6−1 ST管5球スーパーの組み立て(訂正版

文字は前回原稿との変更箇所

ST管を使った5球スーパーの組み立てです。
どのような真空管を使って組み立てるかは計画時の楽しみですが、
日本のスーパーの標準的構成だった、6W-C5 6D6 6Z-D3A 6Z-P1 80BK(80HK)を使って組み立てることにします。
必要な電源トランスを選ぶために大まかな消費電流を算出します。
合計値を計算すると、6.3V のヒーターは2Aあれば良いことがわかります。
同じようにB電流は43.3mAですから、50mA定格のものを選べば充分です。
整流管は40mA最大定格の12Fでは厳しいが、80BK(HK)では余裕が有ることがわかります。
出力管に6Z−P1を使う場合スクリーングリッドの最大定格が180Vですから、B電圧は180〜190V程度に選ぶと良いでしょう。
ここで190Vとはカソードバイアスの約10V分を計算したためで、定格オーバーにはなりません。
電源トランスは 平滑用の抵抗での電圧降下を見込んでAC 200〜230V程度のものが適当です。
ここで示したB電流は最大値なので、実際の使用状態ではAVCの影響などで電流は減少します。
昔は希望の電源トランスは簡単に購入で出来ましたが、最近は種類が限定されます。
手持ちのトランスを有効に活用する為にも回路を工夫して、実験すると良いでしょう。
平滑用の抵抗値を変更することによって、多少B電圧の高いトランスでも使えるようになります。


出力管に42を使うことも出来ます、この場合電源トランスに多少容量の大きな物を準備する必要があります。

42出力 12F整流のメーカー製ラジオも存在します。
B電圧を下げ、回路を工夫すれば消費電流も減少し、最大定格40mAの12Fでも42出力のスーパーが出来るわけで、実験してみると面白いでしょう。
トランスが小さく B電流容量が40mA程度しか無い場合にも応用すると良いでしょう。
またヒーター電流が不足した時は真空管42を41に変更すると0.3A、6Z−P1を6G6Gに変更すると0.2Aの節約になります。
工夫することで、手持ちのトランスを活かして使いましょう。

真空管の消費電力
6W−C5 6D6 6Z−DH3A 6Z−P1 42 80BK 6R−E13 ランプ
ヒーター電圧 6.3V 6.3V 6.3V 6.3V 6.3V 5V 6.3V 6.3V
ヒーター電流 0.35A 0.3A 0.3A 0.35A 0.7A 0.7A 0.2A 0.15A
プレート電流 3.5mA 8.2mA 1.1mA 15mA 34mA   1mA
(スクリーングリッド電流) 8.5mA 2mA   2.5mA 6.5mA   1.5mA

6Z−P1使用時 電源トランスの容量算出
6.3V 1.65A
5V 0.7A
B電流 43.3mA
42使用時 電源トランスの容量算出
6.3V 2.0A
5V 0.7A
B電流 66.6mA

今回は手持ちの関係で浦川電機の電源トランス(中古)を使用しました。

余談
中古の電源トランスは品質がばらばらです、レギュレーションも良い物から、極端に悪い物まであります。
特にB電圧は無負荷状態から実負荷の変動が10〜20%有りますので、表示だけでなく電圧の実測はやった方が良いでしょう。

真空管

日本の5球スーパーの標準的な真空管を使うことにしました。


6W-C5 6D6 6Z-D3A 6Z-P1 80BK(80HK)の構成です。
なお80BKと80HKはほぼ同じ規格です。、
東芝は80HKをその他のメーカーは80BKを製造していました。
ヒーター電流と最大直流出力電流に僅かな差がありますが、互換性があると考えてよいでしょう。

球の入手に困ったら
6Z−P1が入手できないときは6G6Gを使いましょう、オクタルソケットが必要ですが、
外形 電気的特性は殆ど同じです、ヒーターは省電力になっています。
80BKが入手できないときは1V(6.3Vヒーターのアメリカ製半波整流管)を使いましょう。
6D6はアメリカ製が使えますので、入手は容易です。
6W−C5と6Z−DH3Aは代わりがありません、GT管の6SA7ーGTや6SQ7ーGTを使う方法もあります。


