U−10(キッズ)サッカーに思うこと(私見)・・・・・・           

私たち少年サッカー指導者の目的は子供たちにサッカーの楽しさを伝え、サッカーを
遊びの延長としてとらえ、自分達でサッカーをするクリエイティブでたくましい選手の育
成であると考えます。そのためにはこの時期に子供の発育発達を第一に考えて、長
期的に選手を見守りながら育成する必要があります。大人のサッカーを子供に当て
はめるのはナンセンスです。焦らずじっくり階段を一段一段上るように時間をかけて
選手を見守り、自立期においていかに大きく成長するかを第一の目標としましょう。
素晴らしいサッカー選手や人間は作為的に育成できるものではありません。良い環
境を設定してあげた中での個人の才能に最も影響されます。私たちは手間ひまかけ
て一人一人を大切に見守り育みましょう。それが私たち大人の責任であり義務なの
です。指導者として時にはチームの勝利を優先し結果を求めなければならない時も
あるかもしれません。しかし、私たちの最大の目的を忘れずに、その中での選手の
成長を見守る目を養いましょう。日々観察・努力し指導しましょう。子供たちのサッカー
との出会いを素晴らしいものにするためにも・・・・・そして、その中で少年期の子供た
ちが正しく成長していくことが日本のサッカーの発展も意味します。私たちサッカーに
携わるものすべての夢(ワールドカップトロフィーを手にすること)が実現するように。
「あ〜今日も楽しかった。今日はこんなことがあったよ。明日も皆で遊ぼう。明日はど
んなルールにしようかな。明日の為に今日はしっかり休もう。」

1.身体的・精神的特長を理解して指導しよう

私たち少年の指導者は、他のカテゴリーの指導者と違って未就学児(U−6)から中学
入学前(U−12)までと幅の広い年代を指導しなければなりません。そしてこの年代は
私たちの指導の仕方が子供たちに影響を与える度合いもかなり大きいと思われます。
人間形成においてもサッカーのレベルアップにおいても私たちの言動や姿勢が彼らの
将来を左右するといっても過言ではありません。子供たちの成長を良く見つめ、その特
性をよく理解したうえで指導してやることが子供たちに対しての私たちの責任と義務だ
と考えます。自分の子供の頃をもう一度思い出して指導しましょう。
ただし,個人差が激しいためこれが正しいという固定観念も必要のない次期だと思いま
す。多くの経験をさせていく中で,多くの可能性を探し出す為の準備段階です。基本的
なガイドラインを基に多くの発想で取り組めればと思います。

2. 技術的課題

サッカー選手として技術的課題の最終目標はゲームで使えるパーフェクトスキルを身に
つけることです。その段階として少年期では自らの欲求で技術の習得に励むような環境
が必要になります。パーフェクトスキルとは、右足、左足の各箇所を自由に使ってコント
ロールそして各種キック(強弱、カーブをかけたキック)がハイプレッシャーの中でも正確
に出来ること。両足以外の身体各部を使ったコントロール(胸、頭、手等)においても同
様です。右足は蹴れるけど左足はまったく使えないでは、ゲームの中でプレーが制限さ
れてしまいます。「両方の足が自由に使えるとサッカーでは得だよ」つまり得点を取るた
めに,得点をとられないためにいかに相手に対して優位に立つかということを最優先に
考え努力する意識の芽生えが大切なのではないでしょうか。この年代神経系の発育が
著しいのはご存知の通りです。無限の可能性の持ったこの時期を逃さないように指導で
きたら子供たちも後のサッカーをより楽しんで出来ることでしょう。
技術練習は年代によって頻度と提示方法を考慮しなければなりません。そして,何よりも
意欲付けが重要になります。低学年に無理に左足を使うことを強要すると楽しいはずの
サッカーも子供にとってはつまらなくなってしまいます。また、過度の技術練習は障害を生
む原因にもなります。U−10に関しては焦らずゆっくりとそして楽しみながら行いましょう。
そして様子を見ながら個別にアドバイスや矯正してあげましょう。意図を持った練習をオー
ガナイズできることが良い指導者です。サッカー選手として成長していくためには、沢山の
技術を習得していかなければいけません。階段を一段一段上るように指導者はテーマや
目標を決めて少しずつ行いましょう。
11歳以上になれば子供たちの目標も明確になってきますので、ドリル形式の反復練習も
可能になってきます。ボールに触れる回数を出来るだけ多くしてこの年代にU−10で身に
つけた基礎をゲームで使える技術に発展させていきましょう。さらに自主的に取り組む選
手の育成に繋がる精神面のサポートを重視しましょう。

