稚炎之弐「乙女対決(前編)」
             
 
 
 
 
「これは…本当なの?」
 年端も行かぬ小娘の声ながら、書類を手渡した黒服は、背中に冷たい物が流れるのを感じた。
「は、は、はいっ」
 頼んだのはあんただろーが、そう言ってやりたい所だが、この小さな女主人の言うことは絶対である。
 三週間前、いきなりこの部屋に呼びつけられて書類を渡された。
 これを興信所に持って行けと言う。
 絶対内緒よ、そう言って渡されて分厚い札束は、男に完全な箝口令を敷くのには十分であった。
 で、昨日その結果が出来上がり、ちっちゃなお姫様の所に持ってきたのだったが。
「そう、そう言うことなのね…」
 普段からあまり感情を出さないこの娘は、今も口調にさほどの変化はない。
 だが、いつも仕えてきた男には分かっていた。
 そう、彼女が溢れ出す何かをぐっと押さえ込んでいることを。
 そしてそれがこの書類−おそらくはあの少年に関係しているのだろうということも。
「麗様、いかがなさいますか」
 あくまで使用人としての顔を崩さず、男は訊いた。
「…あなた」
「はい」
「この中身を読んだの?」
 いいえ、と男は首を振った。
「ただ」
「ただ?」
「麗お嬢様が唯一感情を動かされるのは、ただ一人と存じております」
「寝取られたのよ」
 ぶっ、と一瞬吹き出しそうになるのを、瞬時に男は抑えた。
 
 
 今何と言った?
 寝取られた?
 近頃のガキは一体どうなってるんだ!?
 
   
 無論それも色には出さず、
「どこの女です?」
「惣流飛鳥よ」
 ぴん、とすぐに来た。
 飛鳥と言えば、確か麗とあの少年を取り合っている仲の筈だ。
 が、性格が邪魔して進展していなかった筈だが…さては、媚薬でも使ったか?
 内心で首を傾げたが、
「捕らえますか?」
「…何を言っているの?」
「はっ?」
「飛鳥が消えたからと言って、神事君は私の物にならないわ。こうなればやることは一つね」
 寝取り返す、とでも言うかと思ったが、姫君の台詞は意外な物であった。
「お母様に頼んで、飛鳥の家に泊まれるようにしなさい。行くのは三日後よ。それから…」
 ほんの少し躊躇う気配を見せたが、すぐに思い切ったように顔を上げた。
「律子先生に来てもらって−大至急よ」
「はっ」
 頭を下げたが、今度は間違いなく首を捻っていた。
 赤木律子は名医だが、百合っ気たっぷりで看護婦達には片っ端から手を出しているという噂があり、その部屋に呼ばれる時は、まして飲み物など出たら要注意度120%とまで言われている。
 しかし腕は確かであり、麗の担当医でもあるのだ。
 おそらく、身体の具合でも違和感があるのだろうと、男は単純に考えた。
 さすがの彼も、この娘の脳裏に浮かんだ計画にまでは、気づく事は出来なかったのである。
 ではただちに、と出ていく後ろ姿を見ながら麗は呟いた。
「飛鳥…ぜーったいに許さないわよ」
 
