くちばし
その赤い鳥にはたまたまくちばしが3つあったので
ものをしゃべるときは左のくちばしを
餌をついばむときは右のくちばしを
何かをくわえて運んだり、草むらを探ったりするようなときは
真ん中のくちばしを使うようにしていました。
ある時赤い鳥が左のくちばしで歌いながら
右のくちばしで餌をついばんでいると
くちばしのない黄色い鳥がやってきました。
黄色い鳥がうらやましそうな顔で見ているので赤い鳥は左のくちばしで言いました。
「君はくちばしがないのかい」
「うん」黄色い鳥は、どこかから答えました。
くちばしがないせいでしょうか、ドアの中でしゃべっているような、もやもや響く声でした。
「赤い鳥くん、もしくちばしが余っているのならぼくにひとつわけてくれないかなあ」
「余ってないよ、使い分けているんだもん」
赤い鳥は即座に答えました。
黄色い鳥は、ひとつくらいくれても、あと2つもあるじゃないかと思いました。
しかし黄色い鳥は、そういうことは言いませんでした。
「赤い鳥くん、ぼくにくちばしをくれればぼくの中に詰まっているものを取り出すことができるよ」
赤い鳥はえっという表情をしました。
「君の中には何が詰まっているの?」
「ふふふ、それは秘密」黄色い鳥は答えました。
もやもや声の響き加減からいっても何かがいっぱい詰まっている様子です。
赤い鳥は気になってしょうがなくなりました。
「分かったよ、じゃあくちばしをひとつあげるよ」赤い鳥は言いました。
「そのかわり、君の中に詰まっているものをぼくに少し分けてくれるかな」
「うん、いいよ」黄色い鳥はニコニコして言いました。
約束成立です。
赤い鳥は真ん中のくちばしをパカっと外して黄色い鳥にあげました。
黄色い鳥は何にもなかったところに、くちばしをパカっと装着しました。
赤い鳥はワクワクして黄色い鳥を眺めました。
おわり。
2004.04.28.