3.戦術的課題

 サッカーを遊びととらえ、ただ楽しく漠然と身体を動かしている幼児期から少しずつサッカー
の戦術的な楽しさを感じ、最終的にはサッカーの特性や本質を理解するための段階を追って
戦術的な感覚を身に付けていかなければならない。技術と同じように遊びの中からどのよう
にやったらうまくいくか(ゴールをするために、ボールを奪うために)子供たちから自然発生的
に生まれてくるのが理想です。しかし、現代の外遊び不足による創造性の乏しさからはなかな
か導かせることが不可能な場合があります。サッカーを通してその環境を作り子供の豊かな
発想を大切に育てながら少しずつ養いましょう。どん
な練習やゲームでも必ず上手くいく方法はあるはずです。子供たちがテレビゲームで裏技を
発見する時のように、サッカーの裏技をマニュアルなしで発見できるとサッカーももっともっと楽
しくなるはずです。我々指導者がその手助けをしましょう。子供たちの自由で無限の判断能力を
奪うような指導は避けましょう。子供たちの判断能力をつかさどる前頭葉の発達は5〜10歳で
100%に達します。この時期に「今はシュートだ」「右にパスをしろ」「どうしてトラップするんだ」な
どとサイドコーチをしていないでしょうか?自分と他者の関係をつかみ、状況判断の基礎ができ
るようになるのは9歳(小学3年生)くらいからだと言われています。それ以前に「考えてプレーし
ろ」と言っても無理があります。戦術感覚を身に付けさせるのも発育発達を考慮して行なわなけ
ればなりません。その意味でも少年の指導者は大変であり、勉強が必要不可欠である。
そして私たち指導者にも創造性が必要です。子供たちと一緒に頑張りましょう。答えを与えるの
ではなく、問いかけながら無理なく導き出す指導を工夫しましょう。子供たちの創造性は閃きで
す。どんなきっかけで飛び出すか分かりません,私たちは子供たちをじっくりと観察することも重
要です。子供たちから多くのことを学ぼうとする心のゆとりも大切です。子供たちの無駄に見える
ことが重要なのかもしれません。

4.体力的課題

サッカーは身体各部のいろんな動きや要素が必要とされる複雑なスポーツです。後にサッカー選
手として大きく成長するためにも神経細胞の配線を複雑に張り巡らせることを重点に指導しましょ
う。そのためにはコーディネーショントレーニングを取り入れましょう。サッカー先進国では幼少期
からW−UPの中でミニハードルや器具をつかって楽しく行っています。日本人は欧米人に比べて
この能力は勝っていると言われています。欧米の子供たちが取り入れているトレーニングをその
ままマネするのではなく、コーディネーショントレーニングを難しくとらえないで、様々な遊びをする
ことによって自然に身につけさせましょう。
筆者らが子供の頃は、木に登ったり高いブロック塀の上を歩いたり、だるまさん転んだやかくれん
ぼや鬼ごっこなどの様々な遊びを通して自然に身に付けたものです。
 また、怪我の予防やしなやかなプレーのためにも柔軟性を維持させましょう。高い競技レベルの
選手の筋肉は強くしなやかで柔らかいと言われています。日本人も世界のトップレベルの選手と
同じようにハムストリングや腸腰筋を主に使ってプレーできるようになれば、海外で活躍できる選
手が増えることでしょう。そのためにも柔軟性の維持は特に高い競技レベルを目指す選手にとっ
ては必要不可欠だと考えます。8歳以上から少しずつストレッチを取り入れましょう。

* コーディネーション
 定位、変換、リズム、反応、バランス、連結、識別(コーディネーションの内容 ハルトマン・1997)
 コーディネーション能力とは、状況を目や耳など五感で察知し、それを頭で判断し、具体的に筋肉
を動かすといった一連の過程をスムーズに行う能力を言います。専門的な技術を覚えるにあたって
の、前提条件(レディネス)とも言うべき動き作りと深く関わり合っています。第一線で活躍する競技
者には、もともとこのコーディネーション能力の高い人が多く、彼ら、彼女らの大半は、子供の頃に
人一倍様々な遊びを体験していることが指摘されています。(キンダーコーディネーション 東根明人
、平井博史著 全国書籍出版)サッカー選手にとって,天性素質が大きな要素になっていることは否
めませんが,より多くの可能性を引き出すことが指導者の役目ではないでしょうか。

5.主なトレーニングと指導のポイント

 (1)他律期の特徴をうまく活用しよう
他律期にある子供は近い距離の大人に認められたい欲求の強さ、模倣習性があります。また集団
の中で認められたい欲求が生まれ更に仲間との異質性を追求する段階と成長していきます。この
時々にサッカーとの関わり方は異なるし指導者の創意の出しどころではないでしょうか。「これできる?
やってみない?できるかな?」「このフェイントすごいよね」と子供の興味関心を刺激し、また「K君の
これすごいよね」と皆の前で誉めることによって向上意欲や競争心を刺激し、子供たちが楽しみなが
ら自然に課題が身に付くように工夫しましょう。

(2)サッカーの競技性を強調しよう
 競い合いの原理をとことん適用させてみましょう。その中からたくましさや負けず嫌いの子供も育て
ましょう。遊び、W-UP、技術練習、ゲーム等に競争原理を取り入れ子供を夢中にさせましょう。

(3)サッカーの基礎基本の習慣化・自動化のために
 身体の向きやLook around,Think beforeの習慣は、この時期に感覚的に身に付けさせる必要
があります。良い手本をたくさん提示し子供たちの模倣の中から生まれてくるように工夫しましょう。ま
たオーガナイズの設定により導き出すような工夫も必要です。教え込むのではなく導き出すようにしま
しょう。

(4)個人差への配慮
 この年代の子供たちの特徴を十分に理解したとしても、子供たちには精神的・肉体的には極端な個
人差があります。個人の中でも個人内差やアンバランスが存在することを決して忘れてはいけません。
また6歳から12歳まで子供たちを一度に同じ場所で同時に指導しなければならないときがほとんどで
す。個にどのように対応するかが常に求められます。