女教師とお姫様(後編) 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 シンジのお人好しとアスカの任侠気質(?)により一つ屋根の下、それも一つの部屋一つの布団で一緒に寝る事になったふたり。
 無論、数時間前は双方ともまったく想像していなかったに違いない。
 初対面プラス男と女と言うことで、さぞ二人ともドキドキしているに違いないと思ったら、十分と経たない内に計ったような寝息が聞こえてきた。それも芝居ではなく本物の。
 と言うのも前戯が、いや前準備が二人とも忙しかったのだ。シンジはもう寝る所だったし、アスカの方だって急ごしらえの船は狭くて窮屈と来れば、お互いの事など気にするよりも前に
「なーんで俺を気にしないんじゃゴルァ」
 と凄む睡魔に捕まっており、揃って夢の国へと連行されていたのである。
 二人揃って連行するとは、なかなか凄腕の睡魔に違いなかったが、睡魔とて無論神ではない。どちらかと言えば悪魔に近いかもしれないが、それでもそこまでの力はない。
 先に解放されたのはアスカであり、そして先に目覚めたのもアスカであった。そして星の違いでもあるが、寝起きに性欲が強くなるのはプログ星の特徴でもあった。
 アスカが起きたとき、二人は妙な体勢になっていた。
 どちらに問題があったのか、アスカの目の前にあるのはシンジの股間であった−それも、ごく普通に朝の起動をしてる状態の。
 背中合わせで寝たから、普通に考えれば相手の顔が目の前にあって、それもアスカの唇が前にあってドキドキ、と言う状態の筈だが身体ごと逆さになっており、そして目に妙な色が浮かんできたのはアスカの方である。
「いただきます」
 昨夜とは明らかに違う、欲情の色を湛えた双眸でシンジのパジャマをすっと下ろす。亀頭の半分くらいは包皮に覆われている男根に、
「男でも…まあいいか」
 シンジが男と忘れていたような台詞だが、起動状態のそれをぱくりと含む。一瞬シンジの身体がぴくっと動いたが、まだ目覚める気配はない。
「んっ…ん…」
 柔らかな舌に包み込まれ、ぴょいと勢いの増したそれはあっという間に亀頭が露出し、アスカが舌で剥くまでもなかった。これ幸いと、そのまま一方的な口腔性交に励むアスカだが、よくそれを見ると−知った者が見るならば、男にするのとは微妙に違っていることに気が付いたかもしれない。
 先端から、とろりと汁が出てきたのを知って、アスカはにっと笑った。
 
「ほらシンジ、たまには風俗付き合えよ〜」
 悪友の相田ケンスケからは、執拗に風俗への誘いが来る。サバイバルゲームで知り合った中に風俗嬢がいたらしく、是非シンジも行こうというのだ。ただし、正確にはケンスケも初めてなので、道連れを作っておこうと言うのが事実であり、
「ほらこれ、サービスビデオだってさ」
 押しつけられたそれには、疑似フェラが映っていた。一人がはめたペニスバンドに、もう一人がせっせと舌を使っている。思わず前屈みになりかけたのは、疑似とは言え手慣れたそれが画面越しにも欲情させる物はもっていたからであり、シンジの未体験も関係していた。
 シンジはまだ童貞なのだ。
(なんだろう…)
 シンジは首を捻っていた。別に自慰もしてないのに、妙に股間が気持ちいい。
「これは…夢?あっ」
 きゅっと吸われるような感触に、思わず腰が浮く。しかし、夢とは言えでる物は出ちゃう訳であり、
「あうっ」
 叫んだ瞬間目が覚め、その途端目が点になった。
 シンジの前にあったのは白いパンツであり、そこに出入りしてる指と、
「あっ、んんっ…も、もっと…」
 濡れて喘ぐ声であった。
 思わずがばと跳ね起き、
「…な、何して…くうっ」
 夢が警鐘を鳴らしたのは数秒前だったらしく、一気に栓が抜けて放出した液体は、そのままなま暖かい中へ吸い込まれた。
 一滴残さず、アスカが口の中へ受けたのである。
 こく…こく…。
 腰を引こうにもアスカが根元を押さえているため動けず、自分でも珍しい位濃く、おまけに大量の精液が一滴残らず飲み干されるのを、シンジは呆然と見ていた。
「男って感じしないのよね、ご馳走様。あ、おはよ」
 からからと笑って口許を拭ったアスカにシンジが呆気に取られ、ようやくその顔に怒りが浮かぶまで十秒近くかかった。
 
