1993年 春
春山登山完全堕落編
 だめです。今回はこの様な文章を残したところでなにも成りません。誰かの言葉ではないのですが(たしか千代の富士が引退の時に言った)気力が無くなりました。
 日頃から車やバイクにばかり乗って運動不足なのはともかくとして、それ以前の気力というものがなくなり、雨に濡れるのはいや雪山に寝るのもいや停滞するのもいや濡れたテントはしまいたくない。この様な感じで、熱しやすくさめやすい性格がもろにさめていくと言った感じで、何かと理由を付けて楽な方向へと転がり落ちていく。そんな春だった。
 
5月1日(土)曇りのち晴れ
 一晩走った夜叉神峠の朝、まずは一発目の天気予報から始まりました。天候は崩れるとのこと。5時間歩いて広河原まで行ったとしても、明日は停滞。風呂無し。濡れたテント。そこでどうするかなと考えていたところ、芝生のキャンプ場発見(温泉ロッジ管理)、辺りにたくさんの温泉、この悪条件と好条件を比べて悩んでいるほど人間出来ていなかった。既に甲府に向かい焼き肉セットなどのキャンプエンジョイグッスを買いに走っている自分にきづいた。
 この様に怠け登山(とはいわない)を決め込んだからには、早速風呂だ。いつも使っている温泉ロッジは550円に値上がりしており、ぬるい露天風呂も改装中とのこと。今日は少し下った桃の木温泉へ行くこととした。入浴1回1,000円は高いが露天風呂も暖かくとても雰囲気がよろしい。いつも一泊は旅館に泊まるので、最終日はここに泊まりたい。入ったとき女子大生風の3人が入っているのを、境のよしず越しに分かった。あまりじろじろ見るのもどんなものかと思うので、自然体を保っていたらすぐ出られてしまった。あとはおばさんばっか・・・。それでも1,000円出しているので2時間は入って元を取った気になった。
 風呂上がりは、ビールと焼き肉。極楽極楽。
 
5月2日(日)雨
 昨夜からずっと雨。停滞の日はいつもつまらない。初めて停滞したのはたしか仙丈岳だったような気がする。山での停滞にしてみれば、今回は酒やゲームなどを持ってきていて退屈しない。ただ肌寒いし、無線でCQ出してもだれにもとってもらえずやはり今一ぱっとしない。朝からビールとウイスキーのお湯割りをちびちびと。明日は、芦安村の新緑祭りらしいので風呂はただだろう。よって今日は我慢。
 昨夜は4つあったテントが2つしか残っていない。バイクの人たちは行ってしまったようだ。怠け者だなと自己嫌悪。
 夜は寒いので水筒で湯たんぽをこしらえたら快適に眠れた。
 
5月3日(月)曇り
 朝起きると雨は上がっていて、テントの外に出るとどんよりといった天気だった。朝からゲームなどをして時間をつぶす。朝飯のラーメンのあと10時から温泉ロッジへ行ってみるが、無料は下の村内に新しくできた方らしい。
 ただならばと車で山を下りるが、すごい人と車である。芦安村はそんなに人が居ないはずと思っていたが、新緑祭りのイベントがあるらしく村外からもかなりの人が来ているようだ。なんとか車を止めて温泉へ。しかし、ここでもやはりただではないとのこと。イベントでの賞品がここの無料券だったらしい。しかし世知辛くなったものだ。渋々550円を払い入るがロッジの風呂に比べるとずいぶん狭いし、あぶくがぼこぼこ出ていて落ち着かない。30分くらいであがってしまう。これなら温泉ロッジの方が料金も同じなのでよい。
 せっかくなので新緑祭りのイベントでも見て行こうと会場に足を向ける。会場では全部演歌のカラオケ大会が続いており、私はそれを8個400円のたこ焼きを食べながら見ていると、なんだかとても情けなくなってきた。その割には先着500名無料の味噌田楽コーナーに並んでみたりと、やはり情けない行動をとっている。
 カラオケ大会のあとはまったく知らない3人の演歌歌手のショーがあり、「水沢あけみ」という人は有名らしいが、私は帰ってきた。テント場をあと2泊延長しにロッジに行くと、今山から降りてきたようなピッケルを持った人がいて、なんとなく自分が恥ずかしかった。 テント場でも酒を飲みながら本を読んでいたが、明日は夜叉神方面を雪があるところまで上る決心をした。
 
