A A A A A


僕の隣で微笑む君に




僕の隣で微笑む君に、僕の心は満たされるけれど。
僕の隣で微笑む君に、僕は何も返せてはいない。
そんなことを話したら「同じですよ。」と君は言った。
君の隣で微笑む僕に、君の心は満たされるのだと。
とても信じられない気持ちがしたけれど…君が言うのだから、君にとっての僕はきっとそうなんでしょうね。
今僕の前には、ずっと望んでいた穏やかな世が広がっている。
けれど戦が終わっても病や怪我が無くなるわけではない。
日々失われて行く命がある。
どれほど手を尽くしても、零れ落ちて行くものがあることを僕は知っている。
全てを救うことは出来はしない。
この変えられない現実に、僕の心に暗い感情が芽生えることもあるだろう。
それでも…
僕の隣で微笑む君に、兆した影は融けて消えるから。
挫けず、歪まず、僕はきっと、道を見失うことなく歩んで行ける。
この想いが伝わるといい。
僕の言葉にならない感謝が。
だからせめて僕は…
僕の隣で微笑む君に、微笑み返そう。
深く、強く。
君への想いを込めて。
「お祖父ちゃんお祖母ちゃんになっても、ずーっと、笑いあって生きて行きましょうね。」

…君の、そんな言葉通りに。






<<戻る

            あとがき
            甘い…でしょうか?慢性的な糖分不足の我がサイトに、甘みを供給との思いを込めました。
            多少なりとも今までよりも甘く仕上がっていると良いのですが、
            自分で書いていると甘いんだかなんだかよく分からなくなります。
            時間軸のイメージは弁慶無印END後です。薬師夫婦の幸福を願って。
                                                不破(07.11.5up)