甦   炎(後編)
 
 
 
 
 
「よく分かったわね。さすが蛇の道は蛇という所かしら」
 未だ笑いの収まらぬ表情で、だが口元には残忍な色を乗せてユイは二人を見た。
「で、でもレイ…」
 最後の砦にすがるような表情で、アスカがレイを見た。
「さ、さっきシンジは止めてよって…」
「遅効性だったのよ…おそらく」
 一言でアスカの望みを断ち切ったレイも、さすがに視線は向け得なかったのか、アスカから顔を背けた。
「そ…そんな…」
 もはや、レイの冷徹な程の冷静さを責める気力もなく、アスカは愕然とうな垂れた。
「シ、シンジぃ…」
 自分を縛っているのがレイであったら、アスカはさして取り乱しもしなかったろう。むしろ、所詮そんな物よね、とあっさり諦めていたかもしれない。
 だが、レイのクローン元とは言え、ユイは明らかにレイとは異質の立場にある。かつてシンジがレイに母性の幻を見、アスカがそれに激しく嫉妬した相手である。少なくともアスカにとって、お義母さんという位置には無かった。
 はっきり言えば敵−加えてシンジの実母であると言う事は、そのまま近親相姦を意味しており、到底アスカには容認できる物ではなかった。
 かと言って、今アスカには何も出来ない。一糸纏わぬ全裸の上、レイと同じように正視し得ぬほどの開脚で呪縛されているのだ。
 ぎりりと歯を噛み鳴らしたアスカを、ユイは愉しそうに見ている。シンジの性器は一直線に天を仰いでおり、エネルギー充填度120%と言うところだが、何故かそれには手を出そうとしない−愉しんでいるのだ、アスカの苦しむ様をじっと。
 手が出せぬ事への無力感から、絶望の炎に胸を掻き毟られている有様を。
 暴れるほど手錠が食い込む、という事は無い。暴れるのを止めれば、一定の距離まで輪の隙間は出来るからだ。
 だがアスカは、暴れるのを止めようとはしなかった。鉄の輪が細い手首を容赦なく締め付け、引き締まった足首の皮膚を無残に毟り取ってもまだ−まるで、思いの丈が邪悪な鉄の輪を破壊出来るかのように。
 だが数分後、アスカは抵抗を止めた。いや、体がそれ以上の自虐を拒否した、と言った方が正解かもしれない。無残に腫れ上がり、幾筋もの出血が見られる両手足の先は、奥まで見えそうな脚の間とは、また別の意味で正視出来ぬ物を感じさせた。
「あら、もう終わり?」
 ユイは整った口元を歪めて笑った。
「シンジは執念深かったわよ、それはもうものすごくね」
「な、なんの事よ…」
「初号機ごと、使徒の虚数空間に取り込まれた時よ」
「…何ですって…」
「あの時シンジはこう言っていたわ、アスカのせいだって。自分はこんな所で死にたくは無い…助けてよ『綾波』ってね」
 『綾波』の部分を、殊更に強調して告げるユイに、アスカの顔から血の気が引く。
「う、嘘よっ!!そんなの嘘よっ!!」
 四肢を突っ張らせて叫ぶアスカに、ユイは平手を飛ばそうとはしなかった。ただ、憐憫の色で見ただけである。
「何も、知らなかったのね」
 さも可哀相に、と言う風情で言われた言葉で、微かにアスカが揺れた。
「アスカ、聞いては駄目っ」
 突如叫んだレイに、アスカは一瞬びくりとしてレイを見、ユイは余計な事をと言うように眉を寄せたが、すぐに低くと笑った。
「この娘が抵抗するのは無駄だと言った癖に、事実の指摘は困るのかしら?」
 区切るような口調は、明らかにアスカに聞かせる為の物である。アスカはそれを知らなかったが、レイはすぐそれに気付き、唇をぎゅっと噛んだ。
 この状況では逆効果だ、瞬時にレイはそれを知ったのだ。
「本当の事、知りたくない?」
 覗き込まれてアスカは目を逸らした。さっきまでなら間違いなく、唾でも吐きかけていただろう。しかしレイの動揺にも似た物を目の当たりにし、そして初号機の中にいた女の言葉だけに、アスカは大きく揺れていたのだ。
 レイとはシンジを挟んで対極の位置にいた。だがシンジは自分達二人を、同じように愛してくれている−無論自分達も。
 そう信じていた心が、悪魔の囁きでぐらつき始めてしまっていた。
 
 
  
 
 
 
 
 このままではまずいわね…
 副座式のプラグで乗り込んできた二人を見ながら、ユイはコアの中で呟いていた。
 映像は切ってあると、二人は全裸で座っていたのだ。無論実際には、隠しカメラでしっかりと盗撮されている事を、知らないユイではない。
 だがそれを知らない二人は、ちょうど今も性交の最中であった−しかも肛門性交。
「あっ、綾波のお尻…し、締め付けてくるよっ」
「は…んん…い、碇君のも硬くて…あ、当たってるのおっ」
 挿入運動ではなく、根元まで飲み込んだままシンジの膝に座ったレイが、思うままに腰を動かしているのである。
 直腸の内襞に、硬く尖った亀頭が食い込む度、レイは切なげに身をよじり、レイが動くにつれてきゅうっと締め付けてくるアヌスに、シンジは射精感を懸命に堪えていた。
 映像が取られている事くらい、勘で分からないのかしら?
 ユイが半ば呆れて、息子と自分のクローンの肛門性交を眺めていると、案の定みるみるシンクロ率が上昇しだした。
 射精感をこらえる、その一点だけに集中しているシンジと、直腸を抉られるようにかき回されて、文字通り身体を貫かれるような快感に身悶えているレイ。集中がシンクロに直結するエヴァにおいて、シンクロ率の急上昇は当然の結果であった。
 困ったわね
 液体の中ではたと考え込んだのはユイである。前回は自分の力と、シンジの戻りたい一念でどうにか戻した。だが今度一体化したら、もう元には戻れないのだ。
 ユイにとってはそれでも良さそうな物だが、そうも行かない訳がある。実はこの碇ユイ、既に戻る術(すべ)は自ら見つけてあったのだ。
 コアの中で暇な折、虚数回路の二次式をひねくりまわしていたユイの脳裏に、ぽんと浮かんだのがF式。要素の不足している部分は、S2機関の無限な力を一部変換すれば済む。後は自分自身の精神力の問題だ。
 気力の問題なのだが、必要な数値まで後わずか、要するに殆ど帰る支度は出来ていたのだ。そのユイにとって、シンジが溶け込んでくるのは困る。シンジまで戻す力など無い上に、邪魔な小娘まで付いてくるからだ。
 自らのクローンでありながら、シンジが見た母性の部分を逆手に取って、大事なシンジを篭絡した−と思い込んでいるレイは、既にユイにとって憎悪の対象だったのだ。
 今は来ては駄目。となると強引に戻すしか無いわね、でも…
 そうだ、と液体の中でにんまり笑ったかはともかく、物騒な佳人が思いついたのは、使徒もどきであるレイの力を吸い取る事。自分の力ではなく、レイの力を利用しようとしたのだ。
 結果として二人は、400%を超えた刹那、急速にダウンしたシンクロ率のお陰で助かった。
 それに加えてレイは使徒の力を失い、しばらく経ってからだが完全に人化した。彼等にとっては、いい事尽くめだったかもしれない。
 ただ、何故か結合部分に感じた激痛のせいか、プラグ内での記憶が全て飛んでいた事を抜きにすれば。
 そして性交の痕を見つかったアスカに、二日感に渡る二人きりの生活を余儀なくされた事を別にすれば。
 実に数十回に渡る搾精の結果、シンジは数日間完全にダウンしたのである。
 
 
 
 
 
「キョウコから私の事…聞いた事は無いわね?」
「マ、ママ…?」
「あの子は私の子猫だったのよ」
「え?」
 これで分かるほど、アスカはまだ日本語には通じていなかった。
「こう言う事よ」
「な…ん…む…むぐうっ」
 強引に指し込まれた舌は、アスカに噛む事を許さなかった。歯を立てた瞬間、自分も唇を噛み取られているのは見えている。いや、そんな計算の暇も与えられないほど、あっという間に舌は絡め取られていたのだ。
 舌が絡み寄せられ、ねっとりと包み込まれていく。ユイの舌から流れてくる唾液に、シンジの精液の臭いを感じた時、何故かアスカには嫉妬は湧かなかった。
 だがアスカは気付いていない。
 嫉妬が起こらなかったのは、ユイに心が傾いたからではないと言うことを。
 そう、瞬く程の間の舌戯で、あっさりと脳が融けたからだということを。
 とろんとした眼差しになったアスカを見て、ユイは邪悪に嗤った。
「母娘揃って、舌の裏側が弱いのは同じね。そこで見物してなさいな」
 レイには目もくれず、ぼんやりと天井を眺めているシンジに、ゆっくりと近づいた。
「シンジ、来て…」
 何を思ったか、ちょこんと正座したままユイはシンジを呼んだ。
 と、シンジはむっくりと起き上がったのである。
 股間を思い切り突っ張らせたまま、涎でも垂らしそうな顔で母を見る。
「かあ…さん…?」
「そう、私よ。ずっと待っていたお母さんよ」
 聞いた感じは普通の言葉であった。だが次の瞬間、シンジはユイに飛びかかって押し倒していたのだ。
 目をぎらつかせて、実母の唇にむしゃぶりついたシンジ。それはまるで、久しく女を与えられなかった餓鬼のようにさえ見える。母の口の中を存分に味わいながら、顔だけを残して手は胸に移動した。
 大きく輪郭から責めながら、乳首の方へと手を動かしていく。
 キスしながら乳房を責めるのは、シンジがいつもアスカにする物であったが、アスカは既にそれを認識できる状況には無かった。
「は…あん…」
 唇から銀の糸を滴らせたまま、顔を離したユイが小さく喘ぐ。
 だがそれはどこか、感じていると言うよりは、愉しんでいる風情に見える。ユイに顔を離されたシンジは、そのまま顔を胸まで下げた。たっぷりと重量感のある乳房を、まるごと口の中に入れると、舌で乳首を転がし始めたのだ。
 硬くなった乳首を丹念に責め立てていたシンジが、かりっと軽く歯を立てた。
「んっ…くぅ…」
 思わずユ洩れた声には、さっきまでの余裕は消えている。
 下の唇から溢れ出す愛液は、ずっとシンジを思っていたからだとユイは知っていた。
 ゲンドウからは、決して与えられる事のなかった愛撫。常にユイの方が責めに回っていたせいで、ゲンドウのそれはいつも、どこか消極的であった。身体の芯が求めていたそれを実の息子に与えられ、ユイの肉体は芯から濡れていた。まだシンジの責めは乳房だけで、下腹部には手も伸びていない。それなのに、ぴんと伸びた背に快感が渦巻いていくのを、確実にユイは感じていた。
 頭の中に、白い光景が一瞬弾けて消える。その感覚が断続的になってくると、もう持たない事をユイは分かっていた。
(おっぱいだけじゃ、いや)
 二つの乳房をくっつけ、乳首をまとめて嬲りだしたシンジの頭を震える手で引き離すと、そのまま逆に押し倒した。
「か、母さん?」
「私がして上げるから、シンジも…ね?」
 既に先端から、透明な液の流れ出しているシンジの肉竿は、放出前と変わらない、いやそれ以上の強度と大きさになっているような気がした。
 コアの中で、じっと見ているしか出来なかったそれを、今度は丹念に口に含んだ。
 ぴちゃ…ぬぷ…んぐ…。
 根元まで含んだ瞬間、シンジの体がびくりと痙攣したのを知り、ユイはうふふと笑った。
「シンジ、可愛いわね…はっ、はぁんっ!」
 だがユイは一つ忘れていた。シンジがただの少年ではない事を。
 初めて見る母のそこを、シンジは観賞する事も無くいきなり左右に広げると、中に舌を差し込んだ。ユイの秘所を熱い舌がべろりと舐めあげ、後から後から溢れ出してくる蜜を、シンジが音を立てて吸い取った時、ユイの顔は羞恥に紅く染まった。
 じゅるじゅる…じゅくじゅく…。
 LCLに液化していたおかげか、ユイのそこは綺麗なピンクを保っていた。何時も二人にしているように、殊更に大きな音を立てて吸い上げていく。
 既にシンジに自我は無く、相手を母と知りつつもその心に罪悪の観念は無い。視界に入る恋人達の無残な姿も、今のシンジにとっては何ら意識を動かされる物ではない。
 だがレイは無論それを、いつも自分達にしている物と知っているし、一方のユイもそれは感じ取っている。二人の心に、互いへの憎悪が一際高く燃え上がった。
 ユイが上だから、流れる愛液はアヌスではなく大腿部へと滴る。普通、いきなり性器を責められると痛みが伴う事が多い。意志と身体は必ずしも同盟関係には無いからだ。
 しかし今ユイの秘所は、シンジの…息子の舌に完全に溺れていた。小陰唇から内襞への軽い動きも、或いはカテーテルを押し込むような激しい掬い上げも、どれもユイに取っては快楽を高める物となっている。
 十数年のブランクの差か、それとも背徳の炎が呼び起こす官能の熱か、既にユイはシンジの肉竿から口を離していた。無論嫌になったのではない、シンジの舌に責められて、意識がそっちに吹っ飛んでいたのだ。
「母さんのここ、綺麗だよ」
「や…やだぁ…言わ、ないでぇ…」
 まるで小娘のように、ユイはいやいやと首を振った。が、シンジが止める筈も無く、むしろますます激しく舌を侵入させていく。
「あふぁあっっ」
 いきなり奇妙な声を立て、ユイの背がびくりと反り返った。シンジが指で包皮をかきわけ、乳首以上に大きくなっているクリトリスを、舌で弾いたのだ。
 挿入もされてはいないが、舌で両方の口を嬲られてぎりぎりまで追いやられた上に、いきなりのクリトリスへの責めで軽くイッたユイは、ぐったりとその身体をシンジに乗せた。
 その刹那シンジがびくりと揺れた。、
「うっ」
 呻いた声は、快感からではなかった。四つんばいになっていたユイが、がくりと倒れ込んだせいで、いきり立った肉竿がぐにゃりと折れ曲がったからだ。
 別にへし折れるような代物ではないが、やはりいきなり曲げられては痛い。
 しかし、その肉竿の位置を見てユイがふっと笑った。肉竿は期せずして、ユイの谷間に置かれていたのだ。
 軽くイッたばかりではあったが、ユイは気だるげに身体を起こすと、自分の両の乳房に肉竿を挟み込んだ。
「うあうっ」
 無論膜も襞も無いから、結合のそれとは違う。だが乳房が逆に擦りあわされる度に、ねっとりとした何かに包み込まれ、忽ちシンジの肉竿は射精の許可を訴え始めた。
「ほら、シンジ…」
 今度はシンジの顔が離れた。ぐっと歯を食いしばり、押し寄せてくる射精感を押さえつける。
 段々と乳房を擦り合わせる速度が高まり、まるで自分の乳房を揉みしだいているかのような感触に、ユイ自身もまた昂ぶって来た。
「お母さんのおっぱいに挟まれてイクなんて、やっぱりシンジは変態よね。ほら、変な液が流れてきたわよ」
 侮蔑のような口調を投げながら、乳房からはみだした部分をちろりと舐める。
 アスカの尻に敷かれていた事から、シンジにはそっちの気もあると読んだ通り、そんな言葉を投げられて普通は萎縮しそうな物だが、シンジのそこは一層の興奮度を見せていたのだ。
(後十秒くらいかしら)
 膨れ上がってきた尿道を感じながら、ユイは内心で呟くと舌の勢いを増した。
 亀頭を軽く歯で噛み、鈴口に舌を侵入させる。
 だが。
「あっ、ああああっ」
 思わず叫んだのは、ユイの方であった。
 最後の抵抗なのか、シンジは身体を痙攣させた直後、ユイのアヌスにいきなり指を押し込んだのだ。秘口から流れる愛液で既に緩くなっているそこは、シンジの指をぬぷりと受け入れた。
 中で第一関節が曲がり直腸にのめり込んだ瞬間、ユイが何かを叫ぼうとするのと、勢い良く迸った精液が、その口の中に噴水のように放出されるのとが同時であった。
 圧倒的な勢いのそれは、無防備なユイの気道に遠慮なく流れ込み、ユイは激しくむせ込んだ。
「が…げほっ、ごほごほごほっ」
 口の周りを真っ白に染め、ようやく起き上がったユイの目が光った。
 四肢が不自由なまま、股間をもじもじとすり合わせようとしているアスカと、蒼白な顔をして、手首を僅かにオレンジ色に染めているレイが視界に入ったのである。
(そう、そういう事だったのね)
 口元どころか、顔半分を白く染めたユイの目に危険な光が宿った。
 ユイはレイの考えを読んだのだ−最後の力で、ATフィールドを展開しようとしているレイの考えを。
 確かにATフィールドならば、鎖でも切れるかもしれない。いや、実際には今のレイでは無理なのだが、万が一破られると後が厄介だ。
 息も荒く、胸を上下させているシンジから離れると、ユイは口元を拭おうともせずにアスカに近づいた。
「ねえアスカちゃん?」
 猫撫で声で呼ばれ、アスカはとろんとした目を向けた。
「な、なによぅ…」
 ユイの妖艶なキスで、理性を半ば喪ってもなお羞恥だけは残っているのか、不自由な両足をなんとか擦り合せようとする。そのアスカの顎を持ち上げると、再度ユイは唇を重ねた。
「むくぅっ…ん…んん…」
 口腔に溜まった精液に、自らの唾液を加えて流し込む。既に抗する気力も喪ったか、アスカは自ら舌を絡めて来た。
 ユイの顔が離れ、二人の唇の間を、精液の混ざった唾液の糸が繋ぐ。
「どう、美味しいでしょう?」
 ユイがアスカの耳元に口を近づけ、危険な色の声で囁くとアスカはこくりと頷いた。
「それもそうよね、いつも飲んでいる味なんですもの」
 アスカがゆっくりと嚥下するのを見ながら、
「ねえ、もっとしたくない?」
 甘い声音で囁いた。
 ぶんぶんと、アスカの首が勢い良く縦に振られるのを見て満足そうに、
「そう。でもまだ駄目」
「だ、駄目なのぉ?」
 悲しげに呟いた姿に、もはや普段のアスカは欠片も見られない。或いは、根本的に何かが一本か二本外れたのかもしれない。
「仕方の無い子ね、じゃあさせてあげるわ」
「ほんとに!?」
 アスカの表情に、レイは顔を背けた。かつてのあの時−弐号機にキョウコがいたと知った時の、あの殺人マシーンと化した時の事を思い出したのだ。
 あの時と同じ表情(かお)、そして同じ声。
「その前に、してもらう事があるのよ」
(ま、まさか)
 レイの顔色が変わったのは、ユイのさせたい事が想像付いたからではなかった。アスカの目が、危険な光を帯びだしていたのだ。
 そして。
「なあに?ママ」
(しまった…)
 レイは強く唇を噛んだ。ユイの狙いが自分の蹂躙なら、まず最初にアスカを狙うだろう。そして−その心を壊す筈だと気付くべきだったのだ。コアの管理が甘かった事を、レイは痛切に後悔していた。
 だが、既に起きた事は仕方が無い。あとは如何にして事態を打開するかだ。とりあえず手首に全意識を集中した途端、
「つうっ」
 レイが呻いたのは、肩に何かが直撃したからだ。
(棒?…違うテーブルの脚!?)
 気付いた時には、幽鬼のように立ち上がったアスカが目の前に迫っていた。肩への痛烈な打撃で、手首に集まり掛けていたATフィールドは一瞬で消えた。無論、アスカを解いたユイが投げたのだとは分かりきっている。歯を噛み締めた瞬間甲高い音がして、レイの頬を平手が襲った。
「ア、アスカ!?」
「ファースト」
 久しぶりに聞くその呼び名−そして憎悪をこめて。
「あんたがいると、何時までもシンジはあたしを見てくれない。あんたさえ、あんたさえいなければあたしは…あたしはっ」
「そ、そんな…アスカあなた…くはっ」
 手足を大の字に括り付けられたレイは、無論動く事も出来ない。アスカはその首に顔を近づけると、肩に思い切り歯を立てたのだ。
「ぐ、ぐあうっ」
 奇怪な声を立てて歯を食い込ませると、ぐいと噛み切った。
 だが、アスカ自身意識が半ば飛んでいる事も幸いしてか、皮膚の表層部だけで済んだ。とは言え、くっきり残った歯型の痕からみるみる血が滲んで来る。もはや呻く事も出来ないレイを、哄笑が襲ったのはその直後であった。
「いいざまねえ、綾波レイ」
 ユイの目には残忍な光が宿っている。
「ATフィールドが無ければあんたは何も出来ない。せいぜいアスカに可愛がって貰うといいわ。アスカちゃん」
「はい、ママ」
「たっぷりと可愛がって上げて、いいわね」
「はあい」
「そうそう、犯してあげたらどうかしら?その娘のせいであなたはシンジに見て貰えなかったのよ」
「…そうね、この女のせいで…」
 アスカの瞳に憎悪が刻まれ、
「でもママ、どうやって?」
「ガウンのポケットにある物を持ってきなさい」
 言われた通りにアスカがガウンを漁ると、中から巨大な双頭バイブが出てきた。シンジの男根より更に雄大な物が双方に付けられている。だが妙なことに、それには電源に見える物がない−そう、バイブではなくディルドーだったのだ。
「これ、どうするの?」
 口元を微かに白く彩ったまま、口調だけはあどけない娘のように訊ねたアスカに、ユイは甘く微笑んだ。
「物足りない時にね、下のお口に入れるのよ。勿論上の口でもいいわ」
 ユイはアスカの口に指を突っ込むと、口腔内の唾液を指に付けた。抜き出した指の唾液を人造肉竿の亀頭に、丹念にまぶしていく。
「これ、使った事ある?」
 と言われてもアスカには分からない。いつも実物しか使った事が無いだけに、アスカは首を横に振った。
「これはね、こうするのよ」
 ディルドーを手にすると、ユイはアスカを引き寄せた。そしていきなり唇を重ねたのだ。
「な…あんっ…うむぅ…」
 さしてなぶらずに引き上げたが、アスカの口許を彩るシンジの精液を綺麗に舐め取った。
 −ただそれはきれいにするためではなく、取り返すかのように−
「いい顔よ、アスカちゃん」
 言うなり、半開きのその口に人工の肉竿を突っ込んだ。
「んっ、んんーっ」
「ほら、してごらんなさい」
「ふへ?」
「いつもシンジにしているみたいに、いやらしく舌を使って。そう、いい感じよ」
 既に篭絡されきったか、アスカは言われるままそれに舌を使い始めた。
 無論実物の数倍の大きさはあるのだが、割れ目から舌を入れ、亀頭を丹念に舐めまわしていく。浅黒い色のそれを、アスカの唾液でしとどに濡らさせてから、ユイはアスカの頭を掴んで引き離した。
「もういいわよ、後は下のお口でしなさい。一緒にね」
「一緒に?」
「あなたはこっち、あの子にはそっちを入れてあげるのよ。たっぷり犯してやるといいわ」
 双頭のディルドーを渡されたアスカは、にたりと残酷に笑った。
 そしていいアイデアだと言わんばかりに、嬉々としてそれを受け取り、足取りも軽くレイへと近づいて行った。
 口元には微笑を、だが目許には残忍な光を湛えたまま、ユイはアスカを見つめていたが、
「か、母さん…」
 どこか陶然とした声に、ふと振り返った。
 
 
 
 
 
 射精の余韻が消えてもなお、魂の抜けたような顔のシンジに、ユイはすっと歩み寄った。
「ごめんね、シンジ。忘れていたわけじゃないのよ」
 アスカがママと呼んだせいか、シンジの口調には僅かな嫉妬が含まれているのを、ユイは感じ取っていたのだ。
 既にシンジの肉竿は完全に回復し、隆々と空を睨んでいる。
「もう…いけない子ね」
 言葉とは裏腹に、ユイは嬉しそうに呟くとそれを両手で包んだ。すり合わせるわけでもなく、ただ包み込んでいるだけ。
 だがそれでもユイにとっては十分であっった。
(小娘達に取られていた物を取り返した…)
 破倫と言う概念は不燃ゴミと共に捨て、ユイは息子の性器を手にしたままその顔をじっと見つめた。
「母さん…」
「シンジ…」
 ほんの一瞬、ほんの一瞬だけシンジの目に理性が戻ったように見えたのは…気のせいだったろうか。
 だがそれも刹那の事、すぐに二人は唇をむさぼり合った。楽しませるのではなく、ただ楽しむためだけのキス。ねっとりと重ねあった舌を、あたかも呑みこむかのように互いの舌を吸い合う。二人が息も荒く唇を離したのは、数十秒経ってからであった。
 キスだけじゃ足りない、フェラだけじゃ足りない。本当にシンジを取り返すには、一つにならなければ。
 やや膝立ちのまま、唇を重ねていた二人。まだ足りないかのように、ユイはシンジと唇を合わせると、その手を下半身へと持って行く。片手でシンジの肩を抱きながら、もう片方の手で肉竿を握るとくりりっと擦った。
「んんっ」
 一瞬シンジは呻いたが、すぐに負けじと母の股間に手を伸ばす。手の平を、ぴたりと吸い付けるようにして当てると下へ下降させる。そして秘裂に行き当たると、中指をぐいと曲げて差し込んだ。
「はっ、ふあうっ」
 今度はユイが高く喘ぐ番になった。シンジは中指を挿入したまま、手の平で円を描くようにぐりぐりと動かし出したのだ。手の場合、舌に比べればどうしても責め具合は落ちる。しかも完全では無い姿勢で片手しか使えない同士。だが挿入が可能なシンジに対し、ユイはあくまで指の刺激しか出来ない。親子の責め合いは、互いの口から荒い息を洩らさせていたが、みるみるユイの口から洩れる声が高まる結果となった。
 出し入れではなく中を抉るような動きに、ユイが崩れそうになる腰を抑えるかのように、シンジに身体ごとぶつけて行く。
「はあっん、シンジ、もっと、もっとかきまわしてえーっ」
 白魚のような指でシンジの肉竿を弄るのも忘れ、ユイは完全に息子に翻弄されていた。そして、更に快感を高めるかのように、最大まで尖っている乳首を、こねまわすようにシンジに押し付ける。
 そして、シンジの指がずぶりと埋め込まれた刹那、
「だ、だめえっ」
 叫ぶと同時にユイがびくっと身体を強張らせ、ぐったりとシンジにもたれかかった。
「もう…上手になっちゃって…」
 肩を上下させながら嬉しそうに言ったユイ、だが急に目に危険な光を宿すと、レイの乳房を執拗になぶっているアスカに目を向けた。
 
 
 
 
「どう?感じるかしら」
 ATフィールドが何をしでかす物なのか、肉竿を模した物になったそれは、先に割れ目さえ出来ている。
 アスカはその割れ目にレイの乳首を挟み、緩急付けて撫で回していたのだ。しかしいかに精巧な代物とは言え、力任せに押し付けられれば痛みでしかない。
 事実、レイの乳首は赤く腫れて鬱血している。元より性感帯が集まると言われる乳房であり、そこを痛めつけられているレイの顔は、苦痛に歪んでいた。赤くなりやすい肌だけに、シンジもアスカにするような愛撫はレイにはしない。だが今のアスカはそんな事など念頭に無く、レイの苦悶する顔を楽しむように責め続けている。
 と、ふとアスカが気付いたようにレイの乳首に触れた。
 既に痛みしか感じないのか、レイは低く呻いたが、
「へえ、何よこれえ?」
 アスカがさも驚いたように、レイの乳首を摘んだ。
 内心は無論感じたくなどあるまい。
 だが躰はそれを拒むのか、既にレイの乳首は硬く尖っていたのだ。
 本人の意思とは無関係に、反応しているそこを見ながらアスカは、レイの顔を持ち上げた。片手でその顔をくいと持ちあげると、
「さっすが優等生。躰は随分と聞き分けのおよろしい事ねえ」
 触れんばかりに顔を近づけると、十二分に嘲笑を込めて囁いた。依然として大股開きで固定されているレイは、顔を逸らす事も出来ずぎゅっと唇を噛むしかできない。
 だがそれも気に触ったのか、はんっと吐き捨てたアスカは、
「さて、次は何をしようかしらねえ」
 楽しそうに首を捻った時、
「訊いてご覧なさい−私と一つになりたい?って−」
 後ろからユイの邪悪な声が響いた。
 
 
 
 
 もはやレイに抗する力は無い、そう読んだユイは仕上げに入ろうとしていた。
「シンジ、私と一つになりましょう。ね?」
 シンジが拒まぬと知りつつ、わざとレイに聞こえるようにシンジに訊ねる。シンジが頷くのを見て、その邪悪な笑みはさらに深まったが、ふとアスカがこっちを見たのに気付いた。
 その顔に、僅かな羨望が浮かんだのを見て取ったユイは、にっと口許を歪めた。
「アスカちゃんもシンジとしたい?」
 こくんと頷いたアスカに、
「いいわよ、しても」
 あっさりと告げた。
「え?」
 喜色が浮かんだアスカに、
「でもその前に」
 と人差し指を立てて見せた。
「なあに?」
「その子をたっぷりと可愛がってあげて。その子がイッたらシンジとさせてあげるから」
「うんっ」
 躊躇う事無く、アスカは勢い良く頷いた。
 
 
 
 
「ファースト」
 冷たさと憎悪だけの声でアスカが呼んだ。
 顔を背けるレイに、
「あんた前シンジに、私と一つになりましょうって言ったんだってねえ。シンジから訊いたわよ。ほんっと呆れた淫乱よね、自分から誘うなんてさ。頭の中あれしかないんじゃないの」
 嘲笑った途端、その右手が閃いて甲高い音を立てた。
 勢いで顔を背けたレイに、
「あんたって人形みたいで、ほんっと昔から大嫌いだったのよ」
「……たしだって…しだって…」
「何ですって」
「私だってあなたなんか大嫌いだったわ」
 感情の糸が切れたか、顔を戻したレイはアスカを正面から見据えた。
「あなたなんかドイツから来なければ良かったのよっ」
 抑えていた激情に流されるまま、レイも吐き捨てるように叫ぶ。
「あんたっ」
 再びアスカが手を上げた時、ユイがそれを止めた。
「アスカちゃん、もっといい方法があるでしょう」
 悪魔の提案に、アスカの視線が持っているテーブルの脚に向く。
「そうね…ファースト、この私があんたと一つになってあげるわ。シンジなんかあんたには勿体なさすぎるのよ」
 憎悪の視線でにらみ合うアスカとレイ。だが事ここに至ってもまだ、シンジは幻影の世界から戻る気配を見せない。
 それどころか、恋人達が憎悪むきだしで睨みあうのを、風景でも見ているように眺めている。
「この手錠、外れない?」
 振り返って訊ねたアスカに、ユイは頷いた。
 頷き返したアスカがレイの秘所に手を伸ばし−鷲掴みにした。
「ふっ、ふぐううっ」
 乳首とは違い、そこは単にアスカやシンジの愛撫で腫れ上がてはいたが、乳房のように反応してはいなかった。アスカが触れても、乾いた感触を伝えるだけである。
「ふうん、濡れてないんだ」
 ははん、と嗤うとレイの前にぺたんと寝転がった。うつ伏せの姿勢になると、肘を付いて顎を支え、剥き出しになった性器をまじまじと眺めた。たっぷりと毒素の含んだ視線に、レイは顔を横に向けた。
 だがアスカはレイの表情には構わず、くっきりと開かれた小陰唇に口付けした。
 ちゅっ。ちゅちゅぴちゃっ。
「いい格好よねえ」
 舌使いだけは優しく、だが冷淡そのものの口調でアスカが囁く。既に敵同士となった二人−レイのこの姿勢への愛撫は屈辱でしかない。
 顔を上げたアスカは、冷たく言い放った。
「双頭のディルドーだから、乾いた穴じゃ突っ込むのが面倒なのよ」
 最初は冷たく乾いていたが、生理現象だけは避けるべくも無い。間もなくレイのそこは、ゆっくりと湿った反応を示し始めた。
 アスカの舌使いに水音が混じり出した時、殊更強調するようにアスカは吸い上げた。「んっ…くうっ…や、やめ…」
 最後はか細くなってきたそれを聞いて、アスカが妖しく笑って顔を離した。
「さすが優等生。あそこはも従順な優等生ってわけね」
 一語一語を切るような言葉に、レイの顔が羞恥と屈辱で赤くなった。
 肩を震わせているレイを見て、アスカの心に危険な火が点る。太股の付け根をきゅっと押すと、ぱくりと開いている襞がかすかに収縮した。
「も、十分濡れたわね」
 楽しそうに言うと、シンジのそれより更に太いディルドーの端を、自らのおんなに押し込んだ。シンジとユイに刺激されたか、既にずぶぬれに近いそこはすんなりと受け入れる。
 が、
「ちょ、ちょっときつっ…んっ」
 僅かに顔をしかめた所を見ると、中はややきつかったらしい。それでもずぶっと根元まで押し込むと、股間から奇怪な肉竿を生やして立ち上がった。
「行くわよ、ファースト」
 レイの縛られているテーブルは、そんなに重い物ではない。レイを固定したままくるりとひっくり返すと、アヌスまでもがくっきりと晒された。
 その前にすっと腰を落とし、膝立ちになったアスカはレイの太股を抱えると、いきなりぐにゅりと押し込んだ。
「ああぐうううっ…やっ、やめてえええええっ」
 脚をびくびくと痙攣させもがこうとするそこへ、更に深く貫いていく。屈辱の姿勢で深々と貫かれたレイ。感覚をこらえるためか、思い切り噛んだらしい唇の端から鮮血が流れ落ちる。
 繋がった股間を見て、アスカがふふっと笑った−嬉しそうに、楽しそうに。
「前から一度、犯してみたかったのよねえ…あんたのこと」
 口許を歪めて嗤うと、ぐっとレイの腰を引いた。
「ひいっ、ひいいーっ」
 引き寄せられたのは腰…しかしその四肢は固定されたままになっている。結果として、レイの手首と足首それぞれに手錠が食い込み、引きずられるようにアスカの腰が入った。
「うぐっ、ぐっ、うううーっ」
 涙を流して首を振りたて、何とか逃れようとするレイの腰に、アスカは更に強く腕を巻き付けた。
「好きよ…ファースト」
 低い声で冷たく囁いたアスカ。その視界には−膣内を擦りむいたのか、どろりと流れ出した鮮血が映っていた…まるで破瓜の時のようなそれが。
 そしてレイの血を見て舌なめずりした者がここに…
「負けていられないわね」
 欲情の声音で呟くと、息子の股間に粘っこい視線を向けた−対空砲のように空を仰いでいるそれへと。
 
 
 ユイは既に数度達しており、シンジも実母の口内へ既に射精している。だがユイの方は、アスカとレイの姿を見てむらむらと燃えてきているし、シンジの方も実母の裸に再度欲情の準備は整っている。
 胎内回帰の準備は出来たと、振り向こうとした刹那、
「え?シ、シンジ?」
 いきなり後ろから、乳房を鷲掴みにされたのだ。
「僕をこんなにしておいて、母さんだけずるいよ」
 熱い吐息と共に囁くと、手の平一杯に持った乳房を荒々しく揉み立てた。尻の上辺りに固くなった肉竿を押し付けられ、前に回った手はパンでもこねるように揉み回してくる。背中をびくっと伸ばした母を責めながら、シンジの目はレイを犯しているアスカに向けられている。 
 女が女を犯す−その異様な姿態に何を感じたのか、シンジはやおら手を離すと、
「母さん、四つんばいになって」
 と命じた。
「よ、四つん這いに?」
「そう、犬みたいな格好になって、びしょびしょのあそこを僕に見せるんだ。後ろから挿れてかき回してあげるよ−母さんの中を」
 シンジの自我が無いから正常位でもいいわ、と考えていたのだがシンジの言葉にその顔が赤くなる。
 私、息子に後ろから犯されるんだわ。ぐしょぐしょの膣をいっぱいいっぱい描き回されて…。
 淫靡な期待に胸を疼かせ、ユイはシンジの指示に従った。四つん這いになって布団に肩を付け、尻をぐいと持ち上げる。
「母さんのここ、お尻まで濡れてるよ。本当に淫乱だね、母さんは」
 かーっと赤くなったユイだが、シンジの言う通り透明な液は白い臀部にまで伝わっており、今またシンジの言葉に反応するかのように、新たな蜜がつうと太股をしたたり落ちた。
 ちゅっ、とシンジが太股の内側に唇を付けた瞬間、ユイの身体はびくっと動いた。シンジがわざわざ蜜の滴っているそこを選んだからだ。
「シ、シンジそんなとこやだぁ…」
 二十歳そこらでプラグ入りしたせいか、小娘のような口調もあまり違和感が無い。何度か唇を付けた後、シンジは母の尻を抱え込んだ。
「行くよ、母さん」
 秘口をぴくぴくと震わせながら、ユイはこくんと頷いた。だがシンジはすぐには挿れようとせず、小刻みに収縮しているそこをつんっと突いた。
「はあっ、あああんっ」
 太いのが来ると待っていたのに、先だけがぴくりと当てられたユイは、切なげな声を上げた。
「シ、シンジちゃんと来てえっ」
「ここはもう少し焦らしてって言ってるよ、ほら」
 今度は亀頭を当てて軽く撫でる。さっきよりは強い感触、だが物足りなさもより強く感じられ、ユイはたまらず腰を振った。
「お、お願いだから早くぅ…はあああんっ」
 泣きそうな声で哀願した刹那、シンジが思い切り突き立てたのだ。来るとは思っていないから、そこは完全に力が抜けている。根元まで深々と貫かれて、ユイの身体は前にがくりと揺れた。
 鞭打ちを待って、尻を突き出している奴隷のような姿勢の母に、シンジは勢い良く抽出を開始した。
「あああっ、すご、すごいいいっ」
 息子と繋がった感傷を感じる暇もなく、ユイはみるみる高みに押し上げられていた。放出後とは思えぬほど硬いそれが、かつて自分がいた中を激しくかき回し、根元まで貫いてはまた引き抜かれ、すぐに奥までまた貫いてくるのだ。ユイの膣内はアスカやレイとは違い、入り口からいきなりきつい。挿れてしまえば幾分楽になるのだが、根元辺りまで貫くと急速に締め付けてくる。
 二度楽しめる、などと言っている余裕も無く、シンジもライン的にはぎりぎりの所にいた。やはり血がもたらすものか、アスカにもレイにも、ここまで余裕が無いことはシンジには無かった。
 ほんの少しだけ速度を緩め、身体をユイに押し付けると手を伸ばして乳房を揉む。
「母さんのおっぱい、すごくいいよ」
「な、何を言うのよ」
 とは言いながらも肩を上げ、シンジが触れやすいように位置を変える。
「もっと、もっとおっぱいいじってっ、あそこも、あそこもぐちゃぐちゃにしてっ」
 すすり泣くような声を上げながら、自分から腰を振り出したユイ。その姿を見たアスカは何かをぶつけるように、レイを犯す速度を上げた。
 だがアスカが肉竿バンドを付けている訳ではない。二人ともディルドーを呑み込んでいるから、腰の動きはそのまま自分に帰ってくる。
 ママに言われた通りレイをいかせようとするアスカと、アスカなんかにいかされたくないと抵抗するレイ。繋がった二人のそれは、いつ果てるともない泥沼にも近い展開になっていた。
 体勢だけ見れば完全にアスカが有利である。両手脚は自由な上、どこも拘束されてはいないのだから。一方レイの方は手足共に手錠で拘束され大開脚状態。いいように弄ばれている筈なのだが、実際には二人ともかなり息が上がっている。
 無論二人の心理状態の差から来る物だが、今はそれどころではなく、互いに相手を責めるのに懸命になっている。
 レイがテーブルに括られているため、どうしても姿勢は正常位に近くなる。アスカが腰を揺らしながら貫けば、すぐにレイも腰を逆に突き出して応戦する。
「は、早くっ…い、イキなさいよっ…あふふうっっ」
「あ、あなたには…ぜ、ぜったい負けな…くうううっ」
 啼き交わすかのように甲高い声を上げ、淫らな競演を続ける二人の姿態は、もはやシンジに取って興奮剤以外の何物でもなくなっていた。若干の劣勢を悟ったアスカが手を伸ばしたのは、クリトリスではなくレイの胸。アスカがそこを、むにゅと揉んだ直後、放出の限界を知ったシンジは抽出の速度を一際高め、ユイは少女たちと競うように甲高く喘ぐ。
 息子の限界を身体で感じたユイは、ぐいと腰を上げてシンジを咥え込み、自らも腰を激しく振りたてた。
「か、母さん、も…もういくよっ」
「いいわっ、来て…奥まで、奥まで熱いのちょうだいっっ」
 ユイの手が、まるでそこに肉竿があるように虚空を掴んだ直後、シンジの背がぴっと伸びた。それと同時に、子宮口に二度三度と熱い液が叩き付けられ、ユイもまたがくがくと背中を突っ張らせる。
「はあっ、シンジの、シンジのっ、イクううううっ」
 実の息子の熱い精をたっぷりと中に受けたユイのそこは、最後の一滴まで搾り取るかのように締め付けてくる。シンジが小刻みに身体を震わせ、母の中から肉竿を引き抜いたのは数十秒が経ってからであった。
