二人の距離
No.029 月臣京介さん
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「エ・イ・リ・ア♪」
名前に区切りをつけて呼び、後ろから抱きつく。
「っ!?きゃぁぁぁぁぁ!!」

パッシーーーーン!!


ハンターベースには、久しぶりに良い音が響きました。



「へぇ、それで怒ってるってか?」
ゼロがダイナモをからかうように言う。
エックスはエックスで悪いと思いながらも、笑いを漏らしている。
「・・・笑い事じゃねえっつうの・・・あー・・・最悪だ・・・」
ソファの上でだらーんとうなだれる。
「でも、やっぱりダイナモが悪いよ。エイリアは仕事をしてたんだし」
エックスがなだめるように言うが、ダイナモの怒りは収まろうとしない。
「・・・でもひっぱたく事はないだろぉ?」
しっかりもみじが舞い落ちた頬を擦るダイナモ。
その動作に、またもエックスとゼロは笑う。
「笑うな!!」
ダイナモはムキになって言うが、頬に付いたマークのせいで、怒っていても間抜けな顔になっている。
「あの・・・ダイナモ・・・?」
プシュ、と音がして、ドアが開く。
入ってきたエイリアは、顔を紅くして手を後ろに組んでいる。
「・・・なんだよ、殴っといて今更言い訳か?」
右手を上げて言うダイナモを見て、エイリアはじんわりと目に涙を溜める。
「・・・ごめんなさい・・・」
そういって、エイリアは部屋から走り去る。
「エイリア!!」
エックスは走ってそれを追いかけたが、ダイナモは一向に動こうとしない。
「・・・お前、最低だな」
ゼロがぼそっと言うと、ダイナモは少し悲しそうな表情をして、前髪をクシャッと触った。



「エイリア・・・元気だしなよ」
ガコン!
自販機から出てきたブラックのコーヒーをエイリアに渡す。
自分もベンチに座って、ミルクティーを飲もうと、タブに手をかけた時、
「エックス・・・」
「何?」
「・・・私って・・・ダイナモに嫌われてるのかしら・・・?」
一口飲んだミルクティーをブッと噴出しそうになるのをこらえて、エックスはむせる。
「だ・・・大丈夫!?」
「ケホッケホッ・・・な・・・何で急に?」
エックスは当たり前と言えば当たり前の疑問を言う。
ダイナモとエイリアといえば、ハンターベース内の誰もが見とめるカップルだったはず。
少なくともエックスはそう認識していた。
「・・・最近、ちょっと喧嘩しちゃったんだけど・・・謝ろうとしても全然聞いてくれなくて・・・」
コーヒーを持つ手が震えている。
「さっきだってダイナモが話しかけてくれたのに・・・驚いたとはいえ・・・」
「エイリア」
急に名前を呼ばれて、驚き、体がビクッと震える。
「買い物行こう?欲しいもの買ってあげるよ」
エックスはそう言って、にっこり笑う。
「少しは気晴らしになるかもしれないでしょ?行きたくないなら、俺が買ってきてあげるから」
そう言うエックスに、エイリアも微笑む。
「・・・口じゃ言えないわ・・・」
「えっと・・・じゃあ・・・」
エックスがないとは知りつつも、周りを探す。
「あ、私手帳持ってるから・・・」
エイリアはそう言って、手帳をエックスに見せる。
「あ、じゃあ書いて。俺、すぐ買ってくるから」
エイリアはそれを聞くと、さらさらと字を書く。
だが、エックスはその動作を見て、表情が変わる。
エイリアの手が、震えていたから。
「・・・ごめんね、汚くて・・・読みづらいか・・・も・・・」
そう言うと、エイリアはベンチから立って、走り出した。
コーヒーが音をたてて床に転がる。
「エイリア!!!」
エックスは叫んだが、エイリアが止まる様子はなかった。
「・・・いったい・・・」
折り曲げられた紙に書かれている言葉を見て、エックスはエイリアとは反対方向に走り出す。
そう、ダイナモがいる部屋へ。





