◆水晶拾いに誘われて◆
拙著「月波通信」を読んでくれた、珈琲焙煎人のMさんは、水晶拾いに行った事があるという。
うらやましがったら、「今度一緒に行きましょう」と言って下さり、ずっと楽しみにしていた。
それから数ヶ月たったある日、Mさんから、水晶拾いの秘密計画書メールが送られてきた。
ライターのSさんも参加されるそうで、M隊長以下隊員2名、ここに、秘密探検隊が結成された。
秘密高速機動兵器(レンタカー)やら秘密体力回復研究所(温泉)やら、
計画にはどれも「秘密」がつくのであった。
5月のある晴れた日、新宿駅集合。
が、乗る予定だった電車は休日しかなく、今日は走らない事が判明。
2度ほど乗り継ぎ、ようやくBOX席に座れた時はホッとして、思わず
「わーい、旅行用の電車ですね!」と言ったら笑われた。えへへ。お弁当でも食べたい気分です。
やや混んでいて、BOX席に3人では座れず、通路をはさんで座る。
まわりはハイキングに行くおばさま方の団体。
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景色もだいぶのどかになってきた頃、
Sさんがかばんからシャンパンを取り出し、
(なるべく)静かにシュポンと栓を抜いた。
まわりのおばさま方、「あらあら何のお祝?」
乾杯の時は拍手までいただいた。どもども。
Mさんは、カマンベールとレバーペーストの
サンドイッチを作ってきてくれていて、
シャンパンと共においしくいただいた。
おふたり供、なんて気がきくのでしょう…。 |
やがて電車は目的地へ到着、駅前でレンタカーを借りて、目指すは「乙女鉱山」。
が。またしてもスムーズには行かず、あちこち工事中で通行止になっていて
山の中を行ったりきたり。途中で車を置いて歩く事に。
早くも歩き疲れた様子のSさん、
「Mさん、コーヒー飲みた〜い」
「もう少し歩いたらにしましょう」
しばらくして再び「コーヒーまだですか〜」
「ゲートに着いたらですよ!」
おふたりの掛け合いがおかしい(笑)。
小1時間ほど歩いて、さびた門のあるゲートに着き、
お待ちかねのMさんのコーヒー!
山の中、家で焙煎してきた豆をその場でひき、
いれてくれるのです。う〜ん贅沢! |
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コーヒーを飲み、いよいよ鉱山にはいって行く。ここからはゆるやかな下りを1時間ほど。
やがて深く掘られえぐられた岩が現れ、ボロボロに朽ちた鉱山小屋の横を通り過ぎる。
そのうち道はなくなり、川に向かって急な崖を下る。
すっかりくたくたのSさんと私に、「ちょっとここで待ってて下さいね」とM隊長、
ひとりで水晶のありそうな場所を探しにでかけた。
あちらかと思えばこちら、山の中を岩の上を、身軽に走り回るMさんに、
Sさんが、「Mき」は「モンキー」がなまったのでは!と言い出す。
「しっぽを隠しているはず!」うんうん、時々バナナ食べてるし!
しばらくたつと戻ってきて、水晶のある場所へと案内してくれた。
おお、岩肌に、5mmから1cmくらいの小さな水晶がびっしり付いている!
水晶って、こういうふうにできるんだ〜。
でも、岩に付いてるのは取れないので(ハンマーで岩をくだいてもいいけれど、
固くてかなり大変)、落ちているのを探す。
ああ、まさしく、「水晶掘り」じゃなくて「水晶拾い」だなあ。
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それぞれいくつか見つけたところで、
遅いお昼ごはん。
Mさんがラーメンを作ってくれた。
わりばしが見当たらなくて、
そのへんの小枝二本をお箸代わりにして食べた。
「おふたりが、こういう事に文句言わない人で
良かった!」とMさん。
自然の中だしね、臨機応変にいきましょう。 |
お店で売ってるような立派なものはなかったけど、自分で水晶を拾えたので大満足!
そして、来た道を戻るのだけど、もとより道なんてないのです。
木や根っこにつかまりながら崖を登ってると、前を行くSさんが足をすべらせて、
根っこにつかまったまま、ずるずるずる…。しばらくぶらさがったまま固まっていた。
「大丈夫ですか〜!?」と言いつつ、写真に撮りたい構図とも思いつつ(笑)、
そんな場合じゃありません。
でも、この光景が目に焼き付いてしまったので、後日絵に描いてみました。(大きくなります)
私も、やぶの中で右も左もわからなくなったりしながら(ふたりの声のする方へ…)、
なんとか鉱山小屋のある山道に出て、あとはひたすら車へ向かって戻る。
ゆるやかな上り坂で、帰りもけっこう疲れたけど、
おさるのMさんは、やはり涼しい顔をしてバナナを食べながら歩いていた。
帰りは、秘密体力回復研究所こと温泉へ寄って疲れをとり、
電車でビールを飲みつつ東京へ戻ったのでした。
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水晶。最初は不透明だったのを、研磨剤で磨いた。まだにごってますが。
*水晶を傷つける場合もありますので、研摩材を使う時はくれぐれもご注意を。 |
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