 
 
 
 
「女食いのアスカ?」
「そう、分かりやすく言うとレズなのよ」
 分かり易くも何もそのままだが、新しく開発したメニューを持って場内を−通称生け贄を求めてやって来たミサトは、初めてレイが消えてアスカが追った事を知ったのである。
 アスカのことは無論ミサトも知っているが、初めての異星で大丈夫かと訊いたミサトに王妃ユイはアスカの異名を告げたのだ。
「元々腕が立つでしょ。だから道中、困ってる村々を助けてはお礼に宿を借りて来たのよ」
「それで…レズって言うのは?」
「兵隊が傭兵ではなく、一家の男が徴兵される以上、必然的に村には女が多くなるでしょう。それも、夫が居なくて身体を持て余した女性が多く」
「そ、それを食っちゃってたんですか?」
 そうよ、とユイは頷いて、
「女同士ってのは、男同士みたいに体調も壊さないし、妊娠も絶対にないからある意味とても便利でしょう。いくら何でも、妻が他の娘と抱き合っているのを、この間女がと斬る訳にも行かないし」
 淡々と語るユイは、達観してるのか、或いはこの位でないとこの国の王妃は務まらないものなのか。
「そこまで計算して…アスカ恐るべしですねえ」
「それでいいのよ」
「…はい?」
 まさか王妃にもその趣味が、と一瞬身構えたミサトに、
「レイの立場を考えれば、これでアスカが男好きでは側に置けない。他の男の種を妊娠、などとはあってはならないことよ?」
 真顔のユイにミサトは、はあと頷いた。アスカが変な性癖をレイに教えた場合、奥付きの娘達ならともかく、出入りする小者の男などに手を出されたら話にならない。ユイはそう言っているのだ。
「だから女の子落とすのは上手いし、あの星の女性も私達と外見は変わらないようから、女の子をダシにして何とかやるでしょう」
 えらい言われようだが、
「ところで今日は何しに城中へ?」
「あ、あの新しいパイが出来たので姫に試食を、と思いまして」
(……レイに恨みでもあるのかしら)
 一目見れば、普通ならまずそう思うに違いない。よく分からないものの脚が無造作に生えており、全体が何故かどす黒い。
 この星でも、ちゃんとクリームは白いと言うのに。
 焦げたのなら分かるが、焦げ目はどこにもなく、おまけにサンドしてあるのは妙な臭いを放っている代物である。
「なるほど、美味しそうね」
 すらすらと嘘を付くのは王族、それもこのクラスになると必須項目でもあり、ごく自然と出てくる。
「い、いえそれほどでも」
 てれてれ、と頭をかくミサトの手をちらりと眺め、
「その手、だいぶ苦労したんでしょうね。あちこち火傷だらけじゃない。さ、手当てしてあげるわ」
「そ、そんな王妃様にしていただいては…」
「いいからほら、見せてごらんなさい」
 すっと手を引き寄せてから気付いたように、
「あなたの胸、随分と大きいのね」
「…え?」
 罠と気付いたときにはもう遅く、
「やっぱり吸われたり揉まれたりして大きくなってるのかしら?」
 どこで覚えたのかと思うほど器用に胸元をまさぐられ、乳首を指で挟まれた時、ミサトは罠にはまったのを知った。
「他の女の身体を愛撫する方法−優秀な教師に教わったのよ」
「た、試すなら私いが…むううっ」
 四肢をがっしりと決められ、咥内に舌が入り込んできて自分のを絡め取った時、王族は全員武術もマスターしていたと思いだした。
 それでも何とか逃れようと藻掻くミサトに、
「ここ、こんなに濡れてるけど?」
 
 
 
 
 
