状態で尋常ではないが、両親達が正式に多妻結婚出来た時点で、既に倫理の軸は少しずれている。
 勿論、組んだ者同士も、完全に利害が一致している訳ではない。
 分け合うのはあくまで共通の敵がいるからであり、自分を見て欲しいと思っている事に変わりはない。
 
 
 
 
 
 宣戦布告により、家庭内は一触即発になるかと思われた。
 だが、一人胃をキリキリ痛ませていた、シンジの思考とは異なり、家庭内は穏やかであった。
 そう、表面的には。
 何しろ、娘達の前でレズプレイに励んでいたのがばれたもので、アスカとレイも強く言いにくい。
 しかも、結局その原因は分からなかったのだ。
 おそらく、直前に入れた紅茶の粉にあったと思われるが、
「二人とも見苦しいわ」
 同じ物を淹れて飲んだ二人は、ちっともまったく何ともなかったのだ。
 つまり、原因はそこには無いと言う事になる。
 その前は朝食、すなわち全員同じ物だからあり得ない。
 地団駄踏んだ母親達を見て、娘二人はにゃっと笑い合った。
 
 そして三日後。
 
「ふう〜」
 浴槽に身を持たせ掛けて、大きく息を吐き出したシンジがいた。
「一時はどうなるかと思ったけど…大丈夫みたいだな」
 うん、と勝手に頷いてタオルを頭に乗せようとした時、
「『おじゃましま〜す』」
 ドアがノックされて、いつものように返事を待たずに開けられた。
「ふ、ふたりとも…」
 ぶっ、とシンジが一瞬むせかかったのは、無論娘達の格好にある。
 中では当然全裸だが、今日の二人は違っていた。
 いや、一応バスタオルを巻いてはいるものの、それが女性のそれではなかったのだ。
 そう、男巻きとでも言うべきか、要するに腰から下だけ巻いていたのだ。
「ね、一緒に入っていい?」
「背中流してあげるから」
 そう言いながら、さっさと二人は侵入してきた。
「あ…ふ、ふ、ふたっ」
「ふた?やあね、ちゃんとよけてあるじゃない」
 ぶんぶんと首を振ったシンジにアサカが、
「ああこれ?」
 自分の胸を見ながらにやあと笑う。
 こんな所は母親にそっくりだが、
「だってお父さんの作品だもの、ちゃんと見てもらわなくちゃ」
 世の父親が聞いたら、滂沱と落涙して止まぬような台詞とともに、ずいっと近づいてきた。
「ほら、ルイもちゃんと来なきゃ」
「う、うん」
 手を引っ張られて、こちらは少しおずおずと近づいて来たが、二人の頬が幾分赤いのに、シンジは気付いていない。
 さて、今まで娘と入浴はしょっちゅうだが、実はバスタオルを外させた事はないシンジである。
 無論、自分が上がるまでだが。
 したがって、二人の肢体を直に検分した事はなく、これが初めてだ。
 しかも。
 この二人、母親達に負けず劣らず…美乳である。
 しかも量感も微ではなく、普段バスタオルの下に押さえ込まれていたのが、一気にその存在感を見せつけている感すらある。
「ふ、二人ともちゃんとタオルを…うぷっ」
 言いかけた途端、その顔が塞がれた。
 しかも無粋なバスタオルなどではなく、柔らかい乳房で。
「こらっ、アサカ」
 言いかけた途端、耳に熱い息を吹きかけられ、シンジの肩がびくっと動く。
「娘の胸も気付かないの?」
「え?…あっ」
 見ると、アサカは一歩引いた所にいて、目の前にいるのはルイの方だ。
「お父さんは、私達をちゃんと見てくれてはいなかったのね」
 悲しそうなルイが言う。
 いつもの手段だが、父親の前では使わないためシンジは免疫が無い。
 たちまちうろたえて、
「そ、そんな事はないよ、うんっ」
「うそ」
「嘘じゃないって、本当だよ」
「でも今、間違えたじゃない」
「そ、それはその…」
 ルイがこんな事をするとは思わなかった、のが正解なのだが、そんな事を言おうものなら間違いなく、
「私の事、そう言う風に見ていたのね」
 そう言い出すのは間違いない。
 従って、ごにょごにょと口ごもっているシンジだが、無論それは娘達も先刻お見通しである。
「あまり責めてもかわいそうだから、特別に許してあげる」
「本当に?」
 揃って頷き、
「でも条件があるの」
「条件?」
「私達二人に、キスしてくれたら許してあげる」
「え?え?」