ST管ソケットを準備します。
これは新品は難しいです、中古品を捜すことになります。
Ut:1個
UZ:3個
UX:1個

マジックアイをつける場合にも別にソケットが必要。


シールドケース

6D6は背丈がメーカーや製造時期で微妙に違います。
できればぴったり合う物が理想です。
6Z−DH3Aに使うとハム減少に役立ちます、アマチュアーの自作では省略することが多いです。


430PF 2連バリコン。
トリマ付が必要です。
MW SWの2バンドラジオに使われた物はトリマが付属していませんので、
それらのバリコンを使う時は必ずトリマを準備してください。
適当な場所に外付けして使います。

回路図にはバリコンに付属していると言う前提で記載を省略していることがあります。
これを誤解して トリマの無い5球スーパーを最近見かけますが、間違いです。
容量は10ないし15PF程度のものが良いでしょう。


スターの5球スーパーコイルとパディングコンデンサー。


スターのIFT A4(前段) B4(後段 検波用)です。



アルミ製シャーシ。
中古品を流用しました。


抵抗とコンデンサーは現在でも新品が入手できます。
真空管も価格を無視すれば、新品の入手も可能ですが、
中古品であれば容易に揃うでしょう。
この部分削除あり

コイルは復刻版が販売されているので入手は容易です。
バリコンは新品のアメリカ製が入手できますが、軸がインチサイズで少し太いのと、
容量が少し多いようです。

日本製の中古品を選ぶ場合、羽根が変形してショートしていることがあります。

日本製のバリコンは最大容量430PFの物が多いですが、さらに古いものは400PF以下のものが多いです。






バリコンの取り付け金具はオリジナルの物を紛失しているので、
L金具を購入して利用しました。
クッションは小型のゴムブッシュを利用。
バリコンのネジは旧JISネジです。
昔のダルマ型のプラグの壊れた物から取り出した3mmのネジが使えます。
長さも適度に短いのが嬉しいところです。
当時のラジオから取り外した3mmのネジは一般に長いです。
注意しないと締めた時に先端がバリコンの羽根に触ります。









主要部品を組み込んだ後、まずアース母線を張ります。
ケミコンのアースとB巻線のアースはまとめてケミコンの近くでシャーシに接続します。

ヒーターの片側は裸の錫メッキ線を使い、アースと共用します。
ヒーターの6.3V側をビニール線で配線します。
線の太さは電流に耐えられる大きさにしてください。
ヒーターの配線を2本のビニール電線を使い、より合わせて配線するとハムが少ないという方もいます。
この程度の5球スーパーではハムを気にして、ややこしい配線をするより、
間違い防止のため ヒーター配線の片側をアースに使うぐらい割り切る事をお勧めします。





組み立て完了後の写真。


その内部写真。

平滑用抵抗3KΩで組み上げて動作試験をしました。
ところが6Z-P1のスクリーングリッド(G2)の電圧が200Vになります。
これは無信号時の電圧で、受信するとAVC電圧が加わり、電流が減少するのでさらに電圧が上昇します。
6Z−P1はプレートが250V G2は180V(カソードと各電極間の電圧)です。
カソード電圧を差し引いてアースからの電圧は190V以下にする必要があります。
この為 平滑用の抵抗は3.6KΩに変更しました。
使うトランスで電圧が異なりますので、1〜5KΩの範囲で調整してください。
この抵抗で消費される電力(電流の二乗×抵抗値)に比べ充分余裕のあるW数の抵抗を使ってください。

入力側のコンデンサーは22μF程度にしてください、大きくするとハムが減少しますが、整流管に負担がかかります。
出力側の容量は抵抗値(KΩ)×容量(μF)で計算して100を目安にしました。
3KΩ 22μF(3×22=66)でも充分実用になります。

しかしスピーカーを大きな箱に入れると、この程度でもハムが気になる事があります。
その場合は220Ω+22μF程度のフイルター回路をもう1段前に追加、出力管のプレートここから供給、
その後に従来のフイルター回路を接続した方が効果的です。

6D6のG2も120V近くありました。
規格は最大100Vです、真空管の寿命を考えると70〜80Vを目処にした方が無難ですが、今回は12KΩを使い100Vで妥協しました。

これも実験して決めてください、W数は3W程度は欲しいです。

平滑用 3.6KΩの抵抗は80BKの4ピン(K)と、6Z-P1の3ピン(G2)の間に組み込みましたが、
ケミコンの端子に配線しても電気的には同じですが、平滑用の抵抗は熱を持ちます。
特に最近の抵抗は小型になったのでその分放熱面積が小さく、さらに高温になりやすいです。
熱を嫌うケミコンの端子を放熱器代わりに使うのは避けてください。