「な、な、何するんだよっ」
 怒髪天を突く勢い、と言いたい所だが、朝一の濃いのを目の前で一滴残らず飲み干されてしまっただけに、怒るシンジも何となく間が悪い。
 しかも、アスカがこれまた反省してる様子がないのだ。
「だから、黙ってしたのは悪かったわよ」
「悪かったわよ、じゃないよっ。そっちはどうか知らないけど、地球にはそんな恩返しはないんだからなっ。自分が男好きだからって、人まで巻き込むなよっ」
「…コラ」
「え?」
「黙って聞いてりゃなーに抜かしてんのよ。言っとくけどね、あたしは男なんかには興味ないのよ。それに、あたしがしたのはしたいからしただけ。あんたが可愛い顔して寝てたのと、寝起きでムラムラ来ただけよ」
「……いつも男にしてるんじゃな…いだっ」
 確かにシンジの脳裏には、風俗嬢の光景があったろう。が、言い終わらないうちにアスカの一撃がシンジを直撃した。
「通称“女食いのアスカ”、このアスカ様がなーんで男なんかにしなきゃならないのよっ。あたしが男にするのは初めてなんだからね。ま、処女じゃないけど」
「ど、どう言うこと?」
 別にどうもこうもないが、非処女=フェラの構図があるらしいシンジは、AVの影響受けすぎであり、初めてで顔射とか強要しちゃうタイプに違いない。
「だから、ある村で女の子と繋がった時、自分にも挿れて処女破っちゃったのよ。間違えたんだけどね。あたしは元々女の子専門だから男には興味ないの。あんたにしたのは可愛い顔してたからって言ったでし…どしたの?」
「僕って…そんなに女の子に見えるのかなあ…」
 色白で線が細く、少し髪が長い。同窓会へ行くと、何故かいつも女装させられるのはシンジの悩みであり、初対面の宇宙人にまで言われては傷も付こうというものだ。
 勢いはどこへやら、はーあと落ち込んでしまったシンジに、これは傷に触れてしまったかと、
「あー、ごめんごめん。でもあそこはちゃんと男してるじゃない」
「え?」
「濃かったし、それに量も多かったしさ。大丈夫だって、ちゃんと男…あ」
 元々アスカは、男の生理は知っていても実感はない。それよりも、女の身体のどこが感じるかの方が遙かに詳しいし手慣れてる。その自分が何でシンジにしたのか、自分でもよく分からない部分はあるのだが、あまり大きな事とは考えていない。
 だから自信を無くしてるシンジに取りあえずフォローのつもりで言ったのだが、今度は真っ赤になってるシンジに気が付いた。
 そしてもう一つ、どうして自分が手を出したのかも。
(こいつ…あたしが寝てきた子達に似てるんだ)
 要するに女みたい、と言うことだが、真っ赤になって下を向いてるシンジの首筋を見ていたアスカは、じわりと濡れてきた股間を知った。
(そっか、あたしも…)
「あのさ…」
「え?」
「さっきはあんな形でしちゃったし、もしあんたが嫌じゃなかったら…ちゃんとしてみる?」
「…い、いいの?」
「んー、あたしがすぐ横にいても指一本触れなかったし、あたしのアンテナも立たなかったしね」
「アンテナ?」
「あたしも一応賞金稼ぎだからね、やばい時に身体が反応する位のモノは持ってるわけよ」
「は、はあ」
「昨日船内で自動洗浄はしておいたから別に汚れてないし、あんたも別に汚くないでしょ?じゃ、いい?」
「う、うん」
 じゃあ決まり、と勢いよく服を脱いだアスカに、シンジは目を見張った。乳もでかいし尻も締まってる、とそんな事ではなく、素人のシンジが見ても鍛えられている肉体がそこにはあったのだ。
 筋肉質ではないが、きゅっと締まった肉体にシンジが見とれていると、
「ほ、ほらあんたも脱ぎなさいよ」
 恥ずかしくなったのか、シンジの服に手を掛けてあっという間に脱がしてしまった。
 その手つきもまたかなり手慣れており、他人の服を脱がすのも得意科目に含まれているらしい。
「あんた、碇シンジよね」
「う、うん」
「あたしアスカ、惣流・アスカ・ラングレーよ」
「うん、昨日聞いた」
「……」
「……」
「え?」
「…じゃなくて!最初はちゃんとキスするのが当たり前でしょ。まったく、女の扱い方知らないんだから」
 いかにも手慣れた台詞ではあるが、この娘の場合女を相手に経験を積んできたから怖い。
「は、はいっ」
 おそれ入って頷いてしまい、じゃあと肩を引き寄せようとしたらストップと止められた。
「なに?」
「ちゃんと…名前呼んで…」
 そう言って軽く目を閉じ、うっすらと唇を開けたアスカにドキドキしてしまい、
「アスカ…」
「ん、シンジ…」
 唇を合わせるとほんの少し苦いような味がして、
(これ僕の…?)
 一瞬ヒキかけたシンジだが、それを上回るアスカの舌に釣られて相擁したまま倒れ込んでいく。
 どうやらアスカには、女を抱く時のポリシーがあるらしい。
 ただし、双方とも女と言うのがやや問題だが。
 
