花善呉

ぁふんそお

これでは困る韓国

ニューカマー韓国人の対話

平成九年十一月二十日 三交社
ISBN4-16-763301-9 C0195 税別千五百円

韓国を開くヒント

おかしな権威主義をすてなさい

一九六五年の日韓国交正常化以後に自分の意志で日本に来て日本で生活する韓国人を、ニューカマー韓国人と呼ぶ。植民地時代に根を持つ在日韓国人とは異なる現代のフリーな国際移住者である。


 はじめに──韓国の最新「困ったこと」事情
呉 善花  

 副題にあります「ニューカマー韓国人」とは、植民地時代に根をもつ在日韓国人とは異なり、私たち二人のように一九六五年の日韓国交正常化以後に日本にきて生活する韓国人を意味しています。そのニューカマー韓国人が、日本語で対談して本となったのは、これがはじめてのことではないかと思います。
 日本生活は私が十四年、崔氏が十二年となります。年齢も事情もかなり違うのですが、いずれの場合も日本留学の体験をもち、現在日本で定着生活をおくっているところが共通しています。この点、いわゆる「出稼ぎ移民」とも異なるところだと思います。
 私は以前から、崔氏が韓国語で書かれた民俗学・人類学関係の書物を何冊か読んでいて、密かに信頼を寄せていました。とくに私にとっては最も興味深い、韓国のシャーマニズムと女性の関係についての研究には、その人間味あふれる真摯な研究態度と豊かな洞察力に大きく心を動かされていました。
 それで数年前に日本のある会合ではじめてお会いしたのですが、そのときにはまさかあの崔さんだとは気づかずに、大変失礼してしまいました。あの韓国の著名な人類学者が、日本の大学教授になって日本で生活されているとは思いもしなかったのです。少し後になってそのことに気がつき、さっそくお会いして以後、親しくおつき合いさせていただいております。
 崔氏とお会いして韓国の話をしていますと、しばしば二人の口をついて出るのが「韓国もこれでは困りますね」という言葉です。しかも、さらに困ったことは、韓国内部からそういう「困った韓国」を批判する声がほとんど聞かれないことです。


そういうわけで、「韓国と日本について雑談を交えながら自由に話し合いましょう」という趣旨で行った二人の対談ですが、やはりというか、どうしても、つぶやきめいた韓国への苦情がリードするものとなりました。

 ちょうどこの対談をテープに収録していた今年の七月に、韓国では新しく成立した「青少年保護法」の適用で、大量の日本製アニメやマンガ本が「有害」の烙印を押されて摘発される、という事態が起きています。韓国の小学生に大人気の日本製アニメのテレビ放映が突然中止されたり、一七〇〇点余り、五〇〇万部を超えるマンガ本(大部分が日本製)について未成年者への販売・貸出禁止の処置がとられ、業者やマンガ家の逮捕にまで発展しています。また、日本の小説を翻訳出版した業者が、ワイセツのかどで懲役一年の刑を受けたりもしています。
 その一方では、韓国が日本を軍事占領して皇居に大極旗がひるがえるというシミュレーション小説が好調な売れゆきをみせてもいます。これには「一千年の敵日本を占領しろ」と副題が付けられています。また『日帝時代』と題された小説の新聞広告のコピーには、「いまの小中高生の九〇パーセントが日本製の学用品を持っています。そのことを親御さんたちはご存じですか、これは大変なことですよ」とあり、さかんに「日本の文化侵略」への危機意識を煽っています。
 韓国では最近、数名で一人に暴行を加えるというパターンの「校内暴力」が大きな社会問題となっていて、その元凶は日本のマンガであり、「日本のマンガが韓国青少年の暴力教科書になっている」という解説が、韓国の新聞などのマスコミで展開されています。また女子高校生売春も出はじめていて、そこでも日本の悪影響が論じられています。


タマゴッチもまた「非生命へのおかしな愛着を生む」ということで、青少年の教育上よろしくないと、バッシングの対象になっています。
 消費社会の発展とともに、韓国社会は新たに日本の大衆文化・消費文化流入の問題をかかえることになりました。韓国のマスコミや知識人たちは、ここで再び反日意識を煽って流入を制限しようという行動に出ており、またそうした状況に乗って「日本叩き」をテーマとする本が数多く出版されています。
 子のように、「これでは困る韓国」の問題が、さらに膨らんできているわけですが、いったいいつまでこんな状態がつづくのかと思うと、ほんとうに気がめいってしまいます。ただ私としましては、若い世代に期待したいと思います。
 大衆文化は伝統文化・伝統的知識からみれば、悪を抱え込んだ不道徳文化となるのでしょう。しかし大衆文化は、さまざまな問題を含みながらも、きれいごとの善文化の枠組みを超えて、自由で開放的な新次元の文化への可能性を秘めていると思います。しかしながら、そうした観点が韓国の知識人・文化人たちには、およそ欠けているというしかありません。
 またまた、口っぽくなってしまいましたが、そういう私の雑然とした韓国への不満は、崔氏の冷静で理路のたったお話を聞くなかで、かなり整理することができたように思います。この場をかりてお礼を申したいと思います。
 また私たちの、自由なだけにあちこちへ飛び跳ねた話をまとめるのに、編集部には大きなご苦労をおかけすることになってしまいました。心から感謝いたしたいと思います。

 一九九七年九月


攘夷の韓国 開国の日本

平成十一年九月十日 文春文庫 税別五百十四円
ISBN4-16-763301-9 C0195

 韓国の歴史学界では「奈良時代の日本の人口の九十六パーセントが渡来人だった」とか、「日本人は韓半島の戦乱で滅亡した貴族と最低層の韓民族の子孫だから反韓的なのだ」といった言説が流通している。それは本当か。
『スカートの風』で注目された著者は日本各地を訪ねつつ、古代の日韓関係を検証する。第五回山本七平賞受賞の問題作。


韓国併合への道

平成十二年一月二十日 中公新書 税別六百九十円
ISBN4-16-660086-9 C0231

 韓国併合へといたる道は朝鮮近代敗北の歴史を意味する。なぜ敗北したのか、その自らの側の要因と責任の所在を真摯に抉りだす作業が、韓国ではいまだになされていない。
 戦後の韓国で徹底的になされてきたことは、「日帝三六年」の支配をもたらした「加害者」としての日本糾弾以外にはなかったのである。
 本書は、日本に併合されるような事態を招いた韓国側の要因を、その国家体質・民族体質を踏まえながら、歴史的な事件とその経緯のなかから究明していこうというものである。


還る