写真1『肘をついて椅子にすわる女』
1939

ー<第1章>ピカソの絵は何がすごいんだ?ー




これですね。目、鼻、口が バラバラであっちこっちに向いている。
位置もズレまくりで このズレがピカソの絵を見た人達を悩ませる訳です。

この絵の見方は 全体を一気に見てはいけません。
ごく限られた小さな範囲で 上から順番に 右側の目→鼻→左側の目→口→首
と見ていくとよいのです。
うまく見てあげるとモデルの顔がぐらぐらと左右に動くように描かれている
のが分かります。

ただし この絵を描いていた時 モデルはほぼ静止していたと思います。
動いていたのは モデルの周りをぐるぐる回っていたピカソ自身であり
絵に込められた動きは ピカソの目の動きに他なりません。

つまり この絵はピカソが見た世界を再現するビデオテープのようなもので
もし うまくこの絵に入り込むことができれば その人はピカソの頭の中に
入って モデルをながめる一部始終を疑似体験できるのです。

ピカソはいきなりキュビズムを完成させた訳ではなく いくつかの実験を
繰り返しています。

写真3『瓶、グラス、フォーク』
1911〜12
これはキュビズムの実験過程の絵です。全体が細分化され 再構築
されています。この絵で表現されているのは 画面全体の小刻みな震え
微振動です。

しかし実験過程なので『動けば 良し』といった感じでしかなく
やや せわしなさが感じられます。


これが徐々に整理され・・・

写真4『小卓の上のギター、楽譜、
松ぼっくり』
1920
このように ゆったりとしたリズムの画面へと変わっていきます。
デザイン的でお洒落な絵になっていったのです。

『キュビズムは 動くはずのない絵に動きを導入した絵である』
ということが分かっていただけたでしょうか。

キュビズムはピカソの代表的な技法であり 彼の名声は
この技法によって確立したといっても過言ではありません。

キュビズムの技法が他の画家の作風に影響を及ぼし 新鮮さを失う
につれて ピカソはキュビズムから離れ 古典的な技法に戻って
いくのですが それまでの間 キュビズムはピカソの代表的な
作風となりました。