 
 
 
 
 さて問題の綾波レイだが、実はもう地球に来ていた。こちらはアスカとは違い、別段不時着することもなく着いている。
 が、問題は機体よりもむしろ人と場所にあった。ズウン、と着陸したのは真夜中の公園だったのだ。おかげで機体が少し滑ってしまい、
「つーかここ何処?」
 と、お尻をさすりながらレイが出てきた時、二人の娘が怯えた視線でこっちを見ているのに会った。
「そこの二人聞きたい事がある、こっちへ来なさい」
「へっ?」
 近頃は脚本プレイ、要するに客が持ち込んだ脚本通りに演じるプレイだが、アニオタの客が来たせいで、いきなり大量の妹が出来た男の、一の妹と二の妹を3Pで演じさせられ、ややげんなりして帰る所へいきなり奇妙な船に出くわした。
 宇宙人はNASAの、そして怪獣は自衛隊の管轄と決まってるから、触らぬ神に祟りなしとさっさと退却しようとした所へ、中から蒼髪の美少女が出てきたのだ。
 しかも芝居に出てくるような衣装を着ており、これは絶対イタイ系の娘と判断し、目配せして一斉に走り出そうとした所へ、
「私の言う事が聞けないの?」
 妙に迫力のある声に、足がびくっと止まってしまった。
「『は、はい…』」
 おそるおそる近づくと、
「ここは地球ね」
「え!?」
 やっぱりそっちの人だと確信したが、
「この船を見れば分かるでしょう。とりあえず宿を用意しなさい」
 しかしながら女、或いは女同士でも最近は死体を切り刻むのが流行な節もあり、そう簡単に止められるものではなく、二人で顔を見合わせたそこへ、
「これで足りるでしょう」
 ぽい、と無造作に放り出されたそれに、
「ダ、ダイヤ…」
 五センチ位は優にあるそれに、思わず声が震えたのはやはり女であろう。1カラットは0.2gだが、これは一体どれほどの価値があるか分からない。
 しかも、
「完全無色よこれ」
 もう一人が震える声で呟いた通り、もっとも価値が高い最高ランクに位置する無色透明のそれは、もう一体いくらするのか想像も付かない。パトロンがおり、その気になれば欲しい物を買うには困らない彼女達でも、こんな物は見たことも手にした事もなく、おそらくは一生無いに違いない。
「足りないの?」
 鷹揚に訊ねたレイに、慌てて宗旨替えした二人は、
「あ、あのっ今ご案内しますから」
「せ、狭い所ですけどっ」
 言葉遣いまで変わった娘達に、
「うむ」
 とレイは偉そうに頷いた。
 
 
 
 
 
「ちょ、ちょっと痛かったかな…」
 正常位・後背位に次が騎乗位、最後は宇宙船の外壁に手を付かせて、後ろから思い切り貫いた。
 初体験でよく保ったものだが、既に一度出していたのが良かったのだろう。一度も抜いていなかったら、挿れた瞬間に出してしまった可能性もある。
 さすがに二人ともぐったりして、一応シャワーだけ浴びて横になっていたのだが、アスカはシンジの胸に頭を載せたまま気怠げに呟いた。
「あの…やっぱり処女だったの?」
「違うわよ。ただ、あたし最近は責めるだけで繋がるプレイってしてなかったから。ナカって入れないままにしておくと、入口が狭くなっちゃうのよね、知らなかった?」
 シンジを見上げてから、
「あ、あんた経験無かったんだっけ」
 すっかり打ち解けた感じでけらけらと笑った。シンジも一瞬むっとはしたが、悪意の無い笑いに何となく気が削がれ、代わりに豊かな乳をむにゅむにゅと揉む事で応じた。
「ちょ、ちょっとシンジ、あんっ」
「もう一回する」
「だ、だめよあたしまで股がひりひりして…あふっ」
「下の口は嫌がってない」
 
 
 
 
 