「簡単でしょう?ちょっと、ちゅってしてくれればいいんだもの」
 幾らシンジでも、普段なら断っていただろう。
 だがこの時、目の前で揺れる四つの美乳が、シンジの理性を容赦なく攻撃しており、加えてある種の妙な香りが−シンジは気付かなかったが、援軍として加わっていたのである。
 母親同士のレズの痴態をシンジに見せ、そのまま押し倒そうとしたのだが、薬の量が足りなかったせいで予定より早く醒めてしまい、計画は頓挫した。
 次に二人が目を付けたのが、催淫剤だったのだ。男女兼用より値は張ったが、男性専用を選んだ。
 飲み物に混ぜる手もあったが、母親達に乱入されては困る。
 だから自分達の素肌に塗った。
 それも、両方の乳首に。
 素肌に塗る分には影響は無いらしく、ぐらついているのはシンジの理性のみであり、二人は至って冷静沈着に牙を研いでいる。
「ねえ」「いいでしょう?」
 こくん。
 ぴたりと合った口調に、シンジは墜ちた。
 まるで、スケコマシか何かに騙される少女にも似ているが。
「じゃあ、私からね」
 ルイが近づくと、
 ちゅ。
「え?」
 頬に触れただけのそれに、シンジがびっくりしたような顔になった所へ、
「じゃ、私も」
 ちゅっ。
 やっぱり頬に。
「こ、これでいいの?」
「いいわ」「私達は」
 何か変だ、と思った途端、股間が一気に膨張したのを知った。
 こんな急に変化したのは、とある温泉以来である。
 人間というのは、なかなかけしからん存在に出来ており、どんなに願っても手に入れられない人がいる一方で、最初からもう余っているタイプもいる。
 女運、と言う物に関しては、間違いなくシンジは後者であった。
 大体、中学生かそこらで彼女もどきが二人もいるなど、尋常ではない。
 まして、どっちを好きにしてもいいなどとは。
 そのせいもあってか、結構性に関しては淡泊なシンジであり、女と言う物を強烈に欲しいと思ったことはない。
 おそらくは、この三十余年の人生で初めての経験であったろう。
 父親の喉仏がゆっくりと上下するのを見て、二人は視線の端で笑い合った。
「ねえお父さん」
 ルイが、妙に静かな声で呼んだ。
「私達のこれ…欲しくない?」
 二人の手が同時に動き、乳房を下からぐいと持ち上げて見せる。
「ふ、二人とも止めなさ…」
 とは言え、浴槽の中で前屈み状態になっていては、説得力の欠片も無い。
「じゃ、止めるね」
 アサカはあっさりと手を下ろし、ルイも続いた。
「お父さん具合悪いみたいだし、私達もう上がるわ」
 そう言いながらルイは、既にシンジの双眸にある欲情は見て取っている。
 すなわち、薬が功を奏してきた事を。
 (三…二…一)
 二人で、無言のうちに数を数え、三つ数えると同時に歩き出す。
 そしてちょうど一歩を踏み出した途端に、その手はぎゅっと捕まれた。
「どうかし…あっ」
 わざとらしく訊いたルイの手が、座ってるとは思えないような力で引っ張られた。
「ちょ、ちょっとお父さ…んんっ」
 荒々しく引き寄せられ、浴槽の中に引きずり込まれると、膝の上に抱きかかえられたのだ。
 (お父さんの…当たってる…)
 既に核弾頭と化して上を向いたそれが、ちょうどお尻の割れ目の辺りをこすり、ルイが赤くなったがそれだけでは終わらなかった。
 顔に手を掛けて上を向かせると、いきなりシンジが唇を合わせてきたのだ。
 愛とか恋とかは無縁の、文字通り欲求を満たす為だけのようなそれに、しかもアスカやレイで散々鍛えられてきた舌の動きに、たちまちルイの咥内は蹂躙された。
 しかも。
 (はやく…はやく吸ってぇ…)
 じりじりするほどに、シンジは舌に触れようとはしない。
 他の場所は丹念に責めて行くのに、そこだけは避けているかのように触れないのだ。
 わざとやっているのは明らかである。
「んん、んんう〜」
 漏れる吐息が切なげな物に変わった時、シンジはすっと唇を離した。
「もう…お父さんのいじわる…」
 下から濡れた目でにらんで来るルイに、
「ちゃんとして欲しいの?」
 アスカとレイがどんなに怒っていても、あっさりと手玉に取られて来たのはこの口調だ。
 これで囁かれると、怒髪天を突くような怒りもみるみる仔猫のそれに変わってしまうのだ。
 