5月4日(火)晴れ
 夜中喉が渇くのと、腹痛で目が覚め時計を見ると2:30。トイレに行って腹痛は収まったがなかなか寝付けず、5時おき予定が6時まで寝ていてしまった。朝食後夜叉陣の駐車場にむけ出発。案の定車がいっぱいでなんとか場所を見つけたのが7時を回っていた。
 登りはじめはしたもののやはりきついのなんのって、すぐ後ろが女子大生風4人組だったため、写真を撮るふりをして抜かせた。その後も抜かれた人の人数は定かではない。夜叉陣の峠に着いたのが8:10。結構人が居て看板バックの写真は撮れそうにない。今回は雪のあるところまでまだ進むつもりなので、写真は帰りでよし。
 杖立峠まで決して険しいとはいえない坂を、何人にも抜かれながら進む。息が切れる。標高が2,000mを越すとさすがに寒くなり、ヤッケを着て寒さをしのぐ。とりあえず雪を見ることが出来たのでちょっと無線などで遊んでから、下りに掛かる。証拠の写真も撮る。なにせ、職場にはあくまでも山に行くとの事で休んでいるし、去年作った靴も雪山用なのだ。こんな理由で山に登るとは落ちぶれたものだ。
 テントに戻り、温泉ロッジの風呂に入り、土産用のワインを買って一本飲んでしまう。
 
5月5日(水)曇りのち晴れ
 昨夜は酒をたくさん飲んで早く寝たらしく、目が覚めたのが夜中の12:30。オールナイトニッポンを3:00まできいてどうせ今日は撤収して、すぐ近くの桃の木温泉へ泊まるつもりなので寝坊していてもいいのだ。
 6:00頃から隣のテントの子供たちが騒ぎ出し、7時には起きてしまった。朝食後、テントの撤収。車まで少し距離があり、4泊もすると荷物も増えており運搬に手間取ったが、水洗トイレや水場も綺麗だし温泉も近いしいいキャンプ場といえる。たき火が出来ないのが残念。一泊500円は妥当と思える。
 さて本日のねぐらを確保しようと早速桃の木温泉へ電話してみる。宿は本館が8,000円、露天風呂のある新館はなんと17,000円とのこと。本館に泊まっても露天風呂には1,000円で入れるとのことだが、あいにく今日は休みだった。まあ芦安村も飽きてきたところだし、どこかの安い温泉でも探そう。
 とりあえず甲府の県立美術館の駐車場に行きガイドブックを開き、宿のピックアップ。温泉でこの辺で1万以下、露天風呂があればなおいいがそうもいかない。ええいといった乗りで十谷温泉へ電話をしてみると一発OK。一安心して、美術館前のほうとう屋で700円の玉子ほうとうを食べる。山梨に来たらやはりほうとうだ。去年は昼に食べたら宿でも出されてしまった。
 昼飯を食べてもまだ12:30だったので、結局美術館を見る。数年前も見たのだがそんなに混んでおらず、300円でミレーの原画が見られるというのは安い。
 十谷温泉へはR52を南下し約1時間。標識通りにすぐ行くことが出来た。かなり山間の宿で、今日は私のほかに老夫婦が一組だけ。風呂は鉱泉らしかったが、静かだしとても良い。食事もヤマメや山菜が豊富だ。風呂には4回入った。
 よくじつはひたすら運転して帰るのみ。