「シンジ、今来いすぐ来い大至急来い」
 ケンスケから、妙にせっぱ詰まった声で呼びだしがかかったのは、それから数日後の事であった。
「今どこ?」
「パールランド」
「パールランド?ってそれ、例の?」
「そ、ソープだよ。いいからすぐ来い、面白い子がいるんだよ」
 ケンスケのこんな声は、チェコ産のスコーピオンの新型が出たと騒いだ時以来だ。無論、軍事オタクの専門分野である。
 取りあえず宇宙船をどかして、天井の穴は塞いだ。
 賞金稼ぎと言うだけあって、異なった環境への適応も早いらしいアスカは、タイトスカートにノースリーブの格好で、今日もレイを探しに街へ出ている。レイをとっ捕まえないと、故郷へ帰れないらしい。どうやら、アスカの船はエンジンに致命的な故障が発生しているようなのだ。
 とりあえずきれいになった室内を見回してから、
「分かった、じゃ今行くよ」
 電話を置いて、
「ソープランドって面白い子がいる所だったのかな?」
 何も知らぬ顔でうーんと首を傾げた。
 
 
 
 
 
「え?イカリレイって言うの?」
「なんかさ、お前に似てるんだよな、どことなく」
 呼び出されて言ってみると、そこにはアニメの王女みたいな衣装に身を包んだ娘がおり、ご丁寧に玉座まで用意されている。
「相田くんがね、王女様プレイで売り出したらどうかって言うから、帰る所も無いみたいだし名案だねって話してたのよ」
 どうやら、ケンスケの知り合いのサバイバル娘達らしい。
「こういうコスプレも慣れてるみたいだし…シンジどした?」
「この子…本物だよ」
「え!?」
「ちょ、ちょっと冗談でしょう?」
「冗談じゃないよ。いま家に、この子を探しに来てる娘(こ)がいるんだ。アスカって知ってるで…あっ」
 ぴゅうっと逃げようとするのを、慌ててシンジが捕まえた。
「は、離してっ。ア、アスカに捕まったら連れ戻されてしまうもの」
 じたばたと暴れるレイに、
「お、おいシンジ離してやれよ、嫌がってるぜ」
「そうよ、無理強いなんて男のする事じゃな…な、何よ」
「三人とも分かってないみたいだけど、この人は即位を控えた次期女王なんだよ…って、僕も聞いた話なんだけど。君がいないと、国中の人たちが困るんでしょ?」
 何を言い出すかとは思ったのだが、会った時の状況と身に付いている雰囲気が、自分達と違っていることはどこか分かっていた。
 第一、その辺のコスプレ娘がどでかいダイヤなど、持っている訳があるまい。まさかとは思ったのだが、手を放したシンジにこくりと頷いたレイを見て、三人は顔を見合わせた。
「じゃ、じゃああなた…本物の女王様?」
「イカリレイ、ゲヒルン王国の次期女王です。この星へは、地下にあった船のボタンを押したら勝手に来てしまったの。本当は少し息抜きがしたかったのだけど…」
 次期女王が、息抜きでソープ嬢になったら世の中終わりである。
「そう言うことなら、仕方ないわね」
「うん、しようがないよ。ああ、そうだこれ」
 がさがさと取りだしたのは、レイにもらったダイヤだが、灯の下で見ると一層輝いて見える。
「何?」
「これはお返しします。多分、王女様の証なんでしょう?」
「要らないわ」
 レイは首を振った。
「うちの地方ではそんなに珍しい物でもないし、この世界では価値がある物みたいだからお礼にあげる。泊めてもらったお礼よ」
「で、でも…」
「いいの。もう、帰らなければならない私には不要だわ」
「……」
 何となくレイが可哀相になって顔を見合わせたが、シンジが言うとおりレイの国の国民が待っているなら、引き留めも出来ない。
 と、レイが、
「碇シンジ、と言ったわね」
「え?うん、そうだよ」
「さっき、この者達からマット洗いとお尻洗いを習ったの」
「はあ」
 と頷いてから、それがソープ嬢の技と知り、何て事をと二人を見たが、
「いいの、私が頼んだのだから。それよりも、一度だけ試させて」
「……え゛!?」
 四人とも目が黒点になる中でレイは一人冷静で、
「このままずっと、箱入りのまま女王にはなりたくないの。見知らぬ星で一度…一度だけでいいから思い出が欲しいの」
 ソープごっこが思い出、と言うのはかなり止めた方がいいとは思うが、レイの真剣な眼差しにシンジも断り切れず、ついうんと言ってしまった。
「じゃ、じゃああたし達も一応付いているから」
 初めての娘に加えて、店でもナンバー1とナンバー2が付くという、垂涎どころか呪殺したくなるような状況に、
「ちっきしょー!!」
 四人が扉の向こうに消えた後、地団駄踏んで悔しがったのは無論ケンスケである事は言うまでもない。
 