 こく。
 
 頷いたそれは、明らかに立場の逆転を表していた。
 が、面白くないのはアサカである。
 二人で落とす、と言う作戦だった筈なのに、ルイだけがキスされている。
 いや、さっき自分もしてもらったけれど、あんなのはただの挨拶だ。
 朝っぱらから両親の、音を立ててのキスを何度も見てきたアサカは、頬だけでなんか無論満足していない。
 口をふくらませて、
「ちょっとルイだけずるいよ。私だってして欲しいのに」
「駄目、私がしてもらうんだから」
「そっ、そんなの卑怯よっ」
 姉妹の間に険悪な空気が漂ったが、シンジは姉妹喧嘩など見るのは初めてである。
 珍しい物を見た、と思ったかどうかは知らないが、
「ほら、二人ともけんかしないの。アサカにもしてあげるから、こっち入って」
 大きな浴槽というのは、混浴にこそその威力が一番発揮されるのかも知れない。
「う、うん」
 嬉しそうにまたいだ時、タオルを身に着けていない躰から、きれいな薄紅色の内襞がシンジの視界に飛び込んできた。
 がしかし、この時点で実はシンジの理性は元に戻っていた…半分だけ。
 娘達が何かしたのだと、直感で察していたのだ。
 媚薬や睡眠薬など、アスカやレイに嫌と言うほど仕組まれており、だてに自分を奪い合う二人と過ごして来た訳ではない。
 と言っても、半分だけと言う条件が付いている。
 そう、股間は一向に静まる気配を見せないし、この際だからと本能はしきりに囁いている。
 つまり、状況を把握する所まではいったのだが、それを理性で判断する部分は依然として萎えたままなのだ。
「でも最初は私からよ」
 シンジの顔を両手で挟んだまま、じっと見つめてくるルイの視線は、まだどこか濡れている。
「アサカ、それでいい?」
 と、このアサカ何を思ったか、
「いいわよ、別に」
 にっこりと笑った。
 変だ、と二人とも気づいたが、
「ねえはやくう」
 ねだるルイに、
「あ、ああ」
 その顔を再度引き寄せた。
「ん…ふう…」
 ちゅ、ちゅと二、三度 唇が触れ合って、今度はルイから舌を絡めてきた。
 どこかに甘さの残る唾液が舌と共に押し入ってくると、まるで吸い取るかのようにシンジの舌に絡めてくる。
(お父さんの口の中、おいしい…)
(そ、そう?)
(ええ、とても)
 普段から冷静だが、こんな時にもそれは変わらず、どこか舌の動きを分析しているような感じに見える。
 シンジの印象は当たっていたのだが、ルイの視線は別の所にあった。
 すなわち、
(お母さん達にもこうしているのね)
 であり、こっちは静かに対抗意識を燃やしている。
 ところで、それを黙ってみているアサカなのだが、決してただで譲った訳ではない。
 にやあ、と笑うとすっと手を湯の中で動かした。
「はああうっ」
「いったー!」
 二つの声が上がったのは、ほぼ同時である。
 内股からにゅるりと指を伸ばされたルイが、びくっと身もだえするのと同時に、絡め合っていた舌を噛んでしまったのだ。
 舌を自分で噛むのはもっと痛いが、人に噛まれるのはもっと痛い。