 
「で、何?」
 さすが名医と言われるだけあって、律子は一目で麗の体調を見抜いていた。
 すなわち、身体的にはどこもおかしくないという事を。
 イタリア製のソファに深々と腰を下ろすと、紫煙を宙にふーっと吐き出した。
 すぐに天井の装置が煙を感知して、自動的に換気を開始する。
 この部屋だけで、普通のサラリーマンの十年分くらいの給料に当たり、しかも寝室と音楽室は別にある。
 富は不公平、と言うことを身をもって教えてくれる部屋である。
 まったく子供の分際で、とつくづく思うのだが、綾波重工が一大財閥であり、この麗はそこの総帥の一人娘である以上、普通の生活をしろという方が無理かも知れない。
 律子の嗅覚は、普段はフル稼働しているマイクとカメラが、今日に限って停止しているにのも気が付いていた。
 口には出せないことだろうと、察しは付いたが急かしても出てくる訳ではない。
 それに、今日の午後はむさ苦しい男の予約ばかり入っていたから、ちょうど良かったのだ。 
 若い娘の乳首なら、どんな手を使っても触診したいけど、胸毛が爆発の男なんか誰が見たいって言うのよ。
 早い所、女だけで子供が作れる装置を作るべきね。 
 律子が内心で呟いた時、俯いていた麗が顔を上げた。
「律子先生ははあの…レズなんですか?」
 包んで訊く事を知らない小娘ね、そう思ったが、彼女自身別にレズの性癖を隠すつもりはない。
 ただ、看護婦の八割を初出勤後一週間以内に食ってる事が、公になるとまずいから秘しているだけである。
 本心を言えば、男と女のセックスなど気色悪い以外の何物でもないのだ。
「レズ?いい響きねえ。ま、嘘じゃないわね。で、それがどうしたの?」
 さては自分の解任かと、律子のアンテナがぴぴっと動く。
 この娘、元から自分とは余り合わなかったし、十分あり得る話だ。
 とは言え、この娘の担当医料は半端ではないし、看護婦達をいかにしてその気にさせるか、と言う薬の開発にその大部分は回っている。
 こうなったら強引に私のネコにして、と不埒な事を考えた時、
「お、女の子のいかせ方、教えて欲しいんです」
 にゃっ?
 律子の耳がぴんと尖った。
 単語に身体が反応し、目に危険な光が宿る。
 辛うじて平静を装い、 
「何に使うの」
「ぜ、絶対に負けられないから…」
「惣流飛鳥ね、男絡みかしら?」
(なんだ、つまらないわね)
 さすがに担当医だけあって、患者(クランケ)の事はよく知っているらしい。
 麗がこくっと頷くと、
「男の取り合いなんか、私には興味ないわ」
 冷たく言い放った。
 が、
「せ、先生…」 
 俯いた麗に、
「でも、この赤木律子のクランケが女の扱い方一つ知らない、なんて言うのは許せないわね。で、何時行くのかしら?」
「み、三日後です」
「三日ね、まあ何とかなるでしょう。麗、躯で覚えてもらうからね」
 はい、と麗が頷いた時、広い室内に淫靡な空気が流れた。
 
 
 
 
 
「飛鳥、今日麗ちゃん来るからね」
「え?」
 パンにマーガリンを塗っていた飛鳥が、その手を止めて母親を見た。
「今日一日、預かってって電話があったのよ」
「泊まるの?で、お母さんいないの?」
「悪いけど…ね?」
「ね?じゃないっつーの」
 とは、無論飛鳥は口にしない。
 飛鳥の顔は、あくまでお利口さんなのだから。
 第一、ここで堂々と反抗して見せたら、母親の恭子など卒倒しかねない。
(まったく、ぐれたらどうするのよ)
 だが、既に娘が後ろの処女を喪っている事を、飛鳥の両親は無論知らない。
 そして…神事の両親は知っている。
 無論彼らも放置主義ではないが、どう見ても飛鳥が迫った図式であり、何よりも息子の部屋にカメラを仕掛けた結果だなどとは、知られたくない。
 大体、覗きは立派な犯罪なのだ。
 いや、そこまで行かないにせよ、カメラまで仕掛けて様子を知りたがるのは、子離れ出来ない唯の癖(へき)である。
 さて恭子が、今日泊まりに来ると告げた綾波麗は、飛鳥のいとこであり、小娘達の三角関係を為している最中である。
 無論、間に挟まれているのは神事だが、今現在事態に気が付いていない。
 あくまで、飛鳥と麗が火花を散らし合っているのみ。
 泊まりに来る、と言うのは建前で、本音は神事との関係の探りに違いない、そう飛鳥は確信していた。
 でなければ、わざわざこの家になど来るはずがないのだ。
 綾波家は、近隣でも並ぶ者のない大富豪であり、その気になれば泊まる所も預ける先も、いくらでもあるのだから。
「分かった、仲良くしておくね」
 飛鳥の返答に、
「ありがとう、飛鳥。お願いするわ」
 恭子が妙に気を遣っているのには訳がある。
 どえらい令嬢、と言う事もあるのだがそれ以上に、麗は飛鳥に取って父方のいとこなのだ。
 つまり、恭子には綾波家は完全に他人なのである。
 同じ親戚筋でも、血が繋がっているのといないのとでは大違いである。
 
 
「じゃあ飛鳥、行って来るわね」
 母親にひらひらと手を振った飛鳥、はたと考え込んだ。
「飛鳥−神事とは経験済み。現在はし…し、しちゃってる間柄。綾波麗−単なるお邪魔虫。そろそろ、格の違いをはっきりさせて置いた方がいいわねえ」
 パンを手にしたまま宙を眺めていた飛鳥の顔が、僅かに赤みを帯びた。
 どうやら、何か妖しい事を思い出したらしい。
「そだ、神事を呼んで麗に…くふふっ」
 何を思いついたのか、その瞳に危険な色が宿る。
「後は…神事の召還よね」
 
 
 で、その数時間後。
 
 
「え?今日麗ちゃん来るの?」
「そうよ」
 飛鳥が頷いた時、神事は嫌な予感がした。
 いっつも自分を取り合って、中に挟まれるのは自分なのだから。
 しかも、大抵は物的被害が出るのである。
「ぼ、僕は行かなくていいんだよね?ね?」
 不安げに訊いた神事の顔を、飛鳥はぴんっと弾いた。
「なーに怯えてんのよ神事。いいわよ−最初は」
「さ、最初は?」
「いい物見せてあげるから…」
 神事の耳に唇を寄せると、何やらごにょごにょと囁いた。
「ほ、本当に…?」
「任せなさいって、ね?」
 妖しく笑うと、神事の耳朶をぱくりとくわえた。
 最近神事が飛鳥を起こす時、よく使う手なのだが、今日は反対に使ってみる。
 たちまち神事は赤くなり、一も二もなく頷いた。
「じゃ、またね」
 ひらひらと手を振って走り出した飛鳥、
「麗ちゃーん、いい物見せてあげるからねえ」
 妙に色っぽい声で呟いた。
 
 
 
 
 
「お邪魔します」
 高速以外、走れる所が無いだろうと思われるような、黒塗りのリムジンが飛鳥の家の前に止まる。
 さすがに絨毯を持ってはこないが、それでも黒服が十四人左右に並んで、、人の壁を麗のために作った。
「もういいわ」
 小さな鞄をぶら下げた麗だが、その中に入っているのは着替えだけではなかった。
 
 
 
「麗、一応の事は教えたわ」
 ぐったりしている麗の躯を見ながら、律子は口元を僅かに歪めた。
 その股間には未だバイブが刺さったまま−ただし、お尻の方。
 バックから貫かれているのではなく、文字通り肛門に刺さっている。
 ただし、裂傷もなく出血もないのは、愛液がたっぷりと溢れ出しているせいだ。
 仰向けになった姿勢の麗の秘唇からは、既に白濁しかけた蜜が溢れ出し、アヌスを通り越してシーツまでもぐっしょりと濡らしている。
 三日の間、それこそトイレ以外は全部二人きりであった。
 性技を教える、と言うより殆どなぶられっぱなしのような気が麗はしていたが、それでも肛門が一度も裂ける事はなかったし、処女膜に傷を付けるような動きはまったくしなかった。
 無論、大事な顧客だという意味がかなりの部分を占めてはいたが、かつて井吹麻耶が正看として入ってきたとき、いきなり一服盛られて処女を奪われた。
 元々膜自体、生理用品を押し込む都合もあって、穴が開いていない訳ではない。
 とは言えそれはごく小さな物であり、生理用品の出し入れでさえ、膜が破損することはあるのだ。
 そこへ律子は、いきなり極太のバイブを突っ込んだのである。
 いくら麻耶が自分に行為を寄せているとは言え、あまりにも乱暴な行為だし、しかもその上律子は、
「私とバックで突き合えるようになったら、少しは付き合ってあげるわ」
 出血の多さで、太股付近まで真っ赤に染めている麻耶に、冷たく言い放ったのだ。
 がしかし。
 その麻耶は、現在バイブを使ってひたすら自己開発中である。
 男など知らない麻耶だが、それだけにレズに嵌ると泥沼らしい。
 やはり誰かが、お琴教室ならぬ男教室を創始した方がいいのかも知れない。
 麻耶以外にも結構レズ趣味の娘は多く、タチタイプの律子目当ても多かったのだが、その殆どに、律子は手荒く唾を付けている。
 麗は知る由も無かったが、それに比べれば遙かに穏便な手法と言えた。
 ただ、まだ躯も出来ていない麗に取っては、かなりハードなプレイだったのだが。
「膜を壊すと面倒だから、後ろから責めなさい」
 なんとも悪巧み率120%の奸計を麗に授けた。
 そして今、麗の鞄の中にはバイブやらディルドーやら、年齢には到底似つかわしくモノがイロイロと入っている。
 アンド…ローションも。
「行くわよ、飛鳥」
 お尻に残る律子の舌の感触を思い出しながら、麗は内心で呟いた。
 
