22日(月曜) 帰国

私の泊まった20階の部屋から見えたソウル


8:00 朝食に下りる。流石に食欲は無いのでコーヒーだけを飲むことに。が、並べられたご馳走を見るとつい。軽くお粥と味噌汁を…、と思ったらサラダにも手を出した。トマトジュースと卵にも…。この食い意地の汚さ!
9:20 チェックアウト。インターネットのアクセス料だけで4千円だ。
預けたパスポートなどを返却してもらう。
富山県関係の方に出会い、お礼を言われる。伝統芸能のステージで、煩いチンドンでは後で問題にならなかったか心配だったが、それは問題なかったようだ。ただ昨日我々のショーを富山市長がご覧になっていたらしく、急遽ボランティアで出演した我々にお礼を言おうとされたようだ。ところが我々は風のように去ってしまい、席を立たれた市長を置き去りに…、失礼いたしました!
大型バスで空港へ向かう。
元々はU-Stage のショーをやる予定で、様々な手配をお骨折り頂いた。一番の問題は大きな太鼓類の移動。そのための大型バスだったのだ。シドニーでも全く同じことがあったことを思い出した。
バスの中で通訳の南さんと、韓国事情などをお話する。南北問題など政治的問題は嫌そうなので、教育問題や芸能人話。
「芸能人は殆ど整形をしている。」 私がそんな噂ですね、と返すと「噂ではありません。事実です!」と、キッパリ。そして「子供達は皆”スター”になりたい。」そのため「親は子供の将来のために、小さい時から整形をさせる。」「ある調査では、女子大生の50%が整形している」「顔やスタイルは親の責任だから、親は教育費も、整形費用もかかって大変だ。それが世界で一番少子化になってしまった韓国の実情だ。」と…。
何だか、考えさせられた。少子化の原因は、チェジューにあったのか…?
途中、旅行社が手配した”お土産や”に。値段が高いのは承知だが、沢山買わせて頂きました。せめてそれくらいは…。
11:15 インチョン空港着。チェックインして、カルネ荷物の預け。熊木さんと南さんがいるので、何も心配は無い。
南さんとお別れ。また会えるといいな…。そんな人が世界のあちらこちらにいる。それこそ私の宝物。
きっと私の息子と同い歳くらいの若い兵士達がマシンガンを抱えて談笑している。お隣の国、韓国では未だに戦争は終わっていない。休戦状態だ。
私はマシンガンを撃ったことも持ったことさえも無い。息子にもそうあって欲しいと願う。将来の孫にも…。そして、それがとても幸せなことであること、それは決して世界の”普通”では無いことを、忘れてはいけない。「普通の国」にしたい、と言った政治家がいるが、「普通」はけっして目指すべきものではないはずだ。「理想の国」をこそ目指すべきだ。
では「理想」とは? 命を脅かされることなく腹一杯食える国、日本。 その一方で飽食の日本を支えている、飢餓の現実。
アジアの大国、韓国や中国の人々はこの現実をどう考え、理想を定めるのだろう?
理想への道程は、夫々の国、民族によってもまた夫々なのだ…。一人一人の理想が違うように。
飽食の国の民は、何を「理想」に向かうのか? 私には自明に思えるが、それがどうもそうでも無いらしい…。
13:30 飛行機に搭乗。 機内でランチとワインを2本。 食って、飲んで、そればかりだ。
16:20 成田に無事到着。荷物を車に積み、事務所組に託して、熊木さん、華ちゃんと電車に乗る。
熊木さんの携帯に「U-Stage がNHKニュースに流れた」と言う情報が入る。本当かな?
荷物のチェックイン。Uの象徴的な写真。 空港搭乗ロビーで今回のビデオを楽しむメンバー

帰宅

帰宅したら、小さな骨壷が一つ、スピーカーの上に置いてあった。
女房が「中の骨を見るか?」と聞いたが、とてもそんな気持ちにはなれない。私の定席、スピーカー前の椅子に座る。
朝起きて、椅子に座るとピョコンと膝の上に乗って来たピー。階段を下りる私の足音を聞いて、椅子に先回りしていたことも度々だった。
女房は深夜、息を引き取る瞬間まで、頭をなぜてやっていたらしい。10月21日、何の関係も無いが忘れられた「国際反戦日」
玄関との間のドアーを閉め様として、もうその必要が無いことに気づいた。ピーは、壁紙からビニールコード、絨毯、座布団、何でも齧ってしまう。特に革製品は大好きで、玄関に出したら靴など一たまりも無い。ドアの隙間に頭をこじ入れて開けてしまう。だからドアはキチンと閉める必要があったのだ。
ペットとして部屋の中で飼われたウサギが果たして幸せだったのか…?答えは無い。ただ、命を脅かされる危険に会うことも無く、腹いっぱい食える環境であったことだけは間違いない。「それが本当に幸せか?」 その割りに”ブタウサギ”にならなかったピー、ブタになっている俺よりえらい…。 
ピーの居なくなった部屋は、何だか寒々しい。小さなペットが居なくなっただけで、家庭の様相も一変してしまった。

世界各地で、今この瞬間にも戦火や飢餓で何人もの子供達が悲惨なめにあっている、…らしい。
それを実際に眼にすることの無い私は幸せだ。幸せとは「不幸な現実」からできるだけ眼をそらしていられることなのかもしれない。「不幸」に近づかないこと。
ウサギの死ですら、こんなにも辛いんだから…。

日本は空前のペットブームと言う。犬、ネコは勿論、ウサギやイタチ、爬虫類やら昆虫までペットになる。それらが商品として流通し、ペット産業も肥大化する。大きなショッピングセンターには殆ど、ペットコーナーがある。そこで売られている様々なペット用品、そして豊富な餌の数々。「ウサギのおやつ」さえあることをご存知だろうか? 「犬やネコのダイエット食」は既に常識だろう…? 骨壷どころかお墓だって売っている。