抵抗値 W数 備考
R1 22KΩ 1/4W〜 発振グリッドのバイアス用、電流は0.5mA程度流れる、一般的には20KΩが使われている。
R2 300Ω 1/4W〜 IF増幅管のカソードバイアス R2=Eg/(Ip+Isg) 3V/(8.2mA+2mA)=300Ω、入手できなければ330Ω。
R3 12KΩ 3W G2の電圧が70〜80V程度になるよう抵抗値を決める、電流が多いのでW数注意。
R4 1MΩ 1/6W〜 C4とあわせAVCのフイルター用
普通はCRの時定数を0.1秒程度に選ぶ(0.1μF×1MΩ)、メーカー製では0.05と2MΩの組み合わせも多い。
短波主体の通信型受信機では短い周期のフェージング対応に時定数を更に短くした物もある。
R6 5.6MΩ 1/4W〜 6Z-DH3Aのグリッドバイアス用、2〜10MΩ。
R7 220KΩ 1/4W〜 6Z-DH3Aのプレート負荷、100〜250KΩを使う。
≒Rpか その2〜3倍程度に選ぶ。
ハムを嫌う場合、6Z-DH3Aにもシールドケースを使い、プレート回路にも47KΩ+2.2μF程度のデカップリング回路を追加すると良い。
R9 470KΩ 1/6W〜 R7の2〜3倍
VR 500KΩ A型またはD型 滑らかな音量調整の為にはAまたはD型のカーブを持ったものを使う。
感度重視の場合1MΩを、音質重視の場合100KΩを使うこともある。
R10 680Ω 1W 6Z-P1のカソードバイアス用、600〜750Ωでも可。  Eg/(Ip+Isg) 10.5V/(15mA+2.5mA)=600Ω
R13 3.6K 5W Cが180〜190V程度になるように抵抗値を決める。
C1 100PF 50V耐圧で可 発振回路との結合用 50〜100PF 。
C3 0.1μF 耐圧DC250V以上 RFのバイパス用 。
整流管に12Fを使う時は400V耐圧が望ましい。
C4 0.1μF 耐圧50V RF IFのバイパス  (AVCの時定数) 
C5 0.1μF 耐圧50V IFのバイパス用
C6 100PF 耐圧50V IFのフイルター  〜250PF
C8 0.01μF 耐圧50V 希望音声周波数を通過させる値 0.005〜0.01を通常使用
C9 200PF 耐圧DC250V以上 音声周波数では減衰が少なく、IFでは減衰する値、100〜250PF。
IF信号のバイパス用です、この回路はIFフイルター回路を簡略化していますので、多少大きめの値にしてあります。
整流管に12Fを使う時は400V耐圧が望ましい。
C10 0.01μF 耐圧DC250V以上 高い絶縁抵抗が要求されます、フイルムコンデンサーかセラミックコンデンサーが無難です。
C11 0.005μF 耐圧AC250V以上 高周波バイパスや音質調整用に挿入します。
音質調整を別につけた時でも高周波バイパス用に0.002μF程度は入れてください。
出力トランスにパラに入れますので、思わぬ高電圧が加わります、できるだけ耐圧の高い物を選ぶこと。
C12 0.01μF 安全規格 安全規格に認定されたし製品を選ぶ。
C21 10μF 耐圧50V 6Z-P1のカソードバイアス用 10〜100μF、昔は10程度だが現在は47μF程度の方が入手しやすい。
C23 22μF 耐圧315V以上 容量が大きいと整流管に無理が、22μFが適当、大きくても33μF以下に。
整流管に12Fを使う時は400V以上の耐圧が望ましい。
C24 22μF 耐圧315V以上 容量が大きくとも問題ない、R13(KΩ単位)×C24(μF)=100程度あれば実用的、それ以上でも問題無し。
ハムが気になれば、前段にR12(220Ω)とC22(22μF)のフイルターを追加。
C23の容量を47μF程度に増加させ、この位置から出力管のプレートに接続する。
整流管に12Fを使う時は400V以上の耐圧が望ましい。

