2007年7月19日
2007年7月21日
日本では昭和10年代にもST管のスーパーは作られましたが、殆ど残っていません。
現在市場で入手できるものは戦後から昭和30年頃にかけて作られたものが殆どです。
ST管のスーパー全般に ペーパーコンデンサーは殆どリークをおこして使えません、基本的に全数交換してください。
逆に抵抗はそのまま使えるものが多いです、テスターで確認してください。
ケミコンは使える場合と使えない場合が混在します、ケミコンテスターで確認してください。
リークが多い場合は交換してください。
修理例のシャープ AR−310 は昭和27〜28年に製造された機種です。
昭和27年発行のシャープニュース。
AR−310 定価 16,500円
ラジオの下にあるのはプレーヤーです(別売)。
これを接続することで、電蓄になります。
この為 このラジオはPU(プレヤー)に切替た時に、
ラジオの音が混入しないように局部発振を止める仕組みがしてありました。
ここで使われていたのは2回路の接点を持ったスイッチつきVRです。
ただ特殊なVRなので、現時点入手できません、
今回の修復はこの回路を省略して修理しました。
キャビネット底面にシャーシを固定するネジがあります。
これを取り外します。
電源トランスの確認
断線している可能性は低いですが、稀に焼けていたり、断線していることがあります。
まず 焼けた形跡が無いか目視で確認します。
昭和20年代前半に作られたものは、電力不足の時代、昇圧トランスを使った結果焼けている可能性があります。
外観が大丈夫な場合、整流管80B(H)Kを抜き、他の真空管は挿したままで通電、各巻線の電圧を確認してください。
この場合 B巻線と整流管ヒーター巻線の電圧は無負荷ですから、多少高めに出ます。
稀ですが、巻線間でショートしていることがあり、この時は異常に低い電圧になります。
パイロットランプの配線がシャーシとショートしている場合も同様です、なれるとすぐ判りますが、規定電圧が出るか確認した方が良いでしょう。
なおナショナルの真空管ラジオはパイロットランプへのビニール配線がぼろぼろに劣化したものが多いです、
見ると酷さがすぐ判りますので事前に交換することをお勧めします。
固定抵抗の確認
抵抗は再利用できる可能性が高いです、
ただコンデンサーと組で(並列)に接続されているものはリード線が短すぎるので新品と交換したものがあります。
6Z−DH3Aのプレート負荷の250KΩは370KΩに変化していました、これでも使えますが、交換した方が無難かもしれません。
表示 | 実測値 | 判定 |
30KΩ | ー | 交換 |
15KΩ 3W | 16KΩ | そのまま使用 |
300Ω | ー | コンデンサーと組で交換 |
2MΩ | 2.4MΩ | そのまま使用 |
5MΩ | 5.6MΩ | そのまま使用 |
250KΩ | 370KΩ | そのまま使用 |
500KΩ | 600KΩ | そのまま使用 |
50KΩ | 68KΩ | そのまま使用 |
500Ω | 500Ω | そのまま使用 |
2MΩ | 2.4MΩ | そのまま使用 |
1MΩ | 断線 | 交換 |
3KΩ 3W | 3.2KΩ | そのまま使用 |
コンデンサー(ペーパーコンデンサーとチタコン)
表示 | 判定 | ||
220PF | 50V耐圧で可 | ||
0.05μF | 交換 | 250〜400V耐圧(6W−C5や6D6のスクリーングリッドバイパス用) | |
0.05μF | 交換 | 50V耐圧で可 | |
0.05μF | 交換 | 50V耐圧で可 | |
200PF | 50V耐圧で可 | ||
250PF | 250または400V耐圧 | ||
0.002μF | 交換 | 50V耐圧で可 | |
0.1μF | 交換 | 400V耐圧(数μFのケミコンでも可) | |
0.01μF | 交換 | 250または400V耐圧 | |
0.02μF | 交換 | 630V耐圧 | |
0.005μF | 交換 | 630V耐圧(実際はAC250Vの0.0047μFを使用) | |
0.005μF | 交換 | 安全規格認定品(AC電源回路用) |
ブロック型電解コンデンサーの漏洩試験 1mA以上でNG この為交換した。
ケミコンテスターで試験して、漏洩電流が少なければそのまま使用します。
ただ容量の減少は確認できませんので、動作試験でハムが多ければ、容量の減少と判断してください。
マジックアイソケットへの配線:劣化が激しいので交換。
PL(ランプ):断線したものを交換。
ツマミ:オリジナルのツマミ紛失の為、普通のねじで固定するつまみに交換、この為軸を加工する必要がありました。
