稚   炎
 
 
 
 
 
「ねえ…もう、挿れて…は、はやくぅ…」
 焦れったげに女が身を捩ってせがんだ。
 既に声はたっぷりと濡れている。
 その言葉に、漸く男が反応して顔を上げた−女の股間から。
 唾液とも何とも付かない液体で、男の顔も女のそこも濡れ光っている。
「せっかちだな、ユイは」
 男のぼやきに、女の顔が紅潮する。
「な、何を…はあうっ!」
 男は逞しい手で、女を軽々と抱き上げると身体の上に載せた。
 既に天を向いている怒張が、ずぶりと女の中に呑み込まれるのと、女の口から嬉しげな喘ぎが洩れるのとが同時であった。
 十二分に濡れているそこは、あっという間に男の逞しい逸物を受け入れたが、その間際巨大とも言えそうな、赤黒い肉竿が画面にはっきりと映し出されていた。
 
 
 
 
 
「ユイだって…おば様と同じ名前なのね。それにしてもあれ、すごくおっきかったぁ…」
 画面を食い入るように見えていた少女は、真っ赤な顔をして呟いた。
 少女の言葉が指しているのは、無論男の肉竿である。
 父親と殆ど風呂に入った事が無く、ましてや勃った状態などは知る由もない彼女にとって、それを初めて目にした事は、ファーストインパクトとも呼べる出来事であった。
 結合の瞬間だけで、少しぼうっとなっていた彼女の意識が、画面から聞こえてくる淫猥な音で引き戻された。
 くちゅ…くちゅくちゅ。
 最初は胸からしているのかと思った。
 少し上体を倒している女の、大きなおっぱいをぐいぐいとこね回している音かと。
 でもすぐに違うと知った。場所は分からないが、明らかに水の動く音だ。
 そう−鼻が詰まった時、鼻を外からつまんだり離したりすると、こんな音がする。
「あっあそこっ!」
 さっき、ユイと呼ばれていた女が僅かに腰を上げた時、一瞬だけ肉竿がその姿を少し見せた。そして再度腰を深く落とし込んだ時、そこから聞こえたと分かり思わず少女は叫んでいた。
 無論家の中には誰もいないが、思わず両手を口で押さえると辺りを見回した。
「き、聞かれてないわよね…」
 どきどきする胸を押さえながら、内緒話でもするように呟く姿には、年相応の幼さが感じられる。
 
 
  
「も、もっと…もっと奥まで突いてえっ」
 たわわな胸を揉みしだかれながら、女は快楽を最大限得ようとするかのように、前後左右に大きく腰を振り立てる。
 一番奥まで受け入れながら、上体を倒して男と重ねていく。
 腰の繋がりだけでは足りないかのように、揺れる乳房を男の顔に近づけていくと、くにくにっと、男のごつい指が乱暴に乳房をこね回す。
(あんなにされたら痛くないのかな…)
 自分だったらきっと痛くてたまらないだろう、そう思ったが顔をこちらに向けている女は、さっきよりもっと気持ちよさそうな顔をしている。
 それは演技なんかじゃない、それは見ていて何となく分かった。
「あんなおっきいの入っていくんだ…あれ?」
 声に出して呟いた瞬間、少女は自分の身体に違和感を感じていた。
 正座を崩したような、足を崩した格好で座っていたのだが、その付け根に妙な物を感じたのだ。
(やだっ、あたしおもらし…)
 慌ててスカート越しに触れると、どこか違っていた。
 勿論何かは分からない。
 だが失禁したのでは無いと知り、ほっと安堵の息を吐いた瞬間。
「は、はああぁぁううっ、い、イっちゃうぅぅ!」
 画面から聞こえる絶叫に、慌ててリモコンを掴む。
 音量を絞った次の瞬間、女の胸から手が離れて腰に回った。
 僅かに浮き上がり気味になっている腰を、荒々しく掴んで深く沈める。
「あくっ、ふあっ、ああぁぁっ」
 奇妙な声を洩らした数秒後、女がぴうん、と四肢を突っ張らせた。
 ところが、何かが起きそうな気がして少女がぐっと膝を掴んだ瞬間、台所にある電話のベルが鳴った。
「も、もういいところなのにっ!」
 慌てて立ち上がると、台所に走っていく。
 だから少女は知らなかった。
 男が生で、熱い液体を女の体内に放った事を。
 そして女が熱くたぎる秘所から、とろりと流れ出した液体を指ですくい取とり口元に運ぶと、根元までねっとりと呑み込み、恍惚の表情を浮かべながらしゃぶった事を。
 何よりも、口元をどろりとした液体で彩ったまま、熱いキスを交わしたことを。
 
 
「はい惣流です」
 平静さを装ってはいたが、電話の相手には異変に気付かれたらしい。
「飛鳥どうしたの?声がうわずってるわよ」
「な、何でもないわママ。ちょっとトイレ入ってたから…」
「そう、ならいいけど。ちゃんと宿題やるの忘れないようにね」
「はーい」
「それと、今日と明日は帰れないから神事君のところにお世話になって。いい?」
 語尾が、少し弱くなったのは気のせいではあるまい。
 だがそれも仕事のためと飛鳥も分かっているし、知りつつ難題を吹っ掛けるような娘でもない。
 あっさりと、
「分かってる。ねえ、ママ」
「なあに?」
「お仕事、がんばってね。パパにもよろしく」
「ありがとう、飛鳥。じゃあね」
 いつの時代でも人種を問わず、子供の声は母親にとって活力となると相場は決まっている。
 飛鳥の母親も例外ではなく、最初電話口で感じられた少し疲れのある口調も、どこか元気付いた口調になると電話を切った。
 おそらく向こう側では、嬉しげに微笑している事であろう。
 だが、それとこれとは関係ないらしい−どう見ても。
 飛鳥はにんまりと笑ったのだ。
「ちょっと言えばすーぐ機嫌直るんだから。親なんて単純な生き物よね」
 帝王切開までして産んだ娘が、この年にして既に立派な小悪魔になっているとは、両親揃って夢にも思わないに違いない。
 さて電話を切った飛鳥、脚の付け根辺りに依然として違和感を感じていた。しかもさっきより増えている気がする。
「し、調べて見なきゃね」
 その前にビデオでさっきの続きを、いや最初から見たくなったが止めた。
 時間を忘れては困ると思ったからだが、それは現在時刻の話ではない、ビデオの再生時間の方だ。
 今日に限って開いていた戸棚からこっそり持ち出したテープの、止まっていた時間を飛鳥は正確に覚えていたのだ−無論発覚を防ぐために。
 一秒も違えず正確に戻すと、本棚のテープ置き場にそっと置いた。
 無論、微塵も位置がずれないようにするのは忘れない。
 悪事の隠匿を終わった飛鳥は、ふうとため息を吐くと自分のパンツに上から触れた。
「気持ち悪い…」
 呟いたが、取りあえず失禁でないのは分かる。
 では一体?
 スカートのファスナーを外して脱ぎ捨てる。そして自分の下着に目をやったアスカの顔色が変わった。
「や、やだあ…し、染みが出来ちゃってるよぅ」
 まるで失禁したかのようなそこを、紅くなった顔で見つめていたが、やがてゆっくりと手をそこに向かって伸ばした。
 小さな指がちょん、とそこに触れた瞬間。
「ふっ、うあうっ!」
 上がった自分の声の大きさに驚いて、思わず手を離す。 
 パンツの上から軽く触れただけなのに、そこがずきりと疼いたのだ。
 嫌な感じではない、痛い感じでもない。
 あえて言うなら…むず痒さか。
 ちゅく。
 脚をすり合わせた瞬間、下着の中で小さな、そしていやらしい音がした。
(さっきとおんなじ音だ…)
 とは思ったが、さすがに脱いで直に触れたいとは思わなかった。
 未知への思いは、現時点では怯えに近い物の方が少し上回っていたらしい。
「でもさっきの…気持ちよかったみたい…」
 男と女の、大人の行為を見た時に中から出てきた物。
 そして普段トイレやお風呂で触っても何ともないのに、小さな染みの出来た所に上から触れるだけで、頭がじんじんするような気がした。
「わ、分からない事は勉強しなくちゃいけない…わよね。そ、そうこれは勉強なのよ」
 知識を得るためという名分は出来た。
(でもあたし一人じゃ…どうしよう)
「そうだ、一人いたわねえ…」
 にんまりと笑ったその脳裏に、誰の顔が浮上していたのか。
 飛鳥がそこに触れないようにして下着を脱ぎ捨て、むずむずする感覚をこらえながらシャワーを浴びたのは、それから数分後の事であった。
 
 
 
 
 
「今日は遅くなるから先に夕飯食べて置いて」
 飛鳥の両親がそう言い残して、出かけたのはそれから三日後の事である。
 同じ研究所に勤める知り合いの碇夫妻も一緒だと聞いて、飛鳥は顔が緩むのを必死に抑え込んだ。
 こんな所で計画が露見する訳にはいかないのだ。
「じゃあ、神事と一緒に食べるの?」
「そうね神事君困らせちゃ駄目よ」
「はーい、分かってる」
 お利口さんの顔になり母親を見送った飛鳥は、その口元にとても小学生には見えぬ程の、妖艶な笑みを浮かべた。
「い、いずれは勉強する事だし。それに神事だって喜ぶはずよ…さ、最近はいっしょにお風呂も入ってないし…でも…」
 最近膨らみかけてきた胸に、服の上からそっと触れた。
「まあこんなもんよね、うん」
 頷くと、相棒をゲットするべく学校へと向かった。
 
 
 
 
 
 
「お邪魔しまーす」
 勝手知ったる家の扉を、勝手に開けて入ると神事が出てきた。
「あ、いらっしゃい…あれ?飛鳥それ何?」
 飛鳥が手の後ろに隠しているものに、神事が気が付いた。
「ビデオ」
「え?」
「二人で見ようと思って持ってきたのよ」
「ふうん。あ、先に上がってて。今飲むもの持っていくから」
「うん」
 さっさと神事の部屋に入った飛鳥は、すぐにビデオデッキにテープを入れ停止ボタンを押す。
 にっと笑ってから辺りを見回すと、
「なんかロボットばっかり。これじゃこんなの知ってる訳ないわよね…やっぱりここは、幼馴染のあたしが色々と教えてあげないと」
 ふんふんと頷いたところへ、神事がジュースを持って上がってきた。
「はい、飛鳥」
「ありがと」
 飛鳥にジュースを渡すと、神事は床に腰を下ろした。
「テレビでも見る?」
「え?あ、うん…」
 ちらりと神事を見ると、飛鳥との距離は数十センチ空いている。
(更に接近が必要ね)
 内心で笑うと、すすっと神事にくっついた。
 ぴと。
「な、なに?飛鳥」
「だって寒いんだもん。神事は氷入りのジュースくれるし」
 慌てて取り替えてくるよと立ち上がるのを、飛鳥の手が押さえた。
「いいの」
「え?」
「だってくっついていれば暖かいから」
 思わず口走ってから赤くなった飛鳥だが、神事にいたっては茹蛸と化している。
「『あ、あの』
 同時に声があがり、顔を見合わせて一層赤くなる。
「あ、飛鳥から」「し、神事から言ってよ」
「神事でいいわよ」
「飛鳥から」
 くっ付き合ったまま押し問答をしていたが、ふととっても危ない体勢になっているのに気が付いた。
 体が密着した状態から、何時の間にか顔まで近づいていたのだ。
「!」
 先に神事が気が付き、慌てて離れようとするのを飛鳥は止めなかった。
「あのさ、神事…」
「な、何?」
「テレビはいいから、ビデオ見ようよ」
「そ、そうだね」
 顔が離れたことで、平静を取り戻したらしい神事を見て、ほんの少し感じた寂しさを押さえながら、
「ちょっと待って」
「何?」
「一つ約束して」
「約束?」
「最後まで必ず見るって」
 一瞬神事の顔に疑問符が浮かんだが、それを口にはさせず、
「だ、だってほら、いつも神事途中で寝るじゃない」
「そうだっけ」
「分かったわね」
 少し語尾を強めて念を押すと、神事はあっさりと頷いた。
「じゃ再生して」
 神事がボタンを押した途端。
「あーん、もっと強くぅ」
 ホームシアター仕様になっているおかげで、部屋中のスピーカーから艶っぽい喘ぎ声が響き渡り、慌てて神事が止めようとする手を飛鳥が掴んだ。
「や、約束よ神事」
「だ、だってこれっ!」
「勉強よ、将来の」
 熱い吐息とともに囁かれて、一瞬神事の手が緩んだ。
「ね?」
 甘い囁きに神事が折れた。
「う、うん…」
 ほんの少しだけボリュームを下げて、二人は並んだ姿勢のまま画面を見つめた。
   
 
 
 
 
 神事にとって、性行為の映像など始めてであり、何時の間にか食い入るように見ている。他方飛鳥も一度は見たものの、異性と並んで見るのはやはり違った感じがする−例え相手が神事であっても。
 無修正の映像なのか、小陰唇の奥襞までくっきりと見える性器には、二人とも視線が釘付けになった。
 手入れの成果かあるいは天然なのか、秘所はうっすらとした毛に覆われており、愛液を溢れさせているにも関わらず、殆ど肌色に近いピンク色をしている。
「きれいだ…」
 思わず呟いた神事の足がぎゅっとつねられ、何すんだよと飛鳥を見ると、幼馴染の少女はぷいっとそっぽを向いた。
 次々と際限なく溢れ出す透明な液が、やがて白濁化していく様には揃って生唾を飲み込み、四方から聞こえる舌使いと嬌声に、飛鳥は思わずスカートの前を押さえていた。
 そしてのどの辺りまで飲み込んだような口腔性交に移った時、ふっと神事は自分のズボンを見た。
 二人の胸中に、何が浮かんだのか。
 やがて唾液で濡れ光る肉竿を愛しそうに撫でながら、ゆっくりと女が男の上にまたがった。
 だがまるで、飛鳥の手首位もありそうな肉竿がずぶりと女を貫き、そして女が切なげに上体を逸らした瞬間。
 プルルルル…
「『あ…』」
 電話が鳴ったと同時に、二人の手がリモコンの停止ボタンに伸びていた。
 しかし呼び出し音は一度で切れ、二人はほっと安堵の息を吐いた。
 そして次の瞬間、重なり合っている自分たちの手に気づく。
「神事…」「あ、飛鳥…」
 何となく手を離し辛い雰囲気で、お互いの手は重なったままだ。
「『あ、あのさあ…』」
 重なった語尾に、二人は紅くなると俯いた。
「神事から言ってよ」
「い、いいよ飛鳥から…」
「こんなときばっかりあたし優先なんてずるいよ」
「何言ってるんだよ、普段だっていつもそっち優先じゃないか」
 手が密着したままにらみ合う二人、ふと手の状態に気づいて慌てて離した。
「『ご、ごめん…』」
 謝ったのはどちらが先立ったのか。
「こ、こんな時にけんかするのやめよう。ね、飛鳥」
「そ、そうよね。それでさ神事、さっき言いかけたのってなんだったの?」
 途端に神事がぎくり、と腰を浮かせようとするのを飛鳥が捕まえた。
「こら、どこ行くのよ」
「ちょっと、その…おといれに」
 声が上ずっている神事の顔を、飛鳥はずいと覗きこんだ。
「この期に及んであんた、男らしくないわよ。ちゃんとおちんちん生えているんでしょ!」
「なっ!そ、それは関係ないじゃんか。飛鳥が先に…」
 懲りずにまたもや一瞬にらみ合ったが、今度は飛鳥が先に視線を逸らした。
「んもー、しょうがないわね。じゃあこうしてよ」
「え?」
「言うのは神事が先。でも神事が言ったらあたしもちゃんとに言うから。それでいいわね」
 いつもは何でも自分が先って言うくせに…
 そんな言葉が脳裏に浮かんだが、言い合っても仕方ないと神事は覚悟を決めた。
「あ、あのね…」
 冷静になったか言いよどんでいる神事に、飛鳥は体をぴたりとくっつけるとその脇腹をそっとつついて、
「ほら…言って?」
 耳に息を吹きかけながら囁いた。
「あ、飛鳥のおっぱい見たいなって…その…」
「見るだけ?」
「え゛!?」
「な、なんでもないわ」
「…ね、ねえ飛鳥は?」
「私?私はその…し、神事のおちんちん触りたいなって」
 かつて女が作られた時、それは男を補うための物であった。
 かつて最初の人間夫婦が背いた時、先に欺かれたのは女であった。
 いつから男は女の下敷きとなったのか。
 それはともかく、あっさりと言って神事の股間に視線を注ぐ飛鳥に、思わず神事は後ずさりした。
「あ、飛鳥それって…」
「私ね、あれ見るの初めてじゃないの」
「え?」
「この間パパの本棚漁ってたらあれ見つけて、その時に少し…ね」
「そ、そうなの」
「でもその時に最後まで見なかったのよ。何でだと思う?」
「どうして?」
「し、神事と練習しようって思ったのよ」
(私なんでこんなことすらすら言えるの?)
 言いながら、飛鳥は自分でも内心首を傾げていた。
 ボン!
 と音がした−間違いなく。どうやら神事の思考回路に、過負荷が掛かったらしい。
「飛鳥、そ、それって…」
「べ、勉強よ、勉強。だから見せて」
 あっけらかんと迫る飛鳥に、思わず逃げようとした所を、上から圧し掛かられた。
「い、嫌だよそんなの」
「なんですってぇ」
「だ、だって僕ばっかり見せるなんて」
 それを聞いた飛鳥、にやあと笑った。
「なあんだ、じゃあたしも見せればいいのね。じゃこうしてよ」
「え?」
「二人とも後ろ向いて服全部脱ぐの、そしていっせいにこっち向くの。どう?」
「それならいいや」
 現金に頷いた神事。
 さて二人ともお互いに背を向けて、もぞもぞと服を脱ぎ始めた。
 そして三分後、同時に振り向いた。
「ちょっと神事、手どけてよ」
 飛鳥は手を腰に当て、まったく隠そうとはしていながったが、神事の方は股間を手で押さえている。
 飛鳥が隠していないのを見て、おずおずとその手が動いた。
「ふーん、前より大きくなったのね」
「飛鳥のおっぱいも、前は洗濯板みたいだったけど、今は大きくなったんだね」
 一瞬飛鳥はむっとしたが、ここは我慢と抑えて、
「あったりまえじゃない。そのうちあのビデオの女の人みたいに、持ちきれないぐらいになるんだからね」
 ふと気づいたように、 
「ねえ、神事。そうなったらうれしい?」
 神事はそれには答えなかったが、うっすらと紅くなった。
「あ、嬉しいんだ」
 冷やかすように言ったが、飛鳥自身悪い気はしない。
(神事、あたしのこと嫌いじゃないんだ)
「ぼ、僕のおちんちんだって大人になったら、もっともっと大きくなるんだから…い、今はまだ小さいけど」
 終わりの方が小さくなった神事の言葉に、ぴくりと飛鳥が反応した。
(確かあんまり大きいと入れるときにすごく痛いって…)
 小学年の高学年ともなれば、それなりにそういう話も出てくる。
 聞いた話だけど、とやけに強調して話す級友の“体験談”から、飛鳥は多少の知識は持っていた。
 そして、月経が来ていなければ妊娠はしないのだ、とも。なお飛鳥はまだ生理を迎えていない。
「し、神事はそのままでいいのよ。それにね」
「それに?」
「し、神事のおちんちんは私が大きくしてあげるから。わ、私のおっぱいも神事が大きくしてね?」
 赤らんだ顔のまま、二人の視線が絡み合う。
「じ、じゃあ僕が飛鳥にその…してあげるから…そこに寝て」
 神事にしては積極的な発言に、一瞬飛鳥はどきりとしたがここは素直に、神事に任せる事にした。
 神事の寝相の悪さ用に設えられた、ダブルベッドの上に飛鳥は横になった。
 だがさすがに恥ずかしく、きゅっと目を閉じて横を向く。
 と、ゆっくり神事が近づいてきたが、上に乗るような事はしなかった。胸の辺りにそっと顔を近づけると、乳首にちょんと触れたのだ。
「は、あんっ」
 思わず声を洩らした飛鳥に、
「さっきの女の人、触られて気持ちよかった見たいだし。あ、飛鳥が嫌ならやめるけど」
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。も、もっと触っていいわよ」
 それを聞いて安心したのか、神事は手のひらで乳房を撫でまわし始めた。無論神事の手はまだ小さいのだが、飛鳥の乳房もまだまだ発育途上だから、ちょうどいい大きさである。
 飛鳥の胸が自分の手のひらにすっぽり納まるのを見て、神事は何故か嬉しくなり、一方飛鳥も自分の胸がやさしく触られている感触に、お腹の奥の方が少しだけ疼くのを感じた。
「ひゃ…うひゃっ」
 飛鳥が小さな声をあげて身をよじった。
 神事の舌が、ぷるぷると震えている乳首に触れたのである。神事は一瞬びくりとしたが、飛鳥の声が嫌がっている訳ではないと知り、更に進めた。飛鳥の乳首を口の中に含んだのである。
「ん…んっ」
(あ、大きくなってきた)
 小さな乳首は、神事の舌にぺろぺろと舐められるにつれて、その体積が増えたのだ。
「飛鳥のここ、おっきくなってきたよ」
 神事の報告に、飛鳥は恥ずかしそうに首を振った。
「い、言わないでぇ」
(飛鳥、すごくかわいい)
 何故かふっと、そんなことを思った神事。とはいえ、普段はクラスの中でも中心で、頭もいいし運動もできる。それに弱みなど殆ど見せない飛鳥が、自分におっぱいを吸われ赤くなっているとくれば、そう思ったとしてもさほど妙でもあるまい。
 もっと飛鳥を気持ちよくしてみたい、そう思った神事は乳首を吸いたてながら、そっと左手を下の方に伸ばしていった。
 画面の中の女とは違い、飛鳥のそこは毛など生えておらず、よく分からない奇怪な構造にもなっていなかった。
 ただ単に、縦の線が一本入っているだけなのだが、神事の位置からではよく見えなかった。
 そこで神事は飛鳥の体をまたぐと、飛鳥の性器へと顔を近づけていった。
(飛鳥のここって…こんな風なんだ。でもなんか、きれいだな…あっ!)
 最後のは声に出たらしい、飛鳥がギョッとしたように目を開けた。
「ど、どうしたのって…な、何してるのよ神事」
「あ、飛鳥のここ、さっきのビデオみたいに変なのが出てきてるよ。も、もしかして飛鳥…」
「ち、違うわよ馬鹿っ」
 言うなり飛鳥の手は、既に先が剥けかかっている神事のそこを、きゅっと掴んだ。
「ちょ、ちょっと飛鳥!?」
「何よ、あんただってこんなにしちゃってるくせにさ。あ、そだ。いい事考えた」
「え?」
「舐めっこしよ、神事」
「えー!」
「だってさっきビデオでもやってたじゃない」
「で、でも飛鳥…」
「あたしおもらしなんかしてないからねっ、それにそれ透明でしょっ」
「え?何で知ってるの?」
 しまった、と飛鳥は後悔したが、実はこの間それを取って体に擦りつけて見た、などとは間違ってもいえない。
 まして−そうしたら乳首が大きくなって、ますます液が出てきたなどとは。
「自分の体は自分が一番知っているのよ。普通でしょ」
 そうかなあ?と疑問が浮かんだが、何となくそうだろうと思い込まされ、神事はうんと頷いた。
「じゃ神事、そのまま腰を落として」
 言われるまま神事が腰を落とすと、飛鳥の目の前に神事のおちんちんがぶら下がっている。とはいえ陰茎と言うより、皮に包まれたソーセージと形容した方が合っていそうな代物だったが、飛鳥には何故か愛しく思えて、そっと両手でそれを包み込んだ。
 一方神事の方は、透明な液がゆっくりと伝ってくる飛鳥のそこに、そっと舌で触れていた。飛鳥は違うと断言したが、ほんの少しアンモニア臭も感じられた。
 だがそれ以上に、
「飛鳥、お風呂入ってきたの?」
 胸を舐めた時も、ほんのり石鹸の香りがしたのだが、今舌をつけた時石鹸の香りが強く漂ったのだ。
 ぎくりとしたが、まさか普段洗わないような所も一生懸命洗ってきた、などと言えるわけが無い。 
「は、入ってないわよ。昼間からお風呂なんて入るわけないじゃない」
 飛鳥の言葉を聞いて、神事は飛鳥の嘘を知った。飛鳥の癖として、妙に語尾が上がるのだ。
「ふうん、そうなんだ」
 気づかぬ振りをして、舌をちょっと押し付けた途端、飛鳥の体がびくりと浮いた。
「あっ、あん、神事ぃ」
「飛鳥のここって、可愛いね」
 誉めたつもりだったが、飛鳥には逆に聞こえたらしい。プライドに障ったのか、神事の少し大きくなった物を、一気に飲み込んだ。
「うっ、あ、飛鳥っ」
 思わず腰が逃げかけたのを、飛鳥はぐっと押さえ込む。
「神事のおちんちんて大きくなってるけど…可愛い」
(神事も石鹸の匂いする、まだ朝からお風呂入ってるんだ)
 指を咥えたような味だったが、ビデオの映像を思い出して懸命に出し入れしてみる。
「ほーら、神事だって変な液出てきたじゃない」
 勝ち誇ったような飛鳥に、負けじと神事も飛鳥の割れ目沿いに舌を這わせ、少しずつ出てくる液を音を立てて呑んでいく。
 無論飛鳥がされるままな訳もなく、しばらくの間意地になった相手の性器への、執拗な愛撫が続いた。
 だが拙いながらも、初体験同士の相手には十分な刺激であり、やがて双方の口から荒い息遣いが漏れ出してきた。
「神事、は、早く降参しなさいよ…ふあっ」
「あ、飛鳥…こそ…くうっ」
 そして神事が強烈な“尿意”に襲われ、飛鳥の頭の中が時々白くなり始めたころ、ようやく双方とも止めた。
「飛鳥、僕もう…」
「あ、あたしももうおかしくなっちゃいそぅ…」
 陰嚢への指使いも、クリトリスへの刺激もお互いに知りはしない。
 だがそれでも始めての体験は、二人を達する寸前まで押し上げていたのだ。
 ゆっくりと神事が飛鳥の上から降り、今度は飛鳥が神事の上に乗った。
 胸と胸を合わせると、飛鳥は神事の方にそっと顔を埋める。
 二人とも腰に余韻を感じながら、しばらく互いの鼓動を感じていたが、数分してそれが収まった時、飛鳥が口を開いた。
「ね、神事入れてみる?」
「えっ?」
「だってあのビデオで男の人、女の人のあそこにおちんちん入れていたじゃない」
「う、うん。だけど…」
「だけど何よ」
「あ、あれって妊娠しちゃうんじゃ」
 それを聞いた飛鳥、ふっふっふと笑った。
「どうしたの?」
「じゃーん、教えてほしい?」
「う、うん」
「あたしはね、生理がないから妊娠しないの。知らなかったでしょ」
「飛鳥、まだないんだ」
「う、うるさいなあもう。あんなのない方が楽なのよっ」
 そういうと、神事の小さな乳首をきゅっとつねった。