 
 
 
 
「で…どういう事よ」
 眉をピンとつり上げて、腕組みして仁王立ちしているアスカの前にはシンジと、べったり腕を絡ませているレイが居る。
「そ、それが…何かなつかれちゃって…」
 シンジの話によると、客を寝かせてその上から自分の身体を押し当てて洗っていくプレイで、すっかりシンジの身体が気に入ってしまったらしい。
「アスカ、私帰るわ」
 ゴロニャゴと、まだソープの続きみたいにシンジにすり寄っていたレイが、不意に顔を上げた。
「え?あっそう、それなら…」 
「但し碇君と一緒」
「何ですって」
「そおぷ、と言うのは男に抱かれてはいけない所と聞いたわ。だから、星に連れ帰って正式に私と結婚してもらうの。そうすればもう、後は好き放題…」
 じゅるって涎を拭ったレイに、
「じょっ、冗談じゃないわよっ。シ、シンジは私と付き合うんだからねっ。もうシンジとは一つになってるんだから、シンジそうよねっ」
「う、うん…」
「無駄ね」
 ふん、とレイは嘲笑った。
「アスカは本来女しか相手にしないの。どうせあなたも、女みたいとか言って誘われたんでしょう」
「『う…』」
 事実だけに否定できず、
「やはりそうだと思ったわ。そうね、同姓なのもきっと何の縁だし、ここで今一つになりましょう」
 アスカに劣らぬ手つきで押し倒そうとするのを、
「さ、させないわよっ」
「家臣の分際で図々しいのね」
「ここは、ゲヒルンじゃないわ。女の勝負に王女も家臣も無いわよっ」
 アスカが左から引っ張れば、
「それなら受けて立つわ」
 とレイが右から引っ張る。
「い、いだだだだ!」
 悲鳴を上げながらシンジは、
「女難です。ま、頑張りましょう」
 と告げた地天使堂の主人の顔を思いだしていた。
 
 
 
 
 
 さてその後どうなったかというと。
「娘さん?こっちで家庭教師と男の取り合いしてますよ」
 地天使堂の主人のチクリに、顔色変えたユイが宇宙船を造らせて吹っ飛んでくると、マンションを借り切ってアスカとレイが、シンジを真ん中に肉欲の真っ最中であった。同時フェラに一瞬ユイも絶句したが、ぶるぶると頭を振って切り替え、
「こらっ、何してるのっ」
 すうと息を吸い込んで叫んだが、揺れる尻から見える濡れた淫裂だけの答えに、プチっと切れたらしい。
 が、精神的にも合ってしまって、このまま帰ればアスカに取られると駄々をこねる娘に、ユイが下した決断はシンジの拉致であった。
 聞けば身よりはないし遠慮は要らないと、
「二人とも絶対に帰ってもらうわ。ところで、彼と一緒がいい、それとも離れてもいい?」
 と、実に巧みな扇動で二人を誘拐犯に仕立て上げ、ゲヒルン王国へと拉致するのに成功した。
 その後女王へと即位したレイだが、何故か週末の次の日はとても艶が増しており、
「結婚もなさっておられないのに不思議な事だ」
「きっと、魔法の薬でも使っておられるのに違いない」
 と囁き交わされる原因にもなっている。
 無論、
「週中は二人とも手を出さないこと」
 との協定が結ばれ、一週間熟れた身体を火照りに火照らせた娘二人が、週末になると街の外れにある一軒家へすっ飛んでいくのが原因である。
「ねえ碇くぅん」「シンジ、待った〜?」
 妙に甘ったるい声に、強精剤の調合に余念がない主が、
「二人とも、いらっしゃい」
 優しい声で迎えてくれるのだとか。催淫剤は、二人が一週間体内で熟成させて来るから無用なのだ。
 なお世代交代した旧王妃だが、淡泊な夫が構ってくれない時は、殺人的腕前の女料理人を責める事で孤閨を癒しているらしい。似た者母娘と言える。
 
 
 
 
(終)