アンテナ側コイル L1 一次側コイルでロー・インピーダンスのものとハイ・インピーダンスの物が有ります。
ローインピーダンスは自己共振周波数を放送波帯の上側になるように巻数は少ない。
普通20〜30μHです、こちらの方がトラブルは少ないです。
ハイー・インピーダンスの物は自己共振周波数を放送波帯の下側になるように巻きます。
受信周波数による感度変化が少なくてよいのですが、アンテナが短いと自己共振周波数が放送波帯にいり、
トラブルを起こす製品も散見されます。
このようなときにはL1にパラに100PF程度を接続すると解消します。
L2 210μH max430PFバリコンを使用する場合のインダクタンスです。
発振コイル L3 105μH カソードタップはアース側から10%付近です。


注意
最近 スーパーの製作記事で同調回路のバリコンにトリマを省略した物を見かけます。
昔の回路図は、バリコンそのものにトリマがついている前提で書いてあります。
もし回路図に図示されていなくても不要という意味ではありません。



組み立て後 マジック・アイがどうしてもつけたくなり、追加した。


5球スーパー回路図(マジックアイつき)

この回路図はこれから組み立てる方用に抵抗やコンデンサーの値を少し修正してあります。
5球スーパーのやさしい設計法記載の標準的な回路から多少簡略化された回路図になっています。

@B電源の平滑回路の単純化や低周波増幅段のデカップリング回路の省略。
AAVC回路のデカップリング回路の省略。
BIFのフイルター回路の省略。
6D6の周りの点線はシールドケースを意味します、これは必須です。
太線はアースです、当然ですがシャーシと接続されています。


XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

ここからは追加分。

完成したら整流管を除いて全ての真空管をソケットに挿入し、臭いや煙に注意しながら通電します。
少しでも焦げ臭いようでしたら、即通電をやめます。
正常であれば真空管やランプが点灯しているか確認します。
大丈夫であれば、テスターを交流電圧計にして ヒーター、整流管のプレート電圧を測定します。
ヒーター電圧はトランスの表示値、B巻線は無負荷ですから表示値より多少高い電圧を表示するはずです。
異常が無ければいよいよ整流管を挿します、スピーカーへの配線を忘れないようにしましょう。
正常に音が出れば一応組み立て完了です。
無音であれば、通電は中止して配線を再確認します。
配線に間違いが見つからず、原因不明の場合は各部の電圧を測定してゆきます。
回路図の番号順に調べてゆくと良いでしょう。
試作機での測定値を表に示します。
個々の真空管や部品の違いで測定値が多少異なることはあります、目安として使ってください。
スーパーの場合、強い電波を受信中は消費電流が少なくなり、電圧が上昇します。
両方の測定値を示しますので、参考にしてください。
ここでマジックアイが閉じる状態とはAVC電圧が−7Vくらいあることを意味します。
東京都区内でNHKやTBSを受信すると比較的短いアンテナでもこの状態になります。

場所 JOAK受信中
(マジックアイ閉じる)
離調状態
(マジックアイ閉じない)
備考
@ AC 230V AC 230V 使った電源トランスの規格により上下します。
トランスに表示してある電圧に近ければ大丈夫です。
B 238 233 整流管のカソードの電圧(DC)ですから、プレートの電圧(AC)より幾分高い電圧が出ます。
もしこの電圧が低いと整流管の劣化か、回路の不具合でB電流の増加が原因。
C 188 174 出力管のプレート電流以外の全ての電流が流れます、
平滑用の抵抗の値と電流でこの部分での電圧降下を計算し、大きく違わなければ正常です。
D 235 230 出力管のプレート電圧はBよりトランスの巻線抵抗分だけ低い値になります。
同時にG2の電圧を測定してください、この部分はCと同じです。
E 10.5 9.6 出力管のカソード電圧 低すぎる時は真空管がエミ減(劣化)している可能性が有ます。
D 88 80 この部分の電圧は測定するテスターによって低く出ることがあります。
G 100 92 できれば70〜80Vになるように抵抗を変更したかったのですが、妥協してしまいました。
気になればR3の抵抗値を変更してください。
H 1.0 2.5 AVCの電圧で大きく変わります。

配線図と現物を見比べながら電圧も測定して行くと 不具合箇所が発見できます。
上記に記載以外も配線図を参考に電圧を測定してください。
真空管の各電極の電圧は測定しておくと何かと役立ちます。
ST管は中古品を使うことが多いので、納得できないようなこ現象が発生したら、信頼できる真空管に交換してみるのが現実的対処法です。