オリジナルのツマミが使える時は細工の必要はありません。
VR:これは新品に交換した。
オリジナルは2回路のON OFF接点のスイッチつきだったが、このタイプは現在入手不可能。
スイッチなしタイプに変更した、この為PU回路は使用不能。
オリジナルの発振回路はアース側をPUに切替時切り離す設計になっていた、
これはPUに切り替えた時、ラジオが混入するのを防止する為です。
ロータリースイッチ:これはオリジナルが使用できた。
なお接触不良でもロータリースイッチに接点復活剤をかけてはいけません。
特に高い
電源コード:使えるものもありますが、新品に交換した方が安心できます。
100Vの電源回路に直接接続されるコンデンサーは安全規格認定品に交換しました。
ヒューズ:1Aの物か確認してください、極端な例ですが5Aのヒューズや針金が使われていることがあります。
修理完了したシャーシ内。
ブロック型のケミコンが不良なので、チューブラ型のケミコンに交換しました。
各部分の電圧
各部分の電圧を測定すると共に、順次クリック音を確認してゆくと、どの回路で故障しているか切り分けが出来ます。
クリック音が出る部分と、出なくなった部分の間が故障箇所です。
電圧は内部抵抗20KΩ/Vのテスターで測定した大まかな値です、電波の強さによってB電圧は10V程度動きます、目安とお考えください。
場所 | 写真の中の番号 | 備考 | |
AC入力 | AC100V | ||
B巻線(80BKのA) | AC280V | メーカー製ラジオとしては280Vは多少高すぎる感じ、でもこの場合は正常値。 メーカーによって80BKか80HKを作っていました、規格はほぼ同じです。 東芝が80HK、他メーカーは80BKが多い。 |
|
80BKのK(Cピン) | @ | DC295V | トランスB巻線のAC電圧より、少し高いDC電圧なら正常。 低過ぎる場合は、B電流が多すぎるか、整流管の劣化。 ケミコンの不良(漏洩電流の増加、容量不足) B電流が多すぎる原因は結合コンデンサーのリークで出力管のG1に+電圧が加わるケースが多い。 |
平滑後のB電圧(42のBピン) | B | 230V | マジックアイが閉じる程度の電波を受信中の電圧。 無信号時はB電流が増加するので多少降下する、どちらにしても数V程度なので、誤差の範囲。 平滑抵抗3KΩによる電圧降下が少ない時は真空管の劣化や、15KΩ(3W)の断線の可能性あり。 電圧が低すぎる場合はケミコンの漏洩電流が増加していないか確認。 |
42のプレート電圧(42のAピン) | A | 280V | 出力トランスの一次側のコイルの抵抗による電圧降下があります。 測定時クリック音あり。 クリック音がない場合はスピーカーの不良で、ボイスコイルの断線やセンターポールとの接触が主原因。 出力トランスのレヤーショート、トランスに並列に入れてあるコンデンサーの短絡、スピーカー配線の不良でも発生。 |
42のカソード電圧(42のDピン) | D | 14V | 普通は15V前後が多い、12V以下の時は42の劣化、 17V以上の時はグリッド(G1)の電圧を測定してください。 念のためカソード抵抗の値も確認のこと。 |
42のグリッド電圧(42のCピン) | C | DCで0V | この部分に少しでもDCで+電圧が出てはいけない。 真空管を抜いて+電圧が消えると真空管の不良、消えなければ結合コンデンサーの絶縁不良。 |
6Z−DH3Aのプレート電圧(Aピン) | E | 65V | 60〜100V程度、測定時クリック音あり。 次に6Z−DH3Aのグリッドを指で触ってぶー音を確認できれば、低周波増幅段が働いていることが確認できる。 |
6D6のプレート電圧(Aピン) | G | (225V) | B電圧とほぼ同じ、測定時同調がずれるのでAVC電圧が変化、 B電流が増加するので、テスターの指示は225Vだが、実際は230V。 高周波が重畳しているので、テスターによっては指示値が違う可能性あり。 測定時クリック音あり。 電圧が正常で、クリック音が出ない時は6Z−DH3A(検波回路 低周波増幅回路)を確認。 稀にIFTの不良(内臓コンデンサーの不良、2次コイルの断線など)もある。 0Vの時はIFT 一次コイルの断線。 |
6D6のG2電圧(Bピン) | H | 87V | このラジオによらず一般に80〜100Vが多い。 120V以上ある時は、6D6か6W−C5の劣化か、どちらかが働いていない。 低すぎる時(60V以下)は15KΩの抵抗が変化していないか確認。 87Vはマジックアイが閉じる程度の電波を受信中の値。 無信号時は84V程度に下降。 |