「飛鳥痛いよ」
「反省した?」
「うん、ごめん」
「今回は特別に許してあげる。じゃあさ、しよ?」
 飛鳥が神事の上から降り、神事は飛鳥の股間をまじまじと眺めた。
「神事ぃ、そんなに見ないでぇ」
 甘ったるく拒むものの、実際は嫌がっていないらしい。もじもじと動かすそこを見ながら、神事は首を捻っていた。
(これ、どうなってるんだろ)
 どこかに自分のおちんちんを入れる穴がある、それはわかる−ただし、それだけ。
 ビデオで見たように、中からはみだしているびらびらした皮のような物も見当たらないし、全体がぷっくりと膨らんでいるだけなのだ。
 よく分からないまま、割れ目の上から指をそっと差し込んで見る。
 手探りで指を入れた瞬間、
「う…くふぅ」
 飛鳥が小さく喘ぐ。何となくそれが気に入って、神事は周辺をそっと探っていった。
(あれ?)
 神事の指が、ふと何か突起に触れたと思った瞬間。
「そ、そこやぁっ、だめぇ神事っ」
 びくんと腰を震わせ、神事の指から逃れようとする飛鳥を見て、神事はそこが気持ちいいと知った。
 くにくち。ちゅくちゅく。
 そっと指を出し入れしながらそこに触れていると、少しずつそれは大きくなっていった。その間も飛鳥が可愛くもだえる声は止まらず、神事の指はさっきの透明な液でべとべとになっていった。
(僕のおちんちんみたいだ…あっ)
 クリトリスをいじるのに夢中で、穴探しを忘れていた神事。
 上へ指を伸ばしてそれにぶつかったので、今度は下に行く。
 指で拡げれば良さそうなものだが、何となく飛鳥に悪いような気がして、神事にはできなかったのだ。
(あれ、どこにあるんだろ…)
 下のほうへ動いていった神事の指が、ずるりと吸い込まれたのは次の瞬間であった。
 思わず指の根元の方まで入れてしまい、それと同時に飛鳥が悲鳴をあげた。
「い、痛っ、神事止めてっ!」
 慌てて指を抜き出して飛鳥の顔を見ると、眼にうっすらと涙が浮かんでいる。
 壁のような物に当たった気がしたが、それが思い切り痛かったらしい。
「飛鳥ごめん、大丈夫?」
「う、うん大丈夫。多分そこだと思うから…入れて」
 飛鳥は強がっているものの、神事も飛鳥が痛がっているのを知ったから、気は進まない。
(あ、そうだ)
 何を思ったのか、神事は怪しく笑った。
 絶対に何か企んでいる顔なのだが、飛鳥の位置からは分からない。
 そして、
「やっ、やだ、神事そこ違うよぉっ」
 アヌスに指を突き入れられて、アスカが思わず身を引いた。
 だが既にぬるぬるになっている神事の指は、飛鳥のそこへもあっさりと進入し、中で蠢いた。
「そ、そんなとこきたな…きゃふっ!…」
 座薬を入れられた時とは又違う、直腸を抉られるような感触に、飛鳥はただ口をぱくぱくさせるだけしかできない。
 ただその様子を見て、嫌がってはいないと知り、
「飛鳥、こっちで…いい?」
「う、うん…」
 お尻を見られるなど、ましてそこに触られるなど風邪をひいた時、母親に座薬を入れられた時だけである。その時でさえ、飛鳥は散々嫌がったのだ。
(それを神事に見られるなんて…しかも触られて…おちんちん入れられちゃうんだ)
 だが、真っ赤になって顔を覆っている飛鳥とは対照的に、体の方は違う反応を示していた。神事が円滑油のように、飛鳥のそこから流れる液をお尻の穴に塗りこんでいるのだけれど、そこはさっきよりも一層濃い液が沢山流れ出している−まるでもっと使ってと言うように。
「し、神事ぃ、は、早くぅ」
 早く済ませたいと思ったのか、あるいは。
 飛鳥の声に促されるように、ゆっくりと神事が腰を近づけていく。
 現在の神事にとっては、最大限の大きさとなっているおちんちんの先が、そっと飛鳥のお尻に侵入する。
 座薬の時でさえ、猛烈な排泄感と違和感に襲われた飛鳥である、まして神事の大きくなっている物など入ったには、内蔵の位置でもずれるのではないかと思ったが。
 (あうっ、な、何か…あ、熱くて…へ、変な感じ)
 一方神事の方は、弾力のある内壁に苦戦していた。
 入らないのではない、締め付けてくるのだ。自慰など知りもしない神事だが、飛鳥のお尻がきゅうっと締め付けてくる感触に、尿意に近いものを再度感じていたのである。
 だがそれを必死に抑えて腰を進めていくと、じゅぷり、と音がして飛鳥のお尻と神事の腰がぶつかった。
「は、入ったの神事?」
「うん、でももう…」
「え?」
「な、なんか出ちゃいそうで」
「待ってっ」
