扇風機


あるところに扇風機がいました。
扇風機は毎日一生懸命風を送りながら、
いつか自分も風に吹かれてみたいと思っていました。

ある日扇風機がいつものように首を振りながら
まんべんなく部屋に風を送っていると、
背中に何かが吹きつけてくるのを感じました。
首を回して後ろを見ると、昨日天井の近くにやってきた新顔の機械が
ひゅ〜っと冷たい風を送っていたのです。

そうか、これが風に吹かれるということなのか。
扇風機はちょっと感激しながら、
吹きつけてくる風の心地よさをしばらくしみじみと感じていました。

ぷちっ。
不意にコンセントが抜かれ、扇風機は止まりました。

「この扇風機どうする〜?」
お母さんが言いました。
「そうだなあ、リサイクルショップに持っていこうか」
お父さんが言いました。
「そうね、じゃこのテレビも一緒に」
「うん、こりゃ重くて一苦労だな、液晶とは大違いだよ」

扇風機はブラウン管テレビと一緒に後ろの座席に座り、
流れゆく外の景色を眺めながら、
風に吹かれたときの心地よさを思い出していました。

今日もいい天気です。


2004.06.27.