 碇親子が果てた時、アスカとレイもまた相打ちのような形で昇りつめていた。アスカの右手がレイの乳首を摘みあげ、それと同時に左手がクリトリスに伸びる。三箇所からの同時の責めに、堪らずレイが背中を突っ張らせて達したが、それと同時にぬぶりと逆にアスカの膣内に押し返したのだ。これは意識してではなく、達した時の収縮から来る物であったが、勝ったと笑った瞬間力が抜けたいたアスカには強烈過ぎた。
「はひっ、いい、いいーっ」
 がっくりと首を仰向けに折ったレイの身体の上に、アスカもまたぐったりと倒れこんだ。上と下で重なった二人の乳房がお互いを潰しあい、硬く尖った乳首が相手の乳房にぐりりと食い込む。
 アスカもすぐには動けなかったが、三十秒もしないうちに気だるげに起き上がった。
「まだ…まだよ、ファースト…ママに、ママに言われてるんだからっ」
 ユイを母と思い込んだアスカには、ユイに言われた事しか脳裏にないらしい。レイを睨み付け、再度手を伸ばそうとしたところへ、
「もういいわ−アスカ」
 その肩がびくりと震え、ねじ式ロボットのようにゆっくりと振り向く。その首に手刀が打ち込まれたのは、次の瞬間であった。
「手足を縛ったのはハンデ、互角じゃ無理だと思っていたのよ」
 アスカが声もなく崩れ落ちると、アスカとレイの股間を繋いでいたディルドーがずるりと抜け落ちる。愛液を溢れさせ、腰を振りたてて互いを責めあった二人の中にあったそれは、真中の辺りまでびしょびしょに濡れていた。
 混ざり合った愛液を指ですくったユイは、
「どの道最初から、片付けるつもりだったのよ−ショーはあくまで余興よ」
 感情のない声で言うと、奇妙な物体でも見るかのようにレイを眺めた。
「刺激的にはこれが限界。あれ以上ではこの子の自我が戻ってしまったから、あなたの下手な責めで丁度良かったのよ。それにしても」
 殺気の視線を向けてくる、レイの股間をしげしげと眺めた。
「随分とずぶ濡れねえ。お尻の穴まで濡らしているじゃないの」
 その言葉を聞いた瞬間レイの表情が変わる。ユイの言葉の裏に、危険な響きを感じ取ったのだ。そしてそれは的中した−さっきユイが投げたのはテーブルの脚、容易くねじ切られたそれをユイは手に取ったのだ。
 ぶつかった視線でユイはそれを告げ…レイはその意味を察した。
「シンジのは小さいのよ」
 ユイの口許に冷たい笑みが浮かぶ。
「だから母としては他の女の子に、あんな物は勧められないの」
 テーブルは応接用ではなかった−とは言えバイブやディルドーの比ではない。シンジの腕の倍近くもありそうなそれを、性器に押し込まれたらどうなるか。瞬時に血の気が引いたレイを見て、
「察しが良くて助かるわね」
「ひっ、や、やめてっ」
 さすがに恐怖の色を見せたレイに、
「あら、ここはこんなに感じているのに?」
 言うなり、真珠が顔を出したようになっているクリトリスを、ぎゅっと力任せにつまみあげた。
「うぐっ、うううっ」
 濡れてもいない時に包皮を剥かれて触られると、それだけで痛みを感じる事がある。既に包皮から顔を出しているとは言え、力任せなど痛みに直結する物でしかなく、歯を噛んで必死に堪えたレイの両目から涙が零れ落ちる。
 楽しそうにそれを見ながら、
「私の下手な指戯では感じられなかったのね、ご免なさい」
 内容とは正反対の口調で言うと、アヌス辺りまで晒している、レイの下肢に目を向けた。もとより淫毛は薄いレイだが、シンジの趣味もあって完全に剃っている。しかも生来の体質のおかげか、生え始めの時のあの醜い様は全く無い。性徴を知らぬ少女のようなそれを見て、ユイの心に猛然と妬心が湧きあがった。
 本来そこは、茂みになっているのが普通であり、レイのそれは少し特異である。だが今のユイに取っては、シンジがそれを好んだと言うだけで憎しみの対象となっている。それに加えて色素の沈着すらも殆ど見られない、つまり天然の色のままなのだ。
「ここはピンクのまま、さぞ薬品を散々塗りこんだのよねえ」
 憎々しげに言うといきなり入り口に足を当て、親指をぐっと押し込んだ。
 親指自体は女性の物だし、さして大きくもない。しかしながら当然の事として、親指は足に繋がっている。そこを無理に押し込めば、襞が外側に引っ張られてかなりの激痛が走る事になる。
 だがレイは今度は声を立てなかった。悲鳴を上げるよりはと、自分の唇を噛んで堪えたのだ。さっきよりも更に太い鮮血の糸が、レイの唇を伝う。
 唇から鮮血の糸を垂らしながらも、決して声は出そうとしないレイを見て、ユイが酷薄に笑う。
「いい根性よ、じゃそろそろいいわね」
 言うや否や、親指を引き抜いたそこへテーブルの脚をねじ込んだ。
「ひぎいっ…いぎうーっ」
 受け入れられるサイズを、到底超えた物をいきなり押し込まれ、レイの口から絶叫が迸った。
 レイの暴れる勢いで、テーブルが数度がくがくと揺れる。しかしそれは、更に奥まで侵入させる結果にしかならなかった。結合部分を露わにしながら、とうとうテーブルの脚は一番根元まで挿入された。レイは殆ど声も出せず、弱々しげに身体を振って抵抗しようとする。
 暴れれば却って逆効果、それはわかっているのだが身体が言う事を聞かないのだ。痛みで痛みを抑えるかのように、レイはびくびくと四肢を震わせる。
「ふふ、いい様よねえ綾波レイ」
 嗤ったユイの口許には笑みが浮かんでいた−それはもう楽しそうな、そして幸せそうな微笑が。
 だがユイの目的は、まだ完遂された訳ではなかったのだ…そう、ディルドーがまだ残っている。
 ゆっくりとユイがディルドーを手に取った。
 アスカとレイが互いを責め合ったそれは、二人の入り交ざった愛液でまだぬるぬるしている。妖しく濡れ光るそれを、何を思ったのかユイは自らのおんなに入れた。
 先ほどのアスカと同じく、股間から異物を生やしたユイは。それをレイに見せ付けるかのようにその前に立った。苦悶に歪んでいるレイの顔が、ユイをみて一際恐怖の相を見せた。
「あーら、もう答えがわかったの?さすが、あの人に可愛がられた優等生だけはあるわよね」
 まるでアスカのような口調で言うと、レイの身体の前に腰を落とした。
「前はいい飲みっぷりだけど、後ろはどうかしらね」
 どうやら、レイの前後から突き立てる事を思いついたらしいユイに、レイの顔が一瞬強張り、
「いやああああーっ」
 だがその絶叫もユイには天井の美曲となるのみ−ユイが今まさにレイのアヌスを犯そうとしたその時。
「母さん…も、もう止めてよ…」
 シンジの声にユイは愕然と振り向き、レイの瞳からはぽろぽろと涙が流れる。
「い、いかりくん…」
 ちっ、と舌打ちを隠そうともせずユイは立ち上がった。
 