6D6のカソード電圧(Dピン) | I | 0.8V | マジックアイが閉じる程度の電波を受信中。 無信号時は2.3V程度に上昇。 |
6W−C5のプレート電圧(Aピン) | J | (225V) | B電圧とほぼ同じ、測定時同調がずれるのでAVC電圧が変化、 B電流が増加するので、テスターの指示は225Vだが、実際は230V。 高周波が重畳しているので、テスターによっては指示値が違う可能性あり。 測定時クリック音あり。 クリック音を確認できない場合はIF回路を確認。 0Vの時はIFTの断線。 |
6W−C5のG2 G4電圧(Bピン) | K | 90V | 6D6のBピンと同じ。 |
6W−C5のG1電圧(Eピン) | L | (−10V) | 発振電圧です、マイナス電圧がでます なお測定時受信できない。 電圧が確認できない場合は発振していない可能性あり。 このラジオではG1と発振コイルの結合にコンデンサーを使わず、片側が開放された巻線の容量で代用している。 見慣れない回路なので要注意、間違いでは有りません。 稀にこのコイルが断線していることがある。 発振しているかどうかは、TRラジオを近づけてモニターしてみると判る。 |
6E5のプレート電圧(B) | 150V | 電圧はマジックアイの閉じ具合で大幅に変動する、数十V(開いた時)〜150V(閉じた時) 0Vの時は1MΩの抵抗断線、これは比較的多い。 |
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6E5のターゲット電圧(C) | 230V | B電圧と同じ。 0Vの時はリード線の断線か、配線間違い。 |
真空管で点灯しないものがある | ☆ヒーターの導通試験が大丈夫でも、真空管が点灯しないことがあります。 真空管を触って、ガラスが熱い場合は空気入りになっています。 ☆ST管によくある故障として足の半田付け不良で、通電後すぐ(数秒程度)導通が無くなる現象が有ります。 これはベースのヒーター部分の半田付けをやり直すと殆どの場合回復します。 |
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ハムが多い | ☆一般に真空管ラジオはハムが出ます、他の真空管ラジオに比べ、ハムが大きいようならケミコンの不良も疑ってください。 特に木箱いりでスピーカーも口径が大きいものは低音が出やすいです。 昔のラジオはこんなものと割り切るべきです。 どうしても対策したい時には、もう1段200Ωと20μFを使ったフイルターを前につけ、 そこからスピーカーに供給すると良いでしょう。 |
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AVCが効かない | コンデンサーのリークが酷い、抵抗の断線。 | |
アンテナをつけても感度が悪い | ☆アンテナコイルは断線している事が比較的多いです。 テスターで導通を確認すると良いでしょう。 アンテナコイルに触って、音量が大きくなる時は特に注意。 ☆IFTの調整ずれ IFTの不良 製造後半世紀経過しているので、コンデンサーが不良になっている確率が結構あります。 調整しても、455KHz付近でピークが確認できない時はIFTを疑ってみる必要があります。 時にマイカコンデンサーは吸湿して、Qが落ちやすいです。 |
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がりがり音 | 雷ではないのにガリガリいう時はコイルの切れかかりを疑います。 時々「カリッ」と言う感じの場合もあります。 ☆出力トランスの切れかかり ☆IFTのコイルやコンデンサーの不良 |
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VRを回すとがりがり | VRの不良は新品と交換した方が無難です。 | |
VRを回しても音が絞りきれない | ☆6Z−DH3Aのプレート回路の高周波バイパスコンデンサーの不良(容量抜け) ☆VRの不良で、残留抵抗(500KΩのVRを絞りきった位置で)が数KΩもあると音が大きく、使用に耐えません。 これらは交換するしか方法はありません。 |
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発振する | 6D6は製造時期によって背丈が異なります、シールドケースが密着していないと発振することがあります。 | |