フィリピンで作られているネコ用の缶詰。養殖された海老が主原料らしい。
販売価格約200円は、その缶詰を作る工場の労働者の一月分の給料とほぼ同額だそうだ。
自分が作っている缶詰−それもネコ用の−1缶さえも月給で買えない人がいる、一方でペットを骨壷に埋葬する我女房。流石に墓は買えないが…。


帰国して始めて、全出演者のプロフィールを見た。見たかったり、話を聞いてみたかった団体がいくつもある。
それらを見られなかったことは残念だが、我々は出演者、仕事で行っているのだから仕方が無い。端から他所の集団を見られるとは思って居なかった。
「マダン劇」を影から見れただけでもラッキーだ。それに、素晴らしいお客さんの反応に出会えた。これぞ無上の喜び。

近くて遠い国、韓国との文化交流が大変重要なものであり、意義深いものであることは間違いない。このイベントが長く続き、交流の芽が産み出されていることを願って止まない。もし来年も呼ばれたら、必ず参加するだろう。

だが、問題点も沢山ある。一出演者からの立場でしかないから、「木を見て森を見ず」と言う面もあるかもしれないが、とりあえず思ったことを。

まず我々のベストパフォーマンスをお見せできるようなスケジュールを組んで欲しい!
単純に生活費を稼ぐための仕事なら、「10分以内で」と言われれば、どんな所でも喜んでやりましょう。しかし交流を目的とした云わばボランティア、表現する時間と場所は重要だ。時間制限のために満足なパフォーマンスが出来なかった集団はいくつもあるだろう。そして、もしその時間制限がお客さんの”飽き”を考えての演出ならば、それを明確に伝えるべきだ。確かに長すぎるステージに出会うことはこのようなイベントでは度々あった。
その経験が、U-Stage のショーで世界を周ろうと思ったきっかけですらある。

次に、実際の現場進行スタッフとの打ち合わせ時間の確保。
現場にいない”上の方”の方達と話すなら、イベントや演出の根本的問題を話したい。あるいは時間や場所の割り振りについて、全体の演出について。
それが決まった段階では、後は現場進行あるのみ。進行スタッフとの顔あわせさえも無ければ、出演者には現地との交流のきっかけすら与えられないことになる。せめて登退場のきっかけとマイクなどの音響打ち合わせを現場スタッフと…!

上記2つは長いことイベント演出に関わってきた経験からは、余りにも当然、最低のことだ。
それすらも出来ていなかったと言うことは、はっきり言って演出部のレベルの低さとしか思えない。あるいはどうでも良かったか…?
しっかりした演出・進行スタッフの組織化。これが出来れば、現場は全て上手く行く。
控え室や待機場所、着替えや出演者ケアなどは、その次の問題だ。

さらに演出に関して気になることがある。
メイン会場の市庁舎前広場。ここの壮大な舞台は、21日夜の「韓流スター・ファッションショー」のために作られたのだろう。
チェジュウやら、イだかペだかピだか???を目当てに押しかける、数千人の観客のためのスペースであり、そのための大きな映像スクリーン・パネル、照明・音響設備だったことは、あのショーを見れば一目瞭然だ。
交流イベントに、あの舞台を使いまわす必要が何故あったのだろうか? 
日本のものであれ、韓国のものであれ、沿道をパレードして見せるものならいざ知らず「伝統芸能」で、ステージ上から数千人の観客に「見せる」ために作られているものがあるだろうか? 基本的に「ステージ」でやるべきものでも無いだろう。それをあえてステージでやるなら、それなりの演出が必要だ。
チェジュウが司会をして、スマップが歌って、林英哲が太鼓を叩くならあの舞台は必要だったかもしれない。
だが純粋に「伝統芸能」をメインにするならば、大道かせいぜい小さな舞台をあちらこちらに用意するとか、基本的な演出方針が間違っているとしか思えない。
いくつかの別イベントを一緒にすることによる経済的判断が、文化交流の本質より優先されたのでは無いのか? ボランティアに大事な現場を任せ切りにし、余計なことに経費を使っているのでは無いか?そんな穿った想像をしてしまう。私の想像が間違いであることを願うばかりだが…。
結局は金の分配の問題に行き着いた。美味いものを食うだけ食ったブタが言っても説得力が薄いけど…。

夜のメイン舞台。映像は下手スクリーン ミョンドンで買った、金のブタ(今年はブタ年) 熊木さん、南さん、高橋さん


さて最後になってしまいましたが、この「旅日記」を読み、応援してくださった皆さんに感謝します。
U-Stage のメンバー、お疲れ様!
会場で一緒に歌ってくれた韓国の観客に感謝します。
拍手や声援、手を振ってくれた人たち。写真を撮ってくれた人達。笑ってくれた人達、ありがとう!
大勢のボランティアスタッフ、とりわけ素晴らしい動きで手伝ってくれた韓国人学生スタッフに、感謝!!
U-Stage の看板を持って歩いてくれたウンビンさん、寒い中ありがとう!話もできなくて、ビアンネヨ!
一緒に『踊ってくれた「キャッツ」の子供達、ありがとう!
屋台のおでんをご馳走してくれた方、ご馳走様。マシッセヨ!
KNTの高橋さん、色々お手伝いありがとうございました!
通訳の南さん、カムサムニダ!
そして僕らの招聘に尽力して、実現させてくださったKNT熊木さん、感謝感激、焼肉食いすぎ、サンタルチアはイタリアで!