「おーおー・・・すげぇ土砂降り・・・滝みてぇ・・・」
ゼロは窓に手を触れて、外を見る。
ダイナモはゼロの言葉など無視して、ただ座りこんでいる。
「おまえなぁ・・・少しは反応―――――」
プシュ!!
ゼロの視線が、ドアの外に向けられる。
「エックス、どうし・・・」
ゼロの言葉など聞かず、エックスはダイナモのほうへ歩いていく。
「・・・ダイナモ、今すぐエイリアに謝れ」
いつもと違う、冷たく、鋭い声。
「はっ・・・なんで俺――――」
バキッ!!!
鈍い音がして、ダイナモの体が、ソファごと後ろに倒れる。
「っつ・・・なにを・・・」
「いい加減にしろ!エイリアが・・・俺が欲しいもの買ってあげるっていったらなんて答えたと思ってるんだ!!」
そういって、エイリアの書いた紙を、ダイナモに突き出す。
ダイナモはエックスを睨みながら受け取り、中を見る。

ダイナモの・・・笑顔が見たいです。

震えた字で。綺麗な字で。
そうつづられていた。
「ダイナモ!!」
急に走り出したダイナモを見て、ゼロは思わず叫ぶ。




(くそっ!くそっ!!俺は・・・俺はバカだ!!)
心の中で何度も毒づく。
土砂降りの中、エイリアがいると信じている場所に走る。
(あそこにいるとしたら・・・?あの場所で・・・ずぶ濡れになりながら俺を待っているとしたら・・・?)
エイリアの悲しそうな表情が浮かぶ。自分がエイリアに言った言葉を思い出す。

――なんだよ、殴っといて今更言い訳か?

(ふざけんな・・・あれは全部俺のせいじゃねえか!!)
走るスピードを上げて、あの場所に急ぐ。




「私・・・バカみたい・・・」
(来るわけないのに・・・こんなに濡れて・・・)
エイリアは木の下にいた。
木の下といえど、こう雨がすごくては水が落ちてくる。
「・・・ひくっ・・・だいなもぉ・・・」
涙が溢れてくる。
(あの人は・・・もう私に笑ってくれない。私が嫌な女だから。呆れられてる・・・)
止めたくても、涙は止まらない。
必死に目をこする。

「エイリア!!」

ビクッとして、エイリアは声の方向を見る。
ダイナモが、濡れてすっかり冷たくなったエイリアの体を抱きしめる。
「ダイナモ・・・私・・・」
エイリアが何か言おうとするのを、ダイナモが遮る。
「エイリア、ゴメン・・・俺・・・意地張ってた。でも・・・」
エイリアを抱きしめる腕の力が強くなる。
「そのせいで・・・エイリアにこんな思いさせて・・・泣かせて・・・俺・・・」
エイリアの耳に、ダイナモの声が届く。

――あなたの声は涙で震えてて。

――泣いているあなたを安心させたくて。

――私も・・・あなたの背中に、手を回してしまいました。

「ダイナモ・・・私も、ずっと悲しかった・・・寂しかった・・・」
エイリアも、涙をこぼしてしまう。
「でも・・・もう、一緒・・・」
そういって体を離し、唇を重ねる。
「エイ・・・リア・・・?」
ダイナモは悪戯っ子っぽく笑っているエイリアの腫れた目を見て、罪悪感に襲われる。
「・・・エイリア・・・」
ダイナモも、エイリアに口付けをする。

まるで、お互いの存在を確かめるように。

何度も、何度も。

二人の時間を取り戻すように、KISSをしていた。



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少しでも甘くなるように頑張ったんですけど・・・これがいっぱいいっぱいでした(爆)所詮俺の文才なんてこの程度さ♪(開き直り)
それでは、失礼します♪
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いやいやいや。何をおっしゃる月臣さん!
良い感じであまあまですよーv前半の仲の悪くなっている部分がまたスパイスとなって・・!
エイリアさんが凄くけなげで可愛いスギです!ああああ・・・ダイナモさんこんなお嬢さんに愛されててめっちゃ幸せモノなのに・・意地っ張りなんだから!もう!もう!!


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