特定の周波数で発振する | アンテナコイルの一次側がハイインピーダンスの場合、コイルのナチュラル(自己共振周波数)が放送帯域に入りこむことがあり、 この周波数に同調すると発振します。 長いアンテナを接続するか、コイルに並列に100〜200PFを入れると、帯域外になるので発振が止まります。 |
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受信できない周波数がある | ☆バリコンの羽根が接触している可能性があります。 配線を外し、バリコン単体にして、テスターで導通を図りながら回転させてみます。 接触した羽根は丹念に修正します、修理できる確率は高いです。 ☆パディングコンデンサーの容量抜けで、受信周波数が大幅にずれてしまうことがあります。 この場合 低い放送局が受信できなくなります。 |
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ダイアルの糸が外れやすい ダイアルの糸がすべる |
長年の使用で機構が変形し、プーリーとダイアルの糸が、同じ平面でなくなると外れやすくなります。 代用品の糸を使うと、スリップし易いです、またスプリングで適当なテンションを与えておく必要があります。 糸かけは簡単そうで、意外と経験が必要です。 |
真空管の電圧を測定する時、ソケットの端子で行う事が多いですが、
写真のように真空管のピンに直接テスターリードを当てた方が無難です。
稀ですがソケットの接触不良だったり、端子がベークの裏側で折れて断線していたりします。
この故障は見つけにくいので、普段からピンで測定する癖をつけておいた方が良いでしょう。
ケミコンとB巻線のマイナスは1点でシャーシにアースする方がハム防止に役立ちます。
バリコンを固定しているゴムが劣化、軸が水平でなくなっています。
この為プーリーが垂直でなくなり、糸が外れ易くなっています。
このような現象は、製造後半世紀以上経過したラジオでは良くあることです。
目視するだけで傾きが判るほど酷い状態です。
ダイアルの糸とプーリーが同じ平面になるように工作する必要があります。
ゴムが劣化しているので、薄いゴムの板を挿入、傾きを直した。
これでバリコンの軸が水平になった。
バリコンのボールベアリングにはグリスを入れるとスムーズに動きます。
バリコンの羽根に接点復活剤やCRCなどの化学製品をかけないように注意してください。
皮膜が出来て静電容量が変化し、修復不能の障害を起こします。
横から見たところ、バリコンの傾きが無くなり、プーリーが垂直になったことがわかる。
ダイアルの糸かけです。
ダイアルの糸は専用の物を使用したほうが便利です。
スプリングで適当なテンションを加えます。
きつからず、緩からず意外と調整が難しいです。
ツマミを回した時、気持ちよくダイアル指針が動くようにします。
うまくゆくまで何度も挑戦してみてください。
ダイアル糸の太さは0.6とか0.7mmくらいが良いようです。
あまり細いとスリップします、太いと軸に巻きつける時不便です。
この機種の場合は前面パネルを取り外して行いました。
それぞれ、設計思想が違いますので、臨機応変に対応する必要があります。
普通3回巻きつけるのですが、この機種の場合2回です。
軸もアルミパイプを接着して、延長しています。
これはオリジナルの差し込み式のツマミが紛失したため、
普通のツマミに交換する為です。
軸は6mmφのアルミの丸棒、継ぎ手は内径6mmφのアルミパイプを使います。
肉厚1mmと0.5mmの物があります。
どちらかと言うと0.5mm(口径7mmφ)の物が便利です。
糸かけの為取り外していた前面パネルを組み込んで完成。
マジックアイ ソケットの接続コードが劣化していたので交換しました。
手持ちのリボンケーブルを使いました。
ケーブルは四芯です、ターゲットとプレート間の1MΩの抵抗はソケットの裏面に実装します。
この抵抗は断線している割合が比較的多いです。
AVCは正常なのに、マジックアイは光るが閉じない時はこの抵抗の断線を疑ってください。
フイールドコイル型スピーカーが壊れた場合、同じ寸法、同じ規格(フイールドコイルの抵抗値など)を探して交換するのが基本です。
これが結構難しいです、普通の(パーマネント)スピーカーに交換するのが現実的です。
ただ問題はフイールドコイルで降下していたB電圧の扱いです。
同じ値の抵抗で置き換えることになります。
ラジオの全電流が流れますので、W数が多くなります、電流をI 抵抗をRとするとI×I×Rで計算できます。
5球スーパークラスで、実際の消費電力は4〜6W位になります、余裕と放熱も考えると20Wクラスの抵抗がほしくなります。
最近大型の抵抗は入手が難しいし、組み込むスペースでも苦労します。
抵抗は数個を組み合わせて使うと実現しやすいでしょう。