 
 
 母の膣内(なか)に出した時には、シンジの理性は戻っていなかった。それが戻ったのは、ユイが親指をレイに押し込んだ時である。
 数秒で正気に返ったシンジの脳裏には、見た光景だけは残っている。
 母親の咥内と体内に射精した自分…ユイを母と思い込み、言われるままにレイを蹂躙しかけたアスカ…そして互いに憎悪をぶつけ合ったアスカとレイ…。
 自分にその原因(もと)があるのは分かっている。以前のシンジなら震えているだけだったろう。消し飛びそうな自分の自我をベークライトで固め、漸く言葉を絞り出したのだ。
 しかし−
 
 
「シンジ、あなたもやる?」
 ユイは穏やかな表情で訊ねた−内に毒素を秘めたまま。
 そこに何が含まれているのかも気付かずに、シンジは弱弱しく首を振った。
「お、お願いだから…止めてよかあさ…ぐぶうっ」
 土壇場になって我を取り戻したシンジだが、その言葉は最後まで続ける事は出来なかった。殆ど仰向けのような姿勢にさせられているレイは、ユイの手にあった物を見ることは出来なかった−いや、見ない方が幸せだったかもしれない。
 ユイの手から飛んだそいつは、オレンジ色の八角形を保ったまま、息子の腹部を貫いたのだ。シンジは即死−最期の悲鳴は、接触を予感した本能の発する物だったろう。
 全身の力を総動員して、辛うじて首を持ち上げたレイが見たものは、腹部を大きく抉られて絶命しているシンジの姿であった。我に返った息子を、ユイはもはや用無しと判断したのだ。
 泣く・叫ぶ・暴れる。
 どれもレイは取らなかった−いや、出来なかったのだ。
 ひっ、と一声上げた瞬間、レイはがくりと首を折っていた。精神が現実に耐えられなかったのだ。
「あっさり寝たわね」
 とレイを振り返ったユイは、自分の中からずるりとディルドーを抜いた。犯す姿勢で貫くのも面倒になったらしい。
 レイの脚の間にかがみ込むと、意志とは別にひくひくと収縮しているそこに視線を向けた。
「入りすぎよ。これじゃ力が入らないわ」
 奇妙な事を呟くと、じゅぶりとこれも数センチ引き出した。一体何をしようと言うのか。
 少し顔を出したのを確認すると、空いている左手をアヌスに伸ばした。入り口の襞を指で広げて、そこにディルドーの先を少し押し込んだ。そして、次の瞬間根元まで一気に突き入れたのだ。レイの身体がびくりと跳ねかけて、手錠に引き戻される。
 これでレイは、前と後ろ両方を塞がれた訳だが、さっき引き出した意味がまだ不明である。
 しかしその意味はすぐに知れた−ユイはレイの脚の間に立つと、片足をすっとあげたのだ。人なら誰しも成し得ぬ行為だが、ユイには何の躊躇いも見られなかった。
「さようなら、綾波レイ」
 何の感慨もなげに言うと、勢い良く脚を蹴り下ろした。
「ふぎいっ」
 レイの口から短い絶叫が洩れ…命がもう一つシンジの後を追った。
 どくどくと溢れ出してきた鮮血を見ながら、
「二日目でお腹がいたいのよう、そう言ってシンジに甘えるといいわ−冥府でね」
 夜叉もかくやと思わせる表情で言い捨てると、唯一の生き残り…アスカに視線を向けた。
「全部消してもいいんだけれど」
 意志の無い口調で言ったが軽く首を振り、
「でも折角だから可愛がってあげるわ−キョウコの代わりにね」
 ぐったりと弛緩した女体を、軽々と肩に担ぐと出口に向かう。
「さよなら、不肖の子供達」
 嬉しそうに言うと、足音も立てずに姿を消した。
 そして十余年が経過した−
 
 
 
 
 
「ねえアスカ、本当にこれで良かったの?」
 『YUI IKARI』
 と刻まれた墓標の前で、少年が後ろの美女を振り返った。
「いいのよ、シンジ。これからが始まりなんだから…全てのね」
 アスカと呼ばれた女性は、紛れもなくあの惣流・アスカ・ラングレー、その人であった。
 だが以前の外見はそこには無い。
 頭髪は黒く、そして瞳までも黒くなっているのだ。無論かつらとコンタクトだが、殺人容疑で追われた彼女は、自らの姿を捨てることを選んだのだ−名前とともに。
 ずっと偽名で通して来たアスカは、復讐を遂げた後に碇シンジに本当の名前を告げた−碇ユイが生んだ二人目の碇シンジに。
 アスカがユイの所にとどまったのは、無論復讐のためであった。ただひたすら屈辱と忍従の日々を耐え忍んだアスカは、酩酊したユイを車に轢かせる事で、その復讐を成し遂げた。
 ミンチと化したと聞いた時、あの日以来初めてアスカは泣いた−ある二人の名前を呼びながら。
 
 
 
 しかしながら。
 今シンジを見る目には、哀しみのような物は微塵も無く…ただ欲情だけが漲っていた。
「今日からは私が可愛がってあげるわね…ママと同じように」
 聞こえぬ声で呟いた後、にゅるっと出てきた舌が唇の周りを舐めた−こみ上げる何かを抑えきれないように。
 
 
 
 
 
(完)
結論:歴史は繰り返す……おや?