 
 
 
 
 が、それぞれの思惑を秘めながらも、なかなか事態は進展しなかった。
 麗が自分達を調査済みだなどと、無論飛鳥は知らない。
 だから、いきなり誘ったりましてや押し倒したりなど、どうしても躊躇いが先に来るし、麗としても準備は万端だけれど、いざとなるとちょっと躊躇ってしまう。
 お互いに切り出せないまま、やはり先に動いたのは飛鳥であった。
「ねえ麗、一緒にお風呂入らない?」
 あくまでもさりげなく誘い、
「いいわ、入りましょう」
 さり気なく応じる。
 無論綾波邸とは比較にならない、ごく普通の家だが、脱衣場はちゃんとあるし、少女二人が並んで衣服を脱いでいく程度の広さはある。
 この年頃となると、胸や大小の淫唇も発達し出す頃で、どうしても他の女の子の躯が気になってしまう。
 二人も例外ではなく、ブラを取るときもパンツを脱ぐときも、ちらちらとお互いを眺めていた。
 が、何も口にする事はなく、二人揃って浴室に入る。
 お湯をかぶってから浴槽に入ると、二人ではやっぱり少しきつい。
 だもので、二人並ぶような格好で、どちらからともなく浴槽の縁に腕をおいて顔を乗せた。
 ちょっと沈黙が流れた後、
「ね、ねえ飛鳥」
 どこか硬さを感じて、
「な、何」
「神事君と…そ、そのしたってほんとなの?」
 前を向いたまま訊いた麗だが、一瞬だけ飛鳥の顔に動揺が走るのを見逃さなかった。
 大体人間というものは、自分からばらそうと思っていても、先手を打たれると結構動揺する物だ。
 まさに、飛鳥がその例であり、先手を打たれて一瞬たじろいだが、すぐに体勢を立て直すと、
「誰に訊いたのよ」
「別に。ただ、神事君の様子が変だったから、ちょっと調べさせたのよ」
 調べた、その言葉に飛鳥の眉がぴっと上がる。
「調べた?はんっ、これだから金持ちは嫌なのよ。金さえあれば何でも出来ると思ってるんだからっ」
「思ってないわ」
 麗は静かに言った。
「何よっ、調べさせといてよく言うわよっ」
「私がその気なら、神事君をとっくに浚わせているわ。それぐらい、私が考えつかないと思ったの?」
「じ、じゃあ何なのよ」
「取られたら取り返すわ」
 女同士の宣戦布告に、
「ふん、上等じゃない。で?お嬢様のあんたがどうやって…んっ!?」
「こうするのよ」
 言いざまに飛鳥の方を向くと、その顔を両手で挟んだ。
 避ける間も反応する間もなく、飛鳥の口腔には麗のちっちゃな舌が入り込んでいた。
(あたしとキス合戦しようっての?上等じゃない)
 飛鳥も膣はまだ処女のままだが、他はかなり開発が進んでいる。
 特にキスなら、いつも神事が参ったと言うほど上手い−と自分では思っている。
 だから、すぐに舌を絡め返して、反対に麗の口の中に侵入した。
「んっ、んんうっ、むむううっ」
「ふくうっ、んっ、んっ、んんー」
 お互いに舌を絡め合いながら、少しでも相手を刺激しようと、そして相手の咥内に侵入しようと、少女達の口の中で二枚の舌がもつれ合った。
 飛鳥の反撃に、一瞬舌の侵入を許した麗も、すぐに飛鳥の舌を捕らえてぎゅっと吸い付け、さっと飛鳥の咥内に押し込んだ。
 三十秒、四十秒と経っても、一向に二人の舌は離れる気配を見せない。
 飛鳥もいきなりだったが麗もそうだったから、お互いの鼻息を感じながらも、絶対に先に舌を離そうとはしない。
「んんっ、んっ、ふうううんっ」
「ううーん、ぬむうっ」
 何とか相手を感じさせてやろうと、懸命に舌を絡め合い、お互いに唾液を送り込んでいた二人だったが、時間が経つに連れて、徐々にその顔が上気していった。
(飛鳥のキス…とても気持ちいい…)
(しゃくだけど麗の舌、私よりも柔らかいわ)
 だが、このままでは勝負が付かないと、飛鳥は次の手段に出た。
 二人の手はお互いの背にしっかりと回され、ちっちゃな乳首が触れ合う位に抱きしめあっていたのだが、飛鳥はその手を外すと麗の胸に回した。
「はああうっ」
 すっかり固くなっている乳首を、いきなり指で刺激された麗は、思わず身を引いて喘いでしまった。
「ふふん、私の勝ちね」
 二人とも真っ赤な顔のまま、それでも飛鳥が勝ち誇ったように言うと、
「ま、まだ終わりじゃないわ」
 すぐに麗が飛鳥の胸に手を伸ばすと、
「飛鳥だって、乳首こんなにこりこりさせてるくせにぃっ」
 きゅっと指の付け根に挟むと、左右にくいくいと揺する。
「あっ、や、やあっ、そこやあっ」
 自分より数段上手い動きに、飛鳥はたまらず浴槽で身をくねらせたが、すぐにこれも麗の乳首に触れ直した。
 