 と言っても、油断しているときか或いはキスの時と決まっており、キスしている時に噛まれるかも知れないと用心しているのはまずいない。
 大抵はうっとりしているだけに、そのダメージは強烈である。
「お、お父さん大丈夫っ?」
「ら、らいりょうるらけろ…」
「もう、ルイが舌噛んだりするから」
「ア、アサカがいきなり触るからでしょっ」
「どこを?」
「ーっ!」
 素知らぬ顔で聞き返されて、その額に危険な物が浮かんだ。
「そう、そう言う事言うのね」
 レイ譲りの口調だが、こんな時ルイは怖い。
 正確には危険なのだ。
 さっと伸ばした手は、アサカに脚を閉じる暇を与えず、いきなり襞を二本指で挟み込んだ。
 しかもきゅっとつねった物だからたまらない、今度はアサカが浴槽の中で上体を仰け反らせた。
「そ、そう言うコトするんだルイは」
「あなたが先にしたんでしょ」
 どこか赤い顔で睨み合う二人を見て、
「ちょ、ちょっと待って二人とも」
 浴槽と言っても家の中に比べれば無論狭く、こんな所で喧嘩されてはたまらないと、シンジは慌てて二人を止めた。
 ちらり、とルイがシンジを見た。
「止めてもいいけど、条件があるわ」
「じ、条件?」
「二人で入るから、お父さんは出て」
 とこれはアサカ。
 一瞬躊躇ったが、
「けんかしない?」
「『大丈夫』」
 揃った笑顔にある物を、シンジは見抜けなかった。
 じゃ、じゃあと立ち上がった瞬間、足に捕まられて見事に前へつんのめる。
 が、転ばない。
 アサカが引っ張りルイが支える。
 鎌鼬のように、ちゃんと役割分担は出来ていたのだ。
 それを見た刹那、姉妹喧嘩演技だ、とシンジは知った。
 父の表情にそれを読んだのか、
「でももう遅いわ」
「私達が喧嘩なんかするはず無いのに」
「『ねーえ』」
 しまったー!と後悔してももう遅い。
 それに何よりも。
「ここはとっても元気」
「私達の身体、綺麗?」
 アスカやレイが見たら嫉妬に狂いかねない−近頃でも珍しい大きさまで怒張して、股間は天を仰いでいたのだ。
 娘達の、白魚のような手がそこをきゅっと掴んだ瞬間、シンジの全身に電流のような快感が走った。
「ふ、二人とも止めな…うっくっ」
 はっふう、と脹れた筋に甘い息を吹きかけたのはルイ。
 舌の袋をちょん、と軽くつついたのはアサカ。
 同時の二点責めに加えて、すぐに二人の顔が動いた。
 今とは位置を変え、アサカが亀頭の先をちょっと口にくわえると、ストローでも吸い込むように、じゅうっと音を立てて吸う。
 吸引を始めたそれを見て、今度はルイが袋をいきなり口に含んだ。
 父親の性器を美味そのもの、と言う感じで口腔愛撫する二人。
 血の繋がった父娘であり、明らかに背徳の絵図その物である。
 がしかし。
 これがシックスナインだったり、あるいはアサカとルイを跪かせてのそれならともかく、顔を赤くして何とか耐えているシンジでは、いつもの妻達に責められている図にしか見えない。
 はっきり言って、罪悪感が見えないのだ。
 これが実の親子だと言っても、大抵の人は信じないかも知れない。
 