 慌てて飛鳥が止めた。
「え?」
「あたしも、その…すごく気持ち良いの。だから…もう少し…」
「だ、だけど…」
 結構限界らしい神事を見てアスカは、ビデオの図を思い出した。
「神事、こうしてっ」
 言うなり、アスカは神事の背に手を回して抱き寄せる。そしてくるりと体勢を入れ替えたのだ。とっさに思いついた騎乗位もどきは、何となく女が主導を握っていたように見えたビデオからの案だったが、それでも神事はほんの少しだけ楽になった気がした。
 ちらりと飛鳥が繋がっている部分に目を向け、
「繋がってるね…」
「うん…」
(お尻だと、そんなに痛くないのかな?)
 なんとなく思った飛鳥だが、
「飛鳥のお尻の中って、すごく暖かいね」
 言われて真っ赤になる。
「で、でもっ、神事のだってすごく硬くて…。ね、動いていい?」
「え?」
「だってむずむずするから、その…神事のおちんちんでかき回して欲しいの」
 赤面物の台詞を口にすると、飛鳥は神事の返事を待たずゆっくりと動き始めた。
 照れ隠しなのか、神事に拒ませないためかはよく分からない。
 抜き差しではなく、ゆっくりとお尻をこすりつける感じで、円を描いて動かしていく飛鳥。それだけでも神事の硬くなった物が中で動き、飛鳥も急速にたまらなくなってきた。
 無論神事も飛鳥の微妙な動きだけで、何本もの柔らかい指に包まれてしごかれているような、知らないはずの奇妙な感覚に囚われていた。
 静まり返った部屋に、二人の息遣いとすべすべの肌同士が擦れ合う音だけが響き、その数分後、
「あ、飛鳥僕もう…はやくどいてっ」
「だ、駄目ぇ、あ、あたしの中で出していいから…ふあぅっ」
 飛鳥をどけようと、神事がぐいと掴んだのは飛鳥の胸。
 降ろされてはたまらないと、飛鳥がしがみついたのは神事の腰。
 神事が尿意を必死に堪えようと、夢中で飛鳥の胸を揉みしだき、飛鳥も二箇所からの刺激にたまらず神事のお尻を掴んだ。
 そして数秒後。
 神事の力で一瞬浮かされかけた飛鳥が負けじと、ぢゅるりと腰を落とした途端。
「飛鳥っ、も、もうっ!」
「い、いいわ神事出してぇっ」
 抑えていたものが一気に爆発し、神事は飛鳥のお尻の中に思う存分放出していた。
 熱い精を浴びせられて、飛鳥の上体は後ろにぐいとのけぞりかけたが、神事が逃がさないと言うようにぎゅっと腰を掴んでいた。
 やがて飛鳥は荒い息を吐きながら神事の上から降り、自分のお尻に手を当てた。
 そこから滴り出てきた白い液を手にとって、奇妙な顔でそれを眺める。
「ご、ごめん飛鳥。僕、我慢できなくて」
 謝る神事に、飛鳥はにっこりと笑った。
「気にしないでいいわよ、神事。だってね…」
「だって?」
「あたしも気持ちよかったんだもん」
 言うなり飛鳥は神事に飛びついた。どろりとした液体が肛門から流れ出し飛鳥の太ももを伝ったが、何故かそれさえも気持ちよく、飛鳥は拭おうとはしなかった。
「神事、お風呂沸いてる?」
「朝入ったから、まだ保温になってるよ。少し熱めだけど」
「じゃあさ」
「何?」
「一緒に入ろ?」
「えー!?」
「いいじゃない、小さいころは一緒に入っていたんだし。それに…全部見せ合った仲じゃない」
 おもわずの台詞だったが、双方とも紅くなった。
「飛鳥って、けっこうえっちなんだね」
 神事の手が、まだ少し硬くなったままの飛鳥の乳首に伸び、飛鳥はあうんと小さな声をあげた。
「やん、な、何よ…し、神事だってほら」
 飛鳥の細い指が、まだ元気なままの神事のおちんちんに伸びるとくりくりと掴んだ。
「くうっ、あ、飛鳥こそっ」
 体を重ねたような体勢のまま、お互いに弄り合っていたが、ふとどちらともなく手を離した。
「はあはあ…飛鳥、続きはお風呂でする?」
「そ、そうね…負けないからね、神事…あんっ」
 全裸のまま並んで風呂へ向かった二人だが、二人の手は相手の股間に伸びており、風呂に着くまで悩ましげな声は上がりっ放しであった。
 
 
 
 
 さて、その後性教育で性徴に伴う淫毛の発育を知った二人だが、最初の時のすべすべした肌が擦れる感触が忘れられず、互いに剃毛するようになったというのは後の話である。
 また、愛息子の部屋にカメラを仕掛けた置いた神事の両親が、その映像に腰を抜かすものの、そのうち体験するだろうと気にせず、それよりも夫婦が新しい快感を息子とその彼女に学んだのはこれより数日後の話である。
 
 
  
 
 
(終わり)
子供同士。
年齢は不詳      。