 
 むにっ、むにゅむにゅ。
 
 
 手の平を押しつけて円を描いたり、両手で少し強めに揉んでみたり、飛鳥と麗は懸命に互いの乳房を責め立てた。
「あ、飛鳥…こ、こんなにして…い、いやらしいのねっ」
 麗が言えば飛鳥も負けじと、
「れ、麗だって、ち、乳首の先がもうこんなに…ああんっ」
 狭い浴槽の中に、未だ未成熟ながら性の匂いが充満し、それに触発されるように二人の息づかいも更に激しくなっていく。
「あんっ、あっ、ふあっ、はっ、早くい、いっちゃいなさいよっ」
「ふうんっ、んんっ、あ、飛鳥こそ…は、早くいったらどうっ」
 イったのは、殆ど同時だったかも知れない。
 二人とも、少し躯をびくびくと震わせて、相手の肩にぐったりと顔を乗せた。
 が、ナカでイった訳ではないから、十秒もしないうちに顔を起こし、少しとろけた目で睨み合った。
 或いは、若いからと言うのもあるかも知れない。
「れ、麗、まだ勝負着いてないからね」
「望む所よ、飛鳥。神事君があなたにはふさわしくないこと、躯で思い知らせてあげるわ」
 たちまち浴室内に全裸の娘同士火花が散り、淫靡な性臭と相まって異様な雰囲気になったが、そこはまだ子供であり、
「あんたいつも幾つ数えるの」
「五十よ」
「なんだ、子供ね。私なんかいつも百なんだから」
 肩まで浸かるあれだが、その数を競っているらしい。
 結局二人して百まで浸かり、上がってきたのは十五分後であった。
 
 
 
 
  
(つづく)

少女同士の淫闘。
キス対決・乳対決…etc