DESIRE
No.000 蔵月裕也
------------------------------------------------------------------



彼の職業は傭兵です。
常に死と隣り合わせの危険な仕事です。

「この仕事が一番自分に合っているんだ。」
彼はそう言いました。

だけど。

貴方は知っているのでしょうか?
私がどんな気持ちで貴方の帰りを待っているのかを。
どんな気持ちで眠れぬ夜を過ごしているのかを・・・。


「・・そうだ、エイリア。俺、明日から仕事で出かけるから。」
その言葉を聞いた時、全身が緊張したのが分かりました。
そして声が震えないように気を付けながら彼にこう聞きました。
「・・・いつ頃戻ってくるの?」
「大体10日ぐらいかな・・・・。」
時間的にはそれほど長いものではありません。けれど10日後に無事に戻って来れるという保証がどこにあるのでしょうか?
「・・・怖くは無いの?」
「何が?」
「死んでしまうかもしれないのよ!?」
「まあ・・・確かに危険だと言えば危険なんだけど・・・。でも俺がそんなヘマする訳無いし。」
彼の実力は十分に分かっているつもりです。そして彼が自分の命を危険に晒すような事なんて絶対にしないという事も。でも万が一という事もあります。
そして何よりも・・・・・。
彼と少しの間でも離れてしまう事が辛いです。
一人になる事が怖いのです。
だけど、彼に余計な心配をかけさせたく無い。笑顔で見送らないと・・・・・。
そう思っていたはずなのに。
気がついたら私はぬいぐるみを抱きしめた状態で彼の前に立っていました。
「?・・・・・・うさぎのぬいぐるみ?」
「ダイナモとお話がしたいんだって・・・・。」
ぬいぐるみを彼の体に抱きつかせるような形をとらせてから続けました。
「どこにも行かないでって、うさぎさんが言ってるよ・・・?」
「・・・・・・・・・・。」
「一人にしないで。一人で不安になるのはもう嫌だって・・・・。」
駄目。
これ以上は言ってはいけない。
だけど堪えていた涙と共に自分が抑えていた感情が溢れてきます。
「傭兵の仕事なんて辞めて・・・・傍にいて欲しい・・って・・・・。」
この言葉が彼の在り方を否定するものだと分かっていたのに。
私は私を抑える事ができませんでした。
支えの無くなったぬいぐるみが足元に落ち、私は彼に泣き顔を見られないようにと、顔を手で覆って声を殺して泣きました。

「・・・うさぎさんが俺に傭兵の仕事を辞めて欲しいって言ってるの?」
落ち着いた声。
突然の彼の問いに私は条件反射的に頷いていました。
「よし。」
頭を撫でられビックリして顔を上げると彼の顔がすぐ近くにありました。
彼の優しい青い眼に私の姿が映っています。
「じゃあ、傭兵は辞めだ。」
「え・・・・ッ?」
笑いながら言った彼の言葉には一片の迷いも感じられませんでした。
「あー・・・でも傭兵辞めたら俺、プーになっちまうな・・・・。・・そうだ!イレギュラーハンターになるか!そうすればキミと一緒に仕事ができるしな!!」
「・・・・・。」
「そしたら・・・・結婚しよう。」
その言葉に胸がキュっと痛くなりました。身体中が熱くなるのが感じられます。
でも。
「・・・何を言っているの?レプリロイドの結婚なんて・・周りが認めてくれないわ・・・。」
「周りに認めてもらう為の結婚じゃなくて、一緒になる為の結婚だろ?」
「・・・・本当にいいの?傭兵の仕事を辞めても・・・。だってあの仕事は貴方にとって自分が自分で居られるものだって・・・。」
「それは昔の俺の話。今の俺にとって何よりも大切なのはキミの存在。」
彼は私を抱きしめながら言いました。
彼の温もりが伝わってきます。安心できる優しいあたたかさです。
「気にしなくていい・・・。俺はキミを悲しませる事だけはしたくない・・・それだけだ。」


うさぎさんは私です。
うさぎさんの気持ちは私の気持ちです。

うさぎさんはずっと貴方に一緒に居て欲しいと願っています。


いつまでも傍にいて欲しいと・・・・そう願っています。



------------------------------------------------------------------

自分のサイトで発表したダイエイ小説です。
実は小説を書いたのはコレが初めてだったりします。
さりげに同じ話での漫画バージョンもあったりします。
って言うか元々この話は漫画で描くつもりでいて、ネタを忘れないように、メモしておこうと思った時に、じゃあ折角だから小説にしてみよう。
ってなっただけなんで(笑。
って言うか小説は難しいです。鬼門です。


Top