「洋食」がハイカラだった頃、牛ステーキは「ビフテキ」、豚ステーキは「トンテキ」と呼ばれていました。ボリュウム感のある分厚いビフテキと比べて、トンテキはせいぜい1センチぐらいの厚さでしたの。生焼けOKのビフテキと違い、しっかり火を通さねばならんトンテキは、分厚くすると火が通りにくい。分厚くしてなおかつ火を通そうとすると肉が硬くなってしまいますな。だから町の食堂などでは、火の通りが早い薄切り豚肉を使った「生姜焼き」などの焼肉定食が一般的になったんでした。
しかしそれでは他所の店との差別化ができん。やっぱ、見た目のゴージャス感が必要でしょう。そこで四日市トンテキのお出ましとなったのです。分厚い豚肉を使い、柔らかくて、早く焼けて、味が浸み込んでいる……これらを満たすトンテキの登場なのでした。
*分厚い豚肉に切れ目を入れて火の通りを良くする。
*たれに漬けこんで下味を浸み込ませておく。
*ラードを使い、高温で蒸し焼きにする。
そしてもう一つ、肉を柔らかく焼くために「酵素」の力を借りる。
使用する豚肉そのものが柔らかであるのも大切だが、パイナップルやキウイにすりつぶしたのに漬け込むことで、タンパク質分解酵素の力を借りていたんですね。これらの調理テクを用いれば、分厚いトンテキも難なく焼けるのです。
実はトンテキ焼テクとしてお勧めなのが「塩麹」を使うことだったんですな。切れ目を入れた豚肉に、スプーン一杯分の塩麹をまぶし、そのまますぐにフライパンで焼いてみよう。中火にかけたフライパンにフタをして5~7分も焼けば、ふっくら柔らかでジューシーなトンテキが難なく焼けるのです。
しかしわれらがドッポ君、この先で酒蔵に潜入し、酒粕を使った料理に挑む予定が既にあったのだ。未成年なのに酒蔵……は許されるのだろうか? 文部科学省的心配が無かったわけでは無いのだが、そこはそれ、追われる身の「逃亡者」です。どんな形で酒蔵と向き合うのか? 目が離せない錦戸独歩、君は一体何処へ行く……。



- 豚肉の厚さは1㎝まで。
- 肉の柔軟剤はキウイ、パイナップル、酒、塩麹等を使い、3~4時間漬けこむ。
- フライパンに多めのラードで焼き、弱火で蓋をして蒸し焼きにする。
- 中濃かウスターソースをフライパンにかけまわすが、弱火であることとラードがあることで、焦げ付かずに味が染みこむ。

