8章 スーパーの調整

スーパーの調整は、必須の仕上げ工程です。この作業を省略すると、最高の性能は引き出せません。
自分の作品に、魂を入れる気持ちで、取り組んでください。
調整には、SSG(標準信号発生器)かTO(テスト オシレーター)を使います。

これらの測定器を使わないで調整する方法もあります。
455KHzのセラミック発振子を使った簡易発振器で、IFTを調整する方法は6章1の「ST管5球スーパーの組み立て」に、
周波数直読のBCLラジオを使った調整方法は、6章2の「mT管5球スーパー(トランス付)の組み立て方」に記載してありますので、参考にしてください。

8−1 約束事

ラジオとSSGやTOとの接続方法には、約束事があります。
それは直結するのではなくて、途中にダミーアンテナを入れるということです。
これで、ラジオ側からみて、標準のアンテナに接続したと同じ状態になります。
普通は簡略化して、アンテナ端子とSSGの出力端子を数百Ωの抵抗か、250PFくらいのコンデンサーを経由して接続します。
ラジオのアースとSSGのアースを相互に接続します。
ダミーアンテナを入れないと、ラジオのアンテナコイルが、SSGの出力抵抗でダンプされる結果になります。
もう1つの注意事項、トランスレス・スーパーを調整する時、測定器のアースとスーパーのアース端子(普通は0.1とか0.005μF経由でシャーシに接続されている)を結んでください。
測定器のアースとラジオのシャーシを直結すると、AC回路の回り込みでトラブルが発生することがあります。
原則は以上ですが、アース端子が無いラジオやバーアンテナつきのラジオもあり、これらは個別に対応するしかありません。

               SSG(TOなど)とスーパーとの接続概念図

8−2 IFTの調整方法

SSG(TOなど)で、455KHzの信号を発振させます。この時変調はONにします。
アンテナ端子から、455KHzの信号を入れ、スピーカーからピーという音が聞こえるか確認します。
しかしこの機種のように、アース端子が無い物があります。
その場合、バーアンテナのすぐ近くにSSGなどの出力リードを密結合させることで代用します(写真のミノムシクリップ)。
発振器の出力は最初 大きく、音が確認できたら出来るだけ出力を絞ってIFTの調整をするのが正しいやり方です。
バリコンは羽根が入った方向に回した方が、同調回路での減衰が少なくなるので音は大きくなります。
音が全くでない場合はIFが455KHzから大きくずれているか、接続が間違っている可能性があります。
IFのずれが大きい時は、発振周波数を上下にずらせて確認してみてください。


出力トランスの1次側に、テスターを接続、交流電圧計レンジで測定します。
昔のテスターはOUT端子がありましたが(+端子とOUT端子の間に0.1μFを内蔵)、
最近のテスターにはありませんので、必要なら外付けで0.1μFのフイルムコンデンサーを接続してください。
IFTの同調点は交流電圧計の針がもっとも振れる位置です。

なお、中間周波増幅管のカソード電圧(直流)を、測定しても検出出来ます。
カソード電圧が最も小さくなった時が、455KHzに同調が取れた時です。
無変調でも、この方法は使えるので、応用範囲は広いです。
ただこのOS-195のように、カソード抵抗を省略した機種には使えません。

IFTは普通、4箇所の調整箇所があります、順序はこだわる必要がありません。

昔の書籍では、AVCを一旦切って、IFTを調整するという記載が散見されますが、
AVCは生かしたまま調整してください。

普通IFTは、金属製の調整ネジが使われています。
しかし、溝付コアが使われていることがあります。
この場合は写真のような、プラスチック製コアドライバーが必要です。


                   

IFTを調整すると、富士山のように、両端に裾野があり、中央にピークがある感じが実感できると思います。
形は左右対称になるはずですが、発振など異常があると歪んだ形になります。
異常があれば対策が必要です。
またピークが実感出来ず、何となくだらだらしている感じだと、IFTの不良(同調コンデンサーの不良が多い)を疑った方が良いでしょう。

8−3 目盛りあわせ

ダイアルは、目盛りがキャビネット本体に刻まれているので、目盛りを紙に写して、糸と並行に貼り付け目安にします。
まずダイアル目盛り600KHzの位置で、発振コイルのコアを調整してあわせます。
次に1400KHzの位置は発振回路のトリマを調整してあわせます。
相互に影響しあいますので、2〜3回繰り返し確認してください。
この時SSG(TO)の出力リード線は(受信可能範囲で)、バーアンテナと、できるだけ離して疎結合としてください。
SW(短波)についても、同様に合わせます、4MHzではコイルの割り溝内部のエナメル線の位置を、動かして調整します。
この方法では周波数は大きくは動きません。その為SWを先に調整して、その後MWをあわせる方が現実的と思われます。
すべて、臨機応変な対応が望まれます。

600KHzの位置で、ダイアル目盛りをあわせる。
ダイアル糸に、指針の位置をマークしておくと便利。
1400KHzの位置で、ダイアル目盛りを合わせる。

8−4トラッキング調整

600KHzで感度最高になるように、バーアンテナのコイルの位置を動かします。
コアの中心側にコイルを動かすと、インダクタンスが増加。
コアの端に動かすと、インダクタンスは減少するので、テスターの指針が最も良く振れる位置で固定します。
1400KHzも同じように、トリマを調整します。
SWについても同様です。
調整のコツは、VRは音量大に、SSGとの結合は出来るだけ疎にして入力信号を小さくすることです。




発振コイルやトリマには、名称は書いてありません。
回路図や配置から、自分で特定してゆきます。
発振コイルは、シャーシ下側に実装されている事が多いです。
巻数の少ない方がSW、多いほうがMWと判断すると良いでしょう。
パディングコンデンサーも区別する上で標識になります。
写真はオンキョー OS-195の内部。



オンキョー OS-195



オンキョー OS-195のトリマ
4個のトリマが組み込んであるだけです。
見ただけでは、どれがどれかは不明です。
回路を追いかけて行き、判定します。


東芝 かなりやQ

この機種のアンテナコイルは、一つのボビンにMWとSWのアンテナコイルが巻いてあり、実質的にコイルの増減は難しいです。
IFの調整と目盛りあわせ、それに周波数の高い方でトリマを調整する程度で、妥協することになります。



   


かなりやQのシャーシ内部。

発振コイルは、ボビンに割れ目をつくり、この中にコイルの一部が巻き込んであります。
この位置を動かすことで、インダクタンスが微調整できます。


短波の発振コイルの微調整は、MWより多少容易でしょう。

トリマは、4個1組で組み込まれています。
表示がありませんので、
発振コイルとパディングコンデンサーに接続された先を探して区別します。
当然ですが、MW とSWではコイルの巻数が違います。
その為、区別は容易です。

コイルの製作で、インダクタンスが大幅に狂って狂っている時の対処法


自作したコイルのインダクタンスが、
大幅に狂っていると、調整棒を入れた程度では感度が向上しません、
したがって、巻数が多いのか、少なすぎるかの判断が出来ない場合があります。
このような時は、グリッドディップメーターで共振周波数を測定すると便利です。