 はむ…んっ、んっ、ころろっ。
 
 舌の上で玉を転がしているルイと。
 
 ぷあっ、じゅっ、じゅっ、んぐっ。
 
 根本までくわえ込み、頬を一杯に膨らませて吸引し続けるアサカと。
 どっちでシンジがイクか、を競うように愛撫してくる娘に、既に半分を超えていたシンジは、あっさりと落ちた。
 二人がフェラチオを初めてからきっかり三分後。
「あんん、あっつーい」
「あ、それ私にもちょうだい」
 アサカが噴き出す精液を顔に受けるとすぐに、ルイが自分もと割り込む。
 ほぼ真上に来た美少女達の顔に、シンジの精液が勢いよく張り付いた。
 妙に嬉しそうな顔を見合わせると、顔をくっつけ合って頬をすり合わせる。
 残滓を吸われた訳でもないのに、一滴残らず放出して呆然としているシンジの前で、みるみる二人の顔は白く染まっていく。
 そのまま、白い裸体も絡み合わせて、全身に精液を塗っていく二人。
 父の精液を分け合う二人の姿を見て、出し切った直後だというのに、早くもシンジの股間は復活の兆しを見せていた。
 が。
「これで、お父さんも共犯ね」
「娘に精液掛けた、なんて知られたら大変よ」
 瞬時に萎えたが、悲しいかな罪悪感でも道徳観でも無く。
「『浮気者』」
 角を生やした二人の顔であった。
 また萎えたその股間を見ながら、
「取りあえず今日の所は手付けにしておいてあげるわ」
「続きはちゃんとしてもらうからね、お父さん」
 乳房から股間まで擦れ合わせ、二人は肢体のあちこちに父の精液の痕を残している。
「ちょ、ちょっと待っ」
 洗い流すならともかく、精液を身に付けて出て行く二人に、万が一アスカ達と鉢合わせしたらと、シンジは蒼白になった。
 だが、なぜか全身に力が入らない。
 五体が感覚のないまま、視界は出て行く二人を捉えていた。
 しかも、必死に起きあがろうとして、何とか上体は起きたものの、次の瞬間つるりと何かに滑り、シンジは派手に後頭部から着陸した。
 遠のいていく意識の中で、振り向いた二人の表情が、シンジには間違いなく尻尾を生やした悪魔に見えた。
 
 
 
 
「ああっ!」
 叫んでがばと跳ね起きた瞬間、シンジは両腕に柔らかい、そしていつもの感触を知った。
「もう…なにぃ?」
「何よ朝っぱらから…」
 肘の下でうごめいているのは、いつも通りアスカとレイの柔らかな乳房。
 シンジの生理現象が伝染った訳でもあるまいが、乳首は朝から硬くなっていると知ったのは、多人数プレイの二週間後であった。
「い、いや何でもないんだ…」
(妙にリアルな夢だったな…)
 娘達の柔らかい唇の感触が、今も股間に残っているような気さえする。
 思わず腰を浮かせたシンジに、
「朝からどうしたの?何かあったの?」
「い、いやそうじゃないんだけど…アスカ、昨日何時に帰ってきたの?」
「昨日?」
 ずり落ちた紫のネグリジェを気にもせず、アスカは気怠げに起きた。
「確か…午前零時は回っていたわよね?レイ」
「正確には一時十分よ。その時にはもう、ぐっすりと眠っていたでしょう。でも髪が濡れていたから、私達が添い寝してあげたのよ」
「そ、そう、ありがとう…」
 とは言ったものの、髪が濡れていた、の言葉で内心は蒼白になっていた。
 まさか自分は本当に娘達と痴情に溺れたのか!?
 とそこへ、
「お父さんもお母さんも、もう起きないと遅刻するわ」
 いつもと変わらぬ口調でルイが顔を出した。
「分かってるわよ、今行くわ」
 やっぱりぎこちない母娘の横で、疚しさがありすぎるシンジはびくっとなったが、
「コーヒーが冷めるわ」
 いつもと変わらぬ口調に、単に自分の淫夢なのかとも思い直した。
 だがシンジは知らない。
 パタン、とドアを閉めたルイが、無表情なまま階下に降りていった時、
「ね、どうだった?」
「大丈夫、夢と現実の区別が付いていないみたい」
「第一段階は成功ね」
「ええ。後は…」
 アサカと二人して、にっと妖しく笑っていたことなどは。
 しかもこの直後、ふわあとシャワーに降りていったアスカが、見事に足を取られて転び、
「誰よ床にワックス塗ったのは!」
 朝から叫ぶ事になる、などとは。
 
 
 
 
 

(続)


2並び、とゆーことで。
それはそれとして…次どうするのかしら、この人は…むう。