このラジオは戦時中に沢山作られました、骨董市でもよく見かけるラジオです。
終戦の玉音放送をこのラジオで聞かれた方も多かったと思います。
同じ放送局型123号受信機でも大きく分けて2種類有ります。
最初の製造された正規型と、構造を単純化して戦時中に製造開始された戦時標準型があります。
ラベルには正規 戦時標準型の表示はありません、後者には123号受信機(臨時)と書かれている回路図が添付されています。
放送局型123号受信機(戦時標準型、臨時型とも)の修復をしました。
@使用上安全第一にすること。→電源コードの取替え、ヒーター接続順の変更。
A他の部分は出来るだけ元の回路に近いように。
Bシャーシ上面はオリジナルに近いように。
この123号型受信機(戦時標準)は戦争中の物資不足時代に3年くらい製造されたので、
キャビネットや部品などに変更があります、終戦近くなると相当酷い状態の部品に変わります。
なお回路は同じです。
このシャーシは比較的初期のものらしく、バリコンとダイアルは同軸だが微動機構が付いていました、これも後期になると直結になります。
シャーシも塗装されている、使われていたVRも大型で、丁寧な造りだ。
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修復前のシャーシ上面。 左側シャーシ上下の紙ケースの電解コンデンサーがついていた。 (入手時取り外されていた、紙の残骸が少し見える) |
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入手時のシャーシ底面。 紙ケースのケミコンが取り去られ、代わりにチューブラコンデンサーが付いている。 これは修理の時に交換されたものらしい。 戦後に作られたコンデンサーが多数使われている。 |
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大部分の部品を取り外した状態のシャーシ底面。 真空管のヒーター配線が最短距離で配線されていることがわかる。 真空管の信頼性を無視した接続順。 (ヒーターとカソード間に高電圧がかかる) |
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@修復の原則として、安全性を確保するため、ヒーターの接続順を変更。 PL−B37−24Z-K2(整流)−12Z-P1(出力)− 12Y-V1(RF増幅)ー12Y-R1(検波)の順とした。 A抵抗は測定して、使えるものだけ利用した。 平滑用の2KΩは3KΩに交換されていたが、2KΩに戻した。 B平滑用のケミコンは手持ちの関係で、250V 10μFを4個使った。 整流管を出た直後の2個のコンデンサーは元回路では8μFである。 これは増やすとハムの減少や電圧の増加で良いのだが、 整流管に無理がかかる可能性があるので、これ以上は大きくしないこと。 抵抗を通過した後は大きくしても大丈夫。 元回路より大きい値だが、多少ハムを感じる。 Cなお最近の(雑音に満ちた)電源事情から言えば、トランスレスは雑音まみれのラジオになりかねない。 ノイズに無防備だ。 出来ればノイズフイルターが欲しい。 |
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修復完了したシャーシ上面。 紙ケースのケミコンが無いことを除けば原型に近い。 |
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左は今回使用したS付きボリューム。 ケースにつけてある電源SWが不良なので、このSW部分をを利用。 中央は元から付いていたVR、ガリオームで使えず。 右はアンテナ線へのカプリングコンデンサー0.001μF。 これはオープン状態で、10pFしか無かった、不良。 固定コンデンサーで再利用したのはグリットリークだけです。 これは不思議に使えた。 ペーパーコンデンサーやケミコンは全て破棄。 |
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キャビネット裏面の配線図 放送局型123号受信機結線図(臨時) 17.2と読める。 このホームページでは戦時標準型と標記してありますが、 実際のラジオにはこんな記載がありません。 写真のようにあくまで放送局型123号受信機で、括弧して臨時規格であることが記載されています。 この規格は昭和17年2月に決まったようです。 |
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123号(戦時標準型)の裏面 |
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修復の完了した123号受信機。 ツマミはオリジナルではありません。 |
抵抗とコンデンサーの再利用について
抵抗は断線か抵抗値が高くなる現象があります。
測定して再利用することを勧めます、測定結果の例は下記。
コンデンサーは全数破棄したほうが無難。
表示 | 300 | 700 | 1MΩ | 20K | 3K | 30K | 1MΩ | 30K | 250K | 30K | 2MΩ |
実際 | 400 | 982 | 1.37 | 20.2 | 3.6 | 38.4 | 1.7 | 30 | 275 | 31.7 | 2.4 |
再利用 | × | × | × | ○ | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |