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格好悪い話




君に格好悪い話をしよう。
本当に惨めで無様な話なんだ。
弱い俺の、情けない話。
ダメな俺の、凄く格好悪い話。
今までの俺が歩んできた道。
たくさんの人を裏切って、騙して、傷つけてきた、そんな話。
だけど、それでも俺、今君に、君だから聞いて欲しいんだ。
これまでの俺が、どんなに卑怯で人を騙し続けてきたのかを。
どんなにこの手が血塗られてるかを。
これから君と俺は、一緒に新しい道を生きていく。
だから今までの俺の歩んできた道を君に知っておいて欲しいんだ。
それがどんなに狡くて、汚くて、耳を塞ぎたくなるような話だとしても。
君に話したって、俺のしてきたことが許されるわけじゃない。
俺はそれを背負って生きてかなきゃいけない。
君には俺が逃げずにちゃんとやってるか、側で見守っていて欲しいんだ。ずっと。
君に俺がしてきたことを知ってもらうことで。
そうやってこれから、新しい生き方をしていきたいんだ。
逃げないでいたい。
過去をちゃんと見て、その上で未来を描きたい。
君がその道を俺に教えてくれたから。
勝手なことばかり言ってごめんね。
俺、いつも君に甘えてばかりだ。
心地良い風が髪を揺らして行く。

見上げれば、空は快晴。雲ひとつない。
そこに洗い立ての洗濯物がはためいている。
一面の青が、そこだけ白く切り取られたみたいだ。
知らず、笑みがこぼれる。
こんな大事な話をするきっかけがこれだったなんて知ったら、君は怒るだろうか。
それとも笑うのかな。
そういう大事な話はもっときちんとした時に話すべきです、なんて。
でもどっちにしたって、最後には全て受け止めてくれるんだろう。
それにね、俺はこう思うんだ。
だからこそ今日のような日を選びたい、って。
真っ青な空に真っ白な洗濯物がはためくこんな日を。
それは日常的な、だけどだからこそ俺にとっては大切な時。
かけがえのないもの。
君と一緒に手に入れた、穏やかな生活。
この景色が俺に勇気をくれるから。
きっと、向き合っていける、そう信じさせてくれるから。
もうすぐ、君は夕飯のおつかいを終えて帰ってくる。
そうしたら二人でこの当たり前の風景を眺めよう。
そして――。

君に話そう。

格好悪い話を。







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           あとがき
            時間軸のイメージは無印の景時ENDの直前か直後辺りです。

            二人が京で穏やかな暮らしを始めて、まだ間もない頃のお話。
            景時と神子のこれからに祝福を捧げます。
            不破はハッピーエンド好きなのですが、自分で書く場合には
            必ずしもハッピーエンドにならないどころか、むしろ全体的に
            薄暗い話を書くことが多いので、こういう明るめの話を書けると嬉しいです。
                                          
不破(07.9.13up)