調整方法

組み立てが終わり、受信もできるようになったら調整です。

まず中間周波トランスの調整
455KHzに調整します。
スターやトリオなど既製の中間周波トランスはラジオに組み込んだ状態で455KHzにほぼ合うよう調整済みでした。
したがって組み立て後 調整ネジを半回転もすれば455Khzに調整可能でした。
しかし中古品や最近の新品ではこれは期待できません。
テストオシレーターや標準信号発生器(SSG)を使い調整する事をお勧めします。
これらの測定器が無い場合は自作の簡単な発振器でも充分です、回路図などは10章「あると便利な冶具の自作法」をご覧ください。

455KHzのセラミック発振子とCMOSで組み立てた発振器





発振器のアンテナリードをラジオのアンテナ(側)コイルに数回巻きつけて結合します。
この時バリコンは周波数が低い方で、放送の受からない位置にしておきます。
マジックアイが最も閉じるようにIFTのネジを調整します。
おおよそ調整ができたら、コイルに巻きつけたリード線を解き、
写真のようにコイルに接近させる程度にして再度調整します。
マジックアイの閉じ具合をみて結合度を加減すると便利です。
ただ悲しいかなこの方法は455KHzの固定発振器ですから、IFTが大幅にずれていると役立ちません。

その場合はテストオシレーターや標準信号発生器(SSG)、
グリッドディップメーターのような可変発振器を利用した方が簡単です。

受信周波数範囲の調整
普通はダイアルにあわせて調整しますが、今回はダイアルがありません。
簡単に放送電波を利用して受信周波数帯にあわせます。
JOAK(594)とJORF(1422)をマーカー代わりに使うと良いでしょう。
この放送が聞こえない地方の方は、近くの放送局を利用してください。
バリコンの羽根が最も重なった位置を0として、594KHzの放送が1/5くらいの位置で受信できるようパディングコンデンサーを調整。
1422KHzの放送が4/5より少し抜けた位置で受信できるようにバリコン付属のトリマを調整します。
この調整は相互に影響しあいますので、2〜3回繰り返して確認してください。
これでほぼ受信範囲はカバーできます。
念のため 各地の放送を受信してみて確認すると更に良いでしょう。

トラッキング調整

これも放送を受信しながら行います。



まず594KHzの放送を聴きながら調整棒をアンテナコイルに挿入します。
磁気コアと真鍮が両端に埋め込まれています、どちらでもマジックアイが開けばOKです。
真鍮を入れた時マジックアイが少しでも閉じれば、コイルのインダクタンスが多いことを意味します。
磁気コアを入れた時 同じことがおきれば、コイルのインダクタンス不足です。
調整にはコイルを巻き足したり、解いたりする必要があり、経験がないと難しいです。
余程程度が悪くない限り、そのままにしておいた方が無難です。
次に周波数の高い方は1422KHzを受信しながらバリコン付属のトリマで調整します。



どうしてもインダクタンスを調整したい場合の調整法
多すぎる場合:コイルを解いて調整します、カット・アンド・トライで実施。
不足の場合 :コイルを追加して巻くのは大変なので、トランジスターラジオ用のバーアンテナの磁気コアの破片をコイルの中に埋め込むと楽です。
         破片の大きさ、組み込む位置で微妙にインダクタンスが変わります、これも実験で大きさや場所を決めてください。
この調整は普段使用するアンテナを接続してやると、更に効果的です。
コイルを調整した後は必ずトリマも再調整してください。


調整完了したST管スーパー。
完成したら、各部の電圧を測定しておくと、後日トラブルが発生した時に役立ちます。
マジックアイが閉じる程度の強さの電波を受信した時と、
開いた時の2つの状態で電圧を測定してください。




完成時のイメージ

ST管 5球スーパーの配線図と実体図


この作成例は昭和28年頃のもので、
実際組み立てる場合はもう少し部品を省略しても大丈夫です。

@6ZDH3Aのシールドケースは不要。
A6WC5のG3に100KΩと0.1μFを使ってAVCをかけてありますが、
この部品は省略してIFTAのAVCと直結して大丈夫です。
BPU端子が設けてありますが、この回路ではラジオ放送が混入して実用上は